医療を「届ける・送る・支える」―へき地医療拠点病院の仕事と行政の仕事を見分ける
第116回医師国家試験 C問題 第28問
国試問題にチャレンジ
へき地医療拠点病院について正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.無医地区の巡回診療を行う。
- b.へき地保健指導所を整備する。
- c.へき地保健医療対策を策定する。
- d.へき地診療所への医師派遣を行う。
- e.厚生労働大臣によって指定される。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
へき地医療拠点病院は都道府県知事が指定する病院で、無医地区への巡回診療、へき地診療所への医師派遣・代診医派遣(主要3事業)を中心に、医療従事者への研修や遠隔医療による診療支援などを担います。一方、へき地保健医療対策の策定は都道府県の役割で、現在は医療計画に一体化されており、保健師を配置するへき地保健指導所の実施主体は都道府県または市町村です。「現場で医療を届ける病院の業務」と「計画・整備・指定を行う行政の業務」を区別することが、この種の問題を解く鍵になります。へき地医療は医療計画の5疾病・6事業の一つであり、都道府県のへき地医療支援機構が医師派遣などを調整しています。制度の主体を正しく理解することは、地域医療を支える仕組みを把握するうえでの土台となります。
解答・解説
正解はa, dです
へき地医療拠点病院の役割と、へき地保健医療対策における各主体(国・都道府県・市町村・医療機関)の役割分担を問う問題である。 へき地医療拠点病院は、都道府県知事が指定する病院であり、へき地(無医地区など医療資源に乏しい地域)の住民に対して、医療を「直接届ける」「人を送る」「後方から支える」機能を担う。具体的には、無医地区等への巡回診療、へき地診療所への医師派遣や、診療所医師が休暇・研修などで不在となる際の代診医派遣、へき地の医療従事者への研修、遠隔医療による診療支援などを行う。 一方、計画を立てる・施設を整備する・病院を指定するといった行政上の役割は都道府県(施設によっては市町村)が担う。したがって、「医療を提供する現場の病院としての業務」か「行政の業務」かを区別すれば正解を導ける。巡回診療(a)と医師派遣(d)が拠点病院の業務であり、保健指導所の整備(b)、対策の策定(c)は行政側の役割、指定(e)は厚生労働大臣ではなく都道府県知事である。
選択肢考察
- ○a. 無医地区の巡回診療を行う。
無医地区など、身近に医療機関がない地域へ医師・看護師などが出向いて診療する巡回診療は、へき地医療拠点病院の中心的な事業の一つである。医師派遣・代診医派遣とともに「主要3事業」と位置付けられ、拠点病院の活動実績として評価される。
- ×b. へき地保健指導所を整備する。
へき地保健指導所は、無医地区などに設けられ、保健師を配置して住民への保健指導(健康相談、生活指導など)を行う施設である。その整備・運営の実施主体は都道府県または市町村であり、へき地医療拠点病院が整備するものではない。
- ×c. へき地保健医療対策を策定する。
へき地の保健医療対策を計画として定めるのは都道府県である。かつては都道府県が独立した「へき地保健医療計画」を策定していたが、第7次医療計画(2018年度〜)以降は医療計画の中に一体化して記載されている。拠点病院は計画に基づいて事業を実施する側であり、策定主体ではない。
- ○d. へき地診療所への医師派遣を行う。
へき地診療所に医師を継続的に派遣したり、診療所の医師が不在となる期間に代わりの医師(代診医)を派遣したりすることは、へき地医療拠点病院の主要な役割である。これにより、へき地診療所の医師の負担軽減と診療の継続性が確保される。
- ×e. 厚生労働大臣によって指定される。
へき地医療拠点病院を指定するのは都道府県知事である。へき地医療の体制は都道府県単位の医療計画の中で整備されるため、指定も都道府県が行う。厚生労働大臣が指定するものではない。
へき地医療拠点病院が行う主な事業
・巡回診療などによる、へき地住民の医療の確保 ・へき地診療所などへの代診医などの派遣(継続的な医師派遣を含む)と、技術指導・援助 ・特例措置許可病院(医師確保が困難なため医師配置基準の特例を受けている病院)への医師派遣 ・派遣する医師などの確保 ・へき地の医療従事者に対する研修の実施や研究施設の提供 ・遠隔医療など各種の診療支援 ・総合的な診療能力をもちプライマリ・ケアを実践できる医師の育成 ・その他、都道府県・市町村がへき地の医療確保のために行う事業への協力
へき地保健医療対策の主な主体と施設
・都道府県:医療計画の中でへき地医療対策を定める。へき地医療拠点病院を指定する。へき地医療支援機構(へき地医療支援の企画・調整を担う組織)を設置し、拠点病院による医師派遣などを調整する。 ・へき地医療拠点病院:巡回診療、医師・代診医の派遣、研修、遠隔医療支援などを行う後方支援病院。 ・へき地診療所:無医地区などに設置され、住民に日常的な医療を提供する診療所。 ・へき地保健指導所:保健師を配置し、住民の保健指導を行う施設(都道府県または市町村が実施主体)。
無医地区
医療機関のない地域で、その地区の中心的な場所を起点としておおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住し、かつ容易に医療機関を利用できない地区をいう。
医療計画との関係
へき地医療は、医療計画で定める「5疾病・6事業」(従来の5事業に新興感染症等が加わった)の事業の一つとして位置付けられている。
POINT
・へき地医療拠点病院は都道府県知事が指定する(厚生労働大臣ではない)。 ・主な業務は巡回診療、へき地診療所への医師派遣・代診医派遣(主要3事業)、研修、遠隔医療支援。 ・へき地保健医療対策の策定は都道府県(現在は医療計画に一体化)。 ・へき地保健指導所の実施主体は都道府県または市町村。
