StudyMed医師国家試験

医療を「届ける・送る・支える」―へき地医療拠点病院の仕事と行政の仕事を見分ける

第116回医師国家試験 C問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第116回 C問題 第28問

へき地医療拠点病院について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.無医地区の巡回診療を行う。
  2. b.へき地保健指導所を整備する。
  3. c.へき地保健医療対策を策定する。
  4. d.へき地診療所への医師派遣を行う。
  5. e.厚生労働大臣によって指定される。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、へき地医療の仕組みのなかで「へき地医療拠点病院」が何を担うのかを問う問題だ。着眼点はシンプルで、選択肢それぞれが「病院として現場で行う業務」なのか「行政が行う業務」なのかを区別すること。まず、へき地医療拠点病院と聞いてどんなイメージを持つかな。
医学生医学生
地域医療の実習で山間部の診療所に行ったとき、週に何回か大きな病院から先生が来ていると聞きました。そういう派遣元の病院のことでしょうか。
ドクタードクター
まさにそれだね。へき地医療拠点病院は、医療資源の乏しい地域の住民に対して、医療を直接届ける、医師を送る、後方から支える、という役割を担う病院なんだ。じゃあ具体的に、身近に医療機関がない地域に医師や看護師が出向いて診療することは誰の仕事だと思う?
医学生医学生
無医地区の巡回診療ですね。現場に人を出せるのは病院なので、拠点病院の業務だと思います。
ドクタードクター
正解。巡回診療は拠点病院の中心的な事業の一つだ。無医地区というのは、医療機関のない地域で、中心からおおむね半径4kmの区域に50人以上が住んでいて、容易に医療機関を利用できない地区のことをいう。そこへ出向いて診療するのが巡回診療だね。
医学生医学生
へき地診療所への医師派遣も、同じ理由で病院の仕事ですよね。
ドクタードクター
その通り。継続的な医師派遣に加えて、診療所の医師が休暇や研修で不在になるときに代わりの医師を送る代診医派遣も含まれる。巡回診療、医師派遣、代診医派遣は「主要3事業」と呼ばれ、拠点病院の活動実績として重視されているんだ。一人で診療所を守る医師にとって、代診医の存在は本当に大きい。
医学生医学生
実習先の診療所の先生も「学会に行けるのは代診のおかげ」と話していました。では、へき地保健指導所の整備はどうでしょう。名前が似ているので拠点病院がやりそうな気もします。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。へき地保健指導所は、無医地区などに保健師を配置して健康相談や生活指導を行う施設で、整備・運営の実施主体は都道府県または市町村なんだ。施設を「整備する」というのは行政の仕事だと考えるとわかりやすい。
医学生医学生
へき地保健医療対策の策定も、計画を立てる話なので行政側ですか。
ドクタードクター
そう、策定するのは都道府県だ。以前は都道府県が独立した計画を作っていたけれど、現在は医療計画の中に一体化して記載されている。拠点病院はその計画に基づいて事業を実施する側であって、計画を作る側ではないんだ。
医学生医学生
最後の、厚生労働大臣による指定はどうですか。国の制度なので大臣が指定しそうですが。
ドクタードクター
これも誤りで、指定するのは都道府県知事だ。へき地医療の体制は都道府県単位の医療計画の中で整えられるから、指定も都道府県が行う。公衆衛生の問題では「誰が指定・設置するか」がよく問われるので、主体を意識して覚えておこう。
医学生医学生
整理すると、巡回診療と医師派遣が拠点病院の業務、保健指導所の整備と対策の策定は行政、指定は都道府県知事、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、都道府県にはへき地医療支援機構という組織も置かれていて、拠点病院による医師派遣などの企画・調整を担っている。拠点病院はほかにも、へき地の医療従事者への研修、遠隔医療による診療支援、プライマリ・ケアを実践できる総合的な医師の育成なども行っているよ。
医学生医学生
遠隔医療は、オンラインで画像を見て専門医が助言するようなイメージでしょうか。
ドクタードクター
そうだね。へき地の医師が判断に迷う症例を拠点病院の専門医に相談できれば、不要な搬送を減らしたり、逆に必要な搬送を早めたりできる。それから、へき地医療は医療計画の「5疾病・6事業」の事業の一つに位置付けられていることも押さえておこう。将来地域で働く人も、都市部の病院から医師を送り出す側になる人も、この仕組みを知っておくと役立つはずだ。

まとめ

へき地医療拠点病院は都道府県知事が指定する病院で、無医地区への巡回診療、へき地診療所への医師派遣・代診医派遣(主要3事業)を中心に、医療従事者への研修や遠隔医療による診療支援などを担います。一方、へき地保健医療対策の策定は都道府県の役割で、現在は医療計画に一体化されており、保健師を配置するへき地保健指導所の実施主体は都道府県または市町村です。「現場で医療を届ける病院の業務」と「計画・整備・指定を行う行政の業務」を区別することが、この種の問題を解く鍵になります。へき地医療は医療計画の5疾病・6事業の一つであり、都道府県のへき地医療支援機構が医師派遣などを調整しています。制度の主体を正しく理解することは、地域医療を支える仕組みを把握するうえでの土台となります。

解答・解説

正解はa, dです

へき地医療拠点病院の役割と、へき地保健医療対策における各主体(国・都道府県・市町村・医療機関)の役割分担を問う問題である。 へき地医療拠点病院は、都道府県知事が指定する病院であり、へき地(無医地区など医療資源に乏しい地域)の住民に対して、医療を「直接届ける」「人を送る」「後方から支える」機能を担う。具体的には、無医地区等への巡回診療、へき地診療所への医師派遣や、診療所医師が休暇・研修などで不在となる際の代診医派遣、へき地の医療従事者への研修、遠隔医療による診療支援などを行う。 一方、計画を立てる・施設を整備する・病院を指定するといった行政上の役割は都道府県(施設によっては市町村)が担う。したがって、「医療を提供する現場の病院としての業務」か「行政の業務」かを区別すれば正解を導ける。巡回診療(a)と医師派遣(d)が拠点病院の業務であり、保健指導所の整備(b)、対策の策定(c)は行政側の役割、指定(e)は厚生労働大臣ではなく都道府県知事である。

選択肢考察

  1. ○a.  無医地区の巡回診療を行う。

    無医地区など、身近に医療機関がない地域へ医師・看護師などが出向いて診療する巡回診療は、へき地医療拠点病院の中心的な事業の一つである。医師派遣・代診医派遣とともに「主要3事業」と位置付けられ、拠点病院の活動実績として評価される。

  2. ×b.  へき地保健指導所を整備する。

    へき地保健指導所は、無医地区などに設けられ、保健師を配置して住民への保健指導(健康相談、生活指導など)を行う施設である。その整備・運営の実施主体は都道府県または市町村であり、へき地医療拠点病院が整備するものではない。

  3. ×c.  へき地保健医療対策を策定する。

    へき地の保健医療対策を計画として定めるのは都道府県である。かつては都道府県が独立した「へき地保健医療計画」を策定していたが、第7次医療計画(2018年度〜)以降は医療計画の中に一体化して記載されている。拠点病院は計画に基づいて事業を実施する側であり、策定主体ではない。

  4. ○d.  へき地診療所への医師派遣を行う。

    へき地診療所に医師を継続的に派遣したり、診療所の医師が不在となる期間に代わりの医師(代診医)を派遣したりすることは、へき地医療拠点病院の主要な役割である。これにより、へき地診療所の医師の負担軽減と診療の継続性が確保される。

  5. ×e.  厚生労働大臣によって指定される。

    へき地医療拠点病院を指定するのは都道府県知事である。へき地医療の体制は都道府県単位の医療計画の中で整備されるため、指定も都道府県が行う。厚生労働大臣が指定するものではない。

へき地医療拠点病院が行う主な事業

・巡回診療などによる、へき地住民の医療の確保 ・へき地診療所などへの代診医などの派遣(継続的な医師派遣を含む)と、技術指導・援助 ・特例措置許可病院(医師確保が困難なため医師配置基準の特例を受けている病院)への医師派遣 ・派遣する医師などの確保 ・へき地の医療従事者に対する研修の実施や研究施設の提供 ・遠隔医療など各種の診療支援 ・総合的な診療能力をもちプライマリ・ケアを実践できる医師の育成 ・その他、都道府県・市町村がへき地の医療確保のために行う事業への協力

へき地保健医療対策の主な主体と施設

・都道府県:医療計画の中でへき地医療対策を定める。へき地医療拠点病院を指定する。へき地医療支援機構(へき地医療支援の企画・調整を担う組織)を設置し、拠点病院による医師派遣などを調整する。 ・へき地医療拠点病院:巡回診療、医師・代診医の派遣、研修、遠隔医療支援などを行う後方支援病院。 ・へき地診療所:無医地区などに設置され、住民に日常的な医療を提供する診療所。 ・へき地保健指導所:保健師を配置し、住民の保健指導を行う施設(都道府県または市町村が実施主体)。

無医地区

医療機関のない地域で、その地区の中心的な場所を起点としておおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住し、かつ容易に医療機関を利用できない地区をいう。

医療計画との関係

へき地医療は、医療計画で定める「5疾病・6事業」(従来の5事業に新興感染症等が加わった)の事業の一つとして位置付けられている。

POINT

・へき地医療拠点病院は都道府県知事が指定する(厚生労働大臣ではない)。 ・主な業務は巡回診療、へき地診療所への医師派遣・代診医派遣(主要3事業)、研修、遠隔医療支援。 ・へき地保健医療対策の策定は都道府県(現在は医療計画に一体化)。 ・へき地保健指導所の実施主体は都道府県または市町村。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。