StudyMed医師国家試験

「5疾病・6事業」の外にあるもの―医療計画の守備範囲を見極める

第118回医師国家試験 F問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第118回 F問題 第4問

医療計画の記載事項に含まれないのはどれか。

  1. a.救急医療
  2. b.精神疾患
  3. c.労働災害
  4. d.地域医療構想
  5. e.医療従事者の確保

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、都道府県が定める医療計画に何が書かれるかを問う問題だ。ポイントは、医療計画が「地域住民のための医療提供体制をどう整えるか」を決める計画だということ。この軸に照らして、それぞれの項目が医療計画の守備範囲に入るかを考えていこう。まず、医療計画の根拠法と策定主体はわかるかな。
医学生医学生
医療法に基づいて、都道府県がつくる計画だったと思います。公衆衛生の講義で、国が全国一律に決めるものではないと聞きました。
ドクタードクター
その通り。地域の実情に合わせて都道府県が策定し、何を書くかは医療法で定められている。計画期間は第7次計画から6年で、今は2024年度からの第8次計画が動いている。記載事項の中心は「5疾病・6事業及び在宅医療」だ。5疾病を挙げられる?
医学生医学生
がん、脳卒中、心血管疾患、糖尿病……あと1つが思い出せません。
ドクタードクター
精神疾患だよ。患者数が多く、地域での医療連携が欠かせないことから、2013年度からの第6次計画で従来の4疾病に加えられた。だから精神疾患は医療計画に含まれる。
医学生医学生
精神疾患は「事業」のほうだと思い込んでいました。救急医療と一緒に覚えてしまっていたかもしれません。
ドクタードクター
混同しやすいところだね。精神疾患は「疾病」、救急医療は「事業」の区分だ。6事業は、救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療(小児救急を含む)、そして第8次計画から加わった新興感染症の発生・まん延時の医療。新型コロナの経験を踏まえて5事業から6事業になったんだ。
医学生医学生
救急医療は6事業の筆頭なので、当然含まれますね。救急科の実習で、初期・二次・三次救急の役割分担を教わったのを思い出しました。
ドクタードクター
そう、その体制整備や病院前救護、いわゆるメディカルコントロール体制についても、都道府県が目標と連携体制を定める。では地域医療構想はどうだろう。
医学生医学生
名前は聞いたことがあるんですが、医療計画とは別の制度なのかと思っていました。
ドクタードクター
実は医療計画の一部として書かれるものなんだ。2014年の医療介護総合確保推進法による医療法改正で位置づけられた。構想区域、原則として二次医療圏ごとに将来の医療需要を推計して、高度急性期・急性期・回復期・慢性期という病床機能ごとに必要な病床数を定め、機能分化と連携を進める将来像だ。議論の基礎には病床機能報告制度で集めた情報が使われる。
医学生医学生
医療従事者の確保も、医師の地域偏在がよくニュースになっているので、計画に含まれていそうです。
ドクタードクター
その感覚は正しい。2018年の医療法改正以降、医師偏在指標に基づいて医師少数区域や医師多数区域を設定し、医師確保の方針と施策を定める医師確保計画が医療計画の一部として策定されている。地域枠の学生さんにとっても身近な話だね。
医学生医学生
となると、残る労働災害が含まれない、ということですね。でも、けがをした労働者も医療を受けるので、少し引っかかります。
ドクタードクター
いい疑問だ。もちろん労災で受傷した人も地域の救急医療などを受ける。ただ、労働災害の「防止」は労働安全衛生法に基づいて事業者が事業場ごとに安全衛生管理体制を整えて取り組むもので、行政としては労働局や労働基準監督署といった労働基準行政が所管する。被災者への補償は労働者災害補償保険法、いわゆる労災保険の仕組みだ。どれも医療法に基づく医療計画の枠組みではない。だから労働災害が正解になる。
医学生医学生
産業医学の講義で出てきた衛生管理者や産業医の選任は、そちら側の話ですね。法律ごとに担当する領域を分けて考えればいいんですね。
ドクタードクター
その整理が大事だ。ほかの記載事項も押さえておこう。在宅医療、医療安全の確保、外来医療計画、二次医療圏と三次医療圏の設定、基準病床数、地域医療支援病院などの機能分担と連携も医療計画に書かれる。基準病床数は療養病床及び一般病床、精神病床、感染症病床、結核病床ごとに定められる。
医学生医学生
医療圏は一次・二次・三次の3つでしたよね。
ドクタードクター
概念としては3つあって、一次医療圏はおおむね市町村、二次医療圏は複数の市町村で一般的な入院医療を担う単位、三次医療圏は原則都道府県で高度・特殊な医療を担う単位だ。ただし医療法で設定が定められているのは二次と三次だけ、という点が国試で狙われやすい。
医学生医学生
5疾病・6事業を軸に覚えて、労働や学校保健のように別の法律が担う領域は外す、という見分け方をすればよさそうです。
ドクタードクター
その通り。医療計画は、自分が将来働く地域の病院の役割分担や医師配置を決める土台でもある。法律の区分と結びつけて覚えておこう。

まとめ

医療計画は医療法に基づき都道府県が策定する医療提供体制の計画で、計画期間は6年、現在は2024年度からの第8次計画が実施されています。記載事項の中心は5疾病(がん・脳卒中・心血管疾患・糖尿病・精神疾患)と6事業(救急・災害・へき地・周産期・小児・新興感染症)及び在宅医療で、精神疾患は「疾病」、救急医療は「事業」の区分に属します。加えて、地域医療構想、医師確保計画を含む医療従事者の確保、医療安全、外来医療計画、基準病床数、二次・三次医療圏の設定なども記載事項です。一方、労働災害は労働安全衛生法や労災保険法に基づき事業者と労働基準行政が担う領域であり、医療計画には含まれません。各制度がどの法律に基づき誰が担うのかを整理しておくことは、公衆衛生分野の問題を解くうえでも、地域医療の仕組みを理解するうえでも役立ちます。

解答・解説

正解はcです

医療計画とは、医療法に基づいて各都道府県が地域の実情に合わせて定める、医療提供体制の確保のための計画である。何を書かなければならないかは医療法(第30条の4)で決められており、本問はその記載事項を知っているかを問うている。 記載事項の中心は「5疾病・6事業及び在宅医療」である。5疾病はがん・脳卒中・心血管疾患・糖尿病・精神疾患、6事業は救急医療・災害時医療・へき地医療・周産期医療・小児医療(小児救急を含む)・新興感染症発生・まん延時の医療である。これに加えて、医療圏(二次医療圏・三次医療圏)の設定、基準病床数、地域医療構想、医療従事者(医師など)の確保、医療安全の確保、地域医療支援病院など医療機関の機能分担・連携に関する事項も記載される。 考え方としては、「地域住民の医療提供体制をどう整えるか」に関わる項目が医療計画の対象であり、職場での災害・疾病の予防といった労働衛生上の課題は、労働安全衛生法などに基づき事業者・労働行政の側で対応する領域である、と整理すれば解答できる。

選択肢考察

  1. ×a.  救急医療

    救急医療は「6事業」の一つであり、医療計画に記載される。初期・二次・三次救急の体制整備や病院前救護(メディカルコントロール)などについて、都道府県が目標と医療連携体制を定める。

  2. ×b.  精神疾患

    精神疾患は「5疾病」の一つであり、医療計画に記載される。患者数が多く地域での医療連携が重要であることから、2013年度からの計画(第6次)で従来の4疾病に追加され、5疾病となった。救急医療とは異なり「事業」ではなく「疾病」の区分に属する点に注意する。

  3. ○c.  労働災害

    労働災害は医療計画の記載事項に含まれない。労働災害の防止は、労働安全衛生法に基づき事業者が事業場ごとに安全衛生管理体制を整えて取り組むものであり、行政としては厚生労働省の労働基準行政(労働局・労働基準監督署)が所管する。被災者への補償は労働者災害補償保険法(労災保険)による。いずれも医療法に基づく医療計画の枠組みではない。

  4. ×d.  地域医療構想

    地域医療構想は医療計画の一部として記載される。2014年の医療介護総合確保推進法による医療法改正で位置づけられたもので、構想区域(原則として二次医療圏)ごとに2025年などの将来の医療需要を推計し、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の病床機能ごとの必要病床数を定め、病床の機能分化と連携を進めるための将来像である。病床機能報告制度で得た情報が議論の基礎となる。

  5. ×e.  医療従事者の確保

    医療従事者の確保は医療計画の記載事項である。2018年の医療法改正以降は、医師偏在指標に基づいて医師少数区域・医師多数区域などを設定し、医師確保の方針と施策を定める「医師確保計画」も医療計画の一部として策定されている。

医療計画の概要

・策定主体:都道府県(医療法に基づく) ・計画期間:6年(2018年度からの第7次計画以降。それ以前は5年)。在宅医療など介護保険事業(支援)計画と関わる部分や医師確保計画などは3年ごとに見直す。現在は2024年度からの第8次計画が実施中である。

主な記載事項

・5疾病:がん、脳卒中、心血管疾患、糖尿病、精神疾患 ・6事業:救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療(小児救急を含む)、新興感染症発生・まん延時の医療(第8次計画から追加。従来は5事業) ・在宅医療 ・上記に関する目標と医療連携体制、医療機能に関する情報提供の推進 ・地域医療構想 ・外来医療に係る医療提供体制の確保(外来医療計画) ・医師の確保(医師確保計画)、その他の医療従事者の確保 ・医療安全の確保 ・二次医療圏・三次医療圏の設定 ・基準病床数(療養病床及び一般病床、精神病床、感染症病床、結核病床) ・地域医療支援病院などの整備目標、医療機関の機能分担と連携

医療圏

・一次医療圏:日常的な医療を提供する単位で、おおむね市町村 ・二次医療圏:一般的な入院医療を提供する単位で、複数の市町村からなる ・三次医療圏:高度・特殊な医療を提供する単位で、原則として都道府県(北海道は複数) 医療法で設定が定められているのは二次医療圏と三次医療圏である。

POINT

・医療計画は医療法に基づき都道府県が策定し、計画期間は6年である。 ・記載事項の中心は「5疾病(がん・脳卒中・心血管疾患・糖尿病・精神疾患)・6事業(救急・災害・へき地・周産期・小児・新興感染症)及び在宅医療」である。 ・地域医療構想、医師確保計画を含む医療従事者の確保、医療安全、基準病床数、医療圏の設定も記載事項である。 ・労働災害は労働安全衛生法・労災保険法の領域であり、医療計画には含まれない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。