StudyMed医師国家試験

「どうされましたか」の力―答えの自由度で見抜く開放型質問

第116回医師国家試験 B問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第116回 B問題 第23問

息切れと下肢の浮腫を呈し,心不全が疑われる患者に医療面接を行っている。  開放型質問はどれか。

  1. a.「ご年齢を教えてください」
  2. b.「足のむくみに左右差はありますか」
  3. c.「いつ頃,足のむくみに気がつきましたか」
  4. d.「就寝後,息苦しくなって目覚めることはありますか」
  5. e.「今困っていることについてもっと詳しく教えていただけますか」

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接の質問形式を見分ける問題だ。心不全が疑われる場面だけど、問われているのは医学的な鑑別ではなく「質問の形」。判断の軸は、患者がどれだけ自由に答えられるか、つまり回答の自由度だよ。
医学生医学生
OSCEの医療面接の練習で「最初は開放型で」と何度も言われました。でも選択肢を見ると、どれも聞きたくなる大事な質問ばかりで迷います。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だね。臨床的に有用かどうかと、開放型かどうかは別の話なんだ。まず定義を整理しよう。開放型質問は、答えの範囲を医師が限定せず、患者が自分の言葉で自由に語れる質問。閉鎖型質問は「はい/いいえ」や、日時・数値・部位といった短い語句で答えが完結する質問だ。
医学生医学生
じゃあ、むくみの左右差を聞く質問は「はい」か「いいえ」で終わるので閉鎖型ですね。
ドクタードクター
その通り。内容としてはとても大切で、片側性なら深部静脈血栓症や蜂窩織炎のような局所の原因を、両側性なら心不全などの全身性の原因を考える手がかりになる。でも形式は典型的な閉鎖型だ。
医学生医学生
就寝後に息苦しくて目が覚めるか、という質問も同じですか。発作性夜間呼吸困難を狙っているんですよね。
ドクタードクター
よく分かっているね。横になると静脈還流が増えて肺うっ血が悪化するために起こる症状で、左心不全を示唆する重要な所見だ。ただ、これも「はい/いいえ」で答える閉鎖型質問になる。
医学生医学生
むくみにいつ頃気づいたか、という質問は「いつ」と聞いているので、開放型かと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこは多くの人が引っかかるポイントだ。疑問詞が付いていても、「1週間前です」と短く答えれば完結するよね。答えの中身を医師が「時期」に指定しているから、閉鎖型に分類される。疑問詞の有無ではなく、答えの範囲が限定されているかで判断するんだ。
医学生医学生
年齢を聞く質問も答えは一つに決まっているので、開放型ではないですね。
ドクタードクター
そう。氏名や年齢、住所のような事実確認は中立的質問と呼ばれ、閉鎖型の一種として扱われることもある。いずれにしても開放型ではない。残るのが「今困っていることについてもっと詳しく教えていただけますか」だ。
医学生医学生
何をどこまで話すかを患者さんに任せているので、これが開放型質問ですね。
ドクタードクター
正解。開放型質問は、医師が想定していなかった情報や、患者さんが病気をどう受け止めているか、何が不安で何を期待しているかといった解釈モデルを引き出すのに向いている。話を聴いてもらえたという実感が信頼関係にもつながるんだ。
医学生医学生
でも、救急外来の実習では先生が閉鎖型の質問をテンポよく重ねていました。開放型ばかりだと時間がかかりませんか。
ドクタードクター
鋭い指摘だね。開放型は情報量が多い反面、時間がかかって話が広がりやすい。閉鎖型は短時間で特定の情報を確認できるけれど、得られる情報が医師の想定の範囲にとどまり、誘導にもなりやすい。だから基本は、開放型で始めて相づちや促し、要約で話を引き出し、話題を絞った質問を経て閉鎖型で詳細を確認する流れだ。漏斗のように広い口から狭めていくイメージだよ。緊急性が高い場面では閉鎖型を優先することもあるけれど、それは例外と考えておこう。
医学生医学生
話題は指定するけれど中身は自由、という中間の質問もありましたよね。
ドクタードクター
焦点を絞った質問だね。たとえば「息切れについて詳しく教えてください」がそれにあたる。逆に避けたいのは、「痛いのは胸ですよね」のように期待する答えを示す誘導質問と、「熱や咳や痰はありますか」と一度に複数を聞く多重質問だ。心不全を疑う患者なら、労作時息切れ、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、短期間の体重増加、尿量減少などを閉鎖型で効率よく確認していくけれど、それもまず患者さんの話を聴いてからだね。

まとめ

開放型質問とは、答えの範囲を限定せず、患者が自分の言葉で自由に語れる質問であり、本問では「今困っていることについてもっと詳しく教えていただけますか」が該当します。「はい/いいえ」で答える質問や、「いつ頃」のように疑問詞を含んでいても時期や数値など短い語句で答えが完結する質問は閉鎖型、年齢や氏名などの事実確認は中立的質問(閉鎖型の一種)に分類されます。浮腫の左右差や発作性夜間呼吸困難の確認は心不全の評価に重要ですが、臨床的な有用性と質問形式は別に考える必要があります。医療面接は開放型質問で患者の訴えや解釈モデルを引き出し、焦点を絞った質問、閉鎖型質問へと進む漏斗型の流れが基本で、誘導質問や多重質問は避けます。質問形式を意識して使い分けることは、OSCEだけでなく、正確な情報収集と患者との信頼関係づくりの土台になります。

解答・解説

正解はeです

医療面接で用いる質問の形式を見分ける問題である。判断の基準は「患者がどの程度自由に答えられるか(回答の自由度)」である。

質問形式の見分け方

・開放型質問(open-ended question):答えの範囲を医師があらかじめ限定せず、患者が自分の言葉で自由に語れる質問である。「どうなさいましたか」「詳しく教えてください」のような形をとる。 ・閉鎖型質問(closed question):「はい/いいえ」や、日時・数値・部位などの短い語句で答えが完結する質問である。 ・中立的質問:氏名・住所・年齢など、答えが一つに決まっており、病状の解釈が入り込まない事実確認の質問である(閉鎖型質問の一種として扱われることもある)。

本問への当てはめ

設問の状況は、息切れと下肢浮腫から心不全が疑われる患者である。医師は浮腫の左右差(片側性なら深部静脈血栓症などを考える)、発症時期、発作性夜間呼吸困難の有無といった鑑別に役立つ情報を確認したくなるが、それらはいずれも答えが限られた質問になる。選択肢の中で、患者に話題の主導権を渡し、自由に話してもらう形になっているのは「今困っていることについてもっと詳しく教えていただけますか」だけである。 一般に医療面接は、開放型質問で患者の訴えや考え・感情を十分に引き出した後、焦点を絞った質問や閉鎖型質問で必要な情報を確認していく流れ(開放型から閉鎖型へ)が望ましいとされる。

選択肢考察

  1. ×a.  「ご年齢を教えてください」

    答えは「〇歳」という一つの事実に決まっており、患者が自由に語る余地はない。年齢・氏名・住所などを尋ねる事実確認の質問は中立的質問に分類され、回答が限定される点では閉鎖型質問の一種ともいえる。いずれにしても開放型質問ではないため誤り。

  2. ×b.  「足のむくみに左右差はありますか」

    「はい」か「いいえ」で答えが完結する典型的な閉鎖型質問である。浮腫が片側か両側かは、心不全などの全身性の原因と、深部静脈血栓症や蜂窩織炎などの局所性の原因を見分けるうえで重要な情報であり、質問として有用ではあるが、開放型ではないため誤り。

  3. ×c.  「いつ頃,足のむくみに気がつきましたか」

    「1週間前です」のように時期を答えれば完結し、回答の範囲が時間に限定されている。「はい/いいえ」で答える形ではないが、答えの内容を医師が指定しているので閉鎖型質問に分類される。疑問詞(いつ・どこ)を使っていても、答えが短い語句で済む質問は開放型ではない点に注意する。誤り。

  4. ×d.  「就寝後,息苦しくなって目覚めることはありますか」

    「はい/いいえ」で答える閉鎖型質問である。内容としては、横になると静脈還流が増えて肺うっ血が悪化することで起こる発作性夜間呼吸困難の有無を確認しており、左心不全を示唆する重要な症状を狙った質問である。しかし形式は閉鎖型であり誤り。

  5. ○e.  「今困っていることについてもっと詳しく教えていただけますか」

    何をどこまで話すかを患者に委ねており、患者が自分の言葉で自由に症状や生活上の困りごと、気持ちを語ることができる。回答の範囲をあらかじめ限定していないので開放型質問である。開放型質問は、医師が想定していなかった情報や、患者の解釈・不安・期待(解釈モデル)を引き出すのに適しており、患者との信頼関係の形成にも役立つ。正しい。

医療面接の質問形式の整理

・開放型質問:例「今日はどうされましたか」「その後の様子をお聞かせください」。長所は情報が多く、患者中心の面接になること。短所は時間がかかり、話が拡散しやすいこと。 ・焦点を絞った質問(focused question):例「お腹の痛みについて詳しく教えてください」。話題は医師が指定するが、その範囲内では患者が自由に答えられる。開放型と閉鎖型の中間に位置づけられる。 ・閉鎖型質問:例「熱はありますか」「いつからですか」。短時間で特定の情報を確認できるが、得られる情報が医師の想定の範囲にとどまり、誘導になりやすい。 ・中立的質問:例「お名前を教えてください」「どちらにお住まいですか」。答えが確定した事実の確認。 ・避けるべき質問:誘導質問(「痛みは胸ですよね」など医師の期待する答えを示唆するもの)、多重質問(「熱や咳や痰はありますか」など一度に複数を尋ねるもの)。

面接の進め方

開放型質問で始めて患者の話を傾聴し、相づち・促し・繰り返し・要約などの技法で話を引き出したうえで、焦点を絞った質問、閉鎖型質問へと移って情報を補う「開放型→閉鎖型」の流れ(いわゆる漏斗型の面接)が基本である。

心不全を疑う患者で確認したい症状

労作時の息切れ、起座呼吸(横になると苦しく座ると楽になる)、発作性夜間呼吸困難、下肢浮腫、短期間での体重増加、尿量の減少など。これらは閉鎖型質問で効率よく確認できるが、まずは開放型質問で患者の訴えを聞くことが大切である。

POINT

・開放型質問=回答の範囲を限定せず、患者が自分の言葉で自由に答えられる質問 ・「はい/いいえ」で答える質問、時期・数値など短い語句で答えが完結する質問は閉鎖型質問 ・年齢・氏名などの事実確認は中立的質問(閉鎖型の一種) ・疑問詞(いつ・どこ)を含んでいても答えが限定されれば閉鎖型である ・面接は開放型質問から始め、閉鎖型質問で詳細を確認する

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。