StudyMed医師国家試験

「どうされましたか」の次の一言―痛みの問診は“じょうご”の口から始めよ

第120回医師国家試験 B問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第120回 B問題 第19問

痛みを訴える患者に対する医療面接において,冒頭で行う質問で最も適切なのはどれか。

  1. a.「その痛みの原因は何だと思いますか」
  2. b.「痛みの他にどんな症状がありましたか」
  3. c.「痛みについて詳しく教えていただけますか」
  4. d.「10段階で表すとその痛みの程度はどのくらいでしたか」
  5. e.「その痛みは刺すような感じですか,それとも鈍い感じですか」

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接の基本、質問の「種類」と「順番」を問う問題だ。選択肢はどれも臨床で実際に使う質問なんだけど、面接の冒頭にふさわしいのはどれか、という視点で考えてほしい。
医学生医学生
どれも大事な質問に見えます。痛みの強さを数字で聞くのは客観的なので、最初に押さえたい気もします。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。まず質問の分類を整理しよう。答え方を患者さんに委ねる開放型質問、話題を特定の項目に絞りつつ答えは自由な焦点を絞った質問、選択肢を示す多肢選択型質問、そして「はい・いいえ」や数値など短い答えを求める閉鎖型質問。この4つだ。
医学生医学生
OSCEの医療面接の練習で、最初は開放型で、と何度も言われました。でも時間がかかりそうで、早く閉じた質問に移りたくなります。
ドクタードクター
その気持ちはわかる。ただ、開放型質問で患者さんが自分の言葉で語ると、部位や始まり方、経過、生活への影響、不安まで、こちらが想定していなかった情報も一度に出てくる。結果的に効率がいいことも多いんだ。しかも「話を聴いてもらえた」という感覚が信頼関係、つまりラポールの土台になる。
医学生医学生
そうすると、痛みについて詳しく教えてほしいと頼む質問が開放型で、これが冒頭にふさわしいということですね。
ドクタードクター
正解。では他の選択肢がなぜ冒頭に向かないかを見ていこう。痛みの程度を10段階で答えてもらう質問は?
医学生医学生
数値で答える閉鎖型ですね。緩和ケアの講義で習ったNRSに近い評価だと思います。
ドクタードクター
そう。痛みの強さの把握や治療効果の判定には有用だけれど、部位や性状を聴いた後で確認する項目だ。刺すような痛みか鈍い痛みか、と尋ねる質問はどうかな。
医学生医学生
選択肢を示しているので多肢選択型です。患者さんがうまく表現できないときには助かりそうですが……。
ドクタードクター
そこがポイントで、補助としては有用だけれど、示された選択肢に答えが誘導されやすい。本当は「締めつけられる感じ」だったのに、どちらかを選んでしまうかもしれない。だから自由に語ってもらった後、性状がはっきりしないときに使うんだ。
医学生医学生
痛み以外の症状を尋ねる質問は、話題を随伴症状に絞りつつ答えは自由なので、焦点を絞った質問ですか。
ドクタードクター
その通り。随伴症状は鑑別に欠かせないけれど、主訴の痛みそのものを十分に聴く前に話題を移すと、主訴の把握が中途半端になってしまう。最後に、原因を何だと思うかという質問は?
医学生医学生
解釈モデルの質問ですね。患者中心の医療で重要だと習ったので、これを最初に聞くのもありかと迷いました。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。解釈モデル、つまり患者さんの考え・心配・期待を知ることは、説明への納得や治療方針の共有に欠かせない。ただ、冒頭でいきなり聞かれると患者さんは戸惑いやすい。主訴を十分に聴いて全体像をつかんでから尋ねるのが通常の順序だ。
医学生医学生
開放型で広く聴いて、焦点を絞った質問、多肢選択型、閉鎖型へと狭めていく。じょうごのような形ですね。
ドクタードクター
そう、漏斗型の面接だ。最初から閉じた質問を重ねると、医師の思い込みに沿った情報しか集まらず、大事なことを聞き漏らす。発展として、痛みを掘り下げるときの枠組みも押さえておこう。症状の7つの属性、つまり部位、性状、程度、時間経過、状況、増悪・寛解因子、随伴症状だ。OPQRSTという覚え方もよく使われる。
医学生医学生
開放型で語ってもらった内容をこの7項目に当てはめて、抜けているところを閉じた質問で補えばいいんですね。
ドクタードクター
その使い方がベストだ。うなずきやあいづちによる促し、繰り返し、要約、共感的な言葉、沈黙を待つことも、患者さんが話しやすくなる技法になる。最後に要約して言い残したことがないか確認すれば、聞き漏らしも防げる。臨床実習で実際の患者さんを前にしたら、まずは口を挟まずに聴く時間をつくってみてほしい。

まとめ

医療面接の冒頭では、「痛みについて詳しく教えていただけますか」のような開放型質問で、患者に主訴を自由に語ってもらうのが基本です。その後、随伴症状などに話題を絞る焦点を絞った質問、選択肢を示す多肢選択型質問、数値や「はい・いいえ」で答える閉鎖型質問へと段階的に絞り込む漏斗型の進め方をとります。多肢選択型は答えを誘導しやすく、NRSなどの数値評価や解釈モデルの確認は、主訴を十分に聴いた後に行うのが通常の順序です。症状の7つの属性(部位、性状、程度、時間経過、状況、増悪・寛解因子、随伴症状)を意識して抜けを補うと、漏れのない病歴聴取ができます。質問の種類と順序を意識することは、正確な診断だけでなく、患者との信頼関係を築くうえでも重要です。

解答・解説

正解はcです

医療面接で、どの種類の質問をどの順に使うかを問う問題である。 医療面接の質問は大きく次のように分類される。 ・開放型質問(open-ended question):「どうなさいましたか」「詳しく教えてください」のように、答え方を患者に委ねる質問。患者が自分の言葉で自由に語れるため、医師が想定していなかった情報も含めて多くの情報が得られ、患者の不安や関心も把握しやすい。信頼関係(ラポール)の形成にも役立つ。 ・焦点を絞った質問(focused question):「痛みの他にどんな症状がありましたか」のように、特定の項目に話題を絞りつつ答え方は自由にする質問。 ・多肢選択型質問(multiple choice question):「刺すような痛みですか、鈍い痛みですか」のように選択肢を示す質問。 ・閉鎖型質問(closed question):「はい/いいえ」や数値など、短く限定された答えを求める質問。 基本的な流れは、面接の冒頭で開放型質問を用いて主訴について自由に話してもらい、その内容を受けて焦点を絞った質問、多肢選択型質問、閉鎖型質問へと段階的に絞り込んでいく「漏斗(じょうご)型」の進め方である。最初から閉じた質問を重ねると、医師の思い込みに沿った情報しか集まらず、重要な情報を聞き漏らしたり、患者が話したいことを言えなくなったりする。したがって、痛みを訴える患者に冒頭でかける質問としては、痛みについて自由に語ってもらう開放型質問が最も適切である。

選択肢考察

  1. ×a.  「その痛みの原因は何だと思いますか」

    患者自身が症状の原因をどう考えているかを尋ねる、解釈モデルの質問である。解釈モデル(患者の病気に対する考え方・心配・期待)を把握することは患者中心の医療に欠かせず、医師の説明や治療方針への納得にもつながる重要な質問である。ただし、主訴について十分に話を聴き、症状の全体像を把握してから尋ねるのが通常の順序であり、面接の冒頭でいきなり行う質問としては適切でない。

  2. ×b.  「痛みの他にどんな症状がありましたか」

    随伴症状に話題を絞った焦点を絞った質問である。随伴症状は鑑別診断を進めるうえで重要な情報だが、まず主訴である痛みそのものについて十分に聴取した後で尋ねるべきである。冒頭で尋ねると主訴の把握が不十分なまま話題が移ってしまう。

  3. ○c.  「痛みについて詳しく教えていただけますか」

    主訴である痛みについて、患者に自由に語ってもらう開放型質問である。患者は痛みの部位、始まり方、性状、経過、生活への影響、不安など、自分が重要だと思う内容を自分の言葉で話せるため、一度に多くの情報が得られ、医師の先入観による聞き漏らしも防げる。患者が「話を聴いてもらえた」と感じることで信頼関係も築きやすい。医療面接の冒頭にふさわしい質問である。

  4. ×d.  「10段階で表すとその痛みの程度はどのくらいでしたか」

    痛みの強さを数値で答えてもらう閉鎖型の質問で、NRS(Numerical Rating Scale、0~10の11段階で痛みを数値化する尺度)に近い評価方法である。痛みの程度の把握や治療効果の判定には有用だが、痛みの部位や性状などを聴いた後に確認する項目であり、冒頭で行う質問としては適切でない。

  5. ×e.  「その痛みは刺すような感じですか,それとも鈍い感じですか」

    痛みの性状について選択肢を示して答えてもらう多肢選択型質問である。患者が自分の言葉でうまく表現できないときの補助としては有用だが、医師が示した選択肢に答えが誘導されやすい欠点がある。まず開放型質問で自由に語ってもらい、それでも性状がはっきりしない場合に用いるのが適切で、冒頭の質問には向かない。

症状の7つの属性(主訴を掘り下げる項目)

①部位(どこが、放散はあるか) ②性状(どのような痛みか) ③程度・強さ(日常生活への支障、NRSなど) ④時間経過(いつから、突然か徐々にか、持続か間欠か、頻度) ⑤状況(どんなときに起こるか、発症時に何をしていたか) ⑥増悪・寛解因子(何で悪化し、何で軽快するか) ⑦随伴症状 痛みの問診では、OPQRST(Onset発症様式、Provocation/Palliation増悪・寛解因子、Quality性状、Region/Radiation部位・放散、Severity強さ、Time経過)という覚え方も広く用いられる。

医療面接の基本的な流れ

導入(挨拶、自己紹介、本人確認、面接の目的の説明)→ 開放型質問で主訴を自由に語ってもらう → 焦点を絞った質問・閉鎖型質問で7つの属性などを補う → 解釈モデル(考え・心配・期待)の確認 → 既往歴・家族歴・生活歴・服薬歴など → 要約して確認 → 締めくくり(言い残したことの確認、今後の説明)

面接技法

傾聴、促し(うなずき・あいづち)、繰り返し、言い換え、要約、共感的態度、沈黙の活用などが、患者が話しやすい雰囲気をつくるのに役立つ。

POINT

・医療面接の冒頭は開放型質問(open-ended question)で主訴を自由に語ってもらう ・その後、焦点を絞った質問→多肢選択型質問→閉鎖型質問へと絞り込む(漏斗型) ・解釈モデルの質問は重要だが、主訴を十分に聴いた後に行う ・痛みの程度(NRSなど)や性状の選択肢提示は、自由な語りの後で補足的に用いる ・症状の7つの属性(部位、性状、程度、時間経過、状況、増悪・寛解因子、随伴症状)を押さえる

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。