検査入院でもサマリーは要る?―退院時要約のルールを押さえる
第116回医師国家試験 B問題 第24問
国試問題にチャレンジ
退院時要約について誤っているのはどれか。
- a.検査入院では記載を省略できる。
- b.患者の入院中の情報をまとめたものである。
- c.退院後の診療のため遅滞のない記載が求められる。
- d.退院後14日以内の記載で保険点数上の加算が認められている。
- e.医師事務作業補助者が作成し,医師が承認したものは有効である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
退院時要約は、入院時の所見から入院中の検査・治療と経過、退院時の状態、退院後の方針までをまとめた記録で、退院後の外来や紹介先、再入院時の診療の継続に用いられます。この目的は入院理由に関係なく当てはまるため、検査入院や短期入院を含むすべての入院で作成するのが原則であり、「検査入院では省略できる」は誤りです。診療報酬上は診療録管理体制加算1の施設基準として、退院翌日から14日以内の作成率が毎月9割以上であることが求められます。医師事務作業補助者が作成した要約も医師が確認・承認すれば有効ですが、責任は医師にあります。診療録の遅滞ない記載と5年間の保存義務(医師法第24条)とあわせて、研修医として最初に担う文書業務の基本を理解しておくことが大切です。
解答・解説
正解はaです
退院時要約(退院サマリー、discharge summary)の性質と作成ルールについて、誤っている記述を選ぶ問題である。
退院時要約とは
退院時要約は、入院中の診療の流れを一つの文書にまとめた記録である。主な記載項目は、患者の基本情報、入院日・退院日、入院の目的や主訴、現病歴・既往歴、入院時の身体所見と主な検査結果、確定診断名、入院中に行った検査・治療(手術や処置を含む)とその経過、合併症、退院時の状態と処方、退院後の方針(外来での経過観察、紹介先など)である。
何のために作るのか
・診療の継続:退院後の外来担当医や紹介先の医療機関、再入院時の担当者が、長いカルテを読み返さなくても入院中の要点をすぐに把握できる。 ・病院の運営と質の管理:疾病統計の作成、診療の質の評価、医療安全、臨床研究などの基礎資料となる。 ・診療報酬:退院時要約を期限内に作成する体制が整っている病院には、診療録管理体制加算が認められる。 こうした目的は入院の理由に関係なく当てはまるため、退院時要約は治療目的の入院だけでなく、検査入院や短期入院も含めてすべての入院について作成する。「検査入院では省略できる」という記述が誤りである。
選択肢考察
- ○a. 検査入院では記載を省略できる。
誤った記述であり、本問の正解である。退院時要約は入院の目的や期間を問わず、すべての入院患者について作成するのが原則である。検査入院であっても、どの検査を行い、どんな結果が得られ、どのような診断・方針に至ったか、検査に伴う合併症はなかったかといった情報は、退院後の外来診療や治療目的での再入院にそのまま必要となる。また、診療録管理体制加算でも全患者についての作成が前提となっている。
- ×b. 患者の入院中の情報をまとめたものである。
正しい記述である。退院時要約は、入院時の病歴・身体所見・検査所見から、入院中の検査・治療の内容と経過、退院時の状態、退院後の方針までを簡潔にまとめた記録である。誤っているものを選ぶ問題なので、正解にはならない。
- ×c. 退院後の診療のため遅滞のない記載が求められる。
正しい記述である。退院後まもなく外来受診や紹介先での診療が始まり、急な再入院が起こることもあるため、退院時要約は退院後すみやかに作成されている必要がある。時間がたつと記憶があいまいになり、記載の正確さも落ちる。後述の診療録管理体制加算でも作成までの期限が定められている。誤っているものを選ぶ問題なので、正解にはならない。
- ×d. 退院後14日以内の記載で保険点数上の加算が認められている。
正しい記述である。診療報酬の診療録管理体制加算(特に加算1)の施設基準として、前月に退院した患者のうち、退院日の翌日から起算して14日以内に退院時要約が作成され、中央病歴管理室に提出された患者の割合が毎月9割以上であることが求められている。この基準を満たす病院には、入院時に加算が算定できる。誤っているものを選ぶ問題なので、正解にはならない。
- ×e. 医師事務作業補助者が作成し,医師が承認したものは有効である。
正しい記述である。医師事務作業補助者(いわゆるメディカルクラーク、医療秘書)は、医師の指示のもとで診断書などの文書作成の代行や、診療録への代行入力を行うことができる。医師の働き方改革・タスクシフトの一環としても活用されている。退院時要約も補助者が下書きを作成し、医師が内容を確認・修正して承認すれば有効な記録となる。ただし、記載内容に対する最終的な責任は承認した医師にある。誤っているものを選ぶ問題なので、正解にはならない。
診療録に関する法的な決まり
・医師は診療をしたら、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない(医師法第24条)。 ・診療録の保存期間は5年間である(医師法第24条)。病院・診療所の診療録は病院・診療所の管理者が、それ以外の診療録は医師本人が保存する。 ・診療録以外の診療に関する諸記録(検査所見の記録、エックス線写真、処方箋、手術記録など)は、医療法施行規則により病院では2年間の保存が求められている。
診療録管理体制加算
病院の診療録管理体制が整っていることを評価して、入院初日に算定される診療報酬上の加算である。施設基準には、診療記録を一括管理する中央病歴管理室の設置、診療記録管理者(診療情報管理士など)の配置、すべての入院患者についての退院時要約の作成、患者ごとの診療情報を疾病分類(ICD)で検索・抽出できる体制、疾病統計の作成などが含まれる。加算1ではさらに、退院翌日から14日以内の退院時要約作成率が毎月9割以上であることなど、より厳しい要件が課されている。
医師事務作業補助者
医師の指示のもとで、診断書・紹介状・退院時要約などの文書作成補助、電子カルテへの代行入力、診療データの整理、院内がん登録などの統計業務、行政への報告業務などを担う。一方、医師以外の職員では行えない業務(診断や医学的判断そのもの)や、看護業務の補助、窓口・受付業務などは業務範囲に含まれない。医師事務作業補助者を配置した病院には医師事務作業補助体制加算が算定できる。
POINT
・退院時要約は入院目的(検査入院・短期入院を含む)を問わず、すべての入院で作成する ・内容は入院中の診療経過の要約であり、退院後の診療の継続に用いられるため速やかな作成が必要 ・診療録管理体制加算1:退院翌日から14日以内の作成率が毎月9割以上 ・医師事務作業補助者が作成した文書も、医師が確認・承認すれば有効(責任は医師) ・診療録の記載義務・5年間の保存義務は医師法第24条に規定
