□と○で家族を描く―病歴を一枚の家系図に落とし込む作法
第117回医師国家試験 B問題 第33問
国試問題にチャレンジ
49歳の男性。病期Ⅳの大腸癌で抗癌化学療法のため入院した。以下のように家族に関する情報を得た。 「既婚です」 「子供が3人おり,上から男,男,女です」 「長男は遠方で就職しており,私は妻と下の2人の子供と同居しています」 「父は胃癌で72歳のときに亡くなりました」 「母は脳卒中で60歳のときに亡くなりました」 「4人の兄弟姉妹で上から兄,姉,私,弟です」 家系図(①~⑤)を示す。 家系図で適切なのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
家系図は男性を□、女性を○で描き、発端者には矢印、死亡者には斜線を付けて死因や死亡年齢を添えます。夫婦は原則として夫を左・妻を右に置き、同胞は年長者ほど左に並べ、世代は上から親、子の順に配置します。本問では性別の逆転、死因と年齢の入れ違い、同居者の範囲の誤りといった細部を一つずつ照合することで、すべての情報を正しく反映した図を選べます。家系図はLynch症候群などの遺伝性腫瘍のリスク評価に加え、同居者やキーパーソンの把握による療養支援にも活用されます。正確な家系図を描く力は、病歴聴取の情報を整理し、多職種で共有するための基本的な臨床スキルです。
解答・解説
正解はdです
問われていること
病歴聴取で得た家族情報を、標準的な記号法に従って家系図(pedigree)に正しく落とし込めるかを問う問題である。家系図は遺伝性疾患のリスク評価だけでなく、キーパーソンや同居者の把握など、療養支援・退院支援にも役立つ。
聴取内容の整理
・発端者(本人):49歳の男性(□に矢印)。病期Ⅳの大腸癌。 ・配偶者:妻(○)と婚姻関係にある。 ・子供:3人で、年長から長男(□)、次男(□)、長女(○)。 ・同居者:本人、妻、次男、長女の4人。長男は遠方で就職しており別居。 ・父:胃癌により72歳で死亡(斜線入りの□)。 ・母:脳卒中により60歳で死亡(斜線入りの○)。 ・同胞:4人きょうだいで、年長から兄(□)、姉(○)、本人(□)、弟(□)。
家系図に当てはめる手順
1. 男性を□、女性を○で描き、発端者に矢印を付ける。 2. 世代ごとに横一列に並べ、親の世代を上、子の世代を下に置く。 3. 夫婦は原則として夫を左、妻を右に描き、水平線で結ぶ。 4. 同胞(きょうだい)は年長者ほど左に並べる。 5. 死亡者には斜線を引き、必要に応じて死因・死亡年齢を添える。 6. 本問の凡例では、同居者を点線の枠で囲む。 これに従うと、上段は左に父(□、斜線、胃癌72歳)、右に母(○、斜線、脳卒中60歳)、中段は左から兄□・姉○・本人□(矢印)と妻○・弟□、下段は左から長男□・次男□・長女○となり、点線枠には本人・妻・次男・長女が入って長男は枠外となる。この条件をすべて満たす図を選ぶ。
選択肢考察
- ×a. ①
矢印の付いた発端者が○(女性)になっており、患者本人が男性であることと合わない。きょうだいも左から□・○(発端者)・○・□となり、「兄・姉・本人・弟」の構成と一致しない。子供は左から○・□・□と描かれており、年長者を左に置く規則に従えば「長女・長男・次男」の順となって誤りである。さらに両親も妻が左・夫が右になっている。複数の点で不適切である。
- ×b. ②
きょうだいの構成(兄・姉・本人・弟)、子供の順序(長男・次男・長女)、同居者の範囲(長男のみ枠外)はいずれも正しい。しかし、両親の死因と死亡年齢が入れ替わっており、父(□)が脳卒中72歳、母(○)が胃癌60歳と記載されている。実際は父が胃癌で72歳、母が脳卒中で60歳で死亡しているため誤りである。
- ×c. ③
発端者が○(女性)で描かれており、配偶者が□(男性)になっている。きょうだいは左から○・□・○(発端者)・○、子供は○・○・□で、性別がほぼすべて逆転している。両親についても、母(○)に胃癌72歳、父(□)に脳卒中60歳と死因・年齢が逆に付され、配置も妻が左になっている。男性□・女性○の基本記号が守られていない図である。
- ○d. ④
上段は左に父(斜線入り□、胃癌72歳)、右に母(斜線入り○、脳卒中60歳)で、夫を左・妻を右とする規則と死亡者の記載が正しい。同胞は年長順に兄□・姉○・本人□(矢印)・弟□と並び、本人と妻○が婚姻線で結ばれている。子供は左から長男□・次男□・長女○の順で、点線の同居枠には本人・妻・次男・長女が含まれ、別居中の長男は枠外にある。聴取した情報がすべて正しく反映されている。
- ×e. ⑤
両親、きょうだい、子供の性別と順序は正しいが、同居者を示す点線の枠が長男・次男を含み、長女を枠外としている。これでは長女が別居していることになる。実際に別居しているのは遠方で就職した長男であり、長女は本人と同居しているため誤りである。
家系図の主な記号と描き方(標準的な表記法)
・男性:□、女性:○、性別不明:◇。 ・発端者(家系の調査のきっかけとなった人):記号の左下に矢印を付ける。来談者(相談に来た人)とは区別されることがある。 ・罹患者:記号を塗りつぶす。保因者は記号内に点などを入れて示す。 ・死亡者:記号に斜線を引く。死亡年齢や死因を記号の近くに書き添える。 ・婚姻(パートナー)関係:二人を水平線で結ぶ。血族婚(近親婚)は二重線で示す。離婚は婚姻線上に斜線(//)を入れる。 ・子供:婚姻線から垂直に下ろした線に同胞線(横線)をつなぎ、そこから各子供をぶら下げる。 ・同胞の順序:年長者を左、年少者を右に並べる。 ・夫婦の配置:原則として男性を左、女性を右に置く。 ・世代:上ほど古い世代とし、ローマ数字(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ…)で世代番号を付けることもある。 ・流産・死産、一卵性・二卵性双生児、養子なども専用の記号がある。 ・同居者の範囲を点線で囲むなど、臨床目的に応じて情報を付け加えることもある(本問ではその凡例が示されている)。
臨床での意義
・遺伝性腫瘍(例:大腸癌であればLynch症候群や家族性大腸腺腫症)などの家族歴を体系的に把握し、遺伝カウンセリングや血縁者への検査の必要性を判断する材料となる。Lynch症候群が疑われる家系では、大腸癌に加えて子宮内膜癌・胃癌・卵巣癌・小腸癌・尿路上皮癌などの発症者の有無と発症年齢を確認する。 ・同居者や遠方の家族、キーパーソンを一目で把握でき、病状説明、意思決定支援、在宅療養や介護の調整に活用できる。
POINT
・家系図は男性□、女性○、発端者に矢印、死亡者に斜線。 ・夫婦は夫を左・妻を右、同胞は年長者を左から並べる。 ・世代は上から下へ(親→子)と配置する。 ・死因・死亡年齢など付記事項は、該当する人物の記号に正しく対応させる。 ・同居者の範囲などの社会的情報も家系図に加えると、診療・療養支援に役立つ。
