StudyMed医師国家試験

食道から心臓をのぞく―疣贅を最も見逃さない検査はどれか

第114回医師国家試験 F問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第114回 F問題 第4問

感染性心内膜炎の疣贅を検出する感度が最も高いのはどれか。

  1. a.心臓MRI
  2. b.胸部造影CT
  3. c.経胸壁心エコー検査
  4. d.経食道心エコー検査
  5. e.MIBG心筋シンチグラフィ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は感染性心内膜炎の診断の要である疣贅を、どの画像検査が最も見逃さずに捉えられるか、つまり感度を問う問題だ。まずは疣贅がどんなものかを思い出すところから始めよう。
医学生医学生
病理の講義で、弁にくっついた血小板とフィブリン、それに細菌のかたまりだと習いました。
ドクタードクター
そう。数mm程度の小さなものも多く、弁と一緒に心拍に合わせて速く動く。だから描出するには、数mmを見分ける空間分解能、速い動きを追える時間分解能、そして弁などの正常構造と区別できるコントラストが必要になる。
医学生医学生
画質が良いというとMRIやCTのイメージがありますが……。
ドクタードクター
そう思うのは自然だね。でも心臓MRIは撮像に時間がかかり、複数の心拍のデータを合成して画像を作るから、速く不規則に揺れる小さな構造は苦手だ。心筋の線維化や炎症の評価には優れるけれど、感染性心内膜炎ではむしろ脳塞栓や脳膿瘍など合併症の検索に使うことが多い。
医学生医学生
造影CTはどうでしょう。心電図同期を使えば動きも抑えられそうです。
ドクタードクター
心電図同期CTは弁周囲膿瘍や仮性動脈瘤、脾梗塞・腎梗塞といった塞栓症の評価には役立ち、最近の診断基準でも補助的な画像検査として位置づけられている。ただ、速く動く小さな疣贅そのものの検出感度は心エコーに及ばない。被曝や造影剤の問題もあるね。
医学生医学生
となると心エコーですね。循環器内科の実習では、まず経胸壁心エコーをやっていました。
ドクタードクター
経胸壁心エコーは非侵襲で簡便だから、感染性心内膜炎を疑ったら最初に行う検査だ。疣贅の大きさや可動性、弁逆流、心機能まで評価できる。でも弱点がある。何だと思う?
医学生医学生
胸壁や肋骨、肺を通して見るので、肥満や肺気腫の人だと見えにくいことでしょうか。
ドクタードクター
その通り。超音波は骨や空気で遮られるうえ、プローブから心臓までの距離も遠い。人工弁なら金属による音響陰影も加わる。感度は自己弁で約70%、人工弁では約50%程度にとどまるとされる。そこで登場するのが経食道心エコーだ。
医学生医学生
食道は左房のすぐ後ろを通っているから、間に邪魔なものがないんですね。解剖実習で食道と左房の近さに驚いたのを思い出しました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。至近距離から骨も肺も介さずに観察できるので、高周波の探触子を使えて空間分解能が上がり、リアルタイムで動きも追える。小さな疣贅、弁穿孔、弁周囲膿瘍、人工弁の病変まで描出でき、感度は自己弁・人工弁ともに90%以上とされる。だから正解は経食道心エコー検査だ。
医学生医学生
MIBG心筋シンチグラフィは、たしかParkinson病で集積が落ちる検査でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。MIBGはノルアドレナリンに似た構造をもち、交感神経終末に取り込まれる。心臓交感神経の機能を評価する検査で、心不全の予後評価やParkinson病・Lewy小体型認知症の補助診断に使うものだ。疣贅のような形態的病変を見る検査ではない。
医学生医学生
感度が一番高いなら、最初から全員に経食道心エコーをすればいいのでは?
ドクタードクター
そこは臨床判断だ。経食道心エコーは咽頭麻酔や鎮静が必要な、やや侵襲的な検査だからね。まず経胸壁で評価し、陰性でも臨床的に疑いが残る場合、人工弁や心臓デバイスがある場合、弁周囲膿瘍など合併症を評価したい場合に経食道心エコーを行う、という流れが基本だ。そして画像と並ぶもう一本の柱が血液培養だよ。
医学生医学生
修正Duke診断基準の大基準は、血液培養陽性と心エコーでの心内膜病変の2つでしたね。CBTの直前に必死で覚えました。
ドクタードクター
正解。血液培養は抗菌薬投与前に、時間をあけて複数セット採るのが鉄則だ。臨床では、不明熱を見たら常に感染性心内膜炎を鑑別に挙げ、新たな心雑音やOsler結節、Janeway病変、Roth斑などの所見を探そう。弁破壊による心不全や脳梗塞などの塞栓症が命に関わる合併症になる。なお2023年の改訂基準では心臓CTやFDG-PET/CTも画像所見に加わったが、疣贅検出の中心が心エコー、特に経食道心エコーであることは変わらない。

まとめ

感染性心内膜炎の疣贅は、弁に付着した数mm程度の小さく速く動く構造物であり、その検出には高い空間・時間分解能をもつ心エコーが中心となります。経食道心エコーは左房の背側に接する食道から骨や肺を介さず至近距離で観察できるため、自己弁・人工弁とも90%以上の感度があり、経胸壁心エコー(自己弁で約70%)を上回ります。心臓MRIや造影CTは合併症や塞栓症の評価には有用ですが疣贅検出の感度は劣り、MIBG心筋シンチグラフィは心臓交感神経機能の評価法で形態診断には用いません。実臨床では、抗菌薬投与前の複数セットの血液培養と経胸壁心エコーから始め、疑いが残る場合や人工弁症例、合併症評価が必要な場合に経食道心エコーを追加します。各検査の得意・不得意を理解しておくことは、修正Duke診断基準に沿った確実な診断につながります。

解答・解説

正解はdです

問われていること

感染性心内膜炎(IE:infective endocarditis)の診断で中心となる「疣贅(ゆうぜい:vegetation)」を、どの画像検査が最も見逃さずに捉えられるか(感度が高いか)を問う一般問題である。

疣贅を描出するうえでの条件

疣贅は、弁や心内膜の表面に付着した、血小板・フィブリン・菌塊からなる構造物である。数mm程度の小さなものも多く、弁とともに心拍に合わせて速く動く。したがって、これを描出する検査には、 ・数mm単位を見分けられる高い空間分解能 ・速い動きを追える高い時間分解能(リアルタイム性) ・弁などの正常構造と区別できるコントラスト が必要となる。

考え方

この条件を最も満たすのが心エコー検査(超音波検査)である。超音波は周波数が高いほど分解能が上がるが深部まで届きにくく、また骨や空気(肺)で遮られる。経胸壁心エコー(TTE)は胸壁・肋骨・肺を介して観察するため、体格や肺気腫などで画質が落ちる。これに対し経食道心エコー(TEE)は、心臓(左房)のすぐ背側を走る食道内からプローブを当てるため、介在物がなく距離も短い。そのため高周波の探触子を使え、小さな疣贅や弁周囲の膿瘍まで明瞭に描出できる。疣贅検出の感度はTTEで自己弁約70%・人工弁約50%程度、TEEで自己弁・人工弁とも90%以上とされ、TEEが最も高い。

選択肢考察

  1. ×a.  心臓MRI

    心臓MRIは心筋の性状評価(線維化、炎症、浮腫など)や心機能の定量に優れるが、撮像に時間がかかり、複数の心拍のデータを合成して画像を作るため、速く不規則に揺れ動く数mmの疣贅は描出しにくい。弁尖などの正常構造との区別も難しく、疣贅検出の感度は心エコーに劣る。IEではむしろ脳塞栓や脳膿瘍など合併症の検索に用いられることが多い。

  2. ×b.  胸部造影CT

    心電図同期を用いた造影CTは、弁周囲膿瘍や仮性動脈瘤など弁輪部の合併症、塞栓症(脾・腎梗塞など)の評価には有用であり、近年の診断基準でも補助的な画像検査として位置づけられている。しかし、心拍とともに速く動く小さな疣贅そのものの検出感度は経食道心エコーに及ばない。造影剤や放射線被曝の問題もあり、疣贅検出の第一選択ではない。

  3. ×c.  経胸壁心エコー検査

    経胸壁心エコー(TTE)は非侵襲的で簡便なため、IEを疑ったときにまず行う検査である。疣贅の大きさや可動性、弁逆流の程度、心機能を評価できる。しかし胸壁・肋骨・肺を介して観察するため、肥満や肺気腫、胸郭変形があると画質が低下し、プローブから心臓までの距離も遠いため小さな疣贅を見逃しやすい。人工弁では金属による音響陰影の影響も受ける。感度は自己弁で約70%程度にとどまり、経食道心エコーより低い。

  4. ○d.  経食道心エコー検査

    食道は左房のすぐ背側に接して走行しているため、経食道心エコー(TEE)ではプローブと心臓の間に骨や肺が介在しない。至近距離から高周波の超音波を用いられるので空間分解能が高く、リアルタイムで動きも追えるため、数mmの小さな疣贅、弁穿孔、弁周囲膿瘍、人工弁の病変まで描出できる。疣贅検出の感度は自己弁・人工弁とも90%以上で、選択肢中最も高い。TTEで疣贅が見えなくてもIEの疑いが残る場合や、人工弁・心内デバイスがある場合、合併症の評価が必要な場合に行う。咽頭麻酔や鎮静を要するやや侵襲的な検査である点は覚えておく。

  5. ×e.  MIBG心筋シンチグラフィ

    MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)はノルアドレナリンと似た構造をもち、交感神経終末に取り込まれる。MIBG心筋シンチグラフィは心臓交感神経の機能を評価する検査であり、心不全の重症度・予後評価や、Parkinson病・Lewy小体型認知症の補助診断(心筋への集積低下)に用いられる。疣贅のような形態的病変を描出する検査ではない。

感染性心内膜炎の概要

菌血症を契機に、弁膜や心内膜、大血管内膜に細菌の集落を含む疣贅が形成され、全身にさまざまな症状を起こす敗血症性疾患である。弁膜症・先天性心疾患・人工弁・IEの既往などの基礎疾患があり、歯科処置や静注薬物使用などで菌血症を起こしたときに発症しやすい。起炎菌は緑色レンサ球菌(口腔内常在菌)や黄色ブドウ球菌、腸球菌などが多い。

臨床像

・発熱(不明熱の原因として常に鑑別に挙げる) ・新たな心雑音、弁破壊による心不全(死亡原因として重要) ・疣贅の塞栓症:脳梗塞、脾・腎梗塞など ・感染性(細菌性)動脈瘤の形成と破裂による出血 ・皮膚・眼の所見:Osler結節(有痛性)、Janeway病変(無痛性)、眼瞼結膜出血、Roth斑

診断

修正Duke診断基準が広く用いられる。大基準は「血液培養陽性(IEに典型的な菌が複数セットで検出)」と「心内膜病変の証拠(心エコーでの疣贅・膿瘍・人工弁の新たな部分的離開、新規の弁逆流)」の2つである。血液培養は抗菌薬投与前に、時間をあけて複数セット採取する。2023年に改訂された診断基準(ESC 2023ガイドライン、Duke-ISCVID基準)では、心臓CTやFDG-PET/CTも画像所見として取り入れられたが、疣贅検出の中心が心エコー(特にTEE)であることは変わらない。

検査の流れ

IEを疑えば、まず経胸壁心エコーを行う。陰性でも臨床的な疑いが残る場合や、人工弁・心臓デバイス症例、合併症(弁周囲膿瘍など)の評価が必要な場合には経食道心エコーを行う。

POINT

・疣贅検出の感度:経食道心エコー(TEE)>経胸壁心エコー(TTE)。 ・TEEは食道が左房の背側に接することを利用し、至近距離から骨・肺を介さずに観察できるため高分解能。 ・IEを疑ったら、まず血液培養(抗菌薬投与前に複数セット)とTTE、必要に応じてTEE。 ・修正Duke診断基準の大基準は「血液培養陽性」と「心エコーでの心内膜病変」。 ・MIBG心筋シンチグラフィは心臓交感神経機能の評価(Parkinson病・Lewy小体型認知症で集積低下)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。