StudyMed医師国家試験

「みんなを守る」か「自分を守る」か―A類とB類で読み解く定期予防接種

第114回医師国家試験 C問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第114回 C問題 第27問

主に個人予防を目的としたB類疾病に含まれる定期予防接種の対象疾病はどれか。2つ選べ。

  1. a.風疹
  2. b.麻疹
  3. c.百日咳
  4. d.インフルエンザ
  5. e.高齢者の肺炎球菌感染症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は予防接種法の定期接種の区分、A類疾病とB類疾病の違いを問う問題だ。ポイントは「誰のために打つワクチンなのか」という目的の違い。そこさえ押さえれば迷わず解けるよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習ったはずなんですが、A類とB類がどっちだったか、いつも混ざってしまいます。
ドクタードクター
よくある悩みだね。A類は主に集団予防が目的で、人から人へ広がって流行を起こしやすい病気や、かかると重篤になりやすい病気を社会全体で防ぐためのもの。対象は主に小児で、接種を受けるよう努める努力義務があり、国や自治体も積極的に勧奨する。一方のB類は主に個人予防が目的で、本人の発病や重症化を防ぐことを重視する。主な対象は高齢者で、努力義務も勧奨もなく、本人が希望すれば接種する仕組みだ。
医学生医学生
小児の集団予防がA類、高齢者の個人予防がB類、と覚えればいいんですね。
ドクタードクター
その整理で大丈夫。では選択肢を見ていこう。まず麻疹と風疹はどうかな。
医学生医学生
小児科実習で、1歳と就学前の2回、MRワクチンを打つと教わりました。子どもに打つのでA類だと思います。
ドクタードクター
正解。麻疹は空気感染するきわめて感染力の強い病気で、肺炎や脳炎で亡くなることもある。高い接種率を保たないと流行が止まらないから、まさに集団予防の典型だね。風疹は妊娠初期の妊婦がかかると、胎児に白内障・先天性心疾患・難聴といった先天性風疹症候群を起こす。妊婦さん本人ではなく、周りの人が免疫を持って流行させないことが大事なんだ。
医学生医学生
風疹は打った本人より、周りの妊婦さんや赤ちゃんを守る意味が大きいということですね。集団予防という言葉がしっくりきました。
ドクタードクター
いい理解だ。百日咳はどうだろう。
医学生医学生
乳児期の混合ワクチンに入っているので、これもA類ですか。
ドクタードクター
そう。百日咳は生後早期の乳児がかかると無呼吸発作などで重症化し、命に関わることもある。ジフテリア・破傷風・ポリオなどとの混合ワクチンとして乳幼児期に接種するA類疾病だ。
医学生医学生
残るインフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症は、どちらも高齢者が対象なのでB類ですね。
ドクタードクター
その通り、この2つが正解だ。インフルエンザは65歳以上の人と、60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能やHIVによる免疫機能に重い障害がある人が対象で、毎年1回接種する。高齢者は肺炎を合併して重症化・死亡しやすいから、その人自身を守るのが主目的なんだ。肺炎球菌は高齢者の市中肺炎の主要な原因菌で、こちらも本人の重症化予防がねらいだね。
医学生医学生
でも、肺炎球菌って小児の定期接種にもありませんでしたか。
ドクタードクター
鋭いね、そこが最大の引っかけポイントだ。小児の肺炎球菌感染症は、細菌性髄膜炎のような重篤な侵襲性感染症を防ぐ目的でA類に分類される。同じ病原体でも、小児ならA類、高齢者ならB類と対象年齢で区分が変わるんだ。だから選択肢にも「高齢者の」とわざわざ書いてある。
医学生医学生
なるほど。じゃあHibもインフルエンザの仲間だからB類……ではないですよね。
ドクタードクター
そこも要注意。Hibはインフルエンザ菌b型という細菌で、インフルエンザウイルスとはまったく別物。乳幼児の髄膜炎を防ぐA類疾病だよ。名前に惑わされないこと。
医学生医学生
微生物学の講義で、昔インフルエンザの原因菌と誤解されたから名前が残っていると聞きました。
ドクタードクター
よく覚えているね。最後に発展知識をまとめよう。この問題の出題後、2024年度から新型コロナウイルス感染症が、2025年度から帯状疱疹がB類疾病に加わった。いずれも主に65歳以上の高齢者が対象だ。また制度面では、A類は原則公費負担なのに対し、B類は自治体の助成はあっても一部自己負担となることが多い。健康被害救済はどちらも予防接種法に基づく制度があるけれど、B類の給付水準はA類より低く設定されている。
医学生医学生
外来で高齢の患者さんに「インフルエンザの予防接種は受けなきゃいけないの?」と聞かれたら、義務ではないけれど重症化予防のために勧めます、と説明すればいいわけですね。
ドクタードクター
まさにそう。B類は本人の希望に基づく接種だからこそ、医師が利益とリスクをきちんと説明して、本人が納得して選べるよう支えることが大切なんだ。ちなみに、おたふくかぜのように予防接種法に定められていないワクチンは任意接種で、副反応の救済は医薬品副作用被害救済制度で扱われる点もあわせて覚えておこう。

まとめ

予防接種法の定期接種は、主に集団予防を目的とするA類疾病と、主に個人予防を目的とするB類疾病に分けられます。A類は麻疹・風疹・百日咳・Hib感染症・小児の肺炎球菌感染症など主に小児が対象で、努力義務と接種勧奨があります。B類はインフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症(現在は新型コロナウイルス感染症と帯状疱疹も追加)で、主に高齢者の重症化予防を目的とし、努力義務も勧奨もなく本人の希望で接種します。肺炎球菌は小児ならA類・高齢者ならB類、Hibはインフルエンザウイルスとは別の細菌でA類、という点が典型的な引っかけです。ワクチンの目的と制度上の位置づけを理解しておくことは、患者さんへの接種の説明や地域の感染症対策に携わるうえでの基礎となります。

解答・解説

正解はd, eです

問われていること

予防接種法に基づく定期接種の対象疾病は、目的によって「A類疾病」と「B類疾病」に分けられている。本問はその区分を問う問題である。

A類とB類の違い

・A類疾病:主に集団予防を目的とする。人から人へ伝染して集団発生を起こしやすい疾病や、かかると重篤になる(または重篤化のおそれが大きい)疾病の流行を防ぐことを重視する。接種を受けるよう努める義務(努力義務)があり、国や自治体は接種を積極的に勧める(勧奨する)。対象は主に小児である。 ・B類疾病:主に個人予防を目的とする。個人の発病や重症化を防ぎ、その積み重ねとして間接的にまん延予防にもつなげる。努力義務も勧奨もなく、本人が希望する場合に接種する。主な対象は高齢者である。

正解の導き方

選択肢のうち、風疹・麻疹・百日咳は小児期に接種する集団予防目的のA類疾病である。一方、インフルエンザ(高齢者などが対象)と高齢者の肺炎球菌感染症は、高齢者の重症化・死亡を防ぐ個人予防目的のB類疾病である。したがって正解はdとeである。

紛らわしい点

肺炎球菌感染症は対象年齢によって区分が異なる。小児の肺炎球菌感染症はA類、高齢者の肺炎球菌感染症はB類である。また、インフルエンザ菌b型(Hib)感染症は名前に「インフルエンザ」を含むが、インフルエンザウイルスとは別の細菌による感染症で、A類疾病である。

選択肢考察

  1. ×a.  風疹

    風疹はA類疾病である。飛沫で人から人へ広がり、妊娠初期の妊婦が感染すると胎児に先天性風疹症候群(白内障、先天性心疾患、難聴など)を起こすため、集団での免疫を高めて流行を防ぐことが重要である。定期接種は麻疹風疹混合(MR)ワクチンで1歳時と小学校入学前の1年間の計2回行う。

  2. ×b.  麻疹

    麻疹はA類疾病である。空気感染するきわめて感染力の強い疾患で、肺炎や脳炎を合併して死亡することもある。集団で高い接種率を保って流行を防ぐ必要があるため、集団予防を目的とするA類に位置づけられている。風疹と同じくMRワクチンで2回接種する。

  3. ×c.  百日咳

    百日咳はA類疾病である。百日咳菌による呼吸器感染症で、乳児、特に生後早期の乳児では無呼吸発作などにより重症化・死亡しうる。ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ(およびHib)を含む混合ワクチンとして乳幼児期に定期接種する。

  4. ○d.  インフルエンザ

    インフルエンザ(季節性インフルエンザ)はB類疾病である。高齢者では肺炎の合併などにより重症化・死亡しやすいため、その個人の発病・重症化予防を主な目的として定期接種が行われる。対象は65歳以上の者と、60~64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能やHIVによる免疫機能に重い障害がある者で、毎年1回接種する。努力義務はなく、本人の希望により接種する。

  5. ○e.  高齢者の肺炎球菌感染症

    高齢者の肺炎球菌感染症はB類疾病である。肺炎球菌は高齢者の市中肺炎の主要な原因菌であり、重症化を防ぐ個人予防を目的として、65歳の者(および60~64歳で一定の重い基礎疾患のある者)を対象に定期接種が行われる。なお、小児の肺炎球菌感染症は細菌性髄膜炎などの重篤な侵襲性感染症を防ぐ目的でA類疾病とされており、区別が必要である。

予防接種法における定期接種の対象疾病

・A類疾病(集団予防重視):ジフテリア、百日咳、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)、麻疹、風疹、日本脳炎、結核(BCG)、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ヒトパピローマウイルス感染症、水痘、B型肝炎、ロタウイルス感染症 など ・B類疾病(個人予防重視):インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症。出題後、2024年度から新型コロナウイルス感染症が、2025年度から帯状疱疹がB類疾病に加えられ、いずれも主に65歳以上の高齢者が対象である。

A類とB類の制度上の違い

・努力義務:A類はあり、B類はなし。 ・国・自治体による接種勧奨:A類はあり、B類はなし。 ・費用:A類は原則として公費負担。B類は自治体の助成はあるが、一部自己負担となることが多い。 ・健康被害救済:いずれも予防接種法に基づく救済制度があるが、B類の給付水準はA類より低く設定されている。

定期接種と任意接種

予防接種法で定められたものが定期接種であり、それ以外(例:おたふくかぜワクチン、定期接種の対象年齢外での接種など)は任意接種として扱われ、健康被害の救済は医薬品副作用被害救済制度によって行われる。

POINT

・A類疾病=集団予防目的・努力義務あり・主に小児が対象(麻疹、風疹、百日咳、Hib、小児の肺炎球菌など)。 ・B類疾病=個人予防目的・努力義務なし・主に高齢者が対象(インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症。現在は新型コロナウイルス感染症、帯状疱疹も追加)。 ・肺炎球菌は小児ならA類、高齢者ならB類。Hib(インフルエンザ菌b型)はA類で、インフルエンザ(B類)と混同しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。