StudyMed医師国家試験

「対称・短時間・1回きり」―単純型熱性けいれんを見抜く3つの物差し

第113回医師国家試験 D問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第113回 D問題 第1問

単純型熱性けいれんの特徴はどれか。

  1. a.片側性のけいれんを呈する。
  2. b.けいれんは20分以上持続する。
  3. c.1~3歳で発症することが多い。
  4. d.24時間以内にけいれんを繰り返す。
  5. e.けいれんの後に24時間以上意識障害が持続する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は熱性けいれんを「単純型」と「複雑型」に分ける基準を問う問題だ。選択肢の多くは、実は複雑型の条件を言い換えたものになっている。まずは熱性けいれんそのものの定義から確認しておこう。どんなものを熱性けいれんと呼ぶか、説明できるかな。
医学生医学生
乳幼児が38℃以上の熱を出したときに起こすけいれん、という理解です。
ドクタードクター
おおむねそれでいい。正確には、主に生後60か月までの乳幼児に、通常38℃以上の発熱に伴って起こる発作で、髄膜炎や脳炎などの中枢神経感染症、低血糖や電解質異常などの代謝異常、そのほか明らかな原因がなく、てんかんの既往もないもの、という定義になる。日本では小児の7〜10%ほどが経験するとされていて、欧米より多いんだ。
医学生医学生
そんなに多いんですね。小児科の臨床実習でも、救急外来にけいれんで来た子のほとんどが熱性けいれんだと聞きました。
ドクタードクター
そう、小児救急ではとてもありふれた病態だ。だからこそ、様子をみてよい単純型と、慎重に評価すべき複雑型を見分けることが大事になる。複雑型の基準は3つ。1つでも当てはまれば複雑型だ。思い出せるかな。
医学生医学生
片側だけのけいれんと、長く続くけいれん……あと1つは何でしたっけ。
ドクタードクター
1つ目が焦点性発作の要素、つまり片側性のけいれんや一側から始まる発作。2つ目が15分以上続く遷延性発作。3つ目が一発熱機会内、通常は24時間以内に発作を繰り返すこと。この3つのどれにも当てはまらないものが単純型なんだ。
医学生医学生
ということは、片側性のけいれんも、24時間以内に繰り返すのも、複雑型の特徴そのものですね。
ドクタードクター
その通り。単純型は左右対称の全身性発作で、強直間代発作の形をとることが多い。片側性の発作をみたら、複雑型というだけでなく頭蓋内の器質的病変も念頭に置く。反復する場合も、中枢神経感染症や急性脳症の可能性を考えて評価する必要がある。
医学生医学生
持続時間の選択肢は20分以上となっていますが、基準は15分以上でしたよね。古い教科書で20分と見た気がして混乱しました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。以前は20分を目安にする記載もあったけれど、現在のガイドラインでは15分以上を遷延性発作としている。いずれにせよ20分以上続けば複雑型の基準を満たすから、単純型の特徴ではない。単純型の多くは数分以内、ほとんどが5分未満で自然に止まるんだ。
医学生医学生
発作後に24時間以上意識障害が続く、というのはどう考えればいいでしょう。
ドクタードクター
これは単純型か複雑型か以前に、熱性けいれんとして典型的でない所見だ。単純型では発作後にしばらく眠ることはあっても、意識は速やかに戻る。意識障害が長引くなら、急性脳症、脳炎、髄膜炎などを疑って、血液検査、頭部画像、髄液検査、脳波などで精査すべき状況になる。
医学生医学生
消去法で残るのが、1〜3歳で発症することが多い、という年齢の記述ですね。
ドクタードクター
正解。熱性けいれんは生後6か月頃から5歳頃までに起こり、1〜2歳がピークで、初発は1〜3歳に多い。脳が発達途中の時期に発熱が引き金となって起こる年齢依存性の発作で、多くは6歳頃までに自然に起こらなくなる。
医学生医学生
年齢がポイントになるのは、てんかんの講義で習った年齢依存性てんかんの考え方と似ていますね。
ドクタードクター
いい連想だね。臨床で知っておきたいことも整理しよう。再発は全体の約3分の1にみられ、両親の熱性けいれんの既往、1歳未満での発症、発熱から発作までの時間が短いこと、発作時の体温が39℃以下であることが再発の危険因子として知られている。
医学生医学生
予防のために解熱薬を使えば再発を防げるのでしょうか。
ドクタードクター
そこはよくある誤解で、解熱薬には再発予防効果はないとされている。単純型の多くは予防投与も不要で、遷延性発作の既往がある場合や、危険因子を複数もって発作を繰り返す場合などに、発熱時のジアゼパム坐剤を考慮する。また、到着時に発作が5分以上続いていれば、重積への移行を防ぐためにジアゼパムやミダゾラムで止痙を始めることも覚えておこう。
医学生医学生
単純型で全身状態がよければ、髄液検査や頭部画像は必ずしも要らないんですね。
ドクタードクター
そう、ルーチンでは不要とされている。ただし髄膜刺激症状、遷延する意識障害、片麻痺などがあれば話は別だ。単純型の予後は良好で、発達への悪影響はないと考えられているから、保護者には落ち着いて説明してあげることも大切だよ。

まとめ

熱性けいれんは主に生後6か月〜5歳の乳幼児に発熱に伴って起こる発作で、1〜2歳をピークに1〜3歳での初発が多い年齢依存性の病態です。焦点性発作の要素(片側性など)、15分以上の持続、一発熱機会内(通常24時間以内)の反復のいずれかがあれば複雑型とし、どれもない左右対称・短時間・単発のものが単純型です。発作後に意識障害が遷延する場合は熱性けいれんとは考えにくく、急性脳症・脳炎・髄膜炎などの精査が必要になります。単純型は予後良好で、ルーチンの髄液検査や画像検査、予防投与は通常不要であり、解熱薬に再発予防効果はありません。単純型と複雑型の区別は、小児救急で検査や予防投与の要否を判断し、保護者に適切な説明を行うための基本となります。

解答・解説

正解はcです

問われているテーマ

熱性けいれん(熱性発作)を単純型と複雑型に分ける基準を理解しているかを問う問題である。

熱性けいれんとは

主に生後60か月(5歳)までの乳幼児に、通常38℃以上の発熱に伴って起こる発作で、髄膜炎・脳炎などの中枢神経感染症、代謝異常(低血糖、電解質異常など)、その他明らかな発作の原因がなく、てんかんの既往もないものをいう。日本では小児の7〜10%程度が経験するとされ、欧米より頻度が高い。

単純型と複雑型の区別

次の3項目のうち一つでも当てはまれば複雑型熱性けいれんとし、いずれも当てはまらないものを単純型とする。 ①焦点性発作(部分発作)の要素がある(片側性のけいれん、一側から始まる発作など) ②発作が15分以上持続する(遷延性発作) ③一発熱機会内(通常は24時間以内)に発作を複数回繰り返す つまり単純型とは「左右対称の全身性発作で、15分未満(多くは数分以内)でおさまり、同じ発熱中に繰り返さない」ものである。発作後は速やかに意識が回復するのも典型像である。

解き方

選択肢a、b、dは上記の複雑型の基準そのもの(またはそれを満たす記述)であり、eは熱性けいれんではなく急性脳症・脳炎などを疑うべき所見である。残るcの好発年齢が、単純型熱性けいれんの特徴として正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  片側性のけいれんを呈する。

    片側性のけいれんは焦点性発作の要素であり、複雑型熱性けいれんの基準に該当する。単純型は左右対称性の全身性(全般性)発作で、強直間代発作の形をとることが多い。片側性の発作をみた場合には、頭蓋内病変などの器質的疾患の検索も考慮する。

  2. ×b.  けいれんは20分以上持続する。

    15分以上持続する発作は遷延性発作とよばれ、複雑型の基準を満たす。単純型の多くは数分以内(5分未満が大半)で自然に止まる。なお、5分以上続く発作はけいれん重積状態に移行するおそれがあるため、到着時にもけいれんが続いていればジアゼパムやミダゾラムなどによる止痙を開始する。

  3. ○c.  1~3歳で発症することが多い。

    熱性けいれんは生後6か月頃から5歳頃までに起こり、特に1〜2歳をピークとして1〜3歳での初発が多い。脳の発達が未熟な時期に発熱が誘因となって起こる年齢依存性の発作であり、多くは6歳頃までに自然に起こらなくなる。この好発年齢は単純型熱性けいれんの典型的な特徴である。

  4. ×d.  24時間以内にけいれんを繰り返す。

    一発熱機会内(通常24時間以内)に発作を反復するのは複雑型の基準である。単純型では発作は1回で終わり、同じ発熱中に繰り返さない。発作の反復をみた場合は、中枢神経感染症や急性脳症などの可能性も念頭に置いて評価する。

  5. ×e.  けいれんの後に24時間以上意識障害が持続する。

    単純型熱性けいれんでは、発作後にしばらく眠ることはあっても意識は速やかに(通常数十分〜数時間以内に)回復する。発作後に意識障害が長く持続する場合は熱性けいれんとは考えにくく、急性脳症、脳炎、髄膜炎などを疑って精査(血液検査、頭部画像検査、髄液検査、脳波など)を行う必要がある。

熱性けいれんの疫学・予後

・日本人小児の約7〜10%(欧米は2〜5%程度)が経験する。家族歴があると起こりやすい。 ・再発は全体の約3分の1程度にみられる。再発の危険因子として、両親いずれかの熱性けいれんの既往、1歳未満での発症、発熱から発作までの時間が短い(概ね1時間以内)、発作時体温が39℃以下、などが知られている。 ・単純型の予後は良好で、知能・発達への悪影響はないと考えられている。 ・その後のてんかん発症率は一般人口よりやや高い程度である。てんかん発症の危険因子として、発症前からの神経学的異常・発達遅滞、両親・同胞のてんかんの家族歴、複雑型熱性けいれん、発熱から発作までの時間が短いこと、が挙げられる。

初期対応のポイント

・発作が5分以上続く場合は止痙を開始する。 ・項部硬直・大泉門膨隆などの髄膜刺激症状、遷延する意識障害、片麻痺などがあれば、中枢神経感染症や急性脳症を鑑別する。 ・単純型で全身状態が良好であれば、ルーチンの髄液検査・頭部画像検査・脳波検査は不要とされる。

予防投与(ジアゼパム坐剤)

単純型熱性けいれんの多くは予防投与を必要としない。15分以上の遷延性発作の既往がある場合や、再発・てんかん発症の危険因子を複数もつ例で発作を反復する場合などに、発熱時のジアゼパム坐剤の使用が考慮される。なお解熱薬には熱性けいれんの再発予防効果はない。

POINT

・熱性けいれんの好発年齢は6か月〜5歳、ピークは1〜2歳。 ・複雑型の基準(一つでも該当すれば複雑型):①焦点性発作の要素(片側性など)、②15分以上持続、③一発熱機会内(通常24時間以内)の反復。 ・単純型は左右対称・短時間・単発で、発作後の意識回復は速やか。 ・発作後の意識障害の遷延は急性脳症・脳炎・髄膜炎を疑う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。