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「3・7・9・10」の秘密―副交感神経を運ぶ脳神経を経路で覚える

第113回医師国家試験 C問題 第24問

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第113回 C問題 第24問

副交感神経を含むのはどれか。3つ選べ。

  1. a.動眼神経
  2. b.三叉神経
  3. c.顔面神経
  4. d.迷走神経
  5. e.舌下神経

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、どの脳神経が副交感神経を含むかを問う問題だ。単なる暗記問題に見えるけれど、副交感神経がどこから出て、どの神経節を経て、どの器官に届くかという「経路」で理解しておくと、臨床の病変部位診断にもそのまま使える。まず、副交感神経の起始部はどこだったかな。
医学生医学生
解剖学の講義で「頭仙系」と習いました。脳幹と仙髄から出るんですよね。
ドクタードクター
その通り。仙髄のS2〜S4から出るのが骨盤内臓神経で、脳幹から出るのが脳神経に含まれる副交感神経だ。脳神経のうち副交感神経線維を含むのは4本だけ。番号で覚えるとどうなる?
医学生医学生
「3・7・9・10」ですね。動眼神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経です。
ドクタードクター
完璧だ。選択肢の中では、動眼神経、顔面神経、迷走神経の3つが該当する。ひとつずつ経路を確認しよう。動眼神経の副交感神経は何をしている?
医学生医学生
縮瞳ですよね。OSCEの神経診察で対光反射をとったとき、動眼神経が遠心路だと教わりました。
ドクタードクター
いいね。節前線維は中脳のEdinger-Westphal核から起こり、眼窩内の毛様体神経節でニューロンを替えて、短毛様体神経として瞳孔括約筋と毛様体筋に届く。縮瞳と、近くを見るときの調節を担っているんだ。だから動眼神経麻痺では散瞳や対光反射の消失がみられる。
医学生医学生
動脈瘤による動眼神経麻痺で瞳孔異常が出やすいのも、この線維が関係しているんですか。
ドクタードクター
そう、副交感神経線維は動眼神経の表層を走るので、外からの圧迫で障害されやすいと説明されることが多い。次は顔面神経。表情筋の運動神経というイメージが強いと思うけれど、ほかにどんな線維を含んでいるかな。
医学生医学生
舌の前2/3の味覚と……あとは涙や唾液の分泌でしょうか。
ドクタードクター
正解。顔面神経の副交感神経は橋の上唾液核から起こり、2つのルートに分かれる。大錐体神経を経て翼口蓋神経節で乗り換え、涙腺や鼻腺・口蓋腺に行くルートと、鼓索神経を経て顎下神経節で乗り換え、顎下腺と舌下腺に行くルートだ。顔面神経麻痺で涙の分泌が落ちているかどうかは、障害部位の推定に使われる。
医学生医学生
耳鼻咽喉科の実習で、末梢性顔面神経麻痺の患者さんにSchirmer試験をしているのを見ました。あれは涙の量で部位を見ていたんですね。
ドクタードクター
そういうことだ。そして迷走神経は副交感神経の最大の供給路で、全副交感神経線維の大部分を占める。延髄の迷走神経背側核などから起こり、心臓、気管支、肺、食道から横行結腸の右側2/3付近までの消化管、肝臓、膵臓などに分布して、各臓器の壁内や近くの神経節で乗り換える。心拍を遅くし、気管支を収縮させ、消化管の運動や分泌を促すんだ。
医学生医学生
三叉神経は迷いました。耳下腺に行く線維が耳介側頭神経を通ると習った気がして、副交感神経も含むのかなと。
ドクタードクター
鋭い引っかかりだね。確かに舌咽神経の副交感神経は、下唾液核から小錐体神経を経て耳神経節で乗り換え、その節後線維が三叉神経の枝である耳介側頭神経を通って耳下腺に届く。顔面神経由来の線維が涙腺神経を通る例もある。でもこれは他の神経の線維が通り道として借りているだけで、三叉神経自体は感覚と咀嚼筋の運動を担う神経だ。固有の副交感神経の起始核はもたない。
医学生医学生
舌下神経は、舌を動かすだけの純粋な運動神経ですね。
ドクタードクター
その通り。一側の舌下神経麻痺では、舌を出すと麻痺側に偏位し、同じ側の舌に萎縮や線維束性収縮がみられる。副交感神経線維は含まない。
医学生医学生
副交感神経は神経節が標的器官の近くにある、というのも全部の経路に共通していますね。
ドクタードクター
よく気づいたね。副交感神経は節前線維が長く、神経節が効果器の近くや壁内にあって節後線維が短い。交感神経は胸腰髄から起こり、神経節が脊柱の近くにあるので逆に節前線維が短い。伝達物質は、神経節ではどちらもアセチルコリンでニコチン受容体、効果器では副交感神経がアセチルコリンでムスカリン受容体、交感神経は原則ノルアドレナリンだ。抗コリン薬で散瞳、口渇、頻脈、便秘、尿閉が起こるのも、今日の経路を思い浮かべればすべて説明できる。
医学生医学生
脳神経ごとに「起始核、神経節、効果器」をセットで覚えておけば、症状から逆算できそうです。
ドクタードクター
その姿勢が大事だ。瞳孔の異常、涙や唾液の分泌障害、薬の副作用と、臨床のいろいろな場面でこの知識が生きてくるよ。

まとめ

副交感神経は脳幹と仙髄S2〜S4から起こる頭仙系で、脳神経のうち副交感神経線維を含むのは動眼神経・顔面神経・舌咽神経・迷走神経の4本(3・7・9・10)です。動眼神経はEdinger-Westphal核から毛様体神経節を経て縮瞳と調節を、顔面神経は上唾液核から翼口蓋神経節・顎下神経節を経て涙腺や顎下腺・舌下腺の分泌を、舌咽神経は耳神経節を経て耳下腺を、迷走神経は胸腹部内臓の広い範囲を支配します。三叉神経は感覚と咀嚼筋の運動、舌下神経は舌の運動を担い、三叉神経の枝を他の神経の副交感線維が通過することはあっても、固有の副交感神経は含みません。起始核・神経節・効果器を経路として整理しておくと、瞳孔異常や涙液・唾液分泌障害の病変部位診断、抗コリン薬の副作用の理解にそのまま役立ちます。

解答・解説

正解はa, c, dです

副交感神経は、脳幹から出る脳神経と、仙髄(S2〜S4)から出る骨盤内臓神経の2か所から起こる(頭仙系)。このうち脳神経で副交感神経線維(一般内臓遠心性線維)を含むのは、動眼神経(III)、顔面神経(VII)、舌咽神経(IX)、迷走神経(X)の4本だけである。語呂合わせとして「3・7・9・10」と番号で覚える方法がよく用いられる。

本問の考え方

選択肢の5本の脳神経のうち、上記4本に該当するのは動眼神経、顔面神経、迷走神経の3本である。三叉神経は感覚と咀嚼筋の運動、舌下神経は舌筋の運動を担う神経で、副交感神経の起始核をもたない。 各神経の副交感神経は、脳幹の起始核から出た節前線維が末梢の副交感神経節でニューロンを替え、節後線維が標的器官(平滑筋・腺)に分布するという経路をとる。この「起始核→神経節→効果器」の組み合わせを神経ごとに整理しておくと、瞳孔異常や涙液・唾液分泌障害の病変部位診断にも役立つ。

選択肢考察

  1. ○a.  動眼神経

    動眼神経は外眼筋(上直筋・下直筋・内側直筋・下斜筋)と上眼瞼挙筋を支配する運動線維に加え、副交感神経線維を含む。副交感神経の節前線維は中脳のEdinger-Westphal核(動眼神経副核)から起こり、眼窩内の毛様体神経節でニューロンを替え、節後線維(短毛様体神経)が瞳孔括約筋と毛様体筋に分布して縮瞳と近見時の調節(水晶体を厚くする)を担う。動眼神経麻痺で散瞳や対光反射消失がみられるのはこのためである。

  2. ×b.  三叉神経

    三叉神経は顔面の皮膚、角膜、鼻腔・口腔粘膜、歯、硬膜などの感覚を伝える感覚線維と、咀嚼筋(咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋)などを支配する運動線維からなる混合神経であり、固有の副交感神経線維は含まない。なお、顔面神経や舌咽神経由来の副交感神経の節後線維が、三叉神経の枝(例:耳介側頭神経、涙腺神経)に合流して標的の腺まで運ばれることがあるが、これは他の脳神経の線維が通路として借りているにすぎず、三叉神経が副交感神経を含むとはいわない。

  3. ○c.  顔面神経

    顔面神経は表情筋などを支配する運動線維、舌の前2/3の味覚を伝える感覚線維、そして副交感神経線維を含む混合神経である。副交感神経の節前線維は橋の上唾液核から起こり、二つの経路をとる。一つは大錐体神経を経て翼口蓋神経節でニューロンを替え、涙腺と鼻腺・口蓋腺の分泌を促す経路、もう一つは鼓索神経を経て顎下神経節でニューロンを替え、顎下腺と舌下腺の分泌を促す経路である。顔面神経麻痺で涙液分泌の低下がみられるかどうかは、病変部位の推定に用いられる。

  4. ○d.  迷走神経

    迷走神経は副交感神経の最大の供給路であり、全副交感神経線維の大部分を占める。節前線維は延髄の迷走神経背側核(心臓への線維は主に疑核からも起こる)から起こり、心臓、気管・気管支、肺、食道から横行結腸の右側2/3付近までの消化管、肝臓、膵臓などに分布し、各臓器の壁内や近傍の神経節でニューロンを替える。心拍数の減少、気管支収縮、消化管運動・分泌の促進などを担う。このほか咽頭・喉頭の筋を支配する運動線維や、内臓からの感覚線維も含む。

  5. ×e.  舌下神経

    舌下神経は延髄の舌下神経核から起こり、舌筋(内舌筋と、口蓋舌筋を除く外舌筋)を支配する純粋な運動神経である。副交感神経線維は含まない。一側の舌下神経麻痺では、舌を前に出すと麻痺側へ偏位し、同側の舌の萎縮・線維束性収縮がみられる。

副交感神経を含む脳神経の経路のまとめ

・動眼神経(III):Edinger-Westphal核 → 毛様体神経節 → 瞳孔括約筋・毛様体筋(縮瞳、調節) ・顔面神経(VII):上唾液核 → 大錐体神経 → 翼口蓋神経節 → 涙腺・鼻腺・口蓋腺          上唾液核 → 鼓索神経 → 顎下神経節 → 顎下腺・舌下腺 ・舌咽神経(IX):下唾液核 → 小錐体神経 → 耳神経節 → 耳下腺(節後線維は三叉神経の枝である耳介側頭神経を通る) ・迷走神経(X):迷走神経背側核(ほか疑核)→ 臓器の壁内・近傍の神経節 → 胸腹部内臓(横行結腸の右側2/3付近まで) ・それより遠位の下行結腸以下・膀胱・生殖器は、仙髄S2〜S4から出る骨盤内臓神経が支配する。

脳神経の線維構成の概略

・純粋な感覚神経:嗅神経(I)、視神経(II)、内耳神経(VIII) ・主に運動神経:動眼神経(III、副交感を含む)、滑車神経(IV)、外転神経(VI)、副神経(XI)、舌下神経(XII) ・混合神経:三叉神経(V、感覚+運動)、顔面神経(VII、運動+感覚・味覚+副交感)、舌咽神経(IX、運動+感覚・味覚+副交感)、迷走神経(X、運動+感覚+副交感)

副交感神経と交感神経の構造の違い

副交感神経は節前線維が長く、神経節が効果器の近く(または壁内)にあり、節後線維が短い。交感神経は胸腰髄(T1〜L2付近)から起こり、神経節が脊柱の近く(交感神経幹など)にあって節前線維が短く、節後線維が長い。神経節での伝達物質はいずれもアセチルコリン(ニコチン受容体)で、効果器での伝達物質は副交感神経がアセチルコリン(ムスカリン受容体)、交感神経は原則としてノルアドレナリンである(汗腺はアセチルコリン)。

POINT

・副交感神経を含む脳神経は動眼神経(III)・顔面神経(VII)・舌咽神経(IX)・迷走神経(X)の4本(「3・7・9・10」)。 ・副交感神経節:III→毛様体神経節、VII→翼口蓋神経節・顎下神経節、IX→耳神経節、X→臓器近傍・壁内神経節。 ・三叉神経は感覚+咀嚼筋の運動、舌下神経は舌の運動のみで、副交感神経は含まない(三叉神経の枝を他神経の副交感線維が通過することはある)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。