StudyMed医師国家試験

届け先は保健所?警察署?―死亡診断書と死体検案書の使い分けを一枚の紙から読み解く

第111回医師国家試験 G問題 第29問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第29問

死亡診断書および死体検案書について誤っているのはどれか。

  1. a.死因統計の資料となる。
  2. b.死亡を医学的,法律的に証明する。
  3. c.死体を検案したときは保健所に届け出る。
  4. d.診療継続中の患者以外の者が死亡した場合,死体検案を行った上で死体検案書を交付する。
  5. e.診療継続中の患者が診療に係る傷病と関連しない原因で死亡した場合,死体検案を行った上で死体検案書を交付する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医師なら誰もが書くことになる死亡診断書と死体検案書の基本を問う問題だ。「誤っているもの」を選ぶ形式なので、書類の役割、2つの書類の使い分け、異状死体の届出という3つのポイントを順に確認していこう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で書き方の演習をしました。死亡診断書と死体検案書って、実は同じ用紙なんですよね。
ドクタードクター
その通り。様式は同一で、使わない方の名称を二重線で消して使う。まず役割から。この書類は何のために作るんだろう。
医学生医学生
人が亡くなったことを証明するためです。死亡届に添付して市区町村に出すと習いました。
ドクタードクター
そうだね。死亡という事実と、死因・時刻・場所を医学的に、そして法律上も証明する文書だ。戸籍の抹消や相続、保険金の請求、埋火葬の許可といった手続きは、すべてこの証明を前提に進む。それに加えて、もう一つ大きな役割があるよ。
医学生医学生
人口動態統計ですね。死因順位の統計は、この書類の死因欄から集計されると聞きました。
ドクタードクター
正解。死因はWHOの国際疾病分類(ICD)に従って分類され、原死因、つまり死亡につながる一連の流れの出発点となった病気やけがが集計に使われる。だから死因欄を正確に書くことは、国の保健政策の基礎データを作ることでもあるんだ。ここまでの2つ、統計資料になることと医学的・法律的な証明は、どちらも正しい記述だね。
医学生医学生
次は使い分けですね。診療中の患者さんなら死亡診断書、そうでなければ死体検案書、という理解でいいですか。
ドクタードクター
おおむねいいけれど、もう一歩踏み込もう。死亡診断書を書けるのは、自分が診療を続けていた患者が「その診療に係る傷病、またはそれに関連する原因で」亡くなった場合に限られる。それ以外は死体検案、つまり遺体の外表などを観察して死因や死亡時刻を医学的に判断したうえで、死体検案書を交付する。
医学生医学生
ということは、診療中の患者さんでも、交通事故や転落で亡くなった場合は死体検案書になるんですね。
ドクタードクター
その通り。たとえば糖尿病で通院中の人が溺水で亡くなったなら、糖尿病とは関連しない外因死だから死体検案書だ。診療していなかった人の死亡も、生前の病状を把握していないから死亡診断書は書けず、検案して死体検案書を交付する。この2つの記述も正しいね。
医学生医学生
では残りの「死体を検案したら保健所に届け出る」が誤りですね。感染症の届出のイメージで保健所かと一瞬思いましたが、異状死は警察だったはずです。
ドクタードクター
よく気づいたね。医師法第21条では、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して「異状がある」と認めたとき、24時間以内に所轄警察署へ届け出ることになっている。この記述は二重に誤っているんだ。一つは届出先が保健所ではなく警察署であること。もう一つは、検案するたびに届け出るのではなく、異状を認めたときに届け出るという点だ。
医学生医学生
なるほど、条件と届け先の両方が違うわけですね。法医学の実習でも、警察から依頼された検案の話を聞きました。
ドクタードクター
法医学で学ぶ異状死の考え方はまさにここにつながる。外因死やその疑いがある死亡は異状死にあたることが多いから、検案書を書くときは警察への届出が必要かどうかもあわせて判断することになる。
医学生医学生
よく「最後の診察から24時間以上たっていたら死亡診断書は書けない」と聞くのですが、本当ですか。
ドクタードクター
それはよくある誤解だ。最終診察から24時間を超えていても、診療中の傷病で亡くなったと判断できれば、改めて死後に診察したうえで死亡診断書を交付できる。「24時間以内に診察していなければ警察に届け出る」という意味ではないから、在宅でのお看取りなどでは特に知っておいてほしい。
医学生医学生
在宅医療の実習で、訪問診療の先生がご自宅でお看取りをされていたのを思い出しました。あの場合は死亡診断書ですね。
ドクタードクター
そう、経過を診てきた病気で亡くなったなら死亡診断書だ。最後に関連する届出も整理しておこう。死亡届は医師ではなく同居の親族などの届出義務者が、死亡を知った日から7日以内(国外での死亡は3か月以内)に市区町村長へ提出する。妊娠満12週以後の死産は、死産証書または死胎検案書を添えて7日以内に市区町村長へ届け出る。死因欄はⅠ欄に直接死因から原死因までの因果関係を順に書き、Ⅱ欄には直接の因果関係はないが経過に影響した傷病を書く。

まとめ

死亡診断書と死体検案書は同一様式の書類で、人の死亡を医学的・法律的に証明するとともに、死亡届に添付されて人口動態統計(死因統計)の基礎資料になります。自ら診療中の患者が診療に係る傷病で死亡した場合は死亡診断書、診療していなかった人の死亡や、診療中でも関連しない外因などによる死亡は、検案を行ったうえで死体検案書を交付します。検案して異状を認めた場合は、医師法第21条により24時間以内に所轄警察署へ届け出る必要があり、保健所ではなく、また検案のたびに届け出るものでもありません。最終診察から24時間を超えた死亡でも、診療中の傷病による死亡であれば死後診察のうえで死亡診断書を交付できる点もよく問われます。これらの書類は医師が必ず書くことになる重要な公文書であり、正確な使い分けと記載は、遺族の手続きと国の保健統計の両方を支えています。

解答・解説

正解はcです

本問は、死亡診断書と死体検案書の役割、両者の使い分け、異状死体の届出先という基本事項を問う「誤っているのはどれか」型の問題である。

書類の役割

死亡診断書と死体検案書は書式が同一の一枚の用紙であり、どちらかを二重線で消して使う。どちらも人の死亡を医学的・法律的に証明する文書で、死亡届に添付して市区町村に提出され、人口動態統計(死因統計)の基礎資料になる。

使い分けの原則

・死亡診断書:医師が自ら診療を続けていた患者が、その診療に係る傷病(またはそれに関連する原因)で死亡した場合に交付する。 ・死体検案書:上記以外の場合に交付する。診療を受けていなかった人の死亡と、診療中の患者でも診療していた傷病と関連しない原因(外因など)で死亡した場合である。いずれも死体検案(死体の外表などを観察して死因・死亡時刻などを医学的に判断すること)を行ってから交付する。

異状死体の届出

医師法第21条により、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して「異状がある」と認めた医師は、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。届出先は保健所ではない。また、死体を検案したら必ず届け出るわけではなく、届出が必要なのは異状を認めたときである。 したがって「死体を検案したときは保健所に届け出る」という記述は、届出先と届出の条件のいずれも誤っており、これが正解となる。

選択肢考察

  1. ×a.  死因統計の資料となる。

    正しい記述である。死亡診断書(死体検案書)は死亡届とともに市区町村へ提出され、記載された死因が人口動態統計の死因統計の基礎になる。死因は世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD)に従って分類され、原死因(死亡を引き起こした一連の出来事の起点となった疾病・損傷)が集計に使われる。そのため医師には死因欄を正確に記載することが求められる。

  2. ×b.  死亡を医学的,法律的に証明する。

    正しい記述である。死亡診断書・死体検案書は、人が死亡したという事実と、その死因・時刻・場所などを医学的に、かつ法律上も証明する文書である。戸籍の抹消、相続、保険金の請求、埋火葬許可などの法的手続きはこの証明を前提に進む。

  3. ○c.  死体を検案したときは保健所に届け出る。

    誤った記述であり、これが正解である。医師法第21条は、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたときに、24時間以内に所轄警察署へ届け出ることを医師に義務づけている。誤りは二点ある。第一に、届出先は保健所ではなく所轄警察署である。第二に、届出が必要なのは検案して「異状を認めた」場合であり、検案のたびに届け出るわけではない。なお、死亡届は届出義務者(親族など)が死亡を知った日から7日以内(国内の場合)に市区町村長へ提出するもので、これも保健所への届出ではない。

  4. ×d.  診療継続中の患者以外の者が死亡した場合,死体検案を行った上で死体検案書を交付する。

    正しい記述である。診療していなかった人が死亡した場合、医師はその人の生前の病状を把握していないため、死亡診断書は作成できない。死体検案を行って死因などを判断したうえで死体検案書を交付する。検案して異状を認めた場合は、あわせて所轄警察署へ届け出る。

  5. ×e.  診療継続中の患者が診療に係る傷病と関連しない原因で死亡した場合,死体検案を行った上で死体検案書を交付する。

    正しい記述である。死亡診断書を交付できるのは、診療中の患者が診療していた傷病またはそれに関連する原因で死亡した場合に限られる。診療中の患者であっても、交通事故・転落・溺水などの外因死のように診療していた傷病と関連しない原因で死亡した場合は、死体検案を行ったうえで死体検案書を交付する。外因死は異状死にあたることが多いため、警察への届出の要否もあわせて判断する。

死亡診断書と死体検案書の使い分け

・自ら診療中の患者が、診療に係る傷病で死亡 → 死亡診断書 ・それ以外(診療中でない者の死亡、診療中でも関連しない原因による死亡)→ 死体検案を行い、死体検案書 ・最終診察から24時間以上たってからの死亡でも、診療中の傷病による死亡と判断できれば、改めて死後診察を行ったうえで死亡診断書を交付できる(医師法第20条ただし書き)。「24時間以内に診察していなければ警察に届け出る」という意味ではない点に注意する。

医師法第21条(異状死体等の届出義務)

・対象:死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたとき ・届出先:所轄警察署 ・期限:24時間以内

関連する届出

・死亡届:届出義務者(同居の親族など)が、死亡を知った日から7日以内(国外での死亡は3か月以内)に市区町村長へ提出する。死亡診断書(死体検案書)を添付する。 ・死産届:妊娠満12週以後の死産は、死産証書(死胎検案書)を添付して7日以内に市区町村長へ届け出る。

書式

死亡診断書と死体検案書は同一の様式で、不要な方を二重線で消して使う。死因欄はⅠ欄(直接死因から原死因までの因果関係を順に記載)とⅡ欄(直接には因果関係がないが経過に影響した傷病)からなる。

POINT

・死亡診断書・死体検案書は死亡を医学的・法律的に証明し、人口動態統計(死因統計)の資料となる。 ・診療中の患者が診療中の傷病で死亡 → 死亡診断書。それ以外 → 検案のうえ死体検案書。 ・異状死体は医師法第21条により、24時間以内に所轄警察署へ届け出る(保健所ではない)。 ・最終診察から24時間を超えた死亡でも、診療中の傷病による死亡であれば死亡診断書を交付できる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。