StudyMed医師国家試験

「かすむ」「ゆがむ」「欠ける」―症状から病変部位を読む眼科の基本

第111回医師国家試験 F問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第111回 F問題 第4問

疾患と症状の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.白内障 ―― 霧視
  2. b.加齢黄斑変性 ―― 羞明
  3. c.開放隅角緑内障 ―― 飛蚊症
  4. d.裂孔原性網膜剝離 ―― 近視化
  5. e.網膜中心動脈閉塞症 ―― 小視症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、代表的な眼疾患とその自覚症状の組合せを問う問題だ。眼科の症状は丸暗記するより、「目のどこが障害されているか」から考えると整理しやすい。光の通り道である透光体、視力の中心を担う黄斑、網膜の周辺部、そして視神経。この4つの区分を意識して選択肢を見ていこう。
医学生医学生
透光体というと、角膜、水晶体、硝子体ですよね。そこが濁るとどうなるんでしょうか。
ドクタードクター
光が濁りで散乱するから、全体が霧がかかったようにかすむ。これが霧視だ。散乱光のせいで、まぶしさを強く感じる羞明も出やすい。
医学生医学生
それなら白内障と霧視の組合せは正しそうです。眼科の臨床実習で、患者さんが「すりガラス越しに見ているみたい」と話していました。
ドクタードクター
まさに典型的な訴えだね。白内障は水晶体の混濁だから、霧視、視力低下、そして夜間の対向車のライトがまぶしいといったグレアが代表的な症状になる。これが正解だ。では、加齢黄斑変性と羞明はどうだろう。
医学生医学生
まぶしさは目の病気全般で起こりそうなので、正しい気もしてしまいます。
ドクタードクター
そう思いやすいところだね。でも黄斑は視力の中心を担う部分で、そこが障害されると「物がゆがんで見える」変視症、「真ん中が見えない」中心暗点、視力低下が出る。特に滲出型では脈絡膜新生血管からの出血や滲出で黄斑の形が乱れて、変視症が目立つ。羞明が代表的なのは、白内障や角膜上皮障害、前部ぶどう膜炎などだ。
医学生医学生
眼科の講義で、Amslerチャートの格子がゆがんで見えるかを確認する検査を習いました。あれは黄斑の評価なんですね。
ドクタードクター
その通り。次は開放隅角緑内障と飛蚊症。緑内障はどこの病気かな。
医学生医学生
視神経が障害される病気です。飛蚊症は硝子体の濁りなので、部位が違いますね。
ドクタードクター
よく整理できている。開放隅角緑内障は視神経が徐々に障害され、傍中心暗点や鼻側階段から視野欠損がじわじわ広がる。初期は自覚症状に乏しく、中心視力は末期まで保たれることが多いから、健診で見つかることも多い。飛蚊症は生理的な硝子体混濁や後部硝子体剝離、網膜裂孔、硝子体出血などで起こる症状だ。
医学生医学生
飛蚊症が網膜裂孔で起こるなら、裂孔原性網膜剝離と結びつくのは近視化ではなく飛蚊症のほうでしょうか。
ドクタードクター
いい推論だ。網膜剝離の前駆症状は飛蚊症と、光が走るように見える光視症。剝離が広がると対応する部位の視野欠損が出て、黄斑に及ぶと視力が落ちる。網膜剝離で屈折が近視側に変化することはないよ。むしろ因果は逆で、強度近視は眼軸が長く網膜が薄いので、網膜剝離の危険因子なんだ。
医学生医学生
近視は原因側なんですね。向きを取り違えるところでした。網膜中心動脈閉塞症で小視症が出ないのはなぜですか。
ドクタードクター
網膜中心動脈閉塞症は網膜が急に虚血に陥るから、片眼の突然の無痛性の高度な視力低下が起こる。眼底では網膜が白く濁り、黄斑部にcherry-red spotが見える。小視症は、中心性漿液性脈絡網膜症のように黄斑部の網膜が浮き上がって視細胞の間隔が広がるときに出る症状で、病態がまったく違う。
医学生医学生
視細胞の間隔が広がると、同じ物でも像が受け取る細胞の数が減って小さく感じる、ということですね。
ドクタードクター
そういうイメージでいい。臨床で特に大事なのは、急激な視力低下を見逃さないことだ。網膜中心動脈閉塞症は網膜の虚血耐性が短く、発症早期の対応が求められる緊急疾患だし、眼痛や頭痛、悪心を伴うなら急性閉塞隅角緑内障を考える。飛蚊症が急に増えたり光視症を伴ったりしたら、網膜裂孔を疑って眼底検査につなげる必要がある。
医学生医学生
救急外来で「目がかすむ」と言われても、ゆっくりなのか突然なのか、ほかの症状があるかで緊急度がかなり違いそうです。
ドクタードクター
その感覚が大切だ。ちなみに白内障でも、核白内障では水晶体の屈折力が増して近視化することがある。「最近、老眼鏡なしで新聞が読めるようになった」という高齢者の話は、核白内障のサインかもしれないね。治療は、生活に支障があれば水晶体を超音波で乳化吸引して眼内レンズを挿入する手術が行われる。

まとめ

眼の症状は、障害部位から考えると整理しやすくなります。透光体の混濁では霧視や羞明、黄斑の障害では変視症・中心暗点・小視症、網膜周辺部の障害では視野欠損とその前駆としての飛蚊症・光視症、視神経の障害では緑内障に特徴的な視野欠損が生じます。白内障は水晶体の混濁で霧視が典型的であり、加齢黄斑変性は変視症、開放隅角緑内障は自覚に乏しい進行性の視野欠損、裂孔原性網膜剝離は飛蚊症・光視症から視野欠損、網膜中心動脈閉塞症は突然の高度な視力低下が特徴です。強度近視は網膜剝離の危険因子であって結果ではない点、小視症は中心性漿液性脈絡網膜症などでみられる点にも注意が必要です。症状と部位を結びつけて理解しておくことは、緊急性の高い眼疾患を見逃さない臨床判断の土台になります。

解答・解説

正解はaです

テーマ

代表的な眼疾患とその自覚症状の対応を問う問題である。眼科の症状は、障害される部位(角膜・水晶体などの透光体、黄斑、網膜周辺部、視神経など)によって特徴が分かれるため、病変部位から症状を推測できるようにしておくとよい。

考え方

・透光体(角膜、水晶体、硝子体)の混濁:光が散乱し、全体がかすむ(霧視)、まぶしい(羞明)、視力低下。 ・黄斑(視力の中心を担う部位)の障害:ゆがんで見える(変視症)、中心が見えない(中心暗点)、物が小さく見える(小視症)、視力低下。 ・網膜周辺部の障害:視野欠損。網膜剝離の前駆として飛蚊症や光視症。 ・視神経の障害(緑内障など):特徴的な視野欠損。 ・網膜の急性虚血(動脈閉塞):突然の高度な視力低下。 白内障は水晶体の混濁であり、透光体の混濁による「霧視」が典型的な症状である。他の選択肢は、いずれも疾患と症状が対応していない。

選択肢考察

  1. ○a.  白内障 ―― 霧視

    正しい。霧視とは、霧がかかったように全体がかすんで見える症状である。白内障では水晶体が混濁して入射光が散乱するため、霧視や視力低下が起こる。光の散乱によって、晴天の屋外や夜間の対向車のライトなどを過度にまぶしく感じる羞明(グレア)も生じやすい。また、核白内障では水晶体の屈折力が増して近視化することがある。

  2. ×b.  加齢黄斑変性 ―― 羞明

    誤り。加齢黄斑変性は、加齢に伴って黄斑部が障害される疾患で、変視症(物がゆがんで見える)、中心暗点、視力低下が主な症状である。特に滲出型では脈絡膜新生血管からの出血や滲出によって黄斑の形が乱れ、変視症をきたしやすい。羞明は、白内障や角膜上皮障害、前部ぶどう膜炎(虹彩炎)、眼瞼けいれんなどでみられる症状であり、本症の代表的症状ではない。

  3. ×c.  開放隅角緑内障 ―― 飛蚊症

    誤り。開放隅角緑内障は、視神経が徐々に障害されて視野欠損が進行する疾患である。初期には自覚症状に乏しく、傍中心暗点や鼻側階段などの視野異常が少しずつ広がり、進行すると視野狭窄をきたす。中心視力は末期まで保たれることが多い。飛蚊症(目の前に虫や糸くずが飛ぶように見える症状)は、生理的な硝子体の混濁、後部硝子体剝離、網膜裂孔・網膜剝離、硝子体出血などで起こり、緑内障の症状ではない。

  4. ×d.  裂孔原性網膜剝離 ―― 近視化

    誤り。裂孔原性網膜剝離は、網膜に生じた裂孔から硝子体液が網膜の下に入り込み、網膜が剝がれる疾患である。前駆症状として飛蚊症や光視症(光が走るように見える)が現れ、剝離が広がると剝離部に対応した視野欠損が生じ、黄斑まで及ぶと視力が低下する。網膜剝離によって屈折が近視側へ変化することはない。逆に、強度近視は眼軸が長く網膜が薄いため、裂孔原性網膜剝離の危険因子であり、因果の向きを取り違えないようにする。

  5. ×e.  網膜中心動脈閉塞症 ―― 小視症

    誤り。網膜中心動脈閉塞症は、網膜を栄養する網膜中心動脈が塞栓や血栓で閉塞し、網膜が虚血に陥る疾患である。片眼の突然の無痛性の高度な視力低下が特徴で、眼底では網膜の白濁と黄斑部のcherry-red spotがみられる。小視症(物が実際より小さく見える症状)は、中心性漿液性脈絡網膜症など、黄斑部の網膜が浮き上がったりむくんだりして視細胞の間隔が広がる病態で生じる症状である。

主な眼症状の用語

・霧視:かすんで見える。透光体(角膜、水晶体、硝子体)の混濁や角膜浮腫などで生じる。 ・羞明:光を過度にまぶしく感じる。白内障、角膜疾患、前部ぶどう膜炎、眼瞼けいれんなど。 ・変視症:物がゆがんで見える。加齢黄斑変性、黄斑上膜、黄斑円孔、黄斑浮腫など黄斑疾患。 ・小視症:物が小さく見える。中心性漿液性脈絡網膜症など。 ・飛蚊症:視界に浮遊物が見える。後部硝子体剝離、網膜裂孔・網膜剝離、硝子体出血、ぶどう膜炎など。 ・光視症:光が走るように見える。硝子体が網膜を牽引することによる。後部硝子体剝離、網膜裂孔の前兆。 ・視野欠損・視野狭窄:緑内障、網膜剝離、網膜色素変性症、視路の障害など。

急激な視力低下をきたす疾患

網膜中心動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、硝子体出血、黄斑部に及ぶ網膜剝離、急性閉塞隅角緑内障(眼痛・頭痛・悪心を伴う)、視神経炎(眼球運動時痛を伴うことがある)など。網膜中心動脈閉塞症は網膜の虚血耐性が短く、発症早期の対応が求められる緊急疾患である。

白内障の要点

最も多いのは加齢性白内障で、そのほか糖尿病、ステロイド使用、外傷、アトピー性皮膚炎などが原因となる。治療は、生活に支障がある場合に水晶体を超音波で乳化吸引し眼内レンズを挿入する手術が行われる。

POINT

・白内障:霧視、羞明(グレア)、視力低下。核白内障では近視化することがある ・加齢黄斑変性:変視症、中心暗点、視力低下 ・開放隅角緑内障:自覚に乏しい進行性の視野欠損 ・裂孔原性網膜剝離:飛蚊症・光視症 → 視野欠損。強度近視が危険因子 ・網膜中心動脈閉塞症:突然の無痛性高度視力低下、cherry-red spot ・小視症:中心性漿液性脈絡網膜症

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。