虐待の相談はどこへ?―地域包括支援センターの「根拠法・設置者・3職種・4業務」を押さえる
第111回医師国家試験 E問題 第3問
国試問題にチャレンジ
地域包括支援センターについて正しいのはどれか。
- a.設置主体は都道府県である。
- b.地域保健法に定められている。
- c.医師の配置が義務付けられている。
- d.高齢者に対する虐待への対応を行う。
- e.活動対象は要介護区分3以上の者である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村が設置する機関で、運営は社会福祉法人などへの委託も可能です。保健師(または経験ある看護師)、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種が原則配置され、医師の配置義務はありません。業務は介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援の4本柱で、権利擁護には高齢者虐待への対応や成年後見制度の利用支援が含まれます。対象は要介護度を問わず地域の高齢者全般とその家族で、要介護3以上という条件は特別養護老人ホームの入所要件との混同です。地域包括ケアシステムの中核拠点であるこの機関を知っておくことは、虐待の早期発見や退院支援など、医師が日常診療で地域と連携するための基盤になります。
解答・解説
正解はdです
地域包括支援センターは、2005年の介護保険法改正で創設され(2006年4月から設置)、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、保健・医療・福祉・介護の面から総合的に支える地域の中核機関である。根拠法は介護保険法(第115条の46)で、設置主体は市町村である。市町村が直営するほか、社会福祉法人や医療法人などに運営を委託することもできる。 本問では、次の基本事項を押さえていれば各選択肢を判断できる。 ・根拠法:介護保険法(地域保健法ではない) ・設置主体:市町村(都道府県ではない) ・必置の専門職:保健師(または地域ケアの経験がある看護師)、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の3職種(医師は含まれない) ・業務:介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待への対応、成年後見制度の活用支援など)、包括的・継続的ケアマネジメント支援 ・対象:地域に暮らす高齢者全般とその家族など(要介護度による限定はない) 業務のうち「権利擁護」に高齢者虐待への対応が含まれるため、dが正しい。
選択肢考察
- ×a. 設置主体は都道府県である。
設置主体は市町村(特別区を含む)である。介護保険の保険者が市町村であることと対応している。市町村は自ら運営するほか、社会福祉法人・医療法人・公益法人などに運営を委託でき、実際には委託型のセンターが多い。おおむね中学校区程度の日常生活圏域ごとに設置することが想定されている。
- ×b. 地域保健法に定められている。
地域包括支援センターは介護保険法に規定された機関である。地域保健法は保健所や市町村保健センターの設置などを定める法律であり、地域包括支援センターの根拠法ではない。保健所・保健センターと混同しないよう注意が必要である。
- ×c. 医師の配置が義務付けられている。
医師の配置義務はない。原則として配置が求められるのは、保健師(またはこれに準ずる経験のある看護師)、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種であり、これらの専門職がチームとして業務にあたる。医療との連携は、地域の医療機関や医師会との協力、地域ケア会議などを通じて図られる。
- ○d. 高齢者に対する虐待への対応を行う。
地域包括支援センターの必須業務の一つである権利擁護業務には、高齢者虐待の防止と早期発見、虐待が疑われる事例への対応、成年後見制度の利用支援、消費者被害の防止などが含まれる。高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)では、虐待に関する通報・届出の受理や事実確認は市町村の責務とされているが、市町村はこれらの事務を地域包括支援センターに委託でき、実際にセンターが相談・通報窓口として中心的役割を担っている。
- ×e. 活動対象は要介護区分3以上の者である。
活動対象は要介護度で限定されておらず、地域に住む高齢者全般とその家族、さらに地域の関係者まで幅広い。総合相談支援や権利擁護は要介護認定の有無にかかわらず誰でも利用できる。また、センターが担う介護予防ケアマネジメントの対象は要支援1・2の者や、介護が必要となるおそれのある者(事業対象者)であり、むしろ軽度者が中心である。なお、要介護3以上は特別養護老人ホームへの新規入所要件であり、これと混同しないこと。
地域包括支援センターの4つの主要業務(包括的支援事業)
1. 介護予防ケアマネジメント:要支援者や事業対象者が要介護状態にならないよう、介護予防・日常生活支援総合事業のサービスなどを調整する。 2. 総合相談支援:高齢者や家族からの介護・福祉・医療・生活全般の相談を受け、適切な機関・制度につなぐ。 3. 権利擁護:高齢者虐待への対応、成年後見制度の活用促進、消費者被害の防止など。 4. 包括的・継続的ケアマネジメント支援:地域の介護支援専門員(ケアマネジャー)への助言・支援、関係機関とのネットワークづくり、地域ケア会議の開催など。 このほか、指定介護予防支援事業者として要支援者の介護予防サービス計画(ケアプラン)作成も担う。
地域包括ケアシステムとの関係
地域包括ケアシステムは、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される体制を、おおむね30分以内に必要なサービスが届く日常生活圏域(中学校区程度)で構築する構想である。地域包括支援センターはその中核的な拠点と位置づけられる。
混同しやすい機関
・保健所:地域保健法に基づき、都道府県・政令指定都市・中核市などが設置。所長は原則医師。 ・市町村保健センター:地域保健法に基づき、市町村が設置できる(任意設置)。 ・地域包括支援センター:介護保険法に基づき、市町村が設置。3職種配置で医師の必置はない。
POINT
・根拠法は介護保険法、設置主体は市町村(委託可)。 ・必置職種は保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種で、医師は必置ではない。 ・業務は介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待対応を含む)、包括的・継続的ケアマネジメント支援。 ・対象は要介護度を問わず地域の高齢者全般とその家族。
