減り続けるむし歯、増え続ける近視―学校保健統計のグラフを「高さ」と「向き」で読む
第111回医師国家試験 E問題 第2問
国試問題にチャレンジ
学校保健統計調査における小学生の主な疾病・異常被患率の推移を示す。 ②はどれか。 ただし,①~⑤はa~eのいずれかに該当する。

- a.心電図異常
- b.むし歯(う歯)
- c.鼻・副鼻腔疾患
- d.(尿)蛋白検出の者
- e.裸眼視力1.0未満の者
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
学校保健統計調査は文部科学省が毎年行う基幹統計調査で、定期健康診断の結果から児童生徒の発育状態と疾病・異常の被患率を集計しています。出題当時の小学生では、むし歯(約50%、一貫して減少)、裸眼視力1.0未満の者(約30%、一貫して増加)、鼻・副鼻腔疾患(約10%強、横ばい〜やや増加)、心電図異常(2〜3%、横ばい)、尿蛋白検出の者(1%未満、横ばい)の順で、2番目の高さで上昇する線は裸眼視力1.0未満の者に当たります。近視の増加には屋外活動の減少や近見作業の増加が関与するとされ、令和4年度には小学生でも視力不良がむし歯を上回って最多となりました。心電図検査や検尿は低頻度でも重大な心疾患・腎疾患を早期発見するためのスクリーニングです。グラフ問題は「水準」と「増減の向き」で線を同定し、その背景にある社会の変化や予防介入の効果まで理解しておくと、公衆衛生の知識が立体的になります。
解答・解説
正解はeです
学校保健統計調査は、文部科学省が毎年実施している基幹統計調査で、幼稚園から高等学校までの幼児・児童・生徒の発育状態(身長・体重など)と健康状態(疾病・異常の有無)を把握することを目的とする。健康状態については、在籍者のうち各疾病・異常に該当する者の割合を「被患率」として集計している。 本問はグラフの5本の線(①〜⑤)が、選択肢の5項目のどれに当たるかを割り当てる問題である。解くときは、各項目について「おおよその被患率の水準(何%くらいか)」と「長期的な増減の傾向」の2点を思い出し、グラフの位置と形に照らし合わせればよい。 出題当時(2015年度前後)の小学生のデータを水準の高い順に並べると、おおむね次のようになる。 ・むし歯(う歯):約50%。最も高いが、長年にわたり一貫して低下している。 ・裸眼視力1.0未満の者:約30%。緩やかに上昇を続けている。 ・鼻・副鼻腔疾患:約10〜12%。横ばいからやや上昇。 ・心電図異常:約2〜3%。ほぼ横ばい。 ・(尿)蛋白検出の者:1%未満。ほぼ横ばい。 したがって、最上位で下降している線が①(むし歯)、2番目の高さで上昇している線が②(裸眼視力1.0未満の者)、10%前後が③(鼻・副鼻腔疾患)、数%が④(心電図異常)、最下位の1%未満が⑤(尿蛋白検出の者)と対応づけられる。②は裸眼視力1.0未満の者である。
選択肢考察
- ×a. 心電図異常
小学生の心電図異常の被患率は2〜3%程度(2015年度で約2.4%)と低く、長期的にもほとんど変動していない。グラフ下方でほぼ水平に推移する④に当たり、②ではない。心電図検査は小学校1年生などの節目の学年で行われる。
- ×b. むし歯(う歯)
むし歯(う歯)は長らく小学生の疾病・異常のなかで被患率が最も高い項目であったが、フッ化物の利用や歯科保健指導の普及などにより一貫して減少している(2015年度で約51%)。グラフ最上部から右肩下がりに推移する①に当たる。なお、減少が続いた結果、令和4(2022)年度には小学生で裸眼視力1.0未満の者を下回り、順位が入れ替わった。
- ×c. 鼻・副鼻腔疾患
鼻・副鼻腔疾患(アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎など)の被患率は10%を少し超える程度(2015年度で約12%)で、横ばいからやや増加の傾向を示す。グラフ中段に位置する③に当たる。
- ×d. (尿)蛋白検出の者
学校検尿で蛋白が検出される者の割合は1%を下回る水準(2015年度で約0.8%)で推移しており、大きな変化はない。5項目のなかで最も低い位置にある⑤に当たる。
- ○e. 裸眼視力1.0未満の者
裸眼視力1.0未満の者は、出題当時の小学生でむし歯に次いで2番目に高い被患率(2015年度で約31%)を示し、長期的に緩やかな増加傾向にある。この「2番目の高さ」かつ「右肩上がり」という特徴がグラフの②と一致する。近視の増加の背景には、屋外活動時間の減少や、スマートフォン・タブレットなどを用いた近見作業の増加が指摘されている。その後も上昇が続き、令和4(2022)年度にはむし歯を上回って小学生で最も被患率の高い項目となった。
学校保健統計調査の概要
・実施主体は文部科学省で、統計法に基づく基幹統計調査である。 ・対象は幼稚園、幼保連携型認定こども園、小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校、高等学校、特別支援学校などの一部(抽出調査)。 ・調査内容は発育状態(身長・体重)と健康状態(栄養状態、脊柱・胸郭、視力、聴力、眼・耳鼻咽喉・皮膚の疾患、歯・口腔、結核、心電図異常、蛋白検出、喘息など)である。 ・学校保健安全法に基づく定期健康診断の結果をもとに集計される。
学校段階別の傾向
・むし歯(う歯):どの学校段階でも長期的に減少している。かつては幼稚園・小学校で被患率が最も高い項目であった。 ・裸眼視力1.0未満の者:学年が上がるほど高くなり、中学校・高等学校では5割を超え、むし歯を上回って最も高い項目となっている。小学校でも上昇が続き、近年はむし歯を上回った。 ・鼻・副鼻腔疾患:1割程度で推移し、アレルギー疾患の増加と関連づけて論じられることが多い。 ・心電図異常・尿蛋白検出:いずれも低率で、年次変化は小さい。これらは心疾患・腎疾患の早期発見を目的としたスクリーニングである。
用語
・被患率:在籍者数に対する、その疾病・異常に該当すると判定された者の割合。一般の有病率に相当する考え方である。
POINT
・小学生の被患率(出題当時):むし歯 > 裸眼視力1.0未満 > 鼻・副鼻腔疾患 > 心電図異常 > 尿蛋白検出。 ・むし歯は一貫して減少、裸眼視力1.0未満は一貫して増加。 ・令和4年度に小学生でも裸眼視力1.0未満がむし歯を上回り首位となった(中学・高校では以前から視力不良が首位)。 ・グラフ問題は「水準」と「増減の向き」の2点で線を同定する。
