StudyMed医師国家試験

給食の時間は別の法律で―学校保健安全法の「守備範囲」を見極める

第117回医師国家試験 C問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第117回 C問題 第27問

学校保健安全法に規定されていないのはどれか。

  1. a.学校職員の健康保持
  2. b.食に関する指導(食育)
  3. c.児童の学校外における安全点検や対策
  4. d.児童の心的外傷後ストレス障害〈PTSD〉へのケア
  5. e.就学中に発生した災害時の児童に対する安全対策

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の法規の問題だ。学校で行われている活動のうち、どれが学校保健安全法に書かれていて、どれが別の法律の担当なのかを見分ける。ポイントは、この法律が「学校保健」と「学校安全」の2本柱でできていると知っていることだよ。
医学生医学生
学校の健康診断や出席停止を決めている法律、というくらいの印象しかありません。
ドクタードクター
それは学校保健の柱のほうだね。もともとは1958年制定の学校保健法で、2008年の改正で名前が学校保健安全法に変わり、学校安全の章が新しく加わった。目的は、児童生徒等と職員の健康の保持増進、そして児童生徒等の安全の確保なんだ。
医学生医学生
職員も対象なんですか。子どもの健康のための法律だと思っていました。
ドクタードクター
そこが一つ目の落とし穴。第1条に職員の健康も明記されていて、学校の設置者は職員の健康診断を毎学年定期に行う義務がある。結果に応じて治療の指示や勤務の軽減といった措置も定められている。だから学校職員の健康保持は、規定されている内容だ。
医学生医学生
では、学校外の安全点検はどうでしょう。学校の外まで法律が及ぶのは意外な気がします。
ドクタードクター
条文に「学校外」という言葉そのものはないけれど、学校安全計画には通学を含む日常生活での安全指導が入っている。さらに保護者や警察署、地域の団体と連携するよう努めることも定められていて、通学路の安全確保などはこの枠組みで扱われるんだ。
医学生医学生
災害時の安全対策は、避難訓練をイメージすればいいですか。
ドクタードクター
そうだね。学校の設置者には、事故や災害による危険を防いで適切に対処できる体制を整える努力義務がある。そのうえで各学校は危険等発生時対処要領、いわゆる危機管理マニュアルを作り、職員への周知や訓練を行うことになっている。
医学生医学生
PTSDへのケアまで法律に入っているのは驚きです。精神科の講義で、災害後の子どもの心のケアが大切だと習いましたが。
ドクタードクター
まさにその考えが条文になっている。事故や災害で被害を受けた児童生徒等だけでなく、心理的外傷などの影響を受けた子どもや関係者にも、心身の健康を回復させる支援を行うと定められているんだ。再体験や回避、過覚醒が続くPTSDへのケアもこれに含まれる。
医学生医学生
そうすると、残る食育が規定されていないもの、つまり正解ですね。でも給食も保健の一部のような気がして迷います。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。でも食育を定めているのは食育基本法と学校給食法なんだ。食育基本法は2005年にでき、食育を知育・徳育・体育の基礎と位置づけ、家庭や学校、地域などあらゆる場で進めるとしている。学校給食法は改正で目的に学校における食育の推進を加え、給食を生きた教材とした食に関する指導を定めている。
医学生医学生
食育は学校だけで完結しないから、別の法体系になっているんですね。栄養教諭もそちらの法律ですか。
ドクタードクター
栄養教諭は学校教育法に位置づけられた職だ。こうして法律ごとに担当を整理すると混乱しにくい。発展として、感染症による出席停止の期間の基準は学校保健安全法施行規則に定められていることも押さえよう。たとえばインフルエンザは発症後5日を経過し、かつ解熱後2日、幼児なら3日を経過するまでだ。出席停止を行うのは校長、臨時休業を行うのは学校の設置者という区別もよく問われる。
医学生医学生
小児科の実習で、保護者から登園や登校の再開時期をよく質問されていました。あれもこの法律が根拠なんですね。
ドクタードクター
その通り。医師は登校許可の判断を求められる場面が多いし、学校医として健康診断や環境衛生に関わることもある。就学時健康診断は市町村教育委員会、児童生徒の定期健康診断は学校、職員の健康診断は設置者と、実施主体の違いも整理しておくといい。
医学生医学生
学校保健で健康診断・感染症・学校医、学校安全で安全計画・危機管理・心のケア・地域連携。食育だけは食育基本法と学校給食法、と覚えます。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。公衆衛生の法規は丸暗記になりがちだけど、法律ごとの目的と守備範囲で整理すると、初見の選択肢にも対応できるよ。

まとめ

学校保健安全法は、2008年の改正で旧学校保健法に学校安全の章を加えた法律で、学校保健と学校安全の2本柱から成ります。学校保健には職員を含む健康診断、感染症による出席停止・臨時休業、学校医などが、学校安全には学校安全計画、危険等発生時対処要領、心理的外傷を受けた児童生徒等への支援、地域の関係機関との連携が含まれます。一方、食育は食育基本法と学校給食法が担う領域であり、学校保健安全法には規定がありません。出席停止期間の基準は同法施行規則に定められ、出席停止は校長、臨時休業は設置者が行うなど、実施主体の区別も重要です。法律ごとの目的と守備範囲を整理しておくことは、国家試験だけでなく学校医や登校許可の判断など臨床現場での対応にも役立ちます。

解答・解説

正解はbです

本問は、学校保健安全法に「規定されていない」ものを選ぶ問題である。 学校保健安全法は、1958年(昭和33年)制定の学校保健法を前身とする。2008年(平成20年)に改正され(2009年4月施行)、法律の名称も現在のものに改められた。この改正で、従来の学校保健の内容に加えて、「学校安全」の章(第26〜30条)が新設された。法律の目的(第1条)は、学校における児童生徒等および職員の健康の保持増進を図ること、ならびに児童生徒等の安全を確保することである。 内容は大きく次の2本柱に整理できる。 ・学校保健:学校保健計画、学校環境衛生基準、保健室、健康相談・保健指導、健康診断(就学時・児童生徒等・職員)、感染症予防(出席停止・臨時休業)、学校医・学校歯科医・学校薬剤師 ・学校安全:学校安全計画、施設・設備の安全確保、危険等発生時の対処要領の作成、心理的外傷を受けた児童生徒等への支援、地域の関係機関・団体との連携 選択肢のうち、職員の健康(a)は学校保健の柱に、学校外を含む安全指導と地域連携(c)、心理的外傷への支援(d)、災害への備え(e)は学校安全の柱に含まれる。一方、食育(b)は食育基本法と学校給食法が扱う領域であり、学校保健安全法には規定がない。

選択肢考察

  1. ×a.  学校職員の健康保持

    規定されている。第1条は、児童生徒等だけでなく「職員」の健康の保持増進も法の目的として明記している。具体的には、学校の設置者に職員の健康診断を毎学年定期に行うことを義務付けている(第15条)。また、その結果に基づいて治療の指示や勤務の軽減などの措置をとることも定めている(第16条)。

  2. ○b.  食に関する指導(食育)

    規定されていない(正解)。食育について定める主な法律は、食育基本法(2005年制定)と学校給食法である。食育基本法は、食育を知育・徳育・体育の基礎となるものと位置づけ、家庭・学校・保育所・地域などあらゆる場で推進することを定めている。また、国は食育推進基本計画を策定する。学校給食法は2008年の改正で目的に「学校における食育の推進」を加え、学校給食を生きた教材として活用した食に関する指導を規定している。指導を中心となって担う栄養教諭は、学校教育法に位置づけられた職である。食育は学校だけで完結する課題ではないため、別の法体系で扱われている。

  3. ×c.  児童の学校外における安全点検や対策

    規定されている。第27条では、学校が学校安全計画を策定し、それを実施することを義務付けている。計画には施設・設備の安全点検、通学を含む学校生活その他の日常生活における安全指導、職員の研修などが含まれる。また第30条では、学校は保護者や警察署などの関係機関、地域で安全活動を行う団体、住民と連携するよう努めることとされている。こうして通学路など学校外での安全確保も対象となっている。条文に「学校外」という言葉そのものはないが、通学や日常生活を含む安全対策として規定されている。

  4. ×d.  児童の心的外傷後ストレス障害〈PTSD〉へのケア

    規定されている。第29条(危険等発生時対処要領の作成等)第3項は、事故等で児童生徒等に危害が生じた場合の支援を定めている。学校は、被害を受けた児童生徒等に加え、心理的外傷その他の心身の健康への影響を受けた児童生徒等や関係者に対し、心身の健康を回復させるための必要な支援を行う。PTSD(心的外傷後ストレス障害:生命を脅かす出来事の後に、再体験・回避・過覚醒などが持続する状態)への心のケアはこれに該当する。

  5. ×e.  就学中に発生した災害時の児童に対する安全対策

    規定されている。第26条は、学校の設置者が事故・加害行為・災害などによる危険を防止し、危険や危害が生じたときに適切に対処できるよう、施設・設備や管理運営体制を整備するよう努めることを定めている。さらに第29条では、各学校が危険等発生時対処要領(危機管理マニュアル)を作成し、職員への周知や訓練を行うことが求められている。

学校保健安全法の主な規定

・第1条:目的(児童生徒等および職員の健康の保持増進、児童生徒等の安全の確保) ・第5条:学校保健計画の策定(健康診断、環境衛生検査、保健指導などを含む) ・第6条:学校環境衛生基準(換気、採光、照明、保温、飲料水など) ・第7条:保健室の設置 ・第8〜10条:健康相談、保健指導、地域の医療機関等との連携 ・第11〜12条:就学時の健康診断(市町村教育委員会が実施) ・第13〜14条:児童生徒等の健康診断(毎学年定期、学校が実施) ・第15〜16条:職員の健康診断(学校の設置者が実施) ・第19条:出席停止(校長が行う) ・第20条:臨時休業(学校の設置者が行う) ・第23条:学校医・学校歯科医・学校薬剤師の配置 ・第26〜30条:学校安全(設置者の責務、学校安全計画、環境の安全確保、危険等発生時対処要領と心理的支援、地域の関係機関等との連携)

食育に関する法体系

・食育基本法(2005年):食育の基本理念、国・地方公共団体・教育関係者などの責務、食育推進基本計画 ・学校給食法:学校給食の目標と実施、学校給食を活用した食に関する指導(2008年改正で食育の推進を目的に明記) ・学校教育法:栄養教諭の職務(児童の栄養の指導および管理)

関連して混同しやすい法律

・感染症による出席停止の期間の基準は学校保健安全法施行規則で定められている(例:インフルエンザは発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで)。 ・学校給食の衛生管理基準は学校給食法に基づいて定められている。

POINT

・学校保健安全法=学校保健(健康診断、感染症予防、学校医など)+学校安全(2009年施行の改正で追加)。 ・職員の健康診断も同法に規定される(設置者が実施)。 ・学校安全計画、危険等発生時対処要領、心理的外傷への支援、地域との連携が規定されている。 ・食育は食育基本法・学校給食法が担い、学校保健安全法には規定がない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。