StudyMed医師国家試験

元気でも登校はまだ早い―水痘の出席停止は「すべてかさぶた」が合図

第116回医師国家試験 F問題 第36問

国試問題にチャレンジ

第116回 F問題 第36問

7歳の男児。昨日からの発疹を主訴に母親に連れられて来院した。生来健康である。全身状態は良好である。体温37.3℃。頭皮を含めた全身に発疹が認められた。  登校について正しいのはどれか。

第116回 F問題 第36問の問題画像
  1. a.全身状態が良好なら登校可能
  2. b.発症後5日間は出席停止
  3. c.発疹が消失するまで出席停止
  4. d.解熱後3日を経過するまで出席停止
  5. e.全ての発疹が痂皮化するまで出席停止

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、子どもの発疹から病気を見抜いたうえで、学校保健安全法に基づく出席停止の基準を答える問題だ。注目してほしいのは2つ。発疹がどんな形をしていて、どこに出ているか。そして、出席停止の基準が何を目安に決められているか、という点だね。まず、写真の発疹からどの病気を考えるかな。
医学生医学生
体幹に赤い斑点やぶつぶつ、水ぶくれ、かさぶたが混ざって見えます。頭皮にも出ているので水痘でしょうか。
ドクタードクター
その通り。水痘の発疹は数日にわたって次々と新しく出てきて、紅斑から丘疹、水疱、膿疱、痂皮へと変わっていく。だから、新しい発疹と古い発疹が同時に混在するのが最大の特徴なんだ。頭皮のような毛の生えている部分や口の中の粘膜にも出るよ。
医学生医学生
小児科の臨床実習で、指導医の先生に「いろんな段階の発疹が同時にある」のが水痘のポイントだと教わりました。でも麻疹や風疹とはどう区別すればいいですか。
ドクタードクター
麻疹は高熱とカタル症状、Koplik斑があり、発疹は融合しやすい紅斑だ。風疹は小さな紅斑と耳の後ろのリンパ節腫脹が目立ち、水疱はつくらない。手足口病なら小水疱が手のひら・足の裏・口の中に限られる。今回は微熱で全身状態が良好、水疱と痂皮が混ざっているから、水痘と考えてよい。
医学生医学生
本人は元気そうなので、熱が下がっていれば学校に行ってもいいように思ってしまいます。
ドクタードクター
そこが一番の落とし穴。出席停止の基準は本人の体調ではなく、周りにうつすかどうか、つまり感染性で決まるんだ。水痘は空気感染・飛沫感染・接触感染で広がり、感染力がとても強い。学校保健安全法では第二種の学校感染症に定められていて、病気ごとに出席停止期間の基準がある。水痘の基準は「すべての発疹が痂皮化するまで」だ。
医学生医学生
水疱の中にウイルスがたくさん含まれているから、全部かさぶたになるまでは感染性が残る、ということですね。
ドクタードクター
そう。新しい発疹が出なくなり、すべてが痂皮になれば感染性はほぼなくなる。だいたい発疹が出てから1週間前後が目安だ。今回は発疹が出た翌日で、まだ新しい発疹が出続ける時期だから、登校はできない。ほかの選択肢の基準がどの病気のものかも確認しておこう。「発症後5日」はどうかな。
医学生医学生
インフルエンザですよね。発症後5日を経過して、かつ解熱後2日でした。
ドクタードクター
正解。幼児は解熱後3日になる。新型コロナウイルス感染症も発症後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまで、と「5日」が入る。流行性耳下腺炎も、腫脹が出てから5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまでだ。では、「発疹が消失するまで」は?
医学生医学生
それは風疹の基準だったと思います。水痘の場合は、かさぶたになった時点で感染性がなくなるので、かさぶたが取れるまで待つ必要はないんですね。
ドクタードクター
その理解でいい。そして「解熱後3日」は麻疹の基準だ。麻疹はいったん熱が下がりかけてから再び高熱と発疹が出る二峰性の経過をとるから、解熱が目安になっている。一方、水痘は熱が軽いことが多いので、熱ではなく発疹の状態が基準になるわけだ。
医学生医学生
CBTの公衆衛生の範囲で丸暗記したときは混乱しましたが、病気の特徴と結びつけると覚えやすいですね。
ドクタードクター
まさにそこが大事。どの病気も「何をみれば感染性がなくなったと判断できるか」で基準ができている。なお第二種感染症では、病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めた場合は例外になるが、発症翌日の今回は当てはまらない。発展知識として、水痘は水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、潜伏期は約2週間。2014年から水痘ワクチンが定期接種になり、1歳代で2回接種する。
医学生医学生
治療では、子どもの解熱にアスピリンを使ってはいけないと薬理学の講義で習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。小児の水痘やインフルエンザでアスピリンを使うとReye症候群のリスクがあるから避ける。必要に応じてアシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス薬を使う。また、ウイルスは治った後も知覚神経節に潜伏し、加齢や免疫低下をきっかけに再活性化すると帯状疱疹になる。成人や免疫不全の人では水痘が重症化しやすいから、家族内や病棟での感染対策にも注意が必要だよ。
医学生医学生
臨床で水痘の患者さんを診たら、家族や周りの人のワクチン歴や免疫状態も確認するようにします。
ドクタードクター
それが実践的な視点だ。診断だけで終わらせず、登校・登園の指導や周囲への感染対策まで説明できるのが、子どもを診る医師の大事な役割なんだ。

まとめ

紅斑・丘疹・水疱・痂皮といった新旧の発疹が混在し、頭皮や口腔粘膜にも及ぶ発疹は水痘の特徴です。水痘は空気感染もする感染力の強い第二種学校感染症で、出席停止の基準は「すべての発疹が痂皮化するまで」であり、全身状態が良好でも基準を満たすまでは登校できません。麻疹は解熱後3日、風疹は発疹消失まで、インフルエンザは発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)、流行性耳下腺炎は腫脹発現後5日かつ全身状態良好までと、病気ごとの基準は感染性がなくなる目安に基づいて決められています。小児へのアスピリン投与はReye症候群のリスクから避け、2014年からの定期接種による予防や、潜伏感染後の帯状疱疹もあわせて押さえておきましょう。出席停止の基準を病態と結びつけて理解することは、国家試験だけでなく、外来での保護者への説明や集団感染の予防にも直結します。

解答・解説

正解はeです

所見の整理

・7歳の男児、生来健康。昨日から発疹が出現した。 ・全身状態は良好で、体温37.3℃と微熱程度。 ・頭皮を含む全身に発疹がある。画像では体幹に紅斑(赤い斑点)・丘疹・水疱・痂皮(かさぶた)が混在して散在している。

診断へのプロセス

小児の発熱・発疹症では、発疹の形態と分布、出現の順序から鑑別する。本例の特徴は、①発疹に紅斑から水疱、痂皮までさまざまな段階のものが同時に混在していること、②頭皮(有髪部)にも発疹が及んでいることである。水痘では発疹が数日にわたって次々と新たに出現し、紅斑→丘疹→水疱→膿疱→痂皮と経過するため、新旧の発疹が混在するのが特徴であり、有髪部や口腔粘膜にも生じる。発熱は軽度にとどまることが多く、全身状態が比較的保たれる点も合致する。麻疹(高熱、カタル症状、Koplik斑、融合傾向のある紅斑)、風疹(小さな紅斑と耳後部リンパ節腫脹、水疱は作らない)、手足口病(手掌・足底・口腔に限局する小水疱)などとは発疹の性状が異なる。以上より水痘と診断できる。

設問への考え方

水痘は学校保健安全法施行規則で第二種の学校感染症に定められており、出席停止期間の基準は「すべての発疹が痂皮化するまで」である。水疱内容には大量のウイルスが含まれており、すべての発疹が痂皮になれば感染力はほぼなくなると考えられるためである。全身状態が良好であっても、この基準を満たすまでは登校できない。

選択肢考察

  1. ×a.  全身状態が良好なら登校可能

    水痘は空気感染(飛沫核感染)・飛沫感染・接触感染で広がり、感染力が非常に強い。学校保健安全法では第二種感染症として出席停止期間の基準が定められており、本人の全身状態がよくても、基準を満たすまでは登校させない。なお、いずれの第二種感染症でも、病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めた場合は例外とされるが、発症翌日で新しい発疹が出続けている本例は該当しない。

  2. ×b.  発症後5日間は出席停止

    「発症後5日」を含む基準をもつのはインフルエンザ(発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日〈幼児は3日〉を経過するまで)と、新型コロナウイルス感染症(発症した後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまで)である。流行性耳下腺炎も「耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」と5日の基準をもつ。水痘の基準は日数ではなく発疹の状態で定められている。

  3. ×c.  発疹が消失するまで出席停止

    「発しんが消失するまで」は風疹の出席停止基準である。水痘では発疹が痂皮となった時点で感染力は失われるため、痂皮が脱落して発疹が完全に消えるまで待つ必要はない。

  4. ×d.  解熱後3日を経過するまで出席停止

    「解熱した後3日を経過するまで」は麻疹の出席停止基準である。麻疹は高熱が続き、いったん解熱傾向となった後に再び高熱とともに発疹が出現する二峰性の経過をとるため、解熱を目安に基準が定められている。水痘は発熱が軽度のことが多く、基準は発疹の痂皮化である。

  5. ○e.  全ての発疹が痂皮化するまで出席停止

    水痘の出席停止期間の基準である。水痘の発疹は数日間にわたって新しく出現し続け、水疱の内容液には感染性のあるウイルスが多量に含まれる。新しい発疹の出現が止まり、すべての発疹が痂皮となれば他者への感染性はほぼなくなるため、その時点が登校再開の目安となる。通常、発疹出現から約1週間でこの状態に達する。

学校保健安全法における学校感染症

・第一種: エボラ出血熱、ペスト、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)など、感染症法の一類・二類感染症(結核を除く)に相当する重篤な疾患。治癒するまで出席停止 ・第二種: 空気感染・飛沫感染するもので、学校で流行を広げる可能性が高いもの。疾患ごとに出席停止期間の基準が定められている ・第三種: 腸管出血性大腸菌感染症、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎、コレラ、細菌性赤痢など。病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めるまで出席停止

第二種感染症の主な出席停止期間の基準

・インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く): 発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで ・新型コロナウイルス感染症: 発症した後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまで ・百日咳: 特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで ・麻疹: 解熱した後3日を経過するまで ・流行性耳下腺炎: 耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで ・風疹: 発しんが消失するまで ・水痘: すべての発しんが痂皮化するまで ・咽頭結膜熱: 主要症状が消退した後2日を経過するまで ・結核、髄膜炎菌性髄膜炎: 病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めるまで

水痘の概要

原因は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV、ヘルペスウイルス科)。感染経路は空気感染・飛沫感染・接触感染で、感染力は極めて強い。潜伏期は約2週間(10〜21日)。発疹は体幹や頭皮から始まって全身に広がり、紅斑→丘疹→水疱→膿疱→痂皮と変化し、瘙痒を伴う。新旧の発疹が混在するのが特徴で、口腔粘膜にも出る。合併症として皮膚の二次性細菌感染、肺炎、脳炎・小脳失調などがあり、成人や免疫不全者では重症化しやすい。治療は必要に応じて抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)を用いる。小児ではアスピリンはReye症候群のリスクがあるため避ける。 予防には水痘ワクチン(弱毒生ワクチン)があり、2014年から定期接種となっている。生後12〜15か月に1回目、その後3か月以上(標準的には6〜12か月)の間隔をあけて2回目を接種する。 初感染後、VZVは知覚神経節に潜伏感染し、加齢や免疫低下を契機に再活性化すると、神経支配領域に沿って片側性に帯状疱疹を生じる。

POINT

・新旧(紅斑・丘疹・水疱・痂皮)の発疹が混在し、頭皮にも及ぶ → 水痘 ・水痘の出席停止基準: すべての発疹が痂皮化するまで ・麻疹は解熱後3日、風疹は発疹消失まで、インフルエンザは発症後5日かつ解熱後2日(幼児3日)、流行性耳下腺炎は腫脹発現後5日かつ全身状態良好まで ・出席停止の基準は、全身状態ではなく感染性の有無で決まる

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。