StudyMed医師国家試験

学校医は「決める人」ではなく「支える人」―法律で読み解く学校医の職務

第118回医師国家試験 F問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第118回 F問題 第33問

学校医の役割で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.学級閉鎖の指示命令
  2. b.食に関する指導(食育)
  3. c.学校保健計画立案への参与
  4. d.長時間労働教職員への面接
  5. e.感染症の予防に関する指導と助言

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は学校医の役割を問う問題だ。ポイントは、学校医の職務が学校保健安全法とその施行規則にどう定められているかを知ること、そして「誰が何を決める権限を持つのか」を区別することだよ。
医学生医学生
学校医というと、小学校のときの内科健診で聴診してくれた先生のイメージしかないです。
ドクタードクター
多くの人がそうだろうね。でも健康診断はあくまで職務の一部なんだ。学校保健安全法では、学校には学校医を置くこととされ、学校医は「学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する」と定められている。具体的な中身は施行規則の「職務執行の準則」に並んでいるよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、その準則のリストを見た気がします。最初のほうに計画の話があったような……。
ドクタードクター
よく覚えているね。準則の最初に掲げられているのが「学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与すること」だ。学校保健計画は、健康診断や環境衛生検査、保健指導などを年間を通じて計画的に行うために各学校がつくるもので、学校医は医学の専門家としてその立案に加わり意見を述べる。だから学校保健計画立案への参与は正しい。
医学生医学生
感染症の予防に関する指導と助言も、医師なら当然という気がしますが、準則にも書かれていますか。
ドクタードクター
明記されているよ。「感染症の予防に関し必要な指導及び助言を行い、並びに学校における感染症及び食中毒の予防処置に従事すること」とある。流行状況を踏まえた予防策の助言や、予防接種歴の確認・接種勧奨についての助言などがこれにあたる。こちらも正解だ。
医学生医学生
それなら、感染症が流行したときの学級閉鎖の指示も学校医の仕事ではないんですか。インフルエンザの流行期に学級閉鎖になった記憶があって、てっきり学校医の先生が決めていると思っていました。
ドクタードクター
そこが一番の引っかけだね。学級閉鎖は学校保健安全法でいう「臨時休業」の一部で、決めるのは学校の設置者、つまり公立なら教育委員会、私立なら学校法人なんだ。個々の児童生徒の出席停止を行うのは校長。学校医はその判断に医学的な助言をすることはあっても、指示命令する権限は持っていない。
医学生医学生
臨時休業は設置者、出席停止は校長、学校医は助言、と整理すればいいんですね。
ドクタードクター
その通り。次に食育はどうだろう。
医学生医学生
給食もあるので学校医が関わりそうですが、食育というと栄養教諭の先生が授業をしていた気がします。
ドクタードクター
いい感覚だね。食育は食育基本法に基づいて家庭・学校・地域などあらゆる場で進められるもので、学校での食に関する指導の中心は2005年に創設された栄養教諭なんだ。学校給食法でも、栄養教諭が給食を活用した実践的な指導を行うことが規定されている。学校医が健康教育として関わることはあっても、法令上の学校医の職務として挙げられたものではない。
医学生医学生
長時間労働の教職員への面接も、学校にいる医師という意味では学校医がやりそうに思えます。
ドクタードクター
そう考えたくなるけれど、根拠となる法律が違う。長時間労働者への面接指導は労働安全衛生法に基づく制度で、教職員を「労働者」として守るために事業者に課された義務なんだ。時間外・休日労働が月80時間を超えて疲労の蓄積があり、本人が申し出た場合に医師による面接指導を行う。常時50人以上の労働者がいる事業場では産業医が選任され、通常は産業医が担当する。
医学生医学生
子どもの健康は学校保健安全法で学校医、先生たちの労働者としての健康は労働安全衛生法で産業医、という線引きですね。産業医実習で聞いた面接指導の話とつながりました。
ドクタードクター
まさにそれ。学校医が産業医などを兼ねて面接を行うことはあり得るけれど、それは学校医としての職務ではない、という点が大事だ。少し発展知識も添えておこう。準則にはほかに、学校薬剤師と協力した環境衛生の維持・改善への指導助言、健康相談、保健指導、健康診断、疾病の予防処置、校長の求めによる救急処置、就学時健康診断や職員の健康診断への従事なども含まれている。執務したときは学校医執務記録簿に記入して校長に提出するんだ。
医学生医学生
環境衛生検査は学校薬剤師が中心なんですね。教室の換気や照度の検査を学校薬剤師がしていると聞いて驚いたことがあります。
ドクタードクター
そうなんだ。学校医・学校歯科医・学校薬剤師の三者がそれぞれの専門性で学校保健を支えている。臨床に出ると、地域の開業医として学校医を引き受けることも珍しくない。そのとき、出席停止や登校再開の判断を学校から相談されることがあるけれど、決めるのは校長や設置者で、学校医は医学的根拠をもって助言する立場だと理解しておくと、役割分担がスムーズになるよ。

まとめ

学校医の職務は学校保健安全法施行規則の「職務執行の準則」に定められ、学校保健計画・学校安全計画の立案への参与、感染症や食中毒の予防に関する指導・助言と予防処置、健康相談、保健指導、健康診断などが含まれます。一方、学級閉鎖などの臨時休業は学校の設置者、出席停止は校長の権限であり、学校医は医学的な助言にとどまります。学校での食育の中心は栄養教諭であり、長時間労働の教職員への面接指導は労働安全衛生法に基づき産業医などの医師が行うもので、学校医の職務ではありません。「どの法律で、誰が、何を決めるのか」を整理しておくことは、公衆衛生の問題を解く力になるだけでなく、将来地域で学校医を務める際の適切な役割分担にも直結します。

解答・解説

正解はc, eです

学校医の位置づけと職務は、学校保健安全法とその施行規則に定められている。同法第23条により、学校には学校医を置くこととされ(大学以外の学校には学校歯科医・学校薬剤師も置く)、学校医は「学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する」。具体的な職務の内容は、学校保健安全法施行規則(第22条)で「職務執行の準則」として列挙されている。 本問を解く鍵は、学校医の役割があくまで医学的・専門的な立場からの「技術と指導・助言」であり、学校運営上の決定権(休業や出席停止の決定)は持たないこと、そして教職員の労務管理としての健康管理は労働安全衛生法の枠組み(産業医など)で行われ、学校保健安全法上の学校医の職務とは別であることを区別する点にある。 職務の準則には、学校保健計画・学校安全計画の立案への参与、感染症や食中毒の予防に関する指導・助言と予防処置が明記されている。一方、臨時休業(学級閉鎖など)は学校の設置者の権限、食育は栄養教諭を中心に学校全体で推進するもの、長時間労働者への面接指導は労働安全衛生法に基づく医師の役割である。

選択肢考察

  1. ×a.  学級閉鎖の指示命令

    学校保健安全法第20条は、感染症の予防上必要があるとき、学校の設置者が臨時に学校の全部または一部の休業を行うことができると定めている。学級閉鎖はこの「一部の休業」にあたり、決定するのは設置者(公立学校では教育委員会、私立学校では学校法人)である。なお、個々の児童生徒の出席停止を命じるのは校長である(同法第19条)。学校医は、休業や出席停止の判断に際して医学的な立場から助言することはあるが、指示命令する権限は持たない。

  2. ×b.  食に関する指導(食育)

    食育は食育基本法に基づき、家庭・学校・保育所・地域などあらゆる場で推進されるものであり、学校医に固有の職務ではない。学校における食に関する指導の中心を担うのは、2005年に創設された栄養教諭であり、学校給食法でも栄養教諭が学校給食を活用した食に関する実践的な指導を行うことが規定されている。学校医が健康教育の一環として関わることはあり得るが、法令上の学校医の役割として挙げられているものではない。

  3. ○c.  学校保健計画立案への参与

    学校保健安全法施行規則の学校医の職務執行の準則の最初に、「学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与すること」が掲げられている。学校保健計画とは、児童生徒と職員の健康診断、環境衛生検査、保健指導などを年間を通じて計画的に実施するために各学校が策定する計画である(同法第5条)。学校医は医学的専門家として、その立案に参加し意見を述べる。

  4. ×d.  長時間労働教職員への面接

    長時間労働者への面接指導は労働安全衛生法(第66条の8)に基づく制度で、教職員という「労働者」の健康管理として事業者に課された義務である。時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合、事業者は医師による面接指導を行わなければならない。常時50人以上の労働者を使用する事業場では産業医が選任され、通常は産業医がこれを担う。50人未満の学校では産業医の選任義務がないため、地域の医師などに依頼して実施される。学校医がその医師を兼ねることはあっても、それは学校保健安全法上の学校医としての職務ではない。

  5. ○e.  感染症の予防に関する指導と助言

    職務執行の準則には、「感染症の予防に関し必要な指導及び助言を行い、並びに学校における感染症及び食中毒の予防処置に従事すること」が含まれている。具体的には、流行状況を踏まえた予防策の助言、出席停止や臨時休業の判断に関する医学的助言、予防接種歴の確認や接種勧奨に関する助言などがこれにあたる。

学校医の職務執行の準則(学校保健安全法施行規則第22条の要旨)

1)学校保健計画および学校安全計画の立案に参与する 2)学校の環境衛生の維持・改善に関し、学校薬剤師と協力して必要な指導・助言を行う 3)健康相談に従事する 4)保健指導に従事する 5)児童生徒等の健康診断に従事する 6)疾病の予防処置に従事する 7)感染症の予防に関する指導・助言、および感染症・食中毒の予防処置に従事する 8)校長の求めにより救急処置に従事する 9)市町村教育委員会または学校の設置者の求めにより、就学時の健康診断や職員の健康診断に従事する 10)その他、必要に応じて学校における保健管理に関する専門的事項の指導に従事する また、学校医は職務に従事したときは、その状況の概要を学校医執務記録簿に記入して校長に提出する。

学校保健安全法における権限の整理

・出席停止(感染症にかかっている、またはその疑いがある児童生徒等):校長が行う(第19条) ・臨時休業(学級閉鎖・学年閉鎖・休校):学校の設置者が行う(第20条) ・学校医・学校歯科医・学校薬剤師の設置:第23条(学校歯科医・学校薬剤師は大学を除く) ・学校環境衛生基準に基づく環境衛生検査:主に学校薬剤師が担う

教職員の健康管理

教職員の健康管理は労働安全衛生法に基づく。常時50人以上の労働者がいる事業場では産業医・衛生管理者の選任、衛生委員会の設置が必要であり、長時間労働者の面接指導やストレスチェックも同法に基づいて実施される。

POINT

・学校医の職務は学校保健安全法施行規則の「職務執行の準則」で定められ、学校保健計画・学校安全計画の立案参与、健康相談、保健指導、健康診断、感染症・食中毒の予防に関する指導助言などを行う。 ・出席停止は校長、臨時休業(学級閉鎖)は学校の設置者の権限であり、学校医は助言にとどまる。 ・学校での食育の中心は栄養教諭。 ・長時間労働者の面接指導は労働安全衛生法に基づき、産業医など医師が行うもので、学校医の職務ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。