StudyMed医師国家試験

舌を走る3系統の神経―「味わう・感じる・動かす」を分けて覚える味覚の支配

第111回医師国家試験 D問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第111回 D問題 第15問

味覚を支配するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.三叉神経
  2. b.顔面神経
  3. c.舌咽神経
  4. d.副神経
  5. e.舌下神経

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は味覚を伝える脳神経を問う問題だ。ポイントは、舌に関わる神経を「味覚」「一般感覚」「運動」の3つに分けて考えること。ここを混同すると、もっともらしい誤答に引っかかってしまうよ。まず、味覚を伝える脳神経をいくつ挙げられるかな。
医学生医学生
解剖学の講義で、VII・IX・Xの3つと習いました。顔面神経、舌咽神経、迷走神経ですよね。
ドクタードクター
その通り。舌について整理すると、舌の前2/3の味覚は顔面神経、後1/3は舌咽神経が担当する。迷走神経は舌根のさらに奥、喉頭蓋や咽頭・喉頭の一部の味覚を受けもつ。今回の選択肢に迷走神経はないから、答えは顔面神経と舌咽神経の2つになる。
医学生医学生
でも、舌の前のほうの感覚って三叉神経じゃありませんでしたっけ。舌神経は三叉神経の枝だと覚えていて、そこで迷いました。
ドクタードクター
まさにそこが本問の落とし穴だ。舌の前2/3の触覚・温度覚・痛覚といった一般感覚は、三叉神経第3枝である下顎神経の枝、舌神経が担っている。一方で味覚は顔面神経から分かれた鼓索神経が伝える。鼓索神経は中耳の鼓室を通り抜けたあと、途中で舌神経に合流して舌に分布するんだ。
医学生医学生
同じ神経束の中を走っているけれど、味覚の情報そのものは顔面神経系に属する、ということですね。
ドクタードクター
そういうこと。だから三叉神経は味覚を支配する神経としては誤りになる。ただ臨床的には、舌神経そのものが損傷されると、舌の前2/3の一般感覚と味覚がどちらも障害されうる、という点は知っておきたい。
医学生医学生
顔面神経は表情筋の神経というイメージが強かったので、味覚まで運んでいるのは意外でした。
ドクタードクター
顔面神経は運動線維だけでなく、味覚線維と副交感線維も含む混合神経なんだ。副交感線維は大錐体神経を経て涙腺、鼓索神経を経て顎下腺・舌下腺の分泌を支配する。軟口蓋の味覚も大錐体神経を介して顔面神経が伝えている。
医学生医学生
耳鼻咽喉科の実習で、顔面神経麻痺の患者さんに涙の量や味覚の検査をしていました。あれは障害部位を調べていたんですね。
ドクタードクター
よく結びつけたね。涙液分泌、アブミ骨筋反射、味覚がそれぞれ別の枝に対応しているから、どれが障害されているかで、病変が分岐より中枢側か末梢側かを推定できる。鼓索神経の分岐より中枢側の障害なら、顔面筋の麻痺に加えて患側の舌前2/3の味覚障害を伴うんだ。では舌咽神経のほうはどうかな。
医学生医学生
舌の後ろ1/3の味覚と一般感覚、それに咽頭の感覚でしょうか。OSCEの練習で咽頭反射を確認したときに、求心路が舌咽神経だと教わりました。
ドクタードクター
正解。舌咽神経は有郭乳頭を含む舌後1/3の味覚と一般感覚、咽頭粘膜の感覚を伝え、咽頭反射の求心路にもなる。ほかにも茎突咽頭筋の運動、耳神経節を経た耳下腺の分泌、それに頸動脈洞の圧受容器や頸動脈小体の化学受容器からの情報も運んでいる。
医学生医学生
残りの副神経と舌下神経は、どちらも運動神経でしたよね。
ドクタードクター
そう、どちらも感覚線維をもたない純粋な運動神経だ。副神経は胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配し、肩をすくめたり頭を反対側へ回したりする動作に関わる。舌下神経は舌の筋を動かす神経で、一側の障害では同側の舌の萎縮や線維束性収縮がみられ、舌を突き出すと舌先が障害側へ偏位する。
医学生医学生
舌に名前がついているのに、舌下神経は動かすだけで味は感じないんですね。名前に引っ張られないようにします。
ドクタードクター
いい心がけだ。まとめると、舌の前2/3は味覚が顔面神経、一般感覚が三叉神経。後1/3は味覚も一般感覚も舌咽神経。運動は舌下神経。この表を頭に描けるようにしておこう。
医学生医学生
味覚の中枢への伝導路も、CBTで出たことがあります。延髄の孤束核でしたっけ。
ドクタードクター
そうだね。味蕾の味細胞で受け取った刺激は、顔面神経・舌咽神経・迷走神経を通って延髄の孤束核に入り、そこから主に同側を上行して視床の後内側腹側核(VPM核)に中継され、島皮質や前頭弁蓋部の味覚野に届く。臨床で味覚障害の患者さんを診るときは、こうした神経の障害だけでなく、亜鉛欠乏、薬剤性、感染後、中耳手術での鼓索神経損傷など、幅広い原因を考える必要があるよ。

まとめ

味覚を伝える脳神経は顔面神経・舌咽神経・迷走神経の3つで、舌の前2/3の味覚は顔面神経の枝である鼓索神経、後1/3は舌咽神経が担い、迷走神経は喉頭蓋や咽頭・喉頭の一部を受けもちます。舌の前2/3の一般感覚は三叉神経の舌神経が担当し、鼓索神経の味覚線維がこの舌神経に合流して走るため混同しやすいものの、味覚は三叉神経の支配ではありません。舌の運動は舌下神経、副神経は胸鎖乳突筋と僧帽筋の運動を担い、いずれも味覚には関与しません。味覚の情報は孤束核から視床VPM核を経て島皮質・前頭弁蓋部へ伝わり、顔面神経麻痺では味覚や涙液分泌の障害の有無が障害部位推定の手がかりになります。舌の神経支配を「味覚・一般感覚・運動」に分けて整理しておくことは、脳神経診察や味覚障害の鑑別に直結する基本です。

解答・解説

正解はb, cです

味覚(特殊内臓感覚)を伝える脳神経は、顔面神経(第VII脳神経)、舌咽神経(第IX脳神経)、迷走神経(第X脳神経)の3つである。舌について整理すると、舌の前2/3の味覚は顔面神経の枝である鼓索神経、舌の後1/3の味覚は舌咽神経が伝える。迷走神経は舌根のさらに奥、喉頭蓋や咽頭・喉頭の一部の味覚を担う。 本問の選択肢には迷走神経がないため、正解は顔面神経と舌咽神経の2つになる。 間違えやすいのは三叉神経である。舌の前2/3の「一般感覚」(触覚、温度覚、痛覚)は三叉神経第3枝(下顎神経)の枝である舌神経が担っており、味覚と一般感覚とで支配神経が異なる点が問われている。鼓索神経の味覚線維は途中で舌神経に合流して舌に分布するため、解剖学的には同じ神経束の中を走るが、味覚の情報そのものは顔面神経系に属する。 また、舌の運動は舌下神経(第XII脳神経)が支配する。「舌」に関係する神経を、味覚・一般感覚・運動の3つに分けて整理しておくことが本問の要点である。

選択肢考察

  1. ×a.  三叉神経

    三叉神経(V)は顔面の皮膚、角膜、鼻腔・口腔粘膜、歯などの一般感覚(触覚・圧覚・温度覚・痛覚)を伝える感覚神経であり、舌の前2/3の一般感覚も第3枝の舌神経が担う。運動線維としては咀嚼筋(咬筋、側頭筋、内側・外側翼突筋)や鼓膜張筋などを支配する。味覚は担当しないため誤りである。ただし鼓索神経の味覚線維が舌神経に乗って舌に達するため、舌神経の損傷では舌の前2/3の一般感覚と味覚がともに障害されうる点は知っておくとよい。

  2. ○b.  顔面神経

    顔面神経(VII)は、表情筋やアブミ骨筋を動かす運動線維のほかに、味覚線維と副交感線維を含む。舌の前2/3の味覚は、顔面神経から分かれた鼓索神経が中耳(鼓室)を通過して舌神経に合流し、舌に分布することで伝えられる。軟口蓋の味覚も顔面神経の枝(大錐体神経)を介して伝わる。副交感線維は涙腺(大錐体神経経由)、顎下腺・舌下腺(鼓索神経経由)の分泌を支配する。このため末梢性顔面神経麻痺では、障害部位が鼓索神経の分岐より中枢側であれば、患側の顔面筋麻痺に加えて舌の前2/3の味覚障害を伴う。

  3. ○c.  舌咽神経

    舌咽神経(IX)は、舌の後1/3(有郭乳頭を含む)の味覚と一般感覚、咽頭粘膜の感覚を伝える。また、茎突咽頭筋を支配する運動線維と、耳神経節を経て耳下腺の分泌を支配する副交感線維を含む。さらに頸動脈洞(圧受容器)と頸動脈小体(化学受容器)からの情報も伝える。咽頭反射(絞扼反射)の求心路でもあり、舌咽神経障害では患側の舌後1/3の味覚低下や咽頭反射の低下がみられる。

  4. ×d.  副神経

    副神経(XI)は純粋な運動神経で、主に同側の胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配する。胸鎖乳突筋は頭部を反対側へ回旋させ、僧帽筋は肩をすくめる(肩甲骨を挙上する)動作に働く。延髄から出る線維(延髄根)は迷走神経に合流して咽頭・喉頭の筋の支配に加わる。感覚線維はもたず、味覚とは無関係である。

  5. ×e.  舌下神経

    舌下神経(XII)は舌の筋(内舌筋と、オトガイ舌筋などの外舌筋の大部分)を支配する純粋な運動神経で、感覚線維を含まないため味覚には関与しない。一側の舌下神経が核またはそれより末梢で障害されると、同側の舌の萎縮や線維束性収縮がみられ、舌を突き出すと舌先が障害側へ偏位する(健側のオトガイ舌筋が舌を押し出すため)。

舌の神経支配のまとめ

・舌の前2/3:味覚=顔面神経(鼓索神経)、一般感覚=三叉神経(下顎神経の枝である舌神経) ・舌の後1/3:味覚・一般感覚とも舌咽神経 ・喉頭蓋・咽頭や喉頭の一部:味覚・一般感覚とも迷走神経(上喉頭神経内枝など) ・舌の運動:舌下神経(口蓋舌筋のみ迷走神経系の咽頭神経叢支配)

味覚の伝導路

味蕾の味細胞で受け取られた刺激は、顔面神経・舌咽神経・迷走神経を通って延髄の孤束核(その吻側部)に入る。孤束核から出た2次ニューロンは主に同側の中心被蓋路を上行して視床の後内側腹側核(VPM核)に達し、3次ニューロンは大脳皮質の味覚野(島皮質および前頭弁蓋部、ブロードマンの43野付近)に投射する。

臨床との関連

・顔面神経麻痺の障害部位診断:涙液分泌(大錐体神経)、アブミ骨筋反射(アブミ骨筋神経)、味覚(鼓索神経)の障害の有無から、障害部位が分岐の中枢か末梢かを推定できる。 ・味覚障害の原因としては、亜鉛欠乏、薬剤性、感染後(COVID-19など)、中耳手術時の鼓索神経損傷、脳神経障害などがある。

POINT

・味覚を伝える脳神経はVII(顔面神経)、IX(舌咽神経)、X(迷走神経)の3つ。 ・舌の前2/3の味覚は顔面神経(鼓索神経)、後1/3は舌咽神経。 ・舌の前2/3の一般感覚は三叉神経(舌神経)であり、味覚と混同しない。 ・舌の運動は舌下神経、副神経は胸鎖乳突筋・僧帽筋の運動。 ・味覚の中継核は延髄の孤束核→視床VPM核→島皮質・前頭弁蓋部。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。