その制度、どの法律?―医療安全支援センターから整理する保健医療福祉の根拠法
第110回医師国家試験 E問題 第16問
国試問題にチャレンジ
規定されている内容とその根拠法の組合せで正しいのはどれか。
- a.介護福祉士の資格 ―― 介護保険法
- b.施設内の分煙の推進 ―― 地域保健法
- c.母子健康手帳の交付 ―― 母体保護法
- d.特別養護老人ホームの設置 ―― 高齢者医療確保法
- e.医療安全支援センターの役割 ―― 医療法
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
医療安全支援センターは、患者・家族からの医療に関する苦情や相談への対応、助言、情報提供などを担う中立的な窓口で、第5次医療法改正により医療法に位置づけられ、都道府県・保健所設置市・特別区が設置に努めることとされています。医療法には、医療機関の医療安全管理体制の整備義務や医療事故調査制度など、医療安全の仕組みがまとめて規定されています。紛らわしい組合せとして、介護福祉士は社会福祉士及び介護福祉士法、受動喫煙対策は健康増進法、母子健康手帳は母子保健法、特別養護老人ホームは老人福祉法が根拠であり、母体保護法は不妊手術・人工妊娠中絶、高齢者医療確保法は特定健診と後期高齢者医療制度を定めます。各法律の目的を一言で言えるように整理しておくと、資格・給付・施設の根拠が別々の法律に分かれていても迷わずに判断できます。こうした制度の知識は、退院支援や患者相談など臨床現場で多職種と連携する際の土台にもなります。
解答・解説
正解はeです
本問は、保健・医療・福祉の各制度がどの法律に根拠を置いているかを問う問題である。公衆衛生分野では、似た名前の法律が多く、「資格を定める法律」「サービスや給付を定める法律」「施設の設置を定める法律」が別々になっている場合が少なくない。 考え方のコツは、各法律の目的を一言で言えるようにしておくことである。 ・医療法:医療提供体制(病院・診療所の基準、医療計画、医療安全など) ・健康増進法:国民の健康づくり(国民健康・栄養調査、受動喫煙対策など) ・地域保健法:保健所・市町村保健センターなど地域保健の体制 ・母子保健法:妊産婦・乳幼児の保健(妊娠届、母子健康手帳、乳幼児健診など) ・母体保護法:不妊手術と人工妊娠中絶 ・老人福祉法:老人福祉施設(特別養護老人ホームなど)の設置・措置 ・高齢者医療確保法:特定健診・特定保健指導、後期高齢者医療制度、医療費適正化 ・介護保険法:要介護認定と介護保険給付 このように整理すると、医療安全支援センターが医療法に規定されているという組合せだけが正しいと判断できる。
選択肢考察
- ×a. 介護福祉士の資格 ―― 介護保険法
介護福祉士の資格は「社会福祉士及び介護福祉士法」(1987年制定)に規定される国家資格である。資格を持たない者がその名称を名乗ることを禁じる名称独占資格であり、業務独占ではない。介護保険法は要介護認定や介護給付・予防給付など保険制度の仕組みを定める法律であり、介護福祉士の資格そのものは定めていない。なお、介護保険法に根拠を持つ資格としては介護支援専門員(ケアマネジャー)がある。
- ×b. 施設内の分煙の推進 ―― 地域保健法
施設内での受動喫煙対策は健康増進法に規定される。2002年制定の健康増進法では、多数の者が利用する施設の管理者に受動喫煙防止の努力義務が課され、分煙はその手段の一つとされた。さらに2018年の改正(2020年4月全面施行)により、学校・病院・行政機関などは敷地内禁煙(屋外の喫煙場所は条件付きで可)、その他の多数の者が利用する施設は原則屋内禁煙(喫煙専用室などの設置は可)へと強化され、違反者への罰則も設けられた。地域保健法は保健所や市町村保健センターの設置・業務など地域保健体制の基本を定める法律であり、分煙を規定するものではない。
- ×c. 母子健康手帳の交付 ―― 母体保護法
母子健康手帳の交付は母子保健法に規定される。妊娠した者は市町村長に妊娠の届出を行い、市町村はこれに対して母子健康手帳を交付する。母子保健法にはほかに、保健指導、1歳6か月児健診・3歳児健診、低出生体重児の届出、未熟児訪問指導などが定められている。一方、母体保護法は不妊手術および人工妊娠中絶の要件や手続き(指定医師制度など)を定める法律であり、母子健康手帳とは無関係である。
- ×d. 特別養護老人ホームの設置 ―― 高齢者医療確保法
特別養護老人ホームは老人福祉法に基づいて設置される老人福祉施設である。設置主体は都道府県・市町村・社会福祉法人などで、社会福祉法人が設置する場合は都道府県知事の認可を受ける。介護保険制度のもとでは、都道府県知事の指定を受けた特別養護老人ホームが「介護老人福祉施設」として介護保険の施設サービスを提供するが、施設そのものの設置根拠は老人福祉法である。高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)は、医療費適正化計画、40~74歳を対象とする特定健康診査・特定保健指導、75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度などを定める法律であり、老人福祉施設の設置は規定していない。
- ○e. 医療安全支援センターの役割 ―― 医療法
医療安全支援センターは医療法に規定されている。2006年の医療法改正(2007年4月施行の第5次医療法改正)で法的に位置づけられ、都道府県・保健所設置市・特別区が設置に努めるものとされた。主な役割は、患者・家族からの医療に関する苦情や相談への対応、病院・診療所や患者への必要な助言、医療安全に関する情報提供、医療機関の管理者・従業者への研修などである。医療法には、このほか医療機関の管理者に対する医療安全管理体制の整備義務や、医療事故調査制度(2015年施行)など医療安全の仕組みがまとめて規定されている。よってこの組合せが正しい。
医療安全支援センターの成り立ち
医療事故への社会的関心の高まりを受け、2003年ごろから都道府県などで患者の相談窓口として医療安全支援センターが整備されてきたが、当初は行政上の取り組みにとどまり法律上の根拠がなかった。第5次医療法改正で医療法に明記され、設置主体と業務内容が明確化された。患者と医療機関の間に立つ中立的な相談窓口という位置づけであり、紛争の仲裁や医療過誤の判定を行う機関ではない点にも注意する。
医療法に定められた医療安全関連の仕組み
・医療機関の管理者による医療安全管理体制の確保(医療安全管理指針の整備、委員会の開催、職員研修など) ・医療安全支援センター(相談窓口) ・医療事故調査制度:医療に起因する予期しない死亡・死産が生じた場合、医療機関は医療事故調査・支援センターへ報告し院内調査を行う(2015年10月施行)
資格・施設とその根拠法の整理
・医師:医師法、看護師・保健師・助産師:保健師助産師看護師法 ・社会福祉士・介護福祉士:社会福祉士及び介護福祉士法 ・精神保健福祉士:精神保健福祉士法 ・介護支援専門員:介護保険法 ・特別養護老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホーム:老人福祉法 ・介護老人保健施設・介護医療院:介護保険法 ・保健所・市町村保健センター:地域保健法 ・病院・診療所・助産所:医療法
POINT
・医療安全支援センターは医療法に規定(第5次医療法改正で法定化、都道府県・保健所設置市・特別区が設置に努める)。 ・介護福祉士は社会福祉士及び介護福祉士法に基づく名称独占資格。 ・受動喫煙防止は健康増進法(2018年改正で原則屋内禁煙へ強化)。 ・母子健康手帳は母子保健法(市町村が交付)。母体保護法は不妊手術・人工妊娠中絶。 ・特別養護老人ホームの設置は老人福祉法。介護保険上は介護老人福祉施設として指定を受ける。 ・高齢者医療確保法は特定健診・特定保健指導と後期高齢者医療制度。
