総数2%なのに20代では半数―年齢で顔を変える日本の死因
第110回医師国家試験 E問題 第17問
国試問題にチャレンジ
平成24年(2012年)の年齢階級別の主な死因の構成割合を別に示す。 ①で示すのはどれか。

- a.自殺
- b.心疾患
- c.悪性新生物
- d.脳血管疾患
- e.不慮の事故
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
年齢階級別の死因構成割合を読み解く問題では、総数の大小ではなく、各死因がどの年齢層で大きな割合を占めるかという分布の形に注目することが鍵です。日本では10歳代後半〜30歳代の死因第1位は自殺であり、総数ではわずかでも20歳代では死因の約半数を占めます。小児・10代では不慮の事故、40〜89歳では悪性新生物、超高齢者では老衰・心疾患・肺炎の割合が大きくなります。総数の死因順位は1981年以降悪性新生物が第1位、心疾患が第2位で、2018年以降は老衰が第3位となっており、特定年次の数値よりも年齢分布の傾向とその変遷を押さえることが重要です。こうした統計の理解は、ライフステージごとの健康課題を捉え、若年者の自殺予防など臨床現場での気づきにもつながります。
解答・解説
正解はaです
人口動態統計に基づく、平成24年(2012年)の年齢階級別死因構成割合の帯グラフから、①に当たる死因を特定する問題である。
グラフの読み方
死因ごとに「どの年齢層で大きな割合を占めるか」という年齢分布の特徴をつかむのが鍵である。 ・①:総数ではわずか2.1%だが、15~19歳で37.3%、20~24歳で51.7%、25~29歳で49.5%、30~34歳で39.0%と、10歳代後半~30歳代で最大の割合を占め、高齢になるほど小さくなる。若年成人で第1位となるこの分布は自殺に特徴的である。 ・②:総数28.7%で最大。40歳代以降に割合が急増し、60~69歳で約半数を占める。悪性新生物である。 ・③:総数15.8%で第2位。全年齢層にみられ、高齢になっても割合が保たれる。心疾患(高血圧性を除く)である。 ・④:総数9.9%。中年期には少なく、80歳以上で急増する。肺炎である。 ・⑤:総数9.7%。中高年で一定の割合を占める。脳血管疾患である。 ・⑥:総数3.3%だが、5~9歳(20.7%)、10~14歳(18.7%)、15~19歳(24.9%)など小児・若年者で大きな割合を占める。不慮の事故である。 ・⑦:総数4.8%。90歳以上、特に100歳以上(31.6%)で大きな割合を占める。老衰である。 当時の総数での死因順位は、悪性新生物>心疾患>肺炎>脳血管疾患であり、グラフの②>③>④>⑤の順と一致する。以上から、①は自殺である。
本問の位置づけ
本問は特定年次の統計グラフを読ませる問題であり、その後の死因順位の変動(特に肺炎と老衰の順位の変化)により、グラフの数値自体は現在の統計とは一致しない。現在の国試対策としての有用性は低いが、「若年成人の死因第1位は自殺」「小児では不慮の事故の割合が高い」「高齢になるほど老衰・肺炎が増える」という年齢分布の傾向は現在も変わらず、押さえておく価値がある。
選択肢考察
- ○a. 自殺
①は総数では2.1%と小さいが、15~39歳で最大の割合を占め、20歳代では約半数に達する。若年成人で死因の第1位となるのは自殺であり、この分布に合致する。日本では10歳代後半~30歳代の死因第1位が自殺であることは、先進国の中でも特徴的な状況とされ、自殺対策基本法に基づく対策が進められている。
- ×b. 心疾患
心疾患(高血圧性を除く)は③である。総数で15.8%と第2位を占め、小児から高齢者まで全年齢層にみられ、高齢者でも割合が比較的保たれるのが特徴である。若年層で最大の割合を占めることはない。
- ×c. 悪性新生物
悪性新生物は②である。総数で28.7%と死因の第1位(1981年以降一貫して第1位)を占め、40歳代から割合が上昇して60歳代では約半数に及ぶ。ただし80歳以上では老衰や肺炎の割合が増えるため、相対的に割合は低下する。
- ×d. 脳血管疾患
脳血管疾患は⑤である。総数で9.7%を占め、当時は肺炎(④、9.9%)に次ぐ第4位であった。若年者ではほとんどみられず、中高年から高齢者で一定の割合を占める。かつて(1951~1980年)は死因の第1位であったが、高血圧管理の普及などにより死亡率は低下した。
- ×e. 不慮の事故
不慮の事故は⑥である。総数では3.3%にすぎないが、5~19歳では約2割を占め、小児・若年者で割合が高いのが特徴である(交通事故、溺水、窒息など)。ただし15~39歳では①(自殺)の割合のほうが大きい。
年齢階級別の死因の特徴
・0歳:先天奇形・変形及び染色体異常が第1位で、周産期に特異的な呼吸障害などが続く。1~4歳でも先天奇形等が上位である(本グラフでは「その他」に含まれる)。 ・5~14歳:悪性新生物と不慮の事故が上位を占め、近年は10~14歳でも自殺が上位(年によっては第1位)となっている。 ・15~39歳:自殺が第1位。不慮の事故、悪性新生物が続く。 ・40~89歳:悪性新生物が第1位(中年期で特に割合が大きい)。 ・90歳以上:心疾患・老衰・肺炎の割合が大きくなり、超高齢層では老衰が第1位となる。
総数での死因順位の変遷
・1951~1980年:脳血管疾患が第1位。 ・1981年以降:悪性新生物が第1位。1985年に心疾患が第2位となる。 ・2011年:肺炎が脳血管疾患を抜いて第3位となった(本問の2012年もこの順位)。 ・2017年:ICD-10(国際疾病分類第10版)の改訂に伴う原死因選択ルールの変更や、誤嚥性肺炎が肺炎と別に集計されるようになったことなどから、肺炎の順位が低下した。 ・2018年以降:高齢化を背景に老衰が第3位となり、近年は悪性新生物>心疾患>老衰>脳血管疾患>肺炎の順が続いている。
自殺の統計
日本の年間自殺者数は1998年に急増して3万人を超え、2011年まで3万人台が続いた。その後減少傾向となったが、2020年に再び増加に転じた。性別では男性が女性の約2倍である。総数の死因順位は10位前後だが、若年層では第1位であるため、年齢階級別にみることが重要である。
POINT
・10歳代後半~30歳代の死因第1位は自殺。 ・総数の死因第1位は悪性新生物(1981年以降)、第2位は心疾患。 ・小児・若年者では不慮の事故の割合が高い。 ・超高齢者では老衰・肺炎・心疾患の割合が大きくなる。 ・2012年当時は肺炎が第3位だったが、2018年以降は老衰が第3位、脳血管疾患が第4位、肺炎が第5位前後となっている。
