StudyMed医師国家試験

その検査、本当に役立つ?―病態と生体機能検査を「何を見逃さないか」で結びつける

第110回医師国家試験 B問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第9問

病態と実施すべき生体機能検査の組合せで適切でないのはどれか。

  1. a.失神 ―― 心電図
  2. b.尿閉 ―― 残尿量測定
  3. c.慢性腎臓病 ―― eGFR
  4. d.安静時振戦 ―― 脳波
  5. e.気管支喘息 ―― ピークフローメトリ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、代表的な病態とそれを評価する生体機能検査の組合せを問う問題だ。「適切でないもの」を選ぶ形式だから、病態の評価にほとんど役立たない組合せを探すことになる。コツは、それぞれの病態で「原因として何を見逃してはいけないか」「重症度や経過を何で追うか」を考えることだよ。
医学生医学生
5つともどこかで聞いたことのある組合せなので、パッと見ではどれも正しそうに見えてしまいます。
ドクタードクター
基本問題ほどそう感じるものだね。順番に整理しよう。まず失神と心電図。失神は一過性に脳全体の血流が落ちて意識を失う状態で、反射性、起立性低血圧、心原性に大別される。どれが一番怖いと思う?
医学生医学生
循環器内科の講義で、心原性失神は突然死につながるから絶対に見逃すなと言われました。
ドクタードクター
その通り。房室ブロックや洞不全症候群、心室頻拍、QT延長症候群、Brugada症候群などの不整脈が隠れていることがある。だから失神患者には全例で12誘導心電図をとるのが基本で、発作が捉えにくければHolter心電図や植込み型ループレコーダーも使う。適切な組合せだね。
医学生医学生
尿閉と残尿量測定は、泌尿器科の実習で排尿直後にエコーを当てて膀胱の尿量を測るのを見ました。
ドクタードクター
いい経験だね。尿閉は前立腺肥大症のような下部尿路閉塞、神経因性膀胱、抗コリン薬などの薬剤性が原因になる。排尿後に膀胱内にどれだけ残っているかを量で示せるので、排出障害の程度や治療効果の判定に役立つ。尿流測定と組み合わせることも多い。これも適切だ。
医学生医学生
慢性腎臓病とeGFRは、CKDの重症度分類そのものに使いますよね。
ドクタードクター
そう。CKDは蛋白尿などの腎障害所見、またはGFR 60 mL/分/1.73 m²未満が3か月以上続く状態で、原因・GFR区分・蛋白尿区分を組み合わせたCGA分類で重症度を評価する。イヌリンクリアランスでの実測は手間がかかるので、日常診療では血清クレアチニンと年齢・性別から計算するeGFRを使うんだ。筋肉量が少ない人ではシスタチンCによるeGFRも用いる。
医学生医学生
気管支喘息のピークフローメトリは、患者さんが自宅で毎日測るものでしたっけ。
ドクタードクター
そうだね。小さなピークフローメーターで最大呼気流量を測り、記録しておく。喘息では気流制限に応じて値が下がり、朝方に低くなるなど日内変動が大きくなるので、増悪の早期発見や治療効果の判定に使える。これも適切な組合せだ。
医学生医学生
となると残るのは安静時振戦と脳波ですね。振戦も脳の病気だから、脳波で何か分かりそうな気もしてしまうのですが。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだね。安静時振戦は力を抜いているときに目立ち、動かすと軽くなる振戦で、Parkinson病の代表的な症状だ。原因は大脳基底核の機能障害。一方、脳波は大脳皮質の電気活動を記録する検査で、基底核の異常はほとんど反映されない。
医学生医学生
なるほど、同じ「脳」でも、見ている場所が違うんですね。では安静時振戦はどうやって評価するんですか。
ドクタードクター
中心は病歴と神経学的診察。筋強剛、無動、姿勢反射障害がそろっているかをみる。補助検査としてはMIBG心筋シンチグラフィやドパミントランスポーターSPECTが使われる。だから適切でないのは安静時振戦と脳波の組合せ、これが正解だ。
医学生医学生
OSCEの神経診察で、安静時・姿勢時・企図時に分けて振戦を観察しましたが、あれが診断の基本ということですね。
ドクタードクター
まさにそう。安静時振戦ならParkinson病や薬剤性パーキンソニズム、姿勢時振戦なら本態性振戦や甲状腺機能亢進症、目標に近づくほど強くなる企図振戦なら小脳障害を考える。いずれも脳波は使わない。
医学生医学生
逆に、脳波が本当に役立つのはどんな場面ですか。
ドクタードクター
てんかん、意識障害、肝性脳症などの脳症、脳死判定、それからCreutzfeldt-Jakob病の周期性同期性放電あたりが代表だ。臨床では「とりあえず検査」ではなく、その検査で何が分かり、何を除外したいのかを意識してオーダーすることが大切だよ。失神で心電図を省いて心原性を見逃すのが一番危険だ、ということも覚えておこう。

まとめ

病態と検査の組合せは、「何を見逃してはならないか」「重症度や経過を何で追うか」から考えると整理しやすくなります。失神では突然死につながる心原性失神を除外するために心電図が必須であり、尿閉では残尿量測定、慢性腎臓病ではeGFRと蛋白尿によるCGA分類、気管支喘息ではピークフローの日内変動が評価の柱です。安静時振戦はParkinson病などの大脳基底核障害による症状で、診断の中心は神経診察であり、大脳皮質の活動をみる脳波は役立ちません。脳波はてんかん、意識障害、脳症、脳死判定、Creutzfeldt-Jakob病などで用いられます。各検査が「どこの何を見ているか」を理解しておくことは、無駄のない検査計画と見逃しの防止につながります。

解答・解説

正解はdです

代表的な病態(症候・疾患)と、その評価に用いる生体機能検査(生理機能検査)の対応を問う基本問題である。「適切でないもの」を選ぶ形式なので、病態の評価にほとんど役立たない検査の組合せを探す。

考え方

それぞれの病態について「原因として何を見逃してはならないか」「重症度や経過を何で追うか」を考えると、対応する検査が自然に決まる。 ・失神:生命に関わる心原性失神(不整脈など)を除外する → 心電図 ・尿閉:膀胱に尿がどれだけ残っているかを量的に評価する → 残尿量測定 ・慢性腎臓病:腎機能の程度で病期分類する → eGFR ・気管支喘息:気流制限の程度と日内変動を把握する → ピークフローメトリ ・安静時振戦:主にParkinson病など錐体外路系の障害で生じ、診断は神経診察が中心となる。脳波は大脳皮質の電気活動をみる検査であり、安静時振戦の診断・評価には通常用いない。 したがって、適切でない組合せは「安静時振戦 ―― 脳波」である。

選択肢考察

  1. ×a.  失神 ―― 心電図

    適切な組合せである。失神は一過性の脳全体の血流低下による意識消失で、反射性(血管迷走神経性など)、起立性低血圧、心原性に大別される。このうち心原性失神(洞不全症候群、房室ブロック、心室頻拍、QT延長症候群、Brugada症候群、大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症など)は突然死につながりうるため、失神患者では全例で12誘導心電図を記録することが基本である。発作が捉えにくい場合はHolter心電図や植込み型ループレコーダーなども用いる。

  2. ×b.  尿閉 ―― 残尿量測定

    適切な組合せである。尿閉は膀胱内に尿がたまっているのに十分に排出できない状態で、前立腺肥大症などの下部尿路閉塞、神経因性膀胱による排尿筋収縮障害、抗コリン薬などの薬剤性などが原因となる。排尿直後に経腹超音波(または導尿)で膀胱内に残った尿量を測定すると、排出障害の程度を客観的に評価でき、治療効果の判定にも用いられる。尿流測定と組み合わせて評価することが多い。

  3. ×c.  慢性腎臓病 ―― eGFR

    適切な組合せである。慢性腎臓病(CKD)は、蛋白尿などの腎障害の所見、またはGFR(糸球体濾過量)60 mL/分/1.73 m²未満の腎機能低下が3か月以上続く状態と定義される。重症度は原因(Cause)、GFR区分(G1〜G5)、蛋白尿区分(A1〜A3)を組み合わせたCGA分類で評価する。GFRの実測(イヌリンクリアランス)は煩雑なため、日常診療では血清クレアチニン値・年齢・性別から算出する推算GFR(eGFR)を用いる。筋肉量の少ない患者などでは、血清シスタチンCによるeGFRも用いられる。

  4. ○d.  安静時振戦 ―― 脳波

    適切でない組合せであり、これが正解である。安静時振戦は力を抜いて安静にしているときに目立ち、随意運動で軽減する振戦で、Parkinson病の代表的な運動症状である(4〜6 Hz程度、丸薬丸め様と表現される)。原因は大脳基底核の機能障害であり、診断は病歴と神経学的診察(筋強剛、無動、姿勢反射障害の有無など)が中心で、補助検査としてはMIBG心筋シンチグラフィやドパミントランスポーターSPECTなどが用いられる。脳波は大脳皮質の電気活動を記録する検査で、てんかんや意識障害、脳症の評価に有用だが、安静時振戦の診断には役立たない。

  5. ×e.  気管支喘息 ―― ピークフローメトリ

    適切な組合せである。ピークフロー(PEF)は最大努力呼出時の最大呼気流量で、小型のピークフローメーターを用いて患者自身が自宅で簡便に測定できる。気管支喘息では気流制限の程度に応じてPEFが低下し、日内変動(朝方に低下しやすい)が大きくなるため、毎日測定して記録することで病状の把握、増悪の早期発見、治療効果の判定に役立つ。診断にはスパイロメトリによる可逆性試験や気道過敏性試験なども用いる。

主な生体機能検査と対象となる病態

・心電図(12誘導、Holter、運動負荷):不整脈、虚血性心疾患、失神・動悸の精査 ・呼吸機能検査(スパイロメトリ、ピークフロー、肺拡散能):気管支喘息、COPD、間質性肺疾患 ・脳波:てんかん、意識障害、脳症(肝性脳症など)、脳死判定、Creutzfeldt-Jakob病(周期性同期性放電) ・筋電図・神経伝導検査:末梢神経障害、筋疾患、運動ニューロン疾患 ・尿流測定・残尿量測定・膀胱内圧測定:排尿障害、神経因性膀胱 ・超音波検査:心臓、腹部、乳腺、甲状腺、産科領域など

振戦の分類と鑑別

・安静時振戦:Parkinson病、薬剤性パーキンソニズムなど ・姿勢時振戦:本態性振戦、甲状腺機能亢進症、生理的振戦の増強 ・企図振戦(動作の目標に近づくほど増強):小脳障害 いずれも診断の中心は神経診察と病歴であり、脳波は用いない。

失神の分類

反射性失神(血管迷走神経性、状況失神、頸動脈洞症候群)、起立性低血圧による失神、心原性失神(不整脈、器質的心疾患)。予後に最も影響するのは心原性である。

POINT

・失神では心原性(不整脈)の除外のため心電図が必須 ・尿閉・排尿障害の評価には残尿量測定(超音波) ・CKDは eGFR と蛋白尿でCGA分類する ・喘息の自己管理にはピークフローメトリ(日内変動をみる) ・安静時振戦(Parkinson病)の診断に脳波は不要。脳波はてんかん・意識障害の評価に用いる

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。