StudyMed医師国家試験

恥骨の下に開くアーチ―「低く・広く・浅い」骨盤から女性を見抜く

第110回医師国家試験 B問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第10問

成人の骨盤部CTをもとに再構成した骨盤の画像(①~⑤)を別に示す。  女性と考えられるのはどれか。

第110回 B問題 第10問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、CTから立体的に再構成した5つの骨盤の中から、女性のものを選ぶ問題だ。骨盤は全身の骨で最も性差がはっきり出る部位。どこを見れば一目で判断できるか、それを押さえるのが目標だよ。
医学生医学生
解剖実習のとき、ご遺体の骨盤を見比べて男女で形が違うのに驚いた記憶があります。でも、具体的にどこを見ればいいのかはあいまいです。
ドクタードクター
まず、なぜ性差が生じるかから考えよう。女性の骨盤は、妊娠中に子宮を支え、分娩のときに胎児が通り抜けられるような形になっている。キーワードは「低く・広く・浅い」。男性は体格や筋量に見合った「高く・狭く・深い」頑丈な骨盤だ。
医学生医学生
産道として使うから広い、ということですね。それなら骨盤全体の横幅を見ればいいんでしょうか。
ドクタードクター
横幅も参考になるけれど、正面像で一番判断しやすいのは恥骨下角だ。左右の恥骨下枝が下でつくる角度のことだね。女性ではおおむね90°以上の鈍角で、恥骨弓は丸みを帯びたU字型のアーチになる。男性はおよそ60〜70°前後の鋭角で、逆V字型に尖る。
医学生医学生
指で例えると、女性は親指と人差し指を広げた角度、男性は人差し指と中指を広げた角度、という覚え方を聞いたことがあります。
ドクタードクター
よく知られた覚え方だね。目安としては使える。では画像を比べてみよう。5つの中で、恥骨の下が丸く大きく開いているのはどれかな。
医学生医学生
②だけ、恥骨の下がアーチ状に広く開いていて、骨盤全体も横に広くて背が低い感じがします。
ドクタードクター
その通り。②は恥骨下角が鈍角に開き、骨盤が横長で、小骨盤腔も広い。女性骨盤の典型的な特徴がそろっているから、正解は②だ。
医学生医学生
ほかの4つはどう見ればいいですか。正直、パッと見ただけだと区別がつきにくいものもありました。
ドクタードクター
残りの4つは、いずれも恥骨下角が狭い逆V字型で、骨盤全体が縦長、小骨盤腔も狭い。だから男性骨盤と判断できる。ひとつだけ選ぶ問題では、「1つだけ形が違うもの」を探す見方も役に立つよ。
医学生医学生
恥骨下角以外にも、性差を見分けるポイントはありますか。
ドクタードクター
たくさんあるよ。骨盤上口は女性では横に広い楕円形、男性では前後に長いハート型。小骨盤腔は女性が円筒状、男性が漏斗状。仙骨は女性で幅広く短く弯曲が緩やか、男性で幅が狭く長く弯曲が強い。大坐骨切痕は女性で広く、閉鎖孔は女性で三角形に近く、男性で卵円形になる傾向がある。
医学生医学生
法医学の講義で、白骨遺体の性別判定には骨盤が一番役立つと習いました。
ドクタードクター
そうだね。骨盤が最も有用で、次いで頭蓋骨が使われる。それだけ性差が明瞭ということだ。では臨床ではどこで役立つと思う?
医学生医学生
産婦人科の実習で、児頭骨盤不均衡の話を聞きました。骨盤の形や大きさで経腟分娩ができるかが変わるんですよね。
ドクタードクター
その通り。児頭骨盤不均衡が疑われるときは、骨盤X線計測などで骨盤の形と大きさを評価する。ただ、女性でも骨盤の形には個人差があり、男性型に近い形の人もいるから、性差の特徴はあくまで傾向として理解しておくことが大切だよ。

まとめ

骨盤は全身の骨の中で最も性差がはっきり現れる部位で、女性の骨盤は妊娠と分娩に適した「低く・広く・浅い」形、男性の骨盤は「高く・狭く・深い」頑丈な形をしています。正面像で最も判断しやすいのは恥骨下角で、女性では鈍角(おおむね90°以上)のU字型アーチ、男性では鋭角の逆V字型になります。そのほか、骨盤上口の形(女性は横長の楕円形、男性はハート型)、小骨盤腔(円筒状か漏斗状か)、仙骨の幅と弯曲、大坐骨切痕の広さなども参考になります。これらの知識は、産科での児頭骨盤不均衡の評価や、法医学での白骨遺体の性別判定に直結します。解剖学の知識が画像診断や臨床判断にそのままつながることを実感できるテーマです。

解答・解説

正解はbです

骨盤CTの3次元再構成画像から、骨盤の性差を読み取る問題である。

骨盤に性差が生じる理由

女性の骨盤は、妊娠中に子宮を支え、分娩時に胎児が通過できるように、男性に比べて「低く・広く・浅い」形をしている。これに対して男性の骨盤は、体格や筋量に応じて「高く・狭く・深い」頑丈な形をしている。骨盤は全身の骨の中で最も性差がはっきり現れる部位であり、身元不明の白骨遺体の性別判定でも最も重視される。

画像の読み方

正面から見た骨盤で最も判断しやすいのは恥骨下角(左右の恥骨下枝がなす角度)である。 ・女性:恥骨下角が鈍角(おおむね90°以上)で、恥骨弓は丸みを帯びたアーチ状(U字型)になる。 ・男性:恥骨下角が鋭角(おおむね60〜70°前後)で、逆V字型の尖った形になる。 そのほか、閉鎖孔の形(女性は三角形に近く、男性は卵円形で大きめ)、骨盤全体の横幅と高さの比、腸骨翼の広がり方、小骨盤腔の広さなども参考にする。 画像を比べると、②だけが恥骨下角が広く開いた鈍角で、骨盤全体も横に広く低い形をしており、小骨盤腔も広い。①③④⑤はいずれも恥骨下角が狭い逆V字型で、骨盤が縦長・狭小であることから男性骨盤と判断される。したがって女性と考えられるのは②である。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    左右の恥骨下枝が鋭角に交わり、恥骨弓が逆V字型に尖っている。骨盤全体も縦に高く、小骨盤腔が狭いことから男性骨盤と考えられる。

  2. ○b.  ②

    恥骨下角が鈍角に大きく開き、恥骨弓が丸いアーチ状を呈している。骨盤は横幅が広く高さが低い形で、小骨盤腔も広く、閉鎖孔も比較的大きく見える。分娩に適した女性骨盤の典型的な特徴を備えており、女性と判断される。

  3. ×c.  ③

    恥骨下角が狭い鋭角で逆V字型を示す。閉鎖孔も狭く、骨盤全体が縦長で骨の造りも頑丈にみえることから、男性骨盤と考えられる。

  4. ×d.  ④

    恥骨下角が鋭角で、恥骨弓は逆V字型に尖っている。小骨盤腔も狭いことから男性骨盤と考えられる。

  5. ×e.  ⑤

    恥骨下角が狭い逆V字型であり、男性骨盤の特徴を示す。骨盤の横幅に比べ下方の骨盤出口が狭い点も男性的である。

骨盤の性差のまとめ(女性 対 男性)

・全体の形:低く広く浅い 対 高く狭く深い ・恥骨下角:鈍角(90°以上、恥骨弓はU字型) 対 鋭角(約60〜70°、逆V字型) ・骨盤上口(骨盤入口):横に広い楕円形 対 前後に長いハート型 ・小骨盤腔:広く円筒状 対 狭く漏斗状 ・閉鎖孔:三角形に近い 対 卵円形で大きい ・仙骨:幅広く短く、弯曲が緩やか 対 幅が狭く長く、弯曲が強い ・岬角の突出:弱い 対 強い ・坐骨棘:外側に開き突出が少ない 対 内側に向かって突出 ・大坐骨切痕:広い 対 狭い ・寛骨臼:小さめ 対 大きめ ・骨の質感:薄く滑らか 対 厚く筋付着部が目立つ

臨床・法医学との関連

・産科では、骨盤の形や大きさが経腟分娩の可否に関わる。児頭骨盤不均衡(CPD)が疑われる場合には骨盤X線計測などで評価する。 ・法医学では、白骨化した遺体の性別判定に骨盤が最も有用であり、次いで頭蓋骨が用いられる。

POINT

・骨盤は性差が最もはっきり現れる骨である ・女性:恥骨下角が鈍角(U字型)、骨盤は低く広く、小骨盤腔は円筒状 ・男性:恥骨下角が鋭角(逆V字型)、骨盤は高く狭く、小骨盤腔は漏斗状 ・正面像では恥骨下角を見るのが最も簡便

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。