恥骨の下に開くアーチ―「低く・広く・浅い」骨盤から女性を見抜く
第110回医師国家試験 B問題 第10問
国試問題にチャレンジ
成人の骨盤部CTをもとに再構成した骨盤の画像(①~⑤)を別に示す。 女性と考えられるのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
骨盤は全身の骨の中で最も性差がはっきり現れる部位で、女性の骨盤は妊娠と分娩に適した「低く・広く・浅い」形、男性の骨盤は「高く・狭く・深い」頑丈な形をしています。正面像で最も判断しやすいのは恥骨下角で、女性では鈍角(おおむね90°以上)のU字型アーチ、男性では鋭角の逆V字型になります。そのほか、骨盤上口の形(女性は横長の楕円形、男性はハート型)、小骨盤腔(円筒状か漏斗状か)、仙骨の幅と弯曲、大坐骨切痕の広さなども参考になります。これらの知識は、産科での児頭骨盤不均衡の評価や、法医学での白骨遺体の性別判定に直結します。解剖学の知識が画像診断や臨床判断にそのままつながることを実感できるテーマです。
解答・解説
正解はbです
骨盤CTの3次元再構成画像から、骨盤の性差を読み取る問題である。
骨盤に性差が生じる理由
女性の骨盤は、妊娠中に子宮を支え、分娩時に胎児が通過できるように、男性に比べて「低く・広く・浅い」形をしている。これに対して男性の骨盤は、体格や筋量に応じて「高く・狭く・深い」頑丈な形をしている。骨盤は全身の骨の中で最も性差がはっきり現れる部位であり、身元不明の白骨遺体の性別判定でも最も重視される。
画像の読み方
正面から見た骨盤で最も判断しやすいのは恥骨下角(左右の恥骨下枝がなす角度)である。 ・女性:恥骨下角が鈍角(おおむね90°以上)で、恥骨弓は丸みを帯びたアーチ状(U字型)になる。 ・男性:恥骨下角が鋭角(おおむね60〜70°前後)で、逆V字型の尖った形になる。 そのほか、閉鎖孔の形(女性は三角形に近く、男性は卵円形で大きめ)、骨盤全体の横幅と高さの比、腸骨翼の広がり方、小骨盤腔の広さなども参考にする。 画像を比べると、②だけが恥骨下角が広く開いた鈍角で、骨盤全体も横に広く低い形をしており、小骨盤腔も広い。①③④⑤はいずれも恥骨下角が狭い逆V字型で、骨盤が縦長・狭小であることから男性骨盤と判断される。したがって女性と考えられるのは②である。
選択肢考察
- ×a. ①
左右の恥骨下枝が鋭角に交わり、恥骨弓が逆V字型に尖っている。骨盤全体も縦に高く、小骨盤腔が狭いことから男性骨盤と考えられる。
- ○b. ②
恥骨下角が鈍角に大きく開き、恥骨弓が丸いアーチ状を呈している。骨盤は横幅が広く高さが低い形で、小骨盤腔も広く、閉鎖孔も比較的大きく見える。分娩に適した女性骨盤の典型的な特徴を備えており、女性と判断される。
- ×c. ③
恥骨下角が狭い鋭角で逆V字型を示す。閉鎖孔も狭く、骨盤全体が縦長で骨の造りも頑丈にみえることから、男性骨盤と考えられる。
- ×d. ④
恥骨下角が鋭角で、恥骨弓は逆V字型に尖っている。小骨盤腔も狭いことから男性骨盤と考えられる。
- ×e. ⑤
恥骨下角が狭い逆V字型であり、男性骨盤の特徴を示す。骨盤の横幅に比べ下方の骨盤出口が狭い点も男性的である。
骨盤の性差のまとめ(女性 対 男性)
・全体の形:低く広く浅い 対 高く狭く深い ・恥骨下角:鈍角(90°以上、恥骨弓はU字型) 対 鋭角(約60〜70°、逆V字型) ・骨盤上口(骨盤入口):横に広い楕円形 対 前後に長いハート型 ・小骨盤腔:広く円筒状 対 狭く漏斗状 ・閉鎖孔:三角形に近い 対 卵円形で大きい ・仙骨:幅広く短く、弯曲が緩やか 対 幅が狭く長く、弯曲が強い ・岬角の突出:弱い 対 強い ・坐骨棘:外側に開き突出が少ない 対 内側に向かって突出 ・大坐骨切痕:広い 対 狭い ・寛骨臼:小さめ 対 大きめ ・骨の質感:薄く滑らか 対 厚く筋付着部が目立つ
臨床・法医学との関連
・産科では、骨盤の形や大きさが経腟分娩の可否に関わる。児頭骨盤不均衡(CPD)が疑われる場合には骨盤X線計測などで評価する。 ・法医学では、白骨化した遺体の性別判定に骨盤が最も有用であり、次いで頭蓋骨が用いられる。
POINT
・骨盤は性差が最もはっきり現れる骨である ・女性:恥骨下角が鈍角(U字型)、骨盤は低く広く、小骨盤腔は円筒状 ・男性:恥骨下角が鋭角(逆V字型)、骨盤は高く狭く、小骨盤腔は漏斗状 ・正面像では恥骨下角を見るのが最も簡便
