月経は「出血」ではなく「お片付け」―剝がれ落ちる子宮内膜の意味を考える
第117回医師国家試験 B問題 第24問
国試問題にチャレンジ
月経は何を排出するために起きているか。
- a.血液
- b.頸管粘液
- c.子宮内膜
- d.腟分泌物
- e.卵管分泌物
対話形式の解説
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ドクターまとめ
月経は、妊娠が成立せず黄体が退縮してエストロゲン・プロゲステロンが消退することで、着床に備えて肥厚した子宮内膜の機能層が虚血・壊死を起こして剝離し、出血とともに排出される現象です。したがって月経の本質は不要になった子宮内膜の排出であり、血液は血管断裂に伴う二次的なもの、頸管粘液や腟分泌物は付随して出てくるにすぎません。基底層は剝がれず次周期の再生の源となるため、基底層が損傷されるとAsherman症候群による無月経をきたしえます。妊娠時にhCGが黄体を維持して月経が止まる仕組みや、ゲスターゲンテストの消退出血も同じ原理で説明できます。月経を「ホルモン消退による内膜の作り直し」と捉えることは、月経異常や無月経の病態を理解するうえでの基本となります。
解答・解説
正解はcです
月経とは、およそ1か月ごとに自然に始まり、数日のうちに自然に止まる子宮内膜由来の周期的な出血をいう。本問は「月経で出血が起こる」という現象そのものではなく、「月経という現象が何を体外へ出すために起きているのか」という本質を問うている。
月経が起こる仕組み
卵巣周期に合わせて子宮内膜も周期的に変化する。卵胞期にはエストロゲンの作用で内膜が増殖・肥厚し(増殖期)、排卵後は黄体から分泌されるプロゲステロンの作用で内膜腺が分泌活動を始め、間質が浮腫状になって受精卵の着床に適した状態となる(分泌期)。妊娠が成立しなければ黄体は約2週間で退縮し、エストロゲンとプロゲステロンが急激に低下する。するとらせん動脈が攣縮して内膜の機能層が虚血・壊死に陥り、基底層から剝がれ落ちる。この剝離した内膜組織が、断裂した血管からの出血とともに腟を経て排出されるのが月経である。
考え方
月経血には血液のほか、頸管粘液や腟分泌物も混じる。しかしそれらは月経に付随して一緒に出てくるものにすぎない。月経の目的は、着床に備えて準備されたものの不要になった子宮内膜(機能層)を除去し、次の周期で新しい内膜を作り直すことにある。したがって正解は「子宮内膜」である。
選択肢考察
- ×a. 血液
月経血の大部分は肉眼的には血液に見えるが、出血は内膜機能層が剝がれる際にらせん動脈などの血管が断裂して生じる二次的な現象である。血液を体外に出すこと自体が月経の目的ではない。なお月経血は内膜由来の線溶酵素(プラスミンなど)の作用で通常は凝固しにくい。
- ×b. 頸管粘液
頸管粘液は子宮頸管腺から常時分泌されており、排卵期にはエストロゲンの作用で量が増えて透明・牽糸性が高まり精子が通りやすくなる。月経時に月経血に混じって排出されることはあるが、頸管粘液を排出するために月経が起こるわけではない。
- ○c. 子宮内膜
妊娠が成立しないと黄体が退縮し、エストロゲン・プロゲステロンが消退する(消退出血)。これにより着床に備えて肥厚・分泌期化した内膜の機能層が虚血・壊死を起こして剝離し、出血とともに排出される。月経は不要になった内膜機能層を除去して次周期の内膜再生に備えるための現象であり、これが正解である。
- ×d. 腟分泌物
腟分泌物(腟壁からの漏出液や剝離した腟上皮細胞、常在菌などを含む)は月経とは無関係に日常的に腟外へ出ている。月経血が腟を通過するときに混じるだけで、腟分泌物の排出が月経の目的ではない。
- ×e. 卵管分泌物
卵管上皮の分泌物は卵子・受精卵の輸送や栄養に関与し、卵管内腔から子宮腔や腹腔側へ流れる。卵管は月経時の出血や組織の剝離には関与せず、月経の目的とは関係しない。
子宮内膜の構造
子宮内膜は、子宮腔側の機能層と、筋層に接する基底層に分けられる。 ・機能層:卵巣ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)に反応して増殖・肥厚・分泌期変化・剝離を周期的に繰り返す。月経で脱落するのはこの層である。 ・基底層:周期的な変化をほとんど示さず、月経時にも剝離しない。月経後に内膜を再生するための細胞(腺・間質の前駆細胞)の供給源となる。
子宮内膜周期
・月経期:ホルモン消退により機能層が剝離・排出される。 ・増殖期:卵胞から分泌されるエストロゲンにより、基底層から内膜が再生・増殖する。 ・分泌期:排卵後、黄体からのプロゲステロンにより内膜腺が分泌活動を行い、間質が脱落膜様に変化して着床に備える。 妊娠が成立すると、胚(のちの胎盤)から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が黄体を維持してプロゲステロン分泌が続くため、内膜は剝離せず月経は止まる。
臨床との関連
・内膜の基底層まで損傷されると内膜が再生できず、子宮腔内の癒着(Asherman症候群)や無月経をきたす。 ・プロゲスチン投与後に中止すると消退出血が起こることは、内膜がエストロゲンで準備されているかを確認する検査(ゲスターゲンテスト)として無月経の評価に用いられる。
POINT
・月経は、妊娠不成立による黄体退縮→エストロゲン・プロゲステロン消退→内膜機能層の剝離・排出である。 ・月経の本質は「不要になった子宮内膜(機能層)の排出」であり、血液・頸管粘液・腟分泌物は付随して出てくるにすぎない。 ・基底層は剝離せず、次周期の内膜再生の源となる。
