両手で挟んで骨盤をみる―双合診の体位・順序・触れるもの触れないもの
第113回医師国家試験 B問題 第14問
国試問題にチャレンジ
婦人科診察の双合診で正しいのはどれか。
- a.砕石位で行う。
- b.正常卵管を触知する。
- c.外陰部視診の前に行う。
- d.膀胱に尿をためて行う。
- e.Douglas窩は外診指で触診する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
双合診は、腟内の内診指と下腹部の外診指で骨盤内臓器を挟んで触診する婦人科の基本手技で、事前に排尿させたうえで内診台上の砕石位で行います。診察の順序は外陰部の視診・触診、腟鏡診(細胞診採取を含む)、双合診の順で、先に指を入れると所見や検体が変化するため避けます。正常の卵管は触知できず、正常卵巣も通常は触れにくいため、付属器を明らかに触れれば腫瘍や異所性妊娠などの病的腫大を考えます。Douglas窩は外診指では届かず、内診指で後腟円蓋を介して評価し、内膜症や腹腔内出血の手がかりになります。膀胱充満が必要なのは経腹超音波であることや、性交経験のない女性では直腸診で代用することも併せて押さえておくと、実際の診察で迷わず安全に所見を取ることができます。
解答・解説
正解はaです
婦人科の内診(双合診)の基本的な手技と前提条件を問う問題である。 双合診とは、一方の手の示指と中指(または示指のみ)を腟内に挿入し(内診指)、もう一方の手を下腹部に置いて(外診指)、両手の間に骨盤内臓器を挟むようにして触診する方法である。子宮の大きさ・形・硬さ・可動性・圧痛、付属器(卵巣・卵管)の腫大や圧痛、Douglas窩(直腸子宮窩)の硬結や圧痛などを評価する。 婦人科診察の一般的な順序は、問診 → 外陰部の視診・触診 → 腟鏡診(クスコ腟鏡で腟壁と子宮腟部を観察し、必要に応じて細胞診を採取する) → 双合診 → 必要に応じて直腸診・直腸腟診、である。指を挿入する前に視診・腟鏡診を行うのは、潤滑剤や指による接触で分泌物や細胞が変化・混入するのを避け、正確な観察と検体採取を行うためである。 診察は内診台上で砕石位(仰臥位で両下肢を挙上・開脚し、股関節と膝関節を屈曲させた体位)をとって行い、事前に排尿させて膀胱を空にしておく。腹壁の緊張がとれていないと骨盤内臓器を十分に触れないため、患者が安心してリラックスできるよう配慮することが重要である。
選択肢考察
- ○a. 砕石位で行う。
双合診は内診台上で砕石位をとって行う。砕石位とは、仰臥位で両下肢を挙上して開き、股関節と膝関節を曲げた体位で、もともと膀胱結石の砕石術に用いられたことからこの名がある。外陰部と腟口が正面に露出され、さらに股関節を屈曲させることで腹壁の緊張が緩むため、腟内の内診指と腹壁上の外診指で骨盤内臓器を挟み込みやすくなる。
- ×b. 正常卵管を触知する。
正常の卵管は直径数mm程度の細く柔らかい管状構造であり、双合診で触知することはできない。卵巣も通常は触れにくく、やせて腹壁の薄い人で正常卵巣をわずかに触れることがある程度である。付属器を明らかに触知する場合には、卵巣腫瘍、卵管留水腫・卵管留膿腫、異所性妊娠、子宮内膜症性嚢胞などの病的な腫大を考える。
- ×c. 外陰部視診の前に行う。
順序が逆である。婦人科診察では、まず外陰部の視診・触診で炎症、腫瘤、潰瘍、萎縮などを確認し、次に腟鏡診を行い、そのあとで双合診を行う。先に指を挿入すると、潤滑剤や接触によって分泌物の性状や子宮腟部の所見が変化したり、細胞診の検体が不適切になったりするためである。
- ×d. 膀胱に尿をためて行う。
双合診は排尿させて膀胱を空にしてから行う。膀胱が充満していると、前方に位置する子宮や付属器の触診が妨げられるうえ、圧迫による不快感や尿意で腹壁が緊張し、正確な所見が得られない。なお、膀胱に尿をためた状態が望ましいのは経腹超音波検査であり(膀胱を音響窓として子宮・卵巣を描出する)、これと混同しないよう注意する。経腟超音波は排尿後に行う。
- ×e. Douglas窩は外診指で触診する。
Douglas窩(直腸子宮窩)は子宮の後方、直腸との間にある腹膜腔の最も低い部分であり、腹壁上の外診指では届かない。腟内に挿入した内診指で後腟円蓋を介して触診する。子宮内膜症による硬結・圧痛、骨盤腹膜炎、腹腔内出血(異所性妊娠破裂など)による膨隆・圧痛、癌の腹膜播種による結節などの評価に重要である。より詳しく評価したい場合は直腸診や直腸腟診を併用する。
婦人科診察の流れ
1. 問診(月経歴、妊娠・分娩歴、性交経験の有無など) 2. 診察前の排尿 3. 内診台で砕石位をとる 4. 外陰部の視診・触診 5. 腟鏡診(腟壁、子宮腟部の観察、帯下の性状、子宮頸部細胞診の採取) 6. 双合診(子宮・付属器・Douglas窩の評価) 7. 必要に応じて直腸診、直腸腟診
双合診で評価する項目
・子宮:大きさ、形(筋腫による凹凸など)、硬さ(妊娠では軟化)、位置(前傾前屈・後傾後屈)、可動性(内膜症や癒着で低下)、圧痛 ・付属器:腫瘤の有無・大きさ・硬さ・可動性・圧痛 ・Douglas窩:硬結、圧痛、膨隆 ・子宮頸部の移動痛:頸部を動かすと痛む所見で、骨盤内炎症性疾患(PID)や異所性妊娠で認める。
配慮事項
・性交経験のない女性には腟内への指挿入を避け、直腸診(直腸腹壁双合診)で代用する。 ・羞恥心や痛みに配慮し、声かけを行って腹壁の緊張を緩めてもらう。 ・男性医師が診察する場合は特に、女性看護師などの立ち会いのもとで行う。
POINT
・双合診は内診台上で砕石位をとり、排尿後に行う。 ・順序は外陰部視診 → 腟鏡診 → 双合診。 ・正常卵管は触知しない(正常卵巣も通常触れにくい)。 ・Douglas窩は内診指で後腟円蓋を介して触診する。 ・膀胱充満が必要なのは経腹超音波であり、双合診ではない。
