血友病は「関節」で出血する―一次止血と二次止血で読み解く出血パターン
第110回医師国家試験 B問題 第11問
国試問題にチャレンジ
血友病に特徴的な出血部位はどれか。
- a.歯肉
- b.皮下
- c.関節内
- d.鼻粘膜
- e.口腔粘膜
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
止血は、血小板とvon Willebrand因子による一次止血と、凝固因子がフィブリンをつくって血栓を補強する二次止血の2段階で成り立っています。一次止血の異常では点状出血や鼻・歯肉・口腔などの粘膜出血が目立ち、二次止血の異常では関節内・筋肉内などの深部出血や大きな皮下血腫、後出血が特徴となります。血友病は第VIII因子または第IX因子が欠乏する二次止血の異常で、最も特徴的な出血部位は関節内であり、反復すると血友病性関節症に至るため凝固因子の補充や定期補充による予防が重要です。検査ではAPTTのみが延長し、PT・血小板数・出血時間は正常となります。出血部位から障害された止血段階を推定する考え方は、出血傾向の患者を診る際の基本となります。
解答・解説
正解はcです
出血傾向は、どの止血段階が障害されているかによって出血の部位や性状が異なる。これを理解すると、出血部位から原因疾患を推定できる。
止血の2段階
・一次止血:血管が傷つくと、血小板がvon Willebrand因子(VWF)を介して血管内皮下に粘着・凝集し、血小板血栓をつくる。血小板減少症、血小板機能異常症、von Willebrand病などで障害される。 ・二次止血:凝固因子が順に活性化されてフィブリンが形成され、血小板血栓を強固なフィブリン血栓に補強する。血友病、ビタミンK欠乏症などで障害される。
出血パターンの違い
一次止血の異常では、小血管からの出血がすぐに止まらないため、皮膚の点状出血や紫斑、鼻出血・歯肉出血・口腔内出血などの粘膜出血、過多月経が目立つ。出血は外傷直後から起こる。 二次止血の異常では、血小板血栓はできるため浅い小さな傷の出血はいったん止まるが、血栓がフィブリンで補強されないため、関節内や筋肉内など深部組織への出血、大きな皮下血腫、いったん止まった後の再出血(後出血)が特徴的である。
血友病
血友病はX連鎖潜性(劣性)遺伝により第VIII因子(血友病A)または第IX因子(血友病B)が欠乏する疾患で、主に男性に発症する。二次止血の異常であり、その最も特徴的な出血部位は関節内(膝・肘・足関節など荷重や運動の負荷がかかる大関節)である。したがって正解は関節内である。
選択肢考察
- ×a. 歯肉
歯肉出血は粘膜出血の一つで、血小板減少症(免疫性血小板減少症など)、血小板機能異常症、von Willebrand病など一次止血の異常で典型的にみられる。また壊血病(ビタミンC欠乏)や白血病の歯肉浸潤でもみられる。血友病でも抜歯後の止血困難は問題となるが、自然に生じる歯肉出血は血友病の特徴的所見ではない。
- ×b. 皮下
皮下出血はさまざまな出血傾向でみられ、血友病に特異的ではない。点状出血(直径数mm以下)や小さな紫斑は血小板や血管の異常(一次止血の異常)を示唆し、直径数cmに及ぶ斑状出血や広範な皮下血腫は凝固異常(ビタミンK欠乏症、DIC、血友病など)を示唆する。血友病でも打撲後の皮下血腫は起こるが、最も特徴的な出血部位としては関節内が挙げられる。
- ○c. 関節内
関節内出血は血友病に最も特徴的な出血であり、重症型では幼児期に歩行を始めるころから、明らかな外傷がなくても繰り返し起こる。膝・肘・足関節に多く、関節の腫脹・疼痛・熱感・可動域制限を呈する。出血を繰り返すと滑膜炎や軟骨破壊が進み、関節拘縮・変形をきたす血友病性関節症に至るため、早期の凝固因子補充療法や定期補充療法(出血予防)が重要である。筋肉内出血(腸腰筋など)も血友病に特徴的な深部出血である。
- ×d. 鼻粘膜
鼻出血は代表的な粘膜出血で、血小板数の減少や血小板機能の低下など一次止血の異常でみられやすい。特に小児期から鼻出血を繰り返す場合はvon Willebrand病を考える。また、遺伝性出血性毛細血管拡張症(Osler病)では鼻粘膜の毛細血管拡張から反復する鼻出血を起こす。血友病に特徴的な出血部位ではない。
- ×e. 口腔粘膜
口腔粘膜出血(口腔内の血腫・血疱など)も粘膜出血であり、免疫性血小板減少症などの高度の血小板減少で目立つ。口腔内血疱は血小板減少が重症であることを示す所見として重視される。血友病の特徴的な出血部位ではない。
出血部位と考えるべき疾患
・関節内出血:血友病A・B ・筋肉内出血(腸腰筋など):血友病A・B、後天性血友病A(第VIII因子に対する自己抗体)。後天性血友病Aでは皮下・筋肉内出血が中心で、関節内出血はまれである。 ・粘膜出血(鼻、歯肉、口腔、消化管、性器出血、血尿):血小板減少症、血小板機能異常症、von Willebrand病 ・下肢に左右対称の触知可能な紫斑:IgA血管炎(Schönlein-Henoch紫斑病)。腹痛、関節痛、腎炎を伴うことがある。 ・臍帯からの出血(臍帯脱落後):先天性第XIII因子欠乏症 ・高齢者の前腕伸側や手背の紫斑(凝固検査は正常):老人性紫斑
紫斑の大きさによる分類
・点状出血(直径数mm以下):血小板・血管の異常 ・斑状出血(それより大きく数cm程度まで):凝固異常でもみられる ・広範な皮下出血・血腫:凝固異常
血友病の検査所見
APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)延長、PT(プロトロンビン時間)正常、血小板数正常、出血時間正常。第VIII因子または第IX因子活性の低下で確定し、活性値によって重症(1%未満)、中等症(1〜5%)、軽症(5%超〜40%未満)に分類する。
治療
欠乏している凝固因子製剤の補充(出血時の補充、出血予防のための定期補充)。インヒビター(同種抗体)発生例ではバイパス製剤を用いる。血友病Aでは第VIII因子の機能を代替する二重特異性抗体(エミシズマブ)の皮下注射による予防も行われている。
POINT
・一次止血の異常(血小板・VWF):点状出血、粘膜出血(鼻・歯肉・口腔)、過多月経 ・二次止血の異常(凝固因子):関節内出血、筋肉内出血、大きな皮下血腫、後出血 ・血友病の特徴的出血は関節内出血。繰り返すと血友病性関節症に至る ・血友病はAPTTのみ延長(PT・血小板数・出血時間は正常) ・小児期からの反復する鼻出血はvon Willebrand病を想起
