StudyMed医師国家試験

病院と自宅をつなぐ橋―「リハビリの施設」は老健と覚える理由

第109回医師国家試験 B問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第109回 B問題 第3問

リハビリテーションに重点が置かれているのはどれか。

  1. a.グループホーム
  2. b.有料老人ホーム
  3. c.介護老人保健施設
  4. d.介護老人福祉施設
  5. e.軽費老人ホーム〈ケアハウス〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、高齢者が入所・入居する施設や住まいの違いを問う問題だ。名前が似ていて紛らわしいけれど、「誰が対象で、何を目的にしているか」で整理すると一気にわかりやすくなる。まず、リハビリテーションに力を入れている施設と聞いて、何が思い浮かぶかな。
医学生医学生
「介護老人福祉施設」と「介護老人保健施設」が並んでいて、正直どちらも同じに見えてしまいます。
ドクタードクター
そこが一番の引っかけどころだね。最初に、介護保険法にもとづく「介護保険施設」と、それ以外の住まいを分けよう。介護保険施設は現在、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院の3種類。今回の選択肢でこれに当たるのは2つだけなんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、介護老人福祉施設は特別養護老人ホーム、いわゆる特養のことだと習いました。
ドクタードクター
その通り。特養は常に介護が必要で、自宅での生活が難しい要介護者が長く暮らす「生活の場」だ。今は新たに入所できるのは原則として要介護3以上に限られている。機能訓練も行うけれど、主な目的は日々の介護なんだ。
医学生医学生
では介護老人保健施設、いわゆる老健のほうがリハビリ中心ということですか。
ドクタードクター
正解。老健は、病状が安定していて入院までは必要ないけれど、医学的な管理は必要な要介護者が対象だ。医師が常勤し、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士も配置されて、看護と医学的管理のもとでリハビリテーションを行う。そして目標は在宅復帰。病院と自宅の間に立つ「中間施設」と呼ばれるのはそのためだよ。
医学生医学生
臨床実習で脳神経内科を回ったとき、退院調整で「いったん老健を経由して自宅へ」という話を聞きました。あれはそういう意味だったんですね。
ドクタードクター
まさにそうだね。急性期の治療が終わっても、すぐに自宅で生活できるとは限らない。その間を埋めるのが老健の役割だ。では残りの選択肢も見ておこう。グループホームはどうかな。
医学生医学生
認知症の方が少人数で暮らしているところですよね。リハビリというより生活の支援でしょうか。
ドクタードクター
いい理解だ。正式には認知症対応型共同生活介護という地域密着型サービスで、5〜9人程度のユニットで家庭的な共同生活を送る。なじみの関係のなかで暮らすことで、認知症の症状を和らげ、残った能力をいかすことが目的なんだ。
医学生医学生
有料老人ホームとケアハウスは、どちらも介護保険施設ではないんですよね。
ドクタードクター
そう、どちらも老人福祉法に規定される住まいだ。有料老人ホームは民間企業も設置でき、入居者が希望に合わせて選んで契約する。介護付き、住宅型、健康型などの類型がある。軽費老人ホームは、身体機能の低下などで自立した生活に不安があり、家族の援助を受けにくい高齢者が、無料または低額な料金で利用する施設で、ケアハウスはその代表だ。どちらも住まいとしての性格が中心だよ。
医学生医学生
「福祉」は生活の場、「保健」はリハビリと在宅復帰、と1文字の違いで役割が分かれるわけですね。
ドクタードクター
その覚え方は役に立つよ。さらに、介護保険施設の3つ目である介護医療院も押さえておこう。2018年に創設された施設で、長期の療養と医療が必要な要介護者が対象だ。日常的な医学管理や看取りと、生活施設としての機能をあわせもつ。介護療養型医療施設は2024年3月末で廃止され、その移行先になったんだ。
医学生医学生
リハビリの流れとしては、病院の回復期リハビリテーション病棟から老健、そして在宅という順番になるんでしょうか。
ドクタードクター
典型的にはそうだね。急性期病院から回復期リハビリテーション病棟までは医療保険、老健や在宅での訪問リハビリ・通所リハビリは介護保険と、段階によって制度が切り替わる。退院時に患者さんの状態と目標に合った行き先を選ぶのは、医師の大切な仕事だ。主治医意見書を書く場面も多いから、施設の役割の違いは臨床で必ず役に立つよ。
医学生医学生
ただ「施設に入る」ではなく、何のために、どこへ行くのかを考えることが大事なんですね。
ドクタードクター
その通り。患者さんや家族の希望も聞きながら、在宅復帰を目指すのか、長く暮らせる場を探すのかを一緒に考えていこう。

まとめ

リハビリテーションに重点を置く施設は介護老人保健施設(老健)であり、病状が安定した要介護者に対して医学的管理のもとで機能訓練を行い、在宅復帰を目指す「病院と在宅の中間施設」と位置づけられています。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は常に介護が必要な人の生活の場で、新たな入所は原則要介護3以上です。グループホームは認知症の人が少人数で共同生活を送る地域密着型サービス、有料老人ホームと軽費老人ホーム(ケアハウス)は老人福祉法にもとづく住まいで、いずれもリハビリが主目的ではありません。介護保険施設には2018年創設の介護医療院も含まれ、急性期・回復期の病院から老健、在宅へとつながるリハビリの流れを理解しておくことは、退院調整や主治医意見書の作成など実際の診療に直結します。

解答・解説

正解はcです

高齢者が入所・入居する施設や住まいについて、それぞれの目的と役割を区別できるかを問う問題である。 まず、介護保険法にもとづく「介護保険施設」と、それ以外の住まいを分けて考えるとよい。介護保険施設は現在、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院の3種類である。このうち、次の3つの特徴をすべてそなえているのが介護老人保健施設(老健)である。 1. 病状が安定した要介護者を対象とする。 2. 医師・看護職員・理学療法士・作業療法士などを配置し、医学的な管理のもとでリハビリテーションを行う。 3. 家庭への復帰(在宅復帰)を目標とする。 病院で急性期の治療を終えた人が自宅に戻るまでの「中間施設」と位置づけられている。一方、特別養護老人ホームは生活の場としての介護が中心であり、グループホーム、有料老人ホーム、ケアハウスは住まいとしての性格が強い。したがって、リハビリテーションに重点が置かれているのは介護老人保健施設である。

選択肢考察

  1. ×a.  グループホーム

    ここでいうグループホームは、介護保険の地域密着型サービスである認知症対応型共同生活介護を指す。認知症のある要介護者(要支援2の人も含む)が、5〜9人程度の少人数のユニットで家庭的な共同生活を送り、入浴・排泄・食事の介護や日常生活上の世話を受ける。なじみの人間関係のなかで暮らすことで、認知症の症状を和らげ、残っている能力をいかした生活を続けることが目的である。リハビリテーションによる機能回復を主な目的とする施設ではない。

  2. ×b.  有料老人ホーム

    老人福祉法に規定される高齢者向けの住まいである。高齢者を入居させ、食事の提供、介護、洗濯・掃除などの家事、健康管理のいずれかを提供する。民間企業などの営利法人も設置でき、入居者が自分の希望に合わせて選んで契約する。介護付き・住宅型・健康型などの類型があるが、あくまで生活の場であり、リハビリテーションを主な目的とする施設ではない。

  3. ○c.  介護老人保健施設

    介護保険法にもとづく介護保険施設の一つである。病状が安定した期間にあり、入院治療までは必要ないが医学的な管理が必要な要介護者を対象とする。施設サービス計画にもとづき、看護と医学的管理のもとで機能訓練(リハビリテーション)、介護、必要な医療、日常生活上の世話を行い、心身の機能を回復させて在宅に戻ることを目指す。医師が常勤し、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の配置も求められている。病院と在宅をつなぐ中間施設であり、リハビリテーションに重点が置かれている。

  4. ×d.  介護老人福祉施設

    定員30人以上の特別養護老人ホームのうち、介護保険の施設サービスを提供する施設である。常に介護が必要で、自宅での生活が難しい要介護者が入所する。2015年度からは、新たに入所できるのは原則として要介護3以上の人に限られている。入浴・排泄・食事の介護、日常生活上の世話、機能訓練、健康管理などを行い、長く暮らす生活の場としての性格が強い。機能訓練も行うが、リハビリテーションで在宅復帰を目指すことを主な目的とする施設ではない。

  5. ×e.  軽費老人ホーム〈ケアハウス〉

    老人福祉法に定められた老人福祉施設の一つである。おおむね60歳以上で、身体機能の低下などのため自立した生活に不安があり、家族の援助を受けにくい人が、無料または低額な料金で利用する。生活相談、食事、入浴などのサービスを受けられる。軽費老人ホームには、ケアハウスのほかに、食事を提供するA型と、自炊を原則とするB型がある。現在はケアハウスに一本化していく方向にある。住まいとしての性格が中心で、リハビリテーションを主な目的とはしていない。

介護保険施設(施設サービス)の比較

・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):常に介護が必要な人のための生活の場。新たな入所は原則として要介護3以上。医師は非常勤でもよい。 ・介護老人保健施設:医学的管理のもとでリハビリテーションを行い、在宅復帰を目指す中間施設。医師が常勤し、リハビリテーション専門職を配置する。 ・介護医療院:長期にわたる療養と医療が必要な要介護者のための施設。日常的な医学管理や看取りなどの医療と、生活施設としての機能をあわせもつ。2018年に創設され、介護療養型医療施設(2024年3月末で廃止)の移行先となった。

介護保険施設以外の主な住まい・サービス

・認知症対応型共同生活介護(グループホーム):地域密着型サービス。認知症の人が少人数で共同生活を送る。 ・有料老人ホーム:老人福祉法に規定。民間でも設置できる。 ・軽費老人ホーム(ケアハウス、A型、B型):老人福祉法に規定。低額な料金で利用できる。 ・サービス付き高齢者向け住宅:高齢者住まい法にもとづき、安否確認と生活相談を提供するバリアフリーの賃貸住宅。

リハビリテーションの場の整理

病院(急性期 → 回復期リハビリテーション病棟:医療保険)→ 介護老人保健施設(介護保険)→ 在宅(訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション:介護保険)と、段階ごとにリハビリテーションを受ける場がつながっている。

POINT

・介護老人保健施設(老健)は、医学的管理のもとでリハビリテーションを行い在宅復帰を目指す中間施設である。 ・介護老人福祉施設(特養)は生活の場であり、新たな入所は原則要介護3以上。 ・グループホームは認知症の人が共同生活を送る地域密着型サービスである。 ・有料老人ホームと軽費老人ホーム(ケアハウス)は老人福祉法にもとづく住まいである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。