リーマンショック後の日本を数字で読む―失業率・非正規雇用・子育て世帯の働き方
第109回医師国家試験 B問題 第29問
国試問題にチャレンジ
平成20~24年の社会状況で正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.完全失業率は2%以下である。
- b.非正規雇用の割合は増加している。
- c.完全失業率は40~50歳が最も高い。
- d.父母がいる児童の世帯の約80%で父母とも仕事をしている。
- e.児童のいる世帯の母の仕事は正規雇用より非正規の割合が高い。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
平成20〜24年はリーマンショック直後で、完全失業率はおおむね4〜5%台、平成21〜22年には5%を超えるまで悪化しました。年齢別では15〜24歳の若年層の失業率が最も高く、40〜50歳代は比較的低い水準にあります。非正規雇用の割合は長期的に増加しており、国民生活基礎調査では児童のいる世帯の母の仕事は正規より非正規が多く、母が働く世帯自体も約6割強で、父母とも就労が約80%ということはありません。女性の就労にはM字カーブやL字カーブといった構造的な特徴があり、労働力調査(総務省)と国民生活基礎調査(厚生労働省)という統計の出どころも区別して押さえておきましょう。数値の暗記よりも社会の大きな傾向を理解することが、患者の生活背景や健康の社会的決定要因を考える力につながります。
解答・解説
正解はb, eです
問われていること
平成20〜24年(2008〜2012年)の日本の雇用状況と、子育て世帯の就労状況を問う問題である。主な根拠となる統計は2つある。1つは総務省統計局の「労働力調査」で、完全失業率や非正規雇用の割合がわかる。もう1つは厚生労働省の「国民生活基礎調査」で、児童のいる世帯の就労状況がわかる。
時代背景
この時期は、平成20年(2008年)秋のリーマンショックに始まる世界的な金融危機の直後にあたる。雇用情勢は大きく悪化し、完全失業率は平成21〜22年ごろに5%台まで上昇した。一方で、パートタイマー、アルバイト、派遣社員、契約社員などの非正規雇用は長期的に増え続けていた。
解き方
細かい数値をすべて覚えていなくても、次の知識があれば正解にたどりつける。 ・当時の完全失業率はおおむね4〜5%台だった。 ・完全失業率は若年層ほど高い。 ・子育て中の母親はパートタイムなどの非正規で働く人が多い。 なお、本問は「現在の国試対策として有用ではない設問」とされている。特定の年の統計値を問う内容であり、その後の社会状況の変化によって現在の数値とは異なる部分があるためと考えられる。
選択肢考察
- ×a. 完全失業率は2%以下である。
完全失業率とは、労働力人口(就業者と完全失業者の合計)のうち、完全失業者が占める割合である。完全失業者は、仕事がなく、仕事があればすぐ就くことができ、求職活動をしている者をいう。平成20〜24年の完全失業率は、およそ4〜5%台で推移した。リーマンショック後の平成21〜22年には、年平均で5%を超える水準まで上昇し、完全失業者数も300万人台に達した。日本の完全失業率が2%台になったのはバブル期以前や近年の景気回復期であり、この時期に2%以下だったことはない。したがって誤りである。
- ○b. 非正規雇用の割合は増加している。
労働力調査によると、役員を除く雇用者のうち非正規の職員・従業員が占める割合は、平成20年に34.1%、平成24年に35.2%であり、この期間に増加している。非正規雇用の割合は、1990年代以降ほぼ一貫して上昇してきた。背景には、景気低迷のなかで企業が人件費を抑えようとしたこと、労働者派遣の対象業務が広がったこと、女性や高齢者がパートタイムで働くことが増えたことなどがある。したがって正しい。
- ×c. 完全失業率は40~50歳が最も高い。
年齢階級別にみると、完全失業率は15〜24歳の若年層で最も高く、平成20〜24年のいずれの年でも同じである。若年層は、転職や離職を繰り返しやすいこと、就職活動中の新卒者が含まれること、職業経験が少なく不況期に採用を絞られやすいことなどから、失業率が高くなる。これに対して40〜50歳代は、就業が比較的安定しており、完全失業率は全年齢のなかでも低い水準にある。したがって誤りである。
- ×d. 父母がいる児童の世帯の約80%で父母とも仕事をしている。
平成24年の国民生活基礎調査では、児童のいる世帯のうち、母が「仕事あり」の世帯は63.7%であった。「父母がともに仕事をしている世帯」は、この「母が仕事をしている世帯」の一部である。そのため、その割合は63.7%を上回ることはなく、約80%に達することはありえない。したがって誤りである。なお、その後は共働き世帯が増え、母が仕事をしている割合も上昇している。
- ○e. 児童のいる世帯の母の仕事は正規雇用より非正規の割合が高い。
平成24年の国民生活基礎調査では、児童のいる世帯のうち母が仕事をしている割合は63.7%で、その内訳は「正規の職員・従業員」18.3%、「非正規の職員・従業員」33.0%、「その他」12.4%であった。その他には自営業や家族従業者などが含まれる。非正規は正規の約1.8倍にあたる。出産や育児をきっかけに正規雇用を離れ、子育てが一段落してからパートタイムなどの非正規雇用で再び働く女性が多いことを反映している。したがって正しい。
雇用関連の主な用語
・労働力人口:15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたもの ・完全失業率 = 完全失業者 ÷ 労働力人口 × 100 ・非正規雇用:パート、アルバイト、労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員、嘱託など
女性の就労とM字カーブ
日本の女性の年齢階級別労働力率をグラフにすると、結婚・出産期にあたる30歳代で一度下がり、その後また上がる。この形がアルファベットのMに似ていることから「M字カーブ」とよばれる。近年は30歳代での落ち込みが浅くなり、台形に近づいている。ただし、出産後に働き始める女性の多くは非正規雇用であり、正規雇用の割合は20歳代後半をピークに年齢とともに下がる。この現象は「L字カーブ」とよばれる。
統計調査の所管
・労働力調査:総務省統計局(毎月実施) ・国民生活基礎調査:厚生労働省(3年ごとに大規模調査、その間の年は簡易調査)。世帯構造、所得、健康、介護などを調べる。
POINT
・平成20〜24年の完全失業率は約4〜5%台で、リーマンショック後に5%台まで上昇した。 ・完全失業率は15〜24歳の若年層で最も高い。 ・非正規雇用の割合は長期的に増加してきた(平成24年で約35%)。 ・児童のいる世帯の母の仕事は、正規より非正規が多い。 ・本問は特定年次の統計を問う設問で、現在の国試対策としての有用性は低い。
