StudyMed医師国家試験

片麻痺の意識障害、どちらの手で採点する?―「最良反応」で決まるGCS

第108回医師国家試験 F問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第108回 F問題 第20問

48歳の男性。意識障害と右片麻痺のため搬入された。自発開眼はなく,呼びかけでも開眼しないが,痛み刺激で開眼する。痛み刺激でうなり声をあげるが,意味のある発語はみられない。また,痛み刺激で右上下肢は全く動きがみられないが,左上下肢は払いのける動作を示す。  Glasgow coma scaleによる評価の合計点として正しいのはどれか。

  1. a.3点
  2. b.6点
  3. c.9点
  4. d.12点
  5. e.15点

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、意識障害の患者をGlasgow coma scaleで数値化する問題だ。診断そのものよりも、所見を開眼・言語・運動の3項目にどう当てはめるかが問われている。特に片麻痺がある点が最大の落とし穴だよ。まずGCSの構成を確認しようか。
医学生医学生
開眼が4点、言語が5点、運動が6点満点で、合計3〜15点でしたよね。
ドクタードクター
その通り。低いほど重症で、数字が大きいほど重症になるJapan coma scaleとは向きが逆だから注意しよう。では開眼から採点してみて。
医学生医学生
自発的にも呼びかけでも開かず、痛み刺激で初めて開くので、E2ですね。
ドクタードクター
正解。次は言語。うなり声だけで意味のある言葉がない状態だね。
医学生医学生
単語が出ないので「不適当な言葉」のV3ではなく、「理解不能な音声」のV2だと思います。CBTの勉強で、V3とV2の違いは単語が出るかどうかだと覚えました。
ドクタードクター
よく区別できているね。V2で正しい。そして問題の運動反応だ。右上下肢は全く動かず、左上下肢は払いのける動作をする。どう採点する?
医学生医学生
右が全く動かないのでM1……いや、でもそれだとE2V2M1で5点になって選択肢にないですね。
ドクタードクター
そこがこの問題の核心なんだ。GCSの運動は「最良運動反応」、つまり左右のうち良いほうの反応を採る。麻痺側の無反応は脳の局所病変を反映しているだけで、意識レベルそのものを表しているわけではないからね。健側の左で痛み刺激を払いのける、つまり疼痛部位に手をもっていく局在反応はM5だ。
医学生医学生
ということは、E2+V2+M5で9点ですね。
ドクタードクター
その通り、正解は9点だ。ほかの点数も、どういう状態なら当てはまるかで確認しておこう。3点はどんな状態かな。
医学生医学生
開眼も発声も体動も全くない、GCSの最低点ですね。深昏睡なので今回は当てはまりません。
ドクタードクター
そうだね。6点は、たとえばE2V2に対して運動が伸展反応、いわゆる除脳硬直様のM2なら成り立つ。今回の健側は払いのけなので過小評価になる。逆に12点なら、呼びかけで開眼し、混乱しながらも会話ができる程度の状態が必要だ。15点は意識清明だから当てはまらないね。
医学生医学生
M5とM4の違いがいつも曖昧になります。脳神経外科の臨床実習で、指導医の先生が胸骨を圧迫して反応を見ていたのは覚えているんですが。
ドクタードクター
刺激した部位まで手をもってきて払いのけようとすれば局在反応でM5、刺激から手足を引っ込めて逃げるだけなら逃避屈曲でM4だ。さらに肘を曲げて手首を内側に巻き込むような異常屈曲、除皮質硬直様の肢位はM3、四肢を突っ張る伸展反応はM2になる。痛みの場所が分かっているかどうかがM5の判断の分かれ目なんだ。
医学生医学生
9点というのは、臨床的にはどのくらいの重さなんでしょうか。
ドクタードクター
頭部外傷の分類でいえば、13〜15点が軽症、9〜12点が中等症、8点以下が重症とされる。8点以下は重症の意識障害として気管挿管による気道確保を検討する目安になるから、この患者は境界に近く、悪化しないか繰り返し評価する必要があるね。また記録は合計点だけでなく「E2V2M5」と内訳を併記するのが望ましい。挿管中で発語を評価できなければVをTと書くこともある。
医学生医学生
急な意識障害に右片麻痺なので、背景には左大脳半球の脳出血や脳梗塞を考えるべきですね。
ドクタードクター
そう、診断は画像検査で詰めていくことになる。そして救急外来ではJCSも併用することが多い。この患者は痛み刺激で開眼して払いのけ動作がみられるから、JCSでは捉え方によってⅡ-30からⅢ-100あたりに相当する。両方のスケールを行き来できるようにしておくと、救急隊や他科との情報共有がスムーズになるよ。

まとめ

Glasgow coma scaleは開眼(1〜4点)、最良言語反応(1〜5点)、最良運動反応(1〜6点)の合計3〜15点で評価し、点数が低いほど重症で、Japan coma scaleとは向きが逆です。痛み刺激で開眼すればE2、うなり声のみならV2、疼痛部位を払いのける局在反応はM5となります。片麻痺のある症例では運動反応は左右の良いほうを採るため、麻痺側の無反応ではなく健側の反応で評価し、本例はE2V2M5の9点となります。合計8点以下は重症意識障害として気道確保を考慮する目安であり、記録では内訳を併記することが推奨されます。GCSを正確に採点できることは、救急や脳神経領域で意識レベルの経時的な変化を共有し、治療方針を判断するための基本技能です。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

48歳男性が意識障害と右片麻痺で救急搬入されている。急性発症の意識障害に片麻痺を伴うことから、左大脳半球を侵す脳卒中(脳出血・脳梗塞など)がまず考えられるが、本問で問われているのは診断ではなく、意識レベルをGlasgow coma scale(GCS)で数値化することである。

GCSの構成

GCSは開眼(E: eye opening, 1〜4点)、最良言語反応(V: best verbal response, 1〜5点)、最良運動反応(M: best motor response, 1〜6点)の3項目の合計で評価する。満点は15点(意識清明)、最低は3点(深昏睡)で、点数が低いほど重症である。桁が大きいほど重症となるJapan coma scale(JCS)とは向きが逆である点に注意する。

本症例の採点

・開眼: 自発的にも呼びかけでも開眼せず、痛み刺激で初めて開眼する → E2 ・言語: 痛み刺激でうなり声(意味をなさない音声)を出すのみで、言葉は出ない → V2 ・運動: 右上下肢は無反応だが、左上下肢は痛み刺激の部位へ手をもっていき払いのけようとする(疼痛部位への局在反応)→ M5 GCSのMは「最良」運動反応を採るため、麻痺側(右)ではなく健側(左)の反応で評価する。したがって合計はE2+V2+M5=9点となる。 もし誤って麻痺側の反応(全く動かない=M1)を採用すると合計5点となり、選択肢にない値になる。片麻痺症例では「左右で良い方を採る」ことがGCS採点の要点である。

選択肢考察

  1. ×a.  3点

    3点はE1・V1・M1、すなわち痛み刺激に対して開眼も発声も体動も全くない状態で、GCSの最低点(深昏睡)である。本症例は痛み刺激で開眼し、うなり声を出し、健側で払いのけ動作がみられるので、3点にはならない。

  2. ×b.  6点

    6点となるには、例えばE2・V2に対してMが2点(伸展反応=除脳硬直様)程度である必要がある。本症例の健側の運動は払いのけ動作(M5)であり、6点は過小評価である。なお麻痺側の無反応(M1)で採点しても合計は5点で、6点にはならない。

  3. ○c.  9点

    痛み刺激で開眼するのでE2、うなり声のみで意味のある発語がないのでV2、健側の左上下肢で痛み刺激を払いのける動作(疼痛部位の局在認知)がみられるのでM5である。運動反応は左右のうち最良のものを採用するため、麻痺側の無反応はMの採点に用いない。合計E2+V2+M5=9点となる。

  4. ×d.  12点

    12点となるには、例えば呼びかけで開眼(E3)、混乱した会話(V4)、痛み刺激の払いのけ(M5)といった状態が必要である。本症例は痛み刺激でようやく開眼し(E2)、うなり声のみ(V2)なので、12点は過大評価である。

  5. ×e.  15点

    15点はE4・V5・M6の満点で、自発開眼し、見当識が保たれた会話ができ、命令に従って四肢を動かせる意識清明の状態を指す。意識障害のある本症例には該当しない。

Glasgow coma scale(GCS)の採点基準

E(開眼) 4: 自発的に開眼 3: 呼びかけ(音声)で開眼 2: 痛み刺激で開眼 1: 開眼しない V(最良言語反応) 5: 見当識あり(時・場所・人を正しく答えられる) 4: 混乱した会話(会話はできるが見当識障害がある) 3: 不適当な言葉(単語は出るが会話にならない) 2: 理解不能な音声(うめき声・うなり声のみ) 1: 発語なし M(最良運動反応) 6: 命令に従う 5: 疼痛部位に手をもっていく(払いのける)=局在反応 4: 痛み刺激から逃避する(屈曲して引っ込める) 3: 異常屈曲(除皮質硬直様の肢位) 2: 伸展反応(除脳硬直様の肢位) 1: 全く動かない

記載法と臨床的な目安

・「E2V2M5、合計9点」のように各項目と合計を併記するのが望ましい。気管挿管中などで発語が評価できない場合はV「T」などと記載する。 ・合計8点以下は重症の意識障害とされ、気道確保(気管挿管)を検討する目安となる。頭部外傷では一般に13〜15点を軽症、9〜12点を中等症、8点以下を重症と分類する。

Japan coma scale(JCS)との比較

JCSは覚醒の程度でI桁(刺激なしで覚醒: 1・2・3)、II桁(刺激で覚醒: 10・20・30)、III桁(刺激でも覚醒しない: 100・200・300)に分け、数値が大きいほど重症である。本症例は痛み刺激で開眼し、払いのけ動作がみられることから、JCSではおおむねII-30〜III-100に相当する(痛み刺激で「開眼する」ことを覚醒とみなせばII-30、開眼しても意識が戻らない払いのけ動作と捉えればIII-100と評価しうる)。

POINT

・GCSはE(1〜4)+V(1〜5)+M(1〜6)の合計で、3〜15点。低いほど重症(JCSと逆)。 ・痛み刺激で開眼=E2、うなり声のみ=V2、払いのける(局在反応)=M5。 ・運動反応は「最良」反応を採る。片麻痺では健側で評価する。 ・8点以下は重症意識障害で、気道確保を考慮する目安。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。