痛くない出血は「内側」から―3時・7時・11時で覚える内痔核の基本
第108回医師国家試験 D問題 第11問
国試問題にチャレンジ
内痔核について正しいのはどれか。
- a.直腸癌の合併が多い。
- b.排便時痛が特徴である。
- c.歯状線の肛門側に発生する。
- d.基本術式は痔核核出術である。
- e.3時,7時,11時方向に好発する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
内痔核は、肛門クッションがうっ血・肥大して出血や脱出をきたすもので、歯状線より口側に発生します。この部位は自律神経支配で痛覚が乏しいため、主症状は無痛性の排便時出血と脱出であり、排便時痛は裂肛、急な有痛性のしこりは血栓性外痔核を考えます。好発部位は砕石位で3時・7時・11時(上直腸動脈分枝の走行に一致)で、裂肛の6時・12時と区別して覚えます。治療は便通調整などの保存療法が基本で、根治術は結紮切除術(Milligan-Morgan法)、ほかにALTA療法・ゴム輪結紮法・PPH法があり、痔核核出術は血栓性外痔核への処置です。痔核と直腸癌に因果関係はありませんが、出血を痔のせいと決めつけず大腸癌を除外する姿勢が臨床では欠かせません。
解答・解説
正解はeです
本問は、内痔核の発生部位・症状・好発部位・治療法について、外痔核との違いを踏まえて整理できているかを問う問題である。
痔核とは
肛門管の粘膜下には、血管・平滑筋・結合組織からなるクッション状の組織(肛門クッション)があり、肛門を閉じる働きを補っている。排便時のいきみ、便秘、長時間の座位、妊娠などでこのクッションがうっ血・肥大し、支持組織がゆるんで脱出・出血するようになったものが痔核である。
内痔核と外痔核の区別
境界となるのは歯状線(直腸の粘膜と肛門の皮膚=肛門上皮の移行部)である。 ・内痔核:歯状線より口側(直腸側)に発生し、表面は直腸粘膜で覆われる。この部分は自律神経(内臓神経)支配で痛覚が乏しいため、症状は痛みを伴わない排便時出血と脱出が中心である。 ・外痔核:歯状線より肛門側に発生し、表面は体性神経(陰部神経)支配の肛門上皮・皮膚で覆われるため、痛みを感じやすい。特に血栓性外痔核では急に強い痛みを伴うしこりが生じる。
好発部位
内痔核は、上直腸動脈の主な分枝が肛門クッションに流入する位置に一致して発生しやすい。砕石位(仰向けで両下肢を挙上した体位)で肛門を時計の文字盤に見立て、腹側を12時とすると、左側方の3時、右後方の7時、右前方の11時が好発部位(主痔核)となる。 以上の知識をもとに各選択肢を検討すると、好発部位を正しく述べたものが正解となる。
選択肢考察
- ×a. 直腸癌の合併が多い。
内痔核が直腸癌の発生母地となったり、直腸癌を合併しやすくなったりするという関係はない。ただし、どちらも排便時出血を起こすため、痔核があるからといって出血をすべて痔核のせいにすると大腸癌を見逃すおそれがある。特に中高年や便通異常・貧血を伴う場合には、大腸内視鏡検査などで大腸癌を除外することが大切である。
- ×b. 排便時痛が特徴である。
内痔核は痛覚の乏しい直腸粘膜に覆われているため、典型的な症状は痛みを伴わない排便時の出血(鮮血で、ポタポタ垂れる・紙に付く)と脱出である。脱出した痔核が戻らなくなり、うっ血・血栓形成を起こした嵌頓痔核では強い痛みが出るが、これは例外的な状態である。排便時痛が特徴的なのは裂肛(切れ痔)であり、急な強い痛みを伴うしこりは血栓性外痔核でみられる。
- ×c. 歯状線の肛門側に発生する。
内痔核は歯状線より口側(直腸側)に発生する。歯状線より肛門側(皮膚側)に発生するのは外痔核である。この区別は神経支配の違い(内痔核は内臓神経支配で無痛、外痔核は体性神経支配で有痛)と結びつけて理解するとよい。
- ×d. 基本術式は痔核核出術である。
内痔核の手術の基本は結紮切除術(Milligan-Morgan法とその変法)で、痔核に流入する動脈の根部を結紮したうえで痔核を切除する方法である。そのほか、硬化療法(ALTA療法:硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸の注射)、ゴム輪結紮法、自動吻合器を用いて直腸粘膜を環状に切除・吊り上げるPPH法(procedure for prolapse and hemorrhoids)なども行われる。痔核核出術(血栓摘除)は血栓性外痔核に対して行う処置であり、内痔核の基本術式ではない。
- ○e. 3時,7時,11時方向に好発する。
内痔核は上直腸動脈の分枝の走行に一致して、砕石位で左側方(3時)、右後方(7時)、右前方(11時)の3か所に好発する。これらを主痔核と呼び、その間にできる小さな痔核を副痔核と呼ぶ。なお、裂肛は後方の6時方向に最も多く、次いで前方の12時方向に好発するので、区別して覚えておくとよい。
内痔核の進行度分類(Goligher分類)
・Ⅰ度:肛門外への脱出はなく、主に出血する。 ・Ⅱ度:排便時に脱出するが、自然に戻る。 ・Ⅲ度:排便時に脱出し、指で押し込まないと戻らない。 ・Ⅳ度:常に脱出しており、押し込んでも戻らない。
治療の考え方
・保存療法(全段階で基本):便通の調整(食物繊維・水分摂取、便秘や下痢の改善)、排便時の長いいきみを避ける、坐剤・軟膏などの外用薬。 ・Ⅰ~Ⅱ度:保存療法が中心で、出血や脱出が続く場合はゴム輪結紮法や硬化療法を行う。 ・Ⅲ~Ⅳ度:結紮切除術(Milligan-Morgan法)が標準的な根治術である。ALTA療法やPPH法も選択肢となる。ALTA療法は切らずに痔核を硬化・縮小させる方法で、日本で広く普及しているが、再発率は結紮切除術より高いとされる。
肛門疾患の整理
・内痔核:歯状線より口側。無痛性出血・脱出。3・7・11時に好発。 ・外痔核:歯状線より肛門側。血栓性外痔核では急な疼痛と暗紫色の硬いしこり。血栓摘除(核出)や保存療法で治療する。 ・裂肛:肛門上皮の裂創。排便時痛と少量の出血が特徴で、後方6時に好発、次いで前方12時。慢性化すると見張りいぼ(皮垂)や肥大乳頭を伴う。 ・肛門周囲膿瘍:肛門腺(歯状線の肛門陰窩に開口)の感染による膿瘍で、発熱や拍動性の痛みを伴う。切開排膿を行う。 ・痔瘻:肛門周囲膿瘍が自潰・切開された後、原発口(肛門陰窩)と皮膚の二次口がつながる瘻管が残ったもの。根治は手術による。Crohn病に合併する痔瘻は多発・複雑化しやすい。
肛門の神経支配と痛み
歯状線より口側は自律神経支配で痛覚が乏しく、肛門側は陰部神経由来の体性神経支配で痛覚が鋭い。この違いが、内痔核(無痛)と外痔核・裂肛(有痛)の症状の差を生む。
POINT
・内痔核は歯状線より口側、外痔核は歯状線より肛門側に発生する。 ・内痔核の主症状は無痛性の排便時出血と脱出。痛みは嵌頓時にみられる。 ・内痔核の好発部位は砕石位で3時、7時、11時(上直腸動脈分枝の走行に一致)。裂肛は6時、12時。 ・内痔核の標準術式は結紮切除術(Milligan-Morgan法)。ほかにALTA療法、ゴム輪結紮法、PPH法。 ・痔核核出術(血栓摘除)は血栓性外痔核の治療。 ・痔核と直腸癌に因果関係はないが、下血の際には大腸癌の除外が必要。
