StudyMed医師国家試験

カルテは「問題ごと」に考える―POMRとSOAPのAが担う役割

第108回医師国家試験 C問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第108回 C問題 第13問

問題指向型医療記録〈POMR〉の要素はどれか。

  1. a.assessment
  2. b.bias
  3. c.crisis
  4. d.dimension
  5. e.elimination

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、問題指向型医療記録、いわゆるPOMRの構成要素を問う問題だ。選択肢は英単語が並んでいるけれど、POMRがどんな仕組みで、その中にどんな用語が出てくるかを知っていれば迷わない。まずはPOMRとは何かを確認しよう。
医学生医学生
臨床実習でカルテを書くときにSOAPで書くよう言われました。あれがPOMRと関係しているんですよね。
ドクタードクター
その通り。POMRは1960年代に米国のWeedが提唱した記載方式で、患者さんが抱える医学的・心理的・社会的な問題を一つずつ取り出して番号を付け、問題ごとに情報・評価・計画を整理して書く。SOAPはその経過記録の書き方なんだ。
医学生医学生
POMRって、SOAPのことだけを指すわけではないんですか。
ドクタードクター
そこはよく混同されるところだね。POMRは基礎データ、問題リスト、初期計画、経過記録、退院時要約で構成されている。基礎データは主訴、現病歴、既往歴、身体所見、検査所見など。そこから問題点を抜き出したのが問題リストで、問題ごとに初期計画を立て、日々の経過記録をSOAP形式で書いていくという流れだ。
医学生医学生
SOAPは、Sが主観的情報、Oが客観的情報、Aが評価、Pが計画ですね。だとすると答えはassessmentでしょうか。
ドクタードクター
正解。assessmentはSOAPのAで、SとOを統合して、その問題がいまどういう状態にあるかを判断する部分だ。診断の推定、重症度、治療効果の判定などを書く。そして次のPの根拠になる。
医学生医学生
実習中、SとOは書けてもAがうまく書けなくて、指導医に「所見を並べるだけでなく、どう考えたかを書いて」と言われました。
ドクタードクター
まさにそこがAの本質だよ。例えば咳と発熱を訴える患者さんで、右下肺野にcoarse cracklesがあって胸部X線で浸潤影があれば、Aには「市中肺炎が疑われる、重症度は軽症〜中等症」のように判断を書く。所見の羅列ではなく、医師の思考過程を残す場所なんだ。
医学生医学生
ほかの選択肢も一応確認したいです。biasは疫学の講義で出てきました。
ドクタードクター
biasは臨床研究やEBMの概念で、研究結果が真の値からずれる系統的な誤差のことだ。選択バイアスや情報バイアスなどがあり、論文を批判的に吟味するときに重要になる。でも診療録の構成要素ではない。
医学生医学生
crisisは甲状腺クリーゼや副腎クリーゼのクリーゼですよね。
ドクタードクター
そう、危機や重篤な局面を表す語で、hypertensive crisisのようにも使う。dimensionは寸法や次元、側面を意味する一般的な語。eliminationは除去や排泄の意味で、薬物の体内からの消失やelimination dietなどで使われる。どれもPOMRの要素ではないね。
医学生医学生
よく見ると、選択肢の頭文字がa、b、c、d、eと並んでいるだけなんですね。
ドクタードクター
気づいたね。紛らわしく見えても、POMRとSOAPの構成を知っていれば一つに絞れる問題だ。最後に発展的な話をしておこう。POMRを作り、その記録を監査・修正して診療の質を高めていく仕組み全体を問題指向型システム、POSと呼ぶ。
医学生医学生
問題リストには診断名だけを書くんですか。
ドクタードクター
確定診断名に限らず、症状、所見、検査異常、さらに経済的問題や介護者不在といった心理社会的な問題も書ける。診断がついたら問題名を更新し、解決した問題は非活動性として区別する。それから初期計画やPは、診断計画、治療計画、教育計画の3つに分けて書くことが多いよ。
医学生医学生
教育計画も入るんですね。患者さんや家族への説明も、立派な計画の一部ということですか。
ドクタードクター
その通り。問題ごとに思考を記録しておけば、医師以外の看護師や薬剤師とも方針を共有しやすく、記録の監査や教育にも活かせる。カルテは自分のメモではなく、チームで患者さんを診るための共通言語だと意識してほしい。

まとめ

問題指向型医療記録〈POMR〉はWeedが提唱した診療録の方式で、基礎データ、問題リスト、初期計画、経過記録、退院時要約から構成され、経過記録はSOAP形式で記載します。SOAPはS(主観的情報)、O(客観的情報)、A(assessment:評価)、P(plan:計画)からなり、AはSとOを統合した医師の判断を記す部分で、Pの根拠となります。bias、crisis、dimension、eliminationはPOMRの構成要素ではありません。問題リストには心理社会的問題も含め、計画は診断・治療・教育の3つに分けて記載するのが基本です。問題ごとに思考過程を残す記録法を身につけることは、多職種での情報共有と診療の質の向上に直結します。

解答・解説

正解はaです

問題指向型医療記録〈POMR:problem oriented medical record〉は、1960年代に米国のWeedが提唱した診療録の記載方式である。患者が抱える医学的・心理的・社会的な問題点を一つずつ取り出して番号を付け、その問題ごとに情報・評価・計画を整理して書くのが特徴である。 POMRは大きく次の要素で構成される。 1. 基礎データ(database):主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活歴、身体所見、検査所見など 2. 問題リスト(problem list):基礎データから抽出した問題点の一覧 3. 初期計画(initial plan):問題ごとの診断計画・治療計画・患者教育計画 4. 経過記録(progress note):問題ごとにSOAP形式で記載する 5. 退院時要約(discharge summary) 経過記録で用いるSOAPは、S(subjective:患者の訴えなど主観的情報)、O(objective:身体所見や検査結果など客観的情報)、A(assessment:S・Oに基づく評価・判断)、P(plan:今後の方針)の頭文字である。本問では選択肢のうち、SOAPの「A」にあたるassessmentがPOMRの要素に該当する。他の選択肢はいずれも頭文字がアルファベット順に並んだだけの無関係な語であり、POMRの構成要素ではない。

選択肢考察

  1. ○a.  assessment

    assessment(評価)は、POMRの経過記録で用いるSOAPのAである。S(主観的情報)とO(客観的情報)を統合し、その問題が現在どういう状態にあるか(診断の推定、重症度、治療効果の判定など)を医師が判断して記載する部分であり、続くP(計画)の根拠となる。したがってPOMRの要素である。

  2. ×b.  bias

    bias(バイアス、偏り)は臨床研究や根拠に基づく医療〈EBM〉で用いられる概念である。研究結果が真の値からずれる系統的な誤差を指し、対象者の選び方による選択バイアス、情報の集め方による情報バイアス、交絡などがある。研究論文を批判的に吟味する際には、結果が「真実」「偶然」「バイアス」のどれによるものかを考える。診療録の構成要素ではない。

  3. ×c.  crisis

    crisis(危機)は、急変・重篤な病態、災害、医療安全上の重大事態など、深刻な局面を表す語である。医学用語としては高血圧緊急症(hypertensive crisis)、甲状腺クリーゼ(thyroid crisis/storm)、副腎クリーゼなどに用いられる。POMRの構成要素ではない。

  4. ×d.  dimension

    dimension は寸法・大きさ、規模・程度、(問題の)側面、次元などを意味する一般的な語である。POMRの構成要素ではない。

  5. ×e.  elimination

    elimination は除去・排除・消去などを意味する語で、医学では薬物の体内からの消失(排泄・代謝による除去)や、食物アレルギーの原因食物を除く除去食(elimination diet)などに使われる。精神医学では elimination disorders が排泄症(遺尿症・遺糞症)を指す。POMRの構成要素ではない。

POMRの目的と利点

POMRは、患者の問題を明確にし、問題ごとに思考過程を記録することで、①医師の診療上の判断根拠が他者にも追えるようになる、②医師・看護師・薬剤師などの多職種で情報と方針を共有しやすくなる、③記録の監査(audit)や教育に利用できる、という利点がある。POMRを作成し、その記録を監査・修正して診療の質を高めていく一連の仕組みを問題指向型システム〈POS:problem oriented system〉とよぶ。

問題リスト

問題リストには、確定診断名だけでなく、症状・所見・検査異常・心理社会的問題(経済的問題、介護者不在など)も記載できる。解決した問題は「非活動性(inactive)」として区別し、診断がついた段階で問題名を更新する。

初期計画の3分類

初期計画は、診断計画(diagnostic plan:追加検査など)、治療計画(therapeutic plan:薬物療法、処置など)、教育計画(educational plan:患者・家族への説明や生活指導)に分けて書く。SOAPのPもこの3つに分けて記載することが多い。

SOAPの記載例

S:「昨夜から咳がひどく、眠れなかった」 O:体温38.2℃、右下肺野にcoarse crackles、胸部X線で右下肺野に浸潤影 A:市中肺炎が疑われる。重症度は軽症〜中等症 P:喀痰培養を提出、抗菌薬を開始、安静と水分摂取を指導

POINT

・POMRは問題点ごとに情報を整理する診療録で、基礎データ→問題リスト→初期計画→経過記録→退院時要約で構成される。 ・経過記録はSOAP形式:S(主観的情報)、O(客観的情報)、A(assessment:評価)、P(plan:計画)。 ・初期計画・Pは診断計画・治療計画・教育計画の3つに分ける。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。