StudyMed医師国家試験

英語で読む身体所見―「どこで見るか」で解ける眼振の問題

第108回医師国家試験 C問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第108回 C問題 第12問

頭部にみられる病的所見はどれか。

  1. a.asterixis
  2. b.clubbing
  3. c.gynecomastia
  4. d.nystagmus
  5. e.scoliosis

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、身体所見を表す英語の医学用語を日本語に置き換えて、それが体のどこで観察されるかを考える問題だ。知識そのものは基本的だけど、英語で出されると意外と手が止まる。まずは一つずつ日本語に訳してみよう。
医学生医学生
正直、英語で並ぶとどれも見覚えはあるのに、すぐに日本語が出てこないものもあります。
ドクタードクター
それが普通だよ。カルテや英語論文、海外の教科書では当たり前に使われる単語ばかりだから、ここで整理しておこう。まずasterixisはどうかな。
医学生医学生
羽ばたき振戦だったと思います。消化器内科の講義で肝性脳症の所見として習いました。
ドクタードクター
正解。両腕を前に伸ばして手関節を背屈させた姿勢を保ってもらうと、筋緊張が一瞬途切れて手がガクッと落ちては戻る。陰性ミオクローヌスと呼ばれる現象だね。肝性脳症のほか、尿毒症やCO2ナルコーシスでもみられる。観察するのは上肢だから、頭部の所見ではない。
医学生医学生
clubbingはばち指ですね。指先が太鼓のばちのように丸く膨らむ所見です。
ドクタードクター
その通り。爪の付け根の角度が消えて180°以上に開くのが目安だ。肺癌、気管支拡張症、特発性肺線維症などの慢性肺疾患、チアノーゼ性先天性心疾患、感染性心内膜炎などで出てくる。これも指趾の所見だね。
医学生医学生
gynecomastiaは女性化乳房です。肝硬変でエストロゲンの代謝が落ちると起こる、と覚えています。
ドクタードクター
よく覚えているね。エストロゲン作用がアンドロゲン作用より相対的に優位になると男性の乳腺組織が増殖する。肝硬変のほか、精巣腫瘍、Klinefelter症候群、スピロノラクトンなどの薬剤も原因になる。思春期や高齢者では生理的にもみられるよ。部位は胸部だ。
医学生医学生
scoliosisは側弯ですよね。小児の学校検診で前屈させて背中を見る、と整形外科の実習で教わりました。
ドクタードクター
そう、前屈テストで肋骨隆起の左右差をみる。思春期の女子に多い特発性側弯症が最多で、神経筋疾患やMarfan症候群、神経線維腫症1型に伴うものもある。脊柱、つまり背部の所見だね。
医学生医学生
そうすると、残るnystagmusが眼振で、眼球の所見だから頭部にあたる、ということですね。
ドクタードクター
正解だ。眼振は眼球が不随意に律動的に往復運動する現象で、ゆっくり偏位する緩徐相と元に戻す急速相からなる衝動性眼振が多い。方向は急速相の向きで表すのがルールだよ。
医学生医学生
耳鼻咽喉科を回ったとき、めまいの患者さんにFrenzel眼鏡をかけて眼振を見ました。あれは何のためだったんでしょう。
ドクタードクター
固視を除くためだね。末梢性の眼振は何かを見つめると抑制されやすいから、Frenzel眼鏡で凸レンズ越しにして固視できない状態にすると検出しやすくなる。良性発作性頭位めまい症や前庭神経炎、Ménière病などの末梢性めまいで出るし、小脳や脳幹の障害でも出る。
医学生医学生
末梢性か中枢性かは、どう見分けるんですか。
ドクタードクター
一般的には、一方向性で固視により抑制される水平回旋混合性眼振は末梢性を示唆し、注視する方向によって向きが変わる眼振や純粋な垂直性眼振は中枢性を疑う。脳梗塞や多発性硬化症、Wernicke脳症などが背景にあることもあるから、めまい診療では見逃せない所見なんだ。
医学生医学生
選択肢を見直すと、羽ばたき振戦、ばち指、女性化乳房は全部肝硬変でも出てきますね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。肝硬変ではそれに加えて、くも状血管腫、手掌紅斑、腹水、腹壁静脈怒張、黄疸なども重要だ。英語ならspider angioma、palmar erythema、ascites、caput medusae、jaundice。部位ごとに英語・日本語・代表疾患をセットで整理しておくと、診察の流れとも結びついて記憶に残りやすいよ。

まとめ

asterixisは羽ばたき振戦(上肢)、clubbingはばち指(指趾)、gynecomastiaは女性化乳房(胸部)、nystagmusは眼振(眼球)、scoliosisは側弯(脊柱)であり、頭部で観察される病的所見は眼振です。眼振は緩徐相と急速相からなり、方向は急速相で表し、Frenzel眼鏡で固視を除くと検出しやすくなります。一方向性で固視抑制される眼振は末梢性、注視方向で向きが変わる眼振や純粋な垂直性眼振は中枢性を示唆します。なお羽ばたき振戦・ばち指・女性化乳房はいずれも肝硬変でみられうる所見です。身体所見の英語表記を日本語名・観察部位・代表疾患とセットで覚えることは、英語のカルテや文献を読む力と系統的な診察の両方に役立ちます。

解答・解説

正解はdです

本問は身体所見を表す英語の医学用語の意味を問う問題である。各用語を日本語に置き換え、その所見が体のどの部位で観察されるかを考えればよい。 asterixisは羽ばたき振戦、clubbingはばち指、gynecomastiaは女性化乳房、nystagmusは眼振、scoliosisは側弯(脊柱側弯症)である。観察部位はそれぞれ、羽ばたき振戦は上肢(手関節・手指)、ばち指は手足の指先、女性化乳房は胸部、眼振は眼球、側弯は脊柱(背部)となる。頭部(眼を含む頭頸部の診察範囲)でみられる所見は眼振(nystagmus)のみである。 いずれも国家試験や臨床現場で頻繁に登場する基本用語であり、英語表記と日本語、所見の意味、代表的な原因疾患をセットで覚えておくことが重要である。

選択肢考察

  1. ×a.  asterixis

    asterixisは羽ばたき振戦のことである。両上肢を前方に伸ばし手関節を背屈させた姿勢を保たせると、筋緊張が瞬間的に途切れる(陰性ミオクローヌス)ため、手が鳥の羽ばたきのようにがくっと落ちては戻る動きを繰り返す。肝性脳症の代表的所見で、尿毒症やCO2ナルコーシス(高二酸化炭素血症)でもみられる。観察部位は上肢であり、頭部の所見ではない。

  2. ×b.  clubbing

    clubbingはばち指のことである。手足の指の末節が太鼓のばちのように丸く膨らみ、爪の付け根の角度が消失(180°以上に開大)する。肺癌、気管支拡張症、特発性肺線維症などの慢性肺疾患、チアノーゼ性先天性心疾患、感染性心内膜炎、肝硬変、炎症性腸疾患などでみられる。指趾の所見であり、頭部の所見ではない。

  3. ×c.  gynecomastia

    gynecomastiaは女性化乳房のことで、男性の乳腺組織が増殖して乳房が腫大する状態である。エストロゲン作用がアンドロゲン作用に比べ相対的に優位になることで生じ、肝硬変(エストロゲンの代謝低下)、精巣腫瘍、Klinefelter症候群、スピロノラクトンなどの薬剤が原因となる。思春期や高齢者では生理的にもみられる。胸部の所見であり、頭部の所見ではない。

  4. ○d.  nystagmus

    nystagmusは眼振のことで、眼球が不随意に律動的に往復運動する現象である。ゆっくり一方向へ偏位する緩徐相と、元に戻す急速相からなる衝動性眼振が多く、方向は急速相の向きで表す。末梢性めまい(良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、Ménière病など)や、小脳・脳幹の障害(脳梗塞、多発性硬化症、Wernicke脳症など)で出現する。眼球、すなわち頭部で観察される病的所見である。

  5. ×e.  scoliosis

    scoliosisは側弯(脊柱側弯症)のことで、脊柱が前額面で側方へ弯曲し、多くは椎体の回旋を伴う。思春期の女子に多い特発性側弯症が最も多く、ほかに神経筋疾患やMarfan症候群、神経線維腫症1型などに伴うものがある。前屈させて背部の肋骨隆起(rib hump)の左右差をみる前屈テストで評価する。背部(脊柱)の所見であり、頭部の所見ではない。

部位別にみた主な身体所見の英語表記

・頭頸部: nystagmus(眼振)、ptosis(眼瞼下垂)、exophthalmos(眼球突出)、jaundice/icterus(黄疸。眼球結膜で観察しやすい)、anisocoria(瞳孔不同)、goiter(甲状腺腫)、jugular venous distention(頸静脈怒張) ・胸部: gynecomastia(女性化乳房)、spider angioma(くも状血管腫) ・腹部: ascites(腹水)、hepatomegaly(肝腫大)、splenomegaly(脾腫)、caput medusae(メドゥーサの頭:腹壁静脈怒張) ・四肢: clubbing(ばち指)、asterixis(羽ばたき振戦)、palmar erythema(手掌紅斑)、edema(浮腫) ・脊柱: scoliosis(側弯)、kyphosis(後弯)、lordosis(前弯)

肝硬変でみられる所見

本問の選択肢のうち、羽ばたき振戦、女性化乳房、ばち指はいずれも肝硬変でみられうる所見である。ほかにくも状血管腫、手掌紅斑、腹水、腹壁静脈怒張、黄疸なども肝硬変の身体所見として重要である。

眼振の評価

眼振は注視方向による変化(注視眼振)、頭位や頭位変換による誘発(頭位眼振・頭位変換眼振)を調べ、Frenzel眼鏡を用いて固視を除いた状態で観察すると検出しやすい。一方向性で固視により抑制される水平回旋混合性眼振は末梢性、注視方向により向きが変わる眼振や純粋な垂直性眼振は中枢性を示唆する。

POINT

・asterixis=羽ばたき振戦(上肢)、clubbing=ばち指(指趾)、gynecomastia=女性化乳房(胸部)、nystagmus=眼振(眼球・頭部)、scoliosis=側弯(脊柱)。 ・身体所見の英語表記は、日本語名・観察部位・代表的な原因疾患とセットで覚える。 ・羽ばたき振戦、女性化乳房、ばち指はいずれも肝硬変でみられうる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。