StudyMed医師国家試験

名前に「T」がないT細胞腫瘍―菌状息肉症で見抜くリンパ系腫瘍の出自

第107回医師国家試験 I問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第107回 I問題 第14問

T細胞の腫瘍はどれか。

  1. a.濾胞性リンパ腫
  2. b.Burkittリンパ腫
  3. c.MALTリンパ腫
  4. d.hairy cell leukemia〈有毛細胞白血病〉
  5. e.菌状息肉症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、リンパ系腫瘍を「腫瘍になった細胞がB細胞由来かT細胞由来か」で分けられるかを問う問題だ。ポイントは、名前に「T細胞」と付いていないのにT細胞由来、という腫瘍を知っているかどうか。まずはリンパ系腫瘍の全体像から確認しておこう。日本の非Hodgkinリンパ腫は、B細胞とT細胞のどちらが多いと思う?
医学生医学生
血液内科の講義で、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が一番多いと習ったので、B細胞のほうが多いと思います。
ドクタードクター
その通り。日本の非Hodgkinリンパ腫はおおむね7割前後がB細胞由来で、T細胞やNK細胞由来は少数派だ。T細胞腫瘍の多くは「成人T細胞白血病・リンパ腫」「末梢性T細胞リンパ腫」のように名前に「T細胞」が入っているから見分けやすい。厄介なのは、名前からは由来がわからないものなんだ。
医学生医学生
選択肢を見ると、どれも名前に「T」も「B」も入っていないので、正直どこから手をつければいいか迷いました。
ドクタードクター
そういうときは一つずつ「どの細胞の、どの段階から生じたか」を思い出していこう。まず濾胞性リンパ腫はどうかな。
医学生医学生
リンパ濾胞の胚中心から出てくるので、B細胞ですよね。t(14;18)でBCL2が過剰発現する、とCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
完璧だね。胚中心B細胞由来で、CD20やCD10が陽性、腫瘍細胞が濾胞に似た結節をつくってゆっくり進む低悪性度リンパ腫だ。では、Burkittリンパ腫は?
医学生医学生
病理実習でstarry sky像を見ました。あれもB細胞だったと思いますが、増殖がすごく速いイメージです。
ドクタードクター
そう、B細胞腫瘍だ。t(8;14)などでMYCが過剰発現し、きわめて速く増殖する高悪性度リンパ腫。死んだ腫瘍細胞を食べたマクロファージが点在して星空のように見える。アフリカの流行地型ではEBウイルスとの関連が強く、小児の顎骨病変が有名だね。次はMALTリンパ腫。
医学生医学生
胃にできて、ピロリ菌を除菌すると小さくなるリンパ腫ですよね。これも粘膜のリンパ組織なのでB細胞でしょうか。
ドクタードクター
正解。粘膜関連リンパ組織から生じる節外性辺縁帯リンパ腫で、B細胞腫瘍だ。胃に最も多く、Helicobacter pyloriによる慢性炎症が背景にある。ただしt(11;18)転座をもつ例は除菌が効きにくい。胃以外でも、橋本病の甲状腺やSjögren症候群の唾液腺など、慢性炎症のある場所に出てくるのが特徴だよ。
医学生医学生
有毛細胞白血病は「白血病」なので、なんとなく骨髄系かと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいところだね。有毛細胞白血病は、表面に毛のような突起をもつ成熟B細胞の腫瘍だ。汎血球減少と著明な脾腫、骨髄穿刺でのdry tapが特徴で、TRAP染色陽性、CD11c・CD25・CD103陽性、ほぼ全例でBRAF V600E変異をもつ。日本ではまれな疾患だ。
医学生医学生
そうすると残る菌状息肉症がT細胞腫瘍ですね。名前だけ聞くとカビの病気みたいです。
ドクタードクター
まさにそこが試験で狙われる理由だ。菌状息肉症は、皮膚に親和性をもつ成熟T細胞、多くはCD4陽性ヘルパーT細胞が腫瘍化した皮膚T細胞リンパ腫で、皮膚原発リンパ腫のなかで最も多い。紅斑期、扁平浸潤期、腫瘤期と何年もかけてゆっくり進み、進行するとリンパ節や内臓にも広がる。
医学生医学生
皮膚科を回ったとき、湿疹として長く治療されていた人が実は菌状息肉症だった、という話を聞きました。
ドクタードクター
初期の紅斑期は湿疹や乾癬と見分けにくいから、治りにくい皮疹では生検が大切になる。組織では異型リンパ球が表皮内に入り込む「表皮向性」を示し、表皮内に小さな集塊、Pautrier微小膿瘍をつくるのが特徴だ。
医学生医学生
名前に「T細胞」がないのにT細胞由来のものは、ほかにもありますか。
ドクタードクター
Sézary症候群と未分化大細胞リンパ腫をセットで覚えておこう。Sézary症候群は紅皮症、全身のリンパ節腫脹、末梢血に脳回状の核をもつSézary細胞が出る、という三主徴をもつ皮膚T細胞リンパ腫の白血化病型だ。未分化大細胞リンパ腫はCD30陽性で、ALK陽性例ではt(2;5)をもつ。逆にHodgkinリンパ腫のReed-Sternberg細胞は胚中心B細胞由来と考えられている点も押さえておくといい。
医学生医学生
「名前にTがないT細胞腫瘍」として、菌状息肉症、Sézary症候群、未分化大細胞リンパ腫の3つを覚えておけばいいんですね。
ドクタードクター
その通り。由来がわかると、マーカーや遺伝子異常、治療薬の選び方にもつながる。たとえば抗CD20抗体はB細胞腫瘍で使う薬だから、由来の区別は臨床でも直接役に立つんだ。

まとめ

リンパ系腫瘍は腫瘍化した細胞がB細胞由来かT細胞・NK細胞由来かで整理でき、日本の非Hodgkinリンパ腫の大部分はB細胞由来です。濾胞性リンパ腫(t(14;18)・BCL2)、Burkittリンパ腫(MYC・starry sky像)、MALTリンパ腫(胃・H. pylori)、有毛細胞白血病(脾腫・TRAP陽性・BRAF V600E)はいずれも成熟B細胞腫瘍です。菌状息肉症はCD4陽性T細胞由来の皮膚T細胞リンパ腫で、紅斑期から腫瘤期へ年単位で進行し、表皮向性とPautrier微小膿瘍が組織学的特徴です。名前に「T細胞」を含まないT細胞腫瘍として、菌状息肉症、Sézary症候群、未分化大細胞リンパ腫を押さえておくと、由来を問う問題に強くなり、マーカーや治療選択の理解にもつながります。

解答・解説

正解はeです

リンパ系腫瘍(悪性リンパ腫やリンパ性白血病)を、腫瘍化した細胞の由来(B細胞かT細胞か)で分類できるかを問う問題である。 悪性リンパ腫は、まずHodgkinリンパ腫と非Hodgkinリンパ腫に分けられる。日本では非Hodgkinリンパ腫の多く(おおむね7割前後)がB細胞由来であり、T細胞・NK細胞由来のものは少数である。T細胞腫瘍の多くは「成人T細胞白血病・リンパ腫」「末梢性T細胞リンパ腫」「血管免疫芽球性T細胞リンパ腫」のように名称に「T細胞」が含まれるため判別しやすい。一方、名称に「T細胞」を含まないのにT細胞由来である代表的な疾患として、菌状息肉症、Sézary(セザリー)症候群、未分化大細胞リンパ腫(CD30陽性)を押さえておく必要がある。 本問の選択肢のうち、濾胞性リンパ腫、Burkittリンパ腫、MALTリンパ腫、有毛細胞白血病はいずれも成熟B細胞腫瘍であり、T細胞腫瘍は菌状息肉症だけである。

選択肢考察

  1. ×a.  濾胞性リンパ腫

    B細胞腫瘍である。リンパ濾胞の胚中心にあるB細胞(胚中心B細胞)に由来し、腫瘍細胞が濾胞に似た結節状の構造をつくって増殖する。表面マーカーはCD20陽性、CD10陽性で、多くの例でt(14;18)転座によりアポトーシスを抑えるBCL2遺伝子が過剰に発現する。進行は緩やかな低悪性度リンパ腫で、日本では非Hodgkinリンパ腫のなかでびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に次いで多い。

  2. ×b.  Burkittリンパ腫

    B細胞腫瘍である。t(8;14)などによりMYC遺伝子が過剰に発現し、きわめて速く増殖する高悪性度のリンパ腫である。組織像では、増殖する腫瘍細胞の間に死細胞を貪食したマクロファージが散在し、星空像(starry sky appearance)と呼ばれる。アフリカの流行地型ではEBウイルス感染との関連が強く、小児の顎骨病変が有名である。

  3. ×c.  MALTリンパ腫

    B細胞腫瘍である。粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:MALT)から発生する節外性辺縁帯リンパ腫で、胃に最も多い。胃MALTリンパ腫はHelicobacter pylori感染による慢性炎症を背景に生じ、多くは除菌治療で退縮する。t(11;18)転座(API2-MALT1融合遺伝子)をもつ例は除菌が効きにくい。胃以外にも甲状腺(橋本病)、唾液腺(Sjögren症候群)、眼付属器、肺などに生じる。

  4. ×d.  hairy cell leukemia〈有毛細胞白血病〉

    B細胞腫瘍である。細胞表面に毛のような細い突起をもつ成熟B細胞が、骨髄・脾臓・末梢血で増殖する。汎血球減少(特に単球減少)と著明な脾腫を特徴とし、骨髄穿刺ではしばしば吸引不能(dry tap)となる。酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)染色陽性、CD11c・CD25・CD103陽性で、ほぼ全例にBRAF V600E変異を認める。欧米に比べ日本ではまれで、日本には亜型(日本型)の存在が知られている。治療にはクラドリビンなどのプリンアナログが有効である。

  5. ○e.  菌状息肉症

    T細胞腫瘍であり、これが正解である。皮膚に親和性をもつ成熟T細胞(多くはCD4陽性のヘルパーT細胞)が腫瘍化した皮膚T細胞リンパ腫で、皮膚原発リンパ腫のなかで最も多い。紅斑期(斑状期)、扁平浸潤期(局面期)、腫瘤期と長い年月をかけて進行し、進行するとリンパ節や内臓にも病変が及ぶ。組織では、表皮内に異型リンパ球が入り込み(表皮向性)、小さな集塊(Pautrier微小膿瘍)をつくるのが特徴である。

リンパ系腫瘍の由来による整理(代表例)

1. B細胞腫瘍 ・前駆B細胞:B細胞性急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫 ・成熟B細胞:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(日本で最多)、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、Burkittリンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、有毛細胞白血病、原発性マクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫)、多発性骨髄腫(形質細胞腫瘍) ・Hodgkinリンパ腫も、その腫瘍細胞(Hodgkin細胞、Reed-Sternberg細胞)は胚中心B細胞由来と考えられている。 2. T細胞・NK細胞腫瘍 ・前駆T細胞:T細胞性急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫(縦隔腫瘤を伴いやすい) ・成熟T細胞:成人T細胞白血病・リンパ腫(HTLV-1が原因)、末梢性T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(CD30陽性、ALK陽性例ではt(2;5))、菌状息肉症、Sézary症候群、節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型(EBウイルス関連)、T細胞大顆粒リンパ球性白血病

菌状息肉症とSézary症候群

Sézary症候群は、全身の皮膚が赤くなる紅皮症、全身のリンパ節腫脹、末梢血中の腫瘍細胞(Sézary細胞)の出現を三主徴とする皮膚T細胞リンパ腫の白血化病型である。Sézary細胞は脳回状(cerebriform)の切れ込みの深い核をもつCD4陽性T細胞である。菌状息肉症と同じく皮膚T細胞リンパ腫に属するが、現在のWHO分類では別の疾患として扱われている。

名称に「T細胞」を含まないT細胞腫瘍

菌状息肉症、Sézary症候群、未分化大細胞リンパ腫は、名前からは由来がわかりにくいため試験で狙われやすい。

POINT

・濾胞性リンパ腫、Burkittリンパ腫、MALTリンパ腫、有毛細胞白血病はいずれもB細胞腫瘍である。 ・菌状息肉症はCD4陽性T細胞由来の皮膚T細胞リンパ腫で、紅斑期→扁平浸潤期→腫瘤期と進行し、表皮向性とPautrier微小膿瘍が特徴である。 ・名称に「T細胞」を含まないT細胞腫瘍として、菌状息肉症、Sézary症候群、未分化大細胞リンパ腫を覚える。 ・日本の非Hodgkinリンパ腫の大部分はB細胞由来で、最多はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。