StudyMed医師国家試験

眼内レンズの度数は「角膜」と「奥行き」で決まる―白内障術前の眼軸長測定

第107回医師国家試験 G問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第107回 G問題 第25問

白内障手術の術前に,眼内レンズの度の決定のために,角膜曲率測定の他に行う検査はどれか。

  1. a.隅角検査
  2. b.暗順応検査
  3. c.眼軸長検査
  4. d.蛍光眼底造影
  5. e.両眼視機能検査

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、白内障手術で入れる眼内レンズの度数をどう決めるか、という問題だ。ポイントは、眼の屈折が何によって決まっているかを思い出すこと。そこがわかれば、角膜曲率のほかに何を測るべきかが自然に見えてくるよ。
医学生医学生
白内障手術は、濁った水晶体を取り除いて人工のレンズを入れる手術ですよね。
ドクタードクター
その通り。水晶体は眼の屈折力のうち約20D前後を担っているから、取り除いたぶんをどの度数のレンズで補うかで、術後に近視になるか、正視になるか、遠視になるかが決まってしまうんだ。
医学生医学生
眼科の実習で手術を見学しましたが、レンズの度数は術前にもう決まっていて、先生が計算結果を確認していました。
ドクタードクター
そう、度数は術前の検査値から計算式で出す。眼全体の屈折は、主に角膜の屈折力、眼の奥行き、そしてレンズの屈折力の組み合わせで決まる。角膜の屈折力は角膜曲率測定、つまりケラトメトリーで測れる。では、もう一つ足りないのは何だろう。
医学生医学生
眼の奥行き……ということは、眼軸長ですか。
ドクタードクター
正解。眼軸長は角膜頂点から網膜の中心窩までの前後径で、成人の正視眼ではおよそ23〜24mmだ。同じ角膜でも、眼軸が長ければ像は網膜の手前で結ぶから近視寄り、短ければ遠視寄りになる。だから必要なレンズ度数は眼軸長で大きく変わるんだ。
医学生医学生
生理学の講義で、近視の多くは眼軸が長い軸性近視だと習いました。それとつながるんですね。
ドクタードクター
まさにそうだよ。しかも眼軸長は影響がとても大きくて、1mmずれると術後屈折が約2.5〜3D程度ずれるとされる。だから測定の精度が重要なんだ。測り方には超音波Aモード法と、光干渉を利用した光学式眼軸長測定がある。
医学生医学生
1mmで3Dも変わるなら、測定ミスはかなり怖いですね。ほかの検査はどうして違うんでしょう。隅角検査は手術のときに関係ありそうな気もしますが。
ドクタードクター
隅角検査は、隅角鏡で房水の出口である隅角を観察する検査で、開放隅角か閉塞隅角かといった緑内障の病型診断に使う。前眼部の状態把握には役立つけれど、レンズ度数の計算には使わない。
医学生医学生
暗順応検査は、夜盲の患者さんに行う検査でしたよね。
ドクタードクター
そう。明るいところから暗所に移ったときの光覚閾値の変化を追う検査で、網膜色素変性などの杆体機能障害の評価に使う。蛍光眼底造影は色素を静注して網膜・脈絡膜の血管を写す検査で、糖尿病網膜症の無灌流領域や新生血管、加齢黄斑変性の評価向き。両眼視機能検査は同時視・融像・立体視を調べるもので、斜視や弱視の評価に使う。どれも度数決定とは関係ないね。
医学生医学生
角膜の屈折力と眼軸長を計算式に入れてレンズ度数を出す、という理解でよいですか。
ドクタードクター
それで大丈夫。古典的なSRK式では、P=A−2.5L−0.9Kと表される。Pがレンズ度数、Aはレンズごとの定数、Lが眼軸長、Kが平均角膜屈折力だ。眼軸長が1mm長くなると、必要なレンズ度数が約2.5D小さくなることが式からも読み取れる。今は前房深度なども加味したSRK/T式やHaigis式、Barrett Universal II式などの理論式が主に使われているよ。
医学生医学生
術後は必ず正視を目指すんですか。
ドクタードクター
そうとは限らない。読書など近くを見る作業が多い人なら軽い近視を狙うこともあるし、反対の眼との屈折差が大きくなると不同視で見づらくなるから、他眼の屈折や視力も確認して目標を決める。患者さんの生活に合わせた設定が大切なんだ。
医学生医学生
度数以外に、術前に確認しておくべきことはありますか。
ドクタードクター
眼圧、細隙灯顕微鏡検査、散瞳下の眼底検査は基本だね。混濁が強くて眼底が見えないときは超音波Bモードで網膜剥離などを除外する。それから角膜内皮細胞密度の測定も大事で、内皮細胞が少ないと術後に水疱性角膜症を起こす危険がある。

まとめ

白内障手術では水晶体の代わりに眼内レンズを挿入するため、術前にその度数を正確に決める必要があります。眼の屈折は角膜屈折力と眼軸長に大きく左右されるので、角膜曲率測定と眼軸長測定(超音波Aモード法または光学式)の値を計算式に代入して度数を算出し、眼軸長は1mmの誤差で術後屈折が約2.5〜3Dずれるほど影響の大きい因子です。隅角検査は緑内障、暗順応検査は夜盲、蛍光眼底造影は網脈絡膜の血管病変、両眼視機能検査は斜視・弱視の評価に用いる検査で、度数計算には関係しません。目標屈折は生活スタイルや他眼との屈折差を考慮して決め、角膜内皮細胞密度や眼底の評価も併せて行います。眼の屈折の仕組みから必要な検査を導く考え方は、術前評価全体を理解する基盤になります。

解答・解説

正解はcです

白内障手術では、混濁した水晶体を取り除き、その代わりに眼内レンズ(IOL: intraocular lens)を挿入する。水晶体は眼の屈折力の一部(約20D前後)を担っているため、どの度数のレンズを入れるかによって術後の屈折状態(近視・正視・遠視)が決まる。 眼全体の屈折は、主に「角膜の屈折力」と「眼の奥行き(眼軸長)」、そして「レンズの屈折力」の組み合わせで決まる。したがって、術後に目標とする屈折を得るには、術前に角膜の屈折力(角膜曲率測定=ケラトメトリー)と眼軸長の2つを測定し、これを計算式に代入してレンズ度数を算出する必要がある。 本問は角膜曲率測定以外に必須となる検査を問うており、眼の前後方向の長さを測る眼軸長検査が該当する。その他の選択肢は、いずれも別の疾患の診断や評価に用いる検査であり、レンズ度数の計算には用いない。

選択肢考察

  1. ×a.  隅角検査

    隅角検査は、隅角鏡(ゴニオスコープ)を角膜に当てて、角膜と虹彩の付け根の間にある房水の出口(隅角)を観察する検査である。開放隅角緑内障か閉塞隅角緑内障かの鑑別、周辺虹彩前癒着や隅角の新生血管の有無の確認などに用いる。緑内障の病型診断には重要だが、眼内レンズの度数計算には用いない。

  2. ×b.  暗順応検査

    暗順応検査は、明るい環境から暗所に移ったときに光覚閾値がどのように低下していくか(暗さに慣れていく過程)を経時的に調べる検査である。夜盲を訴える患者に行い、網膜色素変性、小口病、白点状眼底などの杆体機能障害の評価に用いる。眼内レンズの度数決定とは無関係である。

  3. ○c.  眼軸長検査

    眼軸長は角膜頂点から網膜(中心窩)までの眼球の前後径であり、成人の正視眼ではおよそ23〜24mmである。眼軸長が長いほど近視寄り、短いほど遠視寄りとなるため、術後に目標とする屈折を得るためのレンズ度数は眼軸長によって大きく変わる。眼軸長は1mm違うと術後屈折が約2.5〜3D程度ずれるとされ、計算式の中でも影響の大きい因子である。測定法には、超音波Aモード法と、光干渉を用いた光学式眼軸長測定(IOLMaster など)がある。角膜曲率と眼軸長を計算式に代入して眼内レンズ度数を決めるため、これが正解である。

  4. ×d.  蛍光眼底造影

    蛍光眼底造影は、フルオレセインやインドシアニングリーンなどの色素を静脈注射し、網膜・脈絡膜の血管を撮影する検査である。糖尿病網膜症の無灌流領域や新生血管、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性の脈絡膜新生血管など、網脈絡膜の循環障害や血管病変の評価に用いる。眼内レンズの度数計算には関係しない。

  5. ×e.  両眼視機能検査

    両眼視機能検査は、左右の眼で見た像を脳で一つにまとめる働き(同時視・融像・立体視)を調べる検査で、大型弱視鏡やステレオテスト(Titmus stereo test など)を用いる。斜視や弱視の評価に行う。眼内レンズの度数計算には用いない。

眼内レンズ度数計算の考え方

眼内レンズの度数は、角膜屈折力(角膜曲率測定から算出)と眼軸長をもとに、計算式で決定する。古典的な回帰式として SRK式 がある。 P = A − 2.5L − 0.9K (P:術後に正視となる眼内レンズ度数〔D〕、A:レンズごとに決められた定数〔A定数〕、L:眼軸長〔mm〕、K:平均角膜屈折力〔D〕) この式から、眼軸長が1mm長くなると必要なレンズ度数が約2.5D小さくなることがわかる。現在は SRK/T 式、Haigis 式、Barrett Universal II 式など、前房深度などの因子も加味した理論式が主に用いられている。

術後屈折の目標設定

必ずしも正視を目標にするとは限らない。患者の生活スタイル(遠くを見る機会が多いか、読書など近業が多いか)や、他眼の屈折状態を考慮し、左右の屈折差(不同視)が大きくならないように目標屈折を設定する。そのため、他眼の屈折・視力も術前に確認する。

その他の白内障術前検査

視力検査・屈折検査、眼圧測定、細隙灯顕微鏡検査、散瞳下の眼底検査(眼底が透見できない場合は超音波Bモードで網膜剥離などを除外)、角膜内皮細胞密度の測定(スペキュラーマイクロスコープ)などを行う。角膜内皮細胞が少ないと、術後に水疱性角膜症を起こす危険がある。

POINT

・眼内レンズ度数の決定には、角膜曲率測定(角膜屈折力)と眼軸長測定が必須である。 ・眼軸長は超音波Aモード法または光学式眼軸長測定で測る。 ・SRK式:P = A − 2.5L − 0.9K(眼軸長1mmの誤差でレンズ度数は約2.5Dずれる)。 ・隅角検査=緑内障、暗順応検査=夜盲(網膜色素変性など)、蛍光眼底造影=網脈絡膜の血管病変、両眼視機能検査=斜視・弱視。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。