早すぎても遅すぎてもダメ―新生児マススクリーニングが「生後4〜7日」に行われる理由
第107回医師国家試験 G問題 第26問
国試問題にチャレンジ
経口摂取が順調な新生児のマススクリーニングの実施時期で正しいのはどれか。
- a.出生直後
- b.生後24時間
- c.生後48時間
- d.生後4~7日
- e.生後約1か月
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生まとめ
新生児マススクリーニングは、哺乳が順調な正期産児では、哺乳が確立した生後4〜7日(日本では日齢4〜6が標準)に足底から採血し、乾燥濾紙血で行います。早すぎると蛋白負荷が不十分で代謝異常症が偽陰性になりやすく、生理的なTSHサージや17-OHP高値により偽陽性も増えます。一方、ガラクトース血症、メープルシロップ尿症、塩喪失型先天性副腎過形成などは生後1〜2週で重症化しうるため、生後1か月では治療開始に間に合いません。現在はタンデムマス法の導入で20疾患前後が対象となり、発見頻度が最も高いのは先天性甲状腺機能低下症で、低出生体重児や早産児などでは再採血が行われます。「早すぎず遅すぎず」という時期設定の理屈を理解することは、検査の偽陽性・偽陰性を考える力にもつながります。
解答・解説
正解はdです
新生児マススクリーニング(新生児スクリーニング)は、先天性代謝異常症や内分泌疾患を症状が出る前に見つけ、早期治療によって知的障害や重い合併症、死亡を防ぐことを目的とした公的事業である。採血の時期は「早すぎず、遅すぎず」という2つの条件から決まっている。
早すぎてはいけない理由
・アミノ酸代謝異常症(フェニルケトン尿症など)や有機酸・脂肪酸代謝異常症では、哺乳(蛋白質や脂質の摂取)が始まってから異常な代謝物が血中に蓄積する。哺乳が不十分な時期に採血すると、異常があっても値が上がっておらず偽陰性となりうる。 ・出生直後には生理的な甲状腺刺激ホルモン(TSH)の一過性上昇(TSHサージ)があり、この時期に測ると偽陽性が増える。17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)も出生直後は高めで、先天性副腎過形成の偽陽性の原因となる。
遅すぎてはいけない理由
・ガラクトース血症、メープルシロップ尿症、塩喪失型の先天性副腎過形成などは生後1〜2週で急激に発症・重症化しうるため、結果をそれより前に得て治療を始める必要がある。 このため、哺乳が順調な正期産児では、十分な哺乳が確立した生後4〜6日前後(おおむね生後4〜7日、多くは産科退院前)に足底(かかと)から採血する。
選択肢考察
- ×a. 出生直後
出生直後はまだ哺乳が始まっておらず、アミノ酸などの異常代謝物が蓄積していないため、代謝異常症を見逃す(偽陰性)おそれがある。また、出生直後の生理的TSH上昇や17-OHPの高値により、先天性甲状腺機能低下症や先天性副腎過形成の偽陽性が多くなる。スクリーニングの時期として不適切である。
- ×b. 生後24時間
生後24時間の時点では哺乳量がまだ少なく、蛋白負荷が不十分なため代謝異常症の偽陰性が起こりうる。生後のTSHサージの影響も残っており、偽陽性も増える。スクリーニングの時期としては早すぎる。
- ×c. 生後48時間
生後48時間でも哺乳の確立はまだ十分とはいえず、異常代謝物の蓄積が不十分な可能性がある。TSHも生理的上昇から十分に下がりきっていないことがある。標準的な採血時期より早く、正しくない。
- ○d. 生後4~7日
生後4〜7日(日本では日齢4〜6での採血が標準とされる)には哺乳が確立しており、代謝異常症では異常代謝物が検出可能な濃度まで上昇している。一方で生後早期の生理的なホルモン変動は落ち着き、偽陽性も少なくなる。さらに、多くの重症疾患が発症する生後1〜2週より前に結果を出して治療を開始できる。これらの条件を満たす時期であり、正しい。
- ×e. 生後約1か月
生後1か月では、ガラクトース血症やメープルシロップ尿症、塩喪失型先天性副腎過形成など、生後早期に発症して急速に重症化する疾患の治療開始に間に合わず、スクリーニングの意義が失われる。なお、低出生体重児や早産児などでは、初回採血に加えて生後1か月前後(または体重2,000g到達時や退院時)に再採血を行うことがあるが、哺乳が順調な正期産児の初回スクリーニングの時期ではない。
新生児マススクリーニングの方法
足底(かかと)を穿刺して得た血液を専用の濾紙に染み込ませ、乾燥させて検査機関に送る(乾燥濾紙血法)。かつてはフェニルケトン尿症の検出に細菌の発育阻止を利用したガスリー(Guthrie)法が用いられた。検査費用は公費で負担される(採血料などは自治体により扱いが異なる)。
対象疾患の変遷
日本では1977年に開始され、当初はフェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ヒスチジン血症、ガラクトース血症の5疾患であった。その後、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)と先天性副腎過形成が加わり、ヒスチジン血症は除外された(一時期は6疾患が対象)。2014年度までに全国でタンデムマス法(タンデム質量分析計による多項目同時測定)が導入され、アミノ酸代謝異常症・有機酸代謝異常症・脂肪酸代謝異常症を含め、20疾患前後が対象となっている。近年は、重症複合免疫不全症(SCID)や脊髄性筋萎縮症(SMA)などを対象とする拡大スクリーニングも一部で行われている。
主な対象疾患と検査項目
・先天性甲状腺機能低下症:TSH(地域によりFT4も測定)。発見頻度が最も高い疾患である。陽性例は精密検査で血清TSH、FT4などを測定し、確定すればレボチロキシン(甲状腺ホルモン薬)で治療する。 ・先天性副腎過形成(21-水酸化酵素欠損症が大部分):17-OHP。 ・ガラクトース血症:ガラクトース、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ活性など。 ・アミノ酸代謝異常症(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症など):タンデムマス法でフェニルアラニン、ロイシン、メチオニンなどを測定。
再採血が必要な場合
低出生体重児、早産児、哺乳不良児、重症疾患で輸血や中心静脈栄養を受けている児などでは、初回の結果が不正確になりうるため、再採血を行う。
POINT
・新生児マススクリーニングは、哺乳が確立した生後4〜7日(日齢4〜6が標準)に足底から採血し、乾燥濾紙血で行う。 ・早すぎると代謝異常症の偽陰性、TSH・17-OHPの偽陽性が増え、遅すぎると早期発症する疾患の治療に間に合わない。 ・発見頻度が最も高いのは先天性甲状腺機能低下症(TSH測定)。 ・現在はタンデムマス法の導入により20疾患前後が対象である。
