StudyMed医師国家試験

かかとの一滴とろ紙一枚―新生児マススクリーニングの道具と手順を見極める

第118回医師国家試験 C問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第33問

写真を示す。  新生児マススクリーニングの検体採取時に使用するのはどれか。2つ選べ。

第118回 C問題 第33問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は写真に並んだ器具の中から、新生児マススクリーニングの検体採取に使うものを選ぶ問題だ。ポイントは「検体が何か」を正確に思い出すこと。検体の種類が分かれば、必要な道具は自然に決まるよ。
医学生医学生
新生児の検査なので、まずは尿かなと思いました。写真に乳児用の採尿バッグもありますし。
ドクタードクター
そう考える人は意外と多いんだ。でも新生児マススクリーニングの検体は尿でも静脈血でもなく、「乾燥ろ紙血」なんだよ。かかとを浅く穿刺して出てきた血液を、専用のろ紙に吸わせて乾かしたものを検査機関に郵送する。
医学生医学生
そういえば小児科の実習で、NICUの看護師さんが赤ちゃんのかかとから血をとって、紙に丸く染み込ませているのを見ました。あれがそうだったんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。だから正解は、かかとを穿刺する先端の鋭い小さな金属製の器具、つまり採血用ランセットと、点線の円が複数印刷された厚手の紙、つまりマススクリーニング用の採血ろ紙の2つだ。
医学生医学生
目盛りのついた小さな採血管もありましたが、新生児から少量の血をとるならあれも使いそうな気がします。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。あれは微量採血管で、新生児や乳児の生化学検査などで少量の血液を採るときに使う。ただマススクリーニングは液体の血液ではなく、ろ紙に乾燥させた血液で測定するから使わないんだ。
医学生医学生
スクリューキャップのついたプラスチックの試験管も違いますね。尿や喀痰を提出するときの容器ですから。
ドクタードクター
その通り。添加剤のないプレーンのスピッツで、一般検体の提出や遠心に使うものだ。採尿バッグも同様で、乳児の尿検査には使うけれど、マススクリーニングには関係ない。ちなみに採尿バッグの尿は皮膚の常在菌が混入しやすいから、尿培養をしたいときは導尿のほうが望ましいことも覚えておこう。
医学生医学生
採血のタイミングにも決まりがありましたよね。生まれてすぐではなかったような。
ドクタードクター
生後4〜6日、哺乳後およそ2時間が目安だ。早すぎると、哺乳によるタンパク質やガラクトースの負荷が十分でなく、代謝異常症の児でも値が上がりきらずに見逃すおそれがある。さらに出生直後は生理的にTSHが一過性に上がるから、早く採ると正常児でもTSH高値となって偽陽性が増えるんだ。
医学生医学生
見逃しと偽陽性の両方を避けるための日齢設定なんですね。穿刺する場所はかかとのどこでもいいんですか。
ドクタードクター
かかとの外側縁か内側縁を選ぶ。中央部の直下には踵骨があるから、深く刺すと踵骨骨髄炎や神経・血管損傷を起こしかねない。だからこそ、穿刺深度が浅く一定になる専用のランセットを使うんだ。
医学生医学生
血液をろ紙に付けるときのコツもありそうですね。
ドクタードクター
あるよ。足を温めて血流をよくし、消毒後は乾くのを待ってから穿刺する。最初の一滴はふき取り、強く絞り出さない。組織液の混入や溶血を防ぐためだ。そして円の中を一方向から裏まで均一に染み込ませる。重ね付けや両面からの塗布は血液量が不均一になり、測定値が不正確になる。採取後は直射日光や加熱を避けて室温で水平に乾燥させるんだ。
医学生医学生
対象疾患は先天性甲状腺機能低下症や先天性副腎過形成症、フェニルケトン尿症などでしたね。CBTの勉強でタンデムマス法という言葉も覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。タンデムマス法でアミノ酸代謝異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症をまとめて調べられるようになり、対象はおよそ20疾患に広がった。最近は脊髄性筋萎縮症や重症複合免疫不全症を加える拡大スクリーニングを行う地域もある。それから低出生体重児では、初回採血に加えて一定期間後に再採血を行い、遅発型の甲状腺機能低下症などを見逃さないようにすることも大切だ。
医学生医学生
道具を覚えるだけでなく、なぜその日齢・その部位・その方法なのかまで理解しておくと、実際の現場でも迷わずにすみそうです。

まとめ

新生児マススクリーニングの検体は乾燥ろ紙血であり、採血用ランセットでかかとの外側縁または内側縁を浅く穿刺し、専用の採血ろ紙に血液を染み込ませて採取します。採尿バッグ、プレーンスピッツ、微量採血管はいずれも別の検査で使う器具で、マススクリーニングには用いません。採血は生後4〜6日・哺乳後約2時間に行い、早すぎると代謝異常症の偽陰性や生理的TSH上昇による偽陽性が増えます。踵骨直上の中央部を避けること、ろ紙の円は一方向から裏まで均一に染み込ませて室温で乾燥させることも重要な手技上の注意点です。先天性甲状腺機能低下症や先天代謝異常症などを早期発見し障害を防ぐ公的な検査として、その手順と理由を理解しておくことは新生児医療の基本となります。

解答・解説

正解はd, eです

問われていること

新生児マススクリーニング(新生児スクリーニング)の検体採取に使う器具を、写真から選ぶ問題である。

検体採取の方法を思い浮かべる

新生児マススクリーニングは、全出生児を対象に、先天性甲状腺機能低下症や先天代謝異常症など、早期発見・早期治療で障害を防げる疾患を見つけ出す公的な検査である。検体は尿でも静脈血でもなく、「乾燥ろ紙血」である。具体的には次の手順で採る。 1. 生後4~6日(日齢4~6)、哺乳後およそ2時間の時点で採血する。 2. 足底のかかとの外側縁または内側縁を、単回使用の採血用ランセットで浅く穿刺する。 3. 自然に出てくる血液を、専用の採血ろ紙に印刷された円の中に、裏面まで十分染みとおるように吸わせる。 4. 室温で水平に置いて自然乾燥させ、都道府県・政令指定都市が指定する検査機関へ郵送する。 したがって写真の中から「足底を穿刺するランセット」と「血液を染み込ませるろ紙」を選べばよい。写真④は先端が鋭い金属製の小さな穿刺器具(ランセット)、写真⑤は点線の円が複数並んだ厚手の紙(マススクリーニング用ろ紙)である。採尿袋や試験管類は使用しない。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    目盛り付きの透明な袋で、上部に陰部に貼り付けるための粘着部と開口部がある。新生児・乳児用の採尿バッグ(採尿パック)であり、自力で排尿をコントロールできない児の尿一般検査などに用いる。マススクリーニングは血液検体で行うため使用しない。なお採尿バッグの尿は皮膚の常在菌が混入しやすく、尿培養には導尿やカテーテル採尿が望ましい。

  2. ×b.  ②

    円錐形の底をもつスクリューキャップ付きのプラスチック試験管で、添加剤の入っていないプレーンのスピッツである。尿や喀痰などの検体を入れて提出したり、遠心分離に用いたりする。マススクリーニングの検体はろ紙に吸わせて乾燥させるため、このような容器は使わない。

  3. ×c.  ③

    目盛りの付いた小容量の採血管で、新生児・乳児から少量の血液を採取して検査に出すための微量採血管(マイクロスピッツ)である。底に血清分離剤などが入っているものが多く、生化学検査などに使う。マススクリーニングは液体の血液ではなく乾燥ろ紙血を検体とするため用いない。

  4. ○d.  ④

    先端が鋭くとがった細長い金属製の単回使用穿刺器具で、採血用ランセットである。新生児マススクリーニングでは、これでかかとの外側縁または内側縁を浅く穿刺して毛細血管血を出させる。穿刺深度が浅く一定になる専用器具を使うことで、骨や深部組織の損傷を防ぐ。

  5. ○e.  ⑤

    点線の円が4つ印刷された厚手の紙で、新生児マススクリーニング用の採血ろ紙である。各円の内側を血液で満たし、表から裏まで均一に染みとおらせる。何度も重ね付けしたり、両面から付けたりすると血液量が不均一になり測定値が不正確になる。採取後は直射日光や加熱を避けて室温で十分乾燥させてから検査機関へ送付する。ろ紙には児の氏名・採血日・出生体重などの情報も記入する。

新生児マススクリーニングの概要

・対象:日本で出生したすべての新生児(公費で実施し、保護者の同意を得て行う)。 ・対象疾患(約20疾患):先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)、先天性副腎過形成症、ガラクトース血症に加え、タンデムマス法によるアミノ酸代謝異常症(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症など)、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症。近年は脊髄性筋萎縮症(SMA)や重症複合免疫不全症(SCID)などを加える拡大スクリーニングを行う地域もある。

採血時期が生後4~6日である理由

・早すぎると、哺乳によるタンパク質・ガラクトース負荷がまだ十分でなく、代謝異常症の児でもアミノ酸などの値が上がりきらず見逃し(偽陰性)が生じうる。 ・出生直後は生理的にTSH(甲状腺刺激ホルモン)が一過性に上昇するため、生後2~3日以内に採ると正常児でもTSHが高く出て偽陽性が増える。 ・低出生体重児では、生後4~6日の初回採血に加えて、一定期間後(生後1か月ごろや体重増加時など)に再採血を行い、遅発型の甲状腺機能低下症などを見逃さないようにする。

かかとの穿刺部位

・足底のかかとの外側縁または内側縁を穿刺する。 ・かかとの中央(後面の正中部)は直下に踵骨があるため避ける。穿刺が深くなると踵骨骨髄炎や、神経・血管損傷による後遺症を起こすおそれがある。 ・穿刺前に足を温めて血流をよくし、消毒後は乾燥を待ってから穿刺する。最初の一滴はふき取り、強く絞り出さない(組織液の混入や溶血を防ぐ)。

写真の器具の整理

・①採尿バッグ:乳児の尿検査用 ・②プレーンスピッツ:尿・喀痰などの一般検体用 ・③微量採血管:新生児・乳児の少量採血用 ・④ランセット:足底穿刺用(マススクリーニングで使用) ・⑤採血ろ紙:乾燥ろ紙血作成用(マススクリーニングで使用)

POINT

・新生児マススクリーニングの検体は「乾燥ろ紙血」。器具はランセットと専用ろ紙。 ・採血は生後4~6日、哺乳後約2時間で行う(早すぎると代謝異常の偽陰性、TSHの偽陽性が増える)。 ・穿刺部位はかかとの外側縁または内側縁。踵骨直上の中央部は骨髄炎などの危険があるため避ける。 ・ろ紙の円は一方向から裏まで均一に染み込ませ、重ね付けしない。室温で乾燥させて検査機関へ送る。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。