「歩けるのに寝ている」をどう書くか―主治医意見書で問われる寝たきり度判定
第107回医師国家試験 E問題 第68問
国試問題にチャレンジ
82歳の女性。要介護認定の申請にあたって,主治医意見書作成のため来院した。12年前から高血圧症,変形性膝関節症および脊柱管狭窄症の治療中であり,2か月に1回,家族に付き添われて車椅子で受診している。長男夫婦との3人暮らしで,日中はほとんどの時間を自宅で1人で過ごす。自宅では手すりにつかまりながら歩行することができるが,寝ていることが多い。夜間の排泄はベッド横のポータブルトイレを使用している。 障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準を示す。 生 活 自 立 ランクJ 何らかの障害を有するが,日常生活はほぼ自立しており独力で外出する。 1. 交通機関等を利用して外出する。 2. 隣近所へなら外出する。 準 寝 た き り ランクA 屋内での生活は概ね自立しているが,介助なしには外出しない。 1. 介助により外出し,日中はほとんどベッドから離れて生活する。 2. 外出の頻度が少なく,日中も寝たり起きたりの生活をしている。 寝 た き り ランクB 屋内での生活は何らかの介助を要し,日中もベッド上での生活が主体であるが,座位を保つ。 1. 車椅子に移乗し,食事,排泄はベッドから離れて行う。 2. 介助により車椅子に移乗します。 ランクC 1日中ベッド上で過ごし,排泄,食事,着替において介助を要する。 1. 自力で寝返りをうつ。 2. 自力では寝返りもうたない。 正しい評価はどれか。
- a.J-1
- b.J-2
- c.A-1
- d.A-2
- e.B-1
- f.B-2
- g.C-1
- h.C-2
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)は、能力ではなく実際の生活状態、特に移動に関わる状態に着目して、生活自立(J)、準寝たきり(A)、寝たきり(B・C)の4ランク8段階で判定します。外出が独力かどうかでJを、屋内生活に介助を要するかでB・Cを除外し、日中の離床状況でA-1とA-2を分けると判定しやすくなります。屋内は手すり歩行とポータブルトイレで概ね自立しているが、外出は家族付き添いの通院のみで日中も寝ていることが多い本例はA-2に該当し、外出時の車椅子使用やポータブルトイレの使用だけで重く判定しないことが重要です。主治医意見書には認知症高齢者の日常生活自立度も併記し、介護認定審査会での二次判定の資料となります。家族から自宅での生活の様子を具体的に聞き取る姿勢が、正確な判定と適切な介護サービスにつながります。
解答・解説
正解はdです
所見の整理
判定に必要な情報を、屋内生活・外出・日中の過ごし方・排泄の4点に分けて整理する。 ・屋内の移動:手すりにつかまりながら自分で歩行できる。車椅子は屋内では使っていない。 ・排泄:夜間はベッド横のポータブルトイレを使用しているが、介助を受けているとの記載はなく、自力で行えている。日中も長男夫婦は不在で1人で過ごしており、屋内での生活は概ね自立していると判断できる。 ・外出:2か月に1回、家族の付き添いのもと車椅子で受診する程度であり、介助なしには外出せず、外出頻度も少ない。 ・日中の過ごし方:寝ていることが多い(寝たり起きたりの生活)。
判定のプロセス
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)は、「外出できるか」「屋内生活が自立しているか」「日中ベッドから離れているか」「座位を保てるか」の順に段階的に絞り込むと判定しやすい。 (1) 独力で外出しないので、生活自立(ランクJ)ではない。 (2) 屋内生活は手すり歩行・ポータブルトイレで概ね自立しており、ベッド上中心の生活ではないので、寝たきり(ランクB・C)ではなく、準寝たきり(ランクA)である。 (3) ランクAのうち、外出の頻度が少なく(2か月に1回の通院のみ)、日中も寝ていることが多いので、A-1(介助で外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活)ではなく、A-2に該当する。 よって判定はA-2である。 なお、この判定は「何ができるか(能力)」ではなく「実際にどう生活しているか(状態)」に着目して行う点に注意する。
選択肢考察
- ×a. J-1
J-1は何らかの障害はあるが日常生活はほぼ自立しており、バスや電車などの交通機関を利用して独力で外出できる状態である。本例は家族の付き添いと車椅子がなければ外出しないため該当しない。
- ×b. J-2
J-2は隣近所程度であれば独力で外出できる状態である。本例は近所へも1人で外出しておらず、外出は家族の介助による通院に限られるため、ランクJには当たらない。
- ×c. A-1
屋内生活が概ね自立し、介助がなければ外出しない点ではランクAに合致する。しかしA-1は介助によって外出し、日中はほとんどベッドから離れて過ごす状態を指す。本例は外出が2か月に1回と少なく、日中も寝ていることが多いので、A-1ではなくA-2と判定する。
- ○d. A-2
手すり歩行とポータブルトイレの使用で屋内生活は概ね自立しており、外出は家族の付き添いによる車椅子での通院に限られる(介助なしには外出しない)ためランクA(準寝たきり)である。さらに外出頻度が少なく、日中も寝ていることが多い「寝たり起きたり」の生活であることから、A-2に該当する。
- ×e. B-1
B-1は屋内生活に何らかの介助を要し日中もベッド上の生活が主体だが、座位を保ち、自力で車椅子に移乗して食事や排泄をベッドから離れて行う状態である。本例は屋内を手すり伝いに自分で歩いており、屋内生活に介助を要していないためランクBではない。車椅子を使うのは外出時のみである。
- ×f. B-2
B-2は車椅子への移乗に介助を要する状態である。本例は屋内で自力歩行ができ、屋内生活に介助を必要としていないため該当しない。
- ×g. C-1
C-1は1日中ベッド上で過ごし、排泄・食事・着替えに介助を要するが、自力で寝返りはうてる状態である。本例は自分で歩いてポータブルトイレで排泄しており、該当しない。
- ×h. C-2
C-2は1日中ベッド上で過ごし、自力では寝返りもうてない最も重い段階である。屋内を歩行できる本例とはかけ離れている。
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)
厚生労働省が定めた判定基準で、障害をもつ高齢者の日常生活の自立の程度を、生活自立(ランクJ)、準寝たきり(ランクA)、寝たきり(ランクB・C)の4ランク8段階で評価する。判定は、補装具や自助具などを使用した状態で差し支えなく、「能力」ではなく「状態」、特に移動に関わる状態像に着目して行う。 ・ランクJ:独力で外出できる(J-1 交通機関を利用、J-2 隣近所まで) ・ランクA:屋内生活は概ね自立、介助なしには外出しない(A-1 介助で外出し日中はほぼ離床、A-2 外出頻度が少なく日中も寝たり起きたり) ・ランクB:屋内生活に介助を要し日中もベッド上中心だが座位は保てる(B-1 自力で車椅子に移乗、B-2 移乗に介助が必要) ・ランクC:1日中ベッド上で過ごし排泄・食事・着替えに介助を要する(C-1 自力で寝返り可、C-2 寝返りも不可)
認知症高齢者の日常生活自立度
寝たきり度とは別に、認知症による生活への支障の程度を評価する判定基準があり、ランクⅠ、Ⅱ(a・b)、Ⅲ(a・b)、Ⅳ、Mで表す。主治医意見書では両方を記載する。
要介護認定と主治医意見書
介護保険サービスを利用するには市町村に要介護認定を申請する。市町村は認定調査員による訪問調査(認定調査)を行い、その結果によるコンピュータ判定(一次判定)と、主治医意見書・特記事項を用いた介護認定審査会での審査(二次判定)を経て、要支援1・2、要介護1〜5、非該当(自立)のいずれかを認定する。主治医意見書は申請者のかかりつけ医が作成し、傷病に関する意見、特別な医療、心身の状態(障害高齢者・認知症高齢者の日常生活自立度を含む)、生活機能とサービスに関する意見などを記載する。
POINT
・寝たきり度は「外出」→「屋内生活の自立」→「日中の離床」→「座位・移乗・寝返り」の順に絞り込むと判定しやすい。 ・独力で外出できればJ、屋内は自立だが介助なしに外出しなければA、屋内生活に介助が必要だが座位保持可能ならB、1日中ベッド上ならC。 ・A-1は日中ほとんど離床、A-2は外出頻度が少なく寝たり起きたり。 ・判定は能力ではなく実際の生活状態で行う。主治医意見書には障害高齢者と認知症高齢者の日常生活自立度の両方を記載する。
