背が伸びない子、伸びすぎる子―低身長と高身長を分ける5つの疾患
第107回医師国家試験 E問題 第38問
国試問題にチャレンジ
小児で低身長をきたすのはどれか。3つ選べ。
- a.Turner症候群
- b.Marfan症候群
- c.甲状腺機能低下症
- d.Klinefelter症候群
- e.成長ホルモン分泌不全症
対話形式の解説
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ドクターまとめ
小児の低身長は平均から−2SD以下、または成長率の低下で定義され、GH・IGF-I、甲状腺ホルモン、性ホルモン、SHOX遺伝子、栄養・心理社会的環境のどこかが障害されると起こります。Turner症候群はSHOX遺伝子のハプロ不全、甲状腺機能低下症は骨成長・成熟の障害(骨年齢遅延)、成長ホルモン分泌不全症は均整型の低身長をきたす代表的な疾患です。一方、Marfan症候群(FBN1異常による長管骨の過成長)とKlinefelter症候群(47,XXY、骨端線閉鎖遅延による類宦官体型)は高身長をきたします。高身長の疾患は数が限られるため、ホモシスチン尿症や下垂体性巨人症、Sotos症候群とあわせて覚えておくと仕分けが容易になります。成長曲線で成長率の低下に気づき、脳腫瘍や甲状腺疾患、愛情遮断症候群などを見逃さないことが、小児診療の基本につながります。
解答・解説
正解はa, c, eです
低身長とは一般に、身長が同性・同年齢の標準値の平均から−2SD(標準偏差)以下にあるもの、または成長率の低下により成長曲線上で身長SDスコアが次第に下がっていくものをいう。 身長の伸びには、成長ホルモン(GH)とその作用を仲介するIGF-I(インスリン様成長因子-I)、甲状腺ホルモン、性ホルモンなどの内分泌因子と、骨の成長にかかわる遺伝因子(SHOX遺伝子など)、栄養・心理社会的環境などが関与する。これらのいずれかが障害されると低身長となる。 本問では、低身長をきたす代表的疾患(染色体異常であるTurner症候群、内分泌疾患である甲状腺機能低下症と成長ホルモン分泌不全症)と、逆に高身長をきたす代表的疾患(Marfan症候群、Klinefelter症候群)とを区別できるかが問われている。高身長をきたす疾患はMarfan症候群、Klinefelter症候群、ホモシスチン尿症、下垂体性巨人症、Sotos症候群などと数が限られるので、これらを押さえておくと選別しやすい。
選択肢考察
- ○a. Turner症候群
Turner症候群はX染色体の1本の全部または一部の欠失(45,X やモザイク、構造異常)による女性の疾患で、低身長はほぼ全例にみられる最も頻度の高い所見である。X染色体短腕の偽常染色体領域にあるSHOX遺伝子の量が不足(ハプロ不全)することが低身長の主な原因とされる。ほかに翼状頸、外反肘、原発性卵巣機能不全による二次性徴の欠如・原発性無月経、大動脈縮窄症などを伴う。治療として成長ホルモン療法が保険適用となっており、身長の改善が期待できる。
- ×b. Marfan症候群
Marfan症候群は15番染色体上のフィブリリン1遺伝子(FBN1)の異常による常染色体顕性(優性)遺伝の結合組織疾患である。長管骨の過成長により高身長、細長い四肢・指(クモ状指)、指極(両腕を広げた長さ)が身長を上回る体型を示す。ほかに水晶体偏位、大動脈基部拡張・大動脈解離、僧帽弁逸脱、漏斗胸、気胸などを伴う。低身長ではなく高身長をきたす疾患である。
- ○c. 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンは骨の成長・骨成熟に不可欠であり、GHの分泌やIGF-Iの作用にも関与する。そのため小児期に甲状腺機能低下症があると成長率が低下して低身長となり、骨年齢も遅延する。先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)は新生児マススクリーニング(TSH測定)で早期発見され、治療が遅れると低身長に加え知能障害を残す。後天性(主に橋本病)では、成長率の低下が初発症状となることがある。いずれも甲状腺ホルモン補充療法で成長の改善が見込める。
- ×d. Klinefelter症候群
Klinefelter症候群はX染色体が過剰な男性(代表的な核型は47,XXY)で、原発性性腺機能低下症(小さく硬い精巣、無精子症、女性化乳房など)を呈する。性ホルモン(テストステロン)不足により骨端線の閉鎖が遅れること、加えて過剰なX染色体によりSHOX遺伝子量が多いことから、下肢の長い類宦官体型を伴う高身長となる。低身長はきたさない。
- ○e. 成長ホルモン分泌不全症
GHは肝臓などでIGF-Iの産生を促し、骨端軟骨の増殖を通じて身長を伸ばす。GHの分泌が不足すると、体のつり合いのとれた(均整型の)低身長となり、成長率が低下する。特発性が多いが、頭蓋咽頭腫などの脳腫瘍や頭部外傷、周産期の骨盤位分娩・仮死などによる器質性(続発性)のものもあり、特に器質性の除外は重要である。診断にはGH分泌刺激試験(インスリン低血糖、アルギニン、クロニジン、L-ドパ、グルカゴン、GHRP-2などの負荷)を用い、治療はGH補充療法である。
低身長の主な原因
・頻度の高いもの:体質性(家族性)低身長、思春期遅発症(体質性成長思春期遅延)、特発性の成長ホルモン分泌不全症、SGA(在胎週数に比して小さく生まれた児)性低身長、Turner症候群 ・内分泌性:成長ホルモン分泌不全症、甲状腺機能低下症、Cushing症候群(ステロイド過剰)、偽性副甲状腺機能低下症、思春期早発症(一時的に高身長となるが骨端線が早期に閉じ、最終身長は低くなる) ・染色体異常・症候群:Turner症候群、Down症候群、Prader-Willi症候群、Noonan症候群、Silver-Russell症候群 ・骨系統疾患:軟骨無形成症(四肢短縮型の不均衡な低身長)など ・全身疾患:慢性腎臓病、先天性心疾患、炎症性腸疾患、吸収不良症候群、栄養障害 ・心理社会的要因:愛情遮断症候群(虐待・ネグレクトによるGH分泌低下) ・薬剤性:ステロイドの長期投与 注意すべきものとして、脳腫瘍(頭蓋咽頭腫など)による続発性成長ホルモン分泌不全症、甲状腺機能低下症、愛情遮断症候群などがあり、成長曲線上で成長率が低下してきた場合は精査が必要である。
高身長をきたす主な疾患
Marfan症候群、Klinefelter症候群、ホモシスチン尿症(Marfan様体型)、下垂体性巨人症(GH産生下垂体腺腫)、Sotos症候群、性腺機能低下症(骨端線閉鎖遅延による類宦官体型)
わが国で成長ホルモン療法の適応となる主な低身長
成長ホルモン分泌不全性低身長症、Turner症候群、Prader-Willi症候群、SGA性低身長症、慢性腎不全による低身長、軟骨異栄養症(軟骨無形成症など)、Noonan症候群
POINT
・低身長をきたす代表:Turner症候群(SHOX遺伝子ハプロ不全)、甲状腺機能低下症、成長ホルモン分泌不全症(均整型低身長)。 ・高身長をきたす代表:Marfan症候群(FBN1異常)、Klinefelter症候群(47,XXY、類宦官体型)、ホモシスチン尿症、下垂体性巨人症。 ・低身長の定義は、同性・同年齢の平均身長から−2SD以下。成長曲線で成長率の低下をとらえることが重要。 ・甲状腺機能低下症やGH分泌不全症では骨年齢が遅延する。脳腫瘍による続発性GH分泌不全を見逃さない。
