StudyMed医師国家試験

入院勧告の線引きはどこか―「3類からは就業制限」で解くコレラの立ち位置

第107回医師国家試験 B問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第107回 B問題 第4問

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉に基づく入院勧告の対象でないのはどれか。

  1. a.エボラ出血熱
  2. b.結核
  3. c.コレラ
  4. d.ジフテリア
  5. e.鳥インフルエンザ(H5N1)

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は感染症法の分類と、それに対応する措置を問う問題だ。疾患そのものの臨床像よりも、「何類に属するか」と「その類型で何ができるか」の対応関係を押さえているかがポイントになる。まず、入院勧告という措置はどの類型に認められているか、覚えているかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、1類と2類は入院勧告ができると習った気がします。3類はどうだったか、ちょっと曖昧です。
ドクタードクター
その記憶で正しいよ。入院勧告、つまり勧告に従わなければ入院措置まで取れる強い対人措置の対象は、類型としては1類と2類感染症だ。ほかに新型インフルエンザ等感染症、政令で準用が決められた指定感染症や新感染症も対象になる。一方、3類以下には入院勧告の規定がないんだ。
医学生医学生
ということは、選択肢の中から3類以下の疾患を探せばいいんですね。
ドクタードクター
その通り。では順番に見ていこう。エボラ出血熱は何類だろう。
医学生医学生
これは1類ですね。ウイルス性出血熱はまとめて1類だとCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
正解。1類はエボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱の7疾患。感染力も重篤性もきわめて高く、疑似症患者や無症状病原体保有者まで含めて、原則として第一種感染症指定医療機関への入院勧告の対象になる。次に結核はどうかな。
医学生医学生
結核は2類です。臨床実習で呼吸器内科を回ったとき、喀痰塗抹陽性の患者さんが結核病床のある病院へ転院していきました。
ドクタードクター
まさにそれが入院勧告の運用だね。結核はもともと結核予防法で扱われていたけれど、2007年に感染症法へ統合されて2類になった。周囲に感染させるおそれがある場合に入院勧告をして、結核病床をもつ医療機関に入院してもらう。ジフテリアも2類で、状況に応じて入院勧告の対象になる。
医学生医学生
鳥インフルエンザも2類でしたっけ。インフルエンザというと5類のイメージがあって迷いました。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいところだね。鳥インフルエンザのうちH5N1とH7N9は、ヒトでの致死率が高いことから2類に位置づけられていて、入院勧告の対象だ。ところがそれ以外の鳥インフルエンザは4類で、入院勧告の対象ではない。季節性インフルエンザは5類だから、同じ「インフルエンザ」でも型によって扱いがまったく違うんだ。
医学生医学生
そうすると、残るコレラが3類ということですね。激しい水様下痢で脱水になる重い病気なので、もっと上の類型かと思っていました。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だよ。実際、コレラは以前は2類だったけれど、2007年の法改正で3類に移されたんだ。3類はコレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフスの5疾患で、どれも腸管感染症。重篤性は1・2類ほど高くないけれど、飲食物を扱う仕事などを通じて集団発生を起こしうるのが特徴だ。だから措置は入院勧告ではなく、特定職種への就業制限や消毒などの対物措置が中心になる。
医学生医学生
なるほど、3類は「人を隔離する」より「感染を広げる仕事から外す」という発想なんですね。だから入院勧告の対象でないのはコレラになると。
ドクタードクター
その理解で完璧だ。発展として、類型ごとの措置を整理しておこう。就業制限は1〜3類と新型インフルエンザ等感染症で可能、入院勧告は1・2類と新型インフルエンザ等感染症まで、4類は媒介動物の駆除など対物措置が中心、5類は発生動向調査と情報提供が主な目的だ。
医学生医学生
届出の期限も類型で違いましたよね。
ドクタードクター
そう。1〜4類と新型インフルエンザ等感染症は診断後直ちに届け出る。5類のうち麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎菌感染症も直ちに、その他の全数把握の5類は7日以内だ。ちなみに新型コロナウイルス感染症は2023年5月から5類になっている。分類は法改正で動くことがあるから、最新の情報を確認する習慣も大切だよ。
医学生医学生
臨床でコレラの患者さんを診たら、入院させるかどうかは医学的な必要性で判断して、法律上は届出と就業制限を意識する、ということですね。
ドクタードクター
その通り。重症の脱水があれば当然入院治療が必要だけれど、それは法に基づく入院勧告とは別の話だ。法的な措置と医学的な判断を分けて考えられるようになると、この分野はぐっと整理しやすくなるよ。

まとめ

感染症法では、感染症を1類〜5類などに分類し、類型ごとに取りうる措置を定めています。入院勧告の対象は1類(エボラ出血熱、ペストなど)と2類(結核、ジフテリア、鳥インフルエンザH5N1・H7N9、SARS、MERS、ポリオ)、さらに新型インフルエンザ等感染症などであり、3類以下には入院勧告の規定がありません。コレラは2007年に2類から3類へ移された腸管感染症で、措置は飲食物を扱う業務などへの就業制限や消毒が中心となるため、入院勧告の対象ではありません。H5N1・H7N9以外の鳥インフルエンザが4類であることや、類型ごとの届出期限もあわせて押さえておくと、法改正にも対応しやすくなります。「何類か」と「何ができるか」を対応させて覚えることが、公衆衛生分野の得点と、臨床現場での適切な届出・対応の両方につながります。

解答・解説

正解はcです

テーマ

感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)は、感染力と重篤度などから感染症を1類〜5類、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分類し、分類ごとにとりうる措置を定めている。本問は、そのうち最も強い対人措置の一つである「入院勧告(従わない場合は入院措置)」の対象を問うている。

正解を導く考え方

入院勧告の対象となるのは、類型としては1類感染症と2類感染症(ほかに新型インフルエンザ等感染症、および政令で準用が定められた指定感染症、新感染症)である。3類感染症以下には入院勧告の規定がない。 したがって、選択肢の各疾患が何類に分類されているかを思い出せばよい。エボラ出血熱は1類、結核・ジフテリア・鳥インフルエンザ(H5N1)は2類であり入院勧告の対象となる。一方、コレラは3類感染症であり、就業制限の対象ではあるが入院勧告の対象ではない。「対象でないもの」を選ぶ問題なので、コレラが正解となる。

選択肢考察

  1. ×a.  エボラ出血熱

    エボラ出血熱は1類感染症である。1類感染症は感染力と罹患時の重篤性がきわめて高く、患者(疑似症患者・無症状病原体保有者を含む)は原則として第一種感染症指定医療機関などへの入院勧告の対象となる。したがって入院勧告の対象であり、本問の答えではない。

  2. ×b.  結核

    結核は2類感染症である(旧結核予防法は2007年に感染症法へ統合された)。肺結核で喀痰塗抹陽性など他者へ感染させるおそれがある場合には、入院勧告を行い、結核病床などをもつ医療機関に入院させる。したがって入院勧告の対象であり、本問の答えではない。

  3. ○c.  コレラ

    コレラは3類感染症である(2007年の法改正で2類から3類へ移された)。3類感染症は重篤性は1・2類ほど高くないが、特定の職業に就くことで集団発生を起こしうる腸管感染症であり、とられる措置は飲食物を扱う業務などへの就業制限、消毒などの対物措置が中心である。入院勧告の規定はないため、本問の「入院勧告の対象でないもの」に該当する。

  4. ×d.  ジフテリア

    ジフテリアは2類感染症である。状況に応じて入院勧告の対象となり、第二種感染症指定医療機関などに入院させることができる。したがって入院勧告の対象であり、本問の答えではない。

  5. ×e.  鳥インフルエンザ(H5N1)

    鳥インフルエンザ(H5N1)は2類感染症である(2008年の法改正で指定感染症から2類感染症に位置づけられた)。ヒトでの致死率が高いことから入院勧告の対象となる。なお、H5N1・H7N9以外の鳥インフルエンザは4類感染症であり、入院勧告の対象ではない点と区別しておく。

感染症法の類型と主な措置

・1類感染症:エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱の7疾患。入院勧告(原則入院)、就業制限、消毒などの対物措置、交通制限などが可能。 ・2類感染症:急性灰白髄炎(ポリオ)、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザ(H7N9)の7疾患。状況に応じて入院勧告、就業制限、対物措置が可能。 ・3類感染症:コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフスの5疾患。特定職種への就業制限、対物措置が可能。入院勧告はない。 ・4類感染症:動物や飲食物を介してヒトに感染する疾患(E型・A型肝炎、狂犬病、マラリア、デング熱、日本脳炎、H5N1・H7N9以外の鳥インフルエンザなど)。媒介動物の駆除など対物措置が中心。 ・5類感染症:国が発生動向調査を行い情報提供するもの(季節性インフルエンザ、麻疹、風疹、梅毒、新型コロナウイルス感染症〈2023年5月から〉など)。 ・新型インフルエンザ等感染症:入院勧告、外出自粛要請などが可能。 ・指定感染症・新感染症:政令などで必要な措置を個別に準用・定める。

届出

1〜4類感染症、新型インフルエンザ等感染症、および5類のうち麻疹・風疹・侵襲性髄膜炎菌感染症は診断後直ちに届け出る。その他の全数把握の5類感染症は7日以内に届け出る。

就業制限の考え方

1〜3類感染症と新型インフルエンザ等感染症では就業制限が可能である。3類感染症は腸管感染症が中心であるため、飲食物に直接接触する業務などが主な制限対象となる。

POINT

・入院勧告の対象は1類・2類感染症(および新型インフルエンザ等感染症、指定感染症・新感染症)。3類以下にはない。 ・1類:エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱。 ・2類:ポリオ、結核、ジフテリア、SARS、MERS、鳥インフルエンザ(H5N1・H7N9)。 ・3類:コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス。措置は就業制限が中心。 ・コレラは2007年に2類から3類へ移行した。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。