StudyMed医師国家試験

人工呼吸器とともに暮らす場所―「医療の必要性」と「病期」で選ぶ長期療養の場

第107回医師国家試験 B問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第107回 B問題 第3問

脳梗塞後に症状が安定し,意識レベルJCSⅢ-100で人工呼吸器を装着している高齢患者が,長期療養する場所として最も適切なのはどれか。

  1. a.療養病床
  2. b.有料老人ホーム
  3. c.グループホーム
  4. d.高度救命救急センター
  5. e.介護利用型軽費老人ホーム〈ケアハウス〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、脳梗塞後に病状が安定したものの、深い意識障害が続き人工呼吸器を装着している高齢者が、どこで長期療養するのがよいかを問う問題だ。考える軸は2つ。継続的な医療が必要かどうか、そして急性期か慢性期か。まずJCSのⅢ-100がどんな状態か、確認しておこう。
医学生医学生
3桁は刺激しても覚醒しない状態で、100は痛み刺激に対して払いのけるような動作をする、でしたよね。
ドクタードクター
その通り。200は痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめたりする、300は痛み刺激に反応しない。つまりこの患者さんは深い意識障害が続いている。さらに人工呼吸器を装着しているということは、何が常に必要になるかな。
医学生医学生
回路や設定の管理、気管吸引、それにアラームが鳴ったときの対応でしょうか。救急の実習で、夜中に看護師さんが何度も吸引していたのを覚えています。
ドクタードクター
まさにそう。人工呼吸管理は、医師や看護師が24時間対応できる環境でなければ安全に続けられない高度な医療行為なんだ。だから最初のふるいは「医療機関かどうか」。選択肢のうち医療機関はどれだと思う?
医学生医学生
療養病床と高度救命救急センターの2つですね。人工呼吸器なら、集中治療ができる救命救急センターのほうが安心な気もしてしまいます。
ドクタードクター
そこがよくある誤解だ。高度救命救急センターは三次救急の中核で、広範囲熱傷や指肢切断、急性中毒といった特殊な重症患者まで受け入れる、生命の危機にある急性期患者のための施設。人工呼吸管理はできるけれど、病状が安定した慢性期の患者を長期入院させる場所ではないんだ。
医学生医学生
救急のベッドがふさがってしまうと、次に運ばれてくる重症患者を受け入れられなくなりますね。
ドクタードクター
その視点は大事だね。限られた救急医療資源を守るためにも、状態が安定したら速やかに慢性期の医療機関へ移ってもらう。そこで正解になるのが療養病床だ。病院や診療所の病床のうち、長期療養を必要とする慢性期の患者を入院させるための病床で、医師・看護職員による医学的管理が常時可能。病室面積や機能訓練室など、長く過ごす環境にも配慮されている。
医学生医学生
医療は続けられて、しかも長期入院に向いている場所ということですね。残りの3つは医療機関ではないから外れる、という理解でいいですか。
ドクタードクター
そう。1つずつ確認しよう。有料老人ホームは老人福祉法に基づく民間の高齢者の住まいで、食事や介護、健康管理などのサービスを提供するけれど、医師の常駐義務はない。
医学生医学生
グループホームは認知症の方が少人数で共同生活をする場所ですよね。地域医療実習で訪問したとき、入居者の方が一緒に料理をしていました。
ドクタードクター
よく覚えているね。認知症対応型共同生活介護といって、1ユニット5〜9人で家庭的な環境のもと、介護職員の支援を受けながら自立した生活を目指す。ある程度の生活能力が前提だから、深い意識障害で人工呼吸器を使う人の療養の場にはならない。ケアハウスも軽費老人ホームの一種で、自宅での独立した生活に不安のある高齢者が低額で食事や生活支援を受ける施設。基本的に自立した人が対象で、やはり医療機関ではない。
医学生医学生
選択肢を「医療機関か生活の場か」で分けて、医療機関の中で「急性期か慢性期か」で絞る、という2段階ですね。
ドクタードクター
その通り。発展として療養の場の全体像も整理しておこう。医療機関には急性期を担う一般病床と、慢性期を担う療養病床がある。療養病床は医療保険で入院する医療療養病床が中心で、介護保険で運用されていた介護療養病床は2024年3月末で廃止され、介護医療院へ移行した。
医学生医学生
介護医療院は、医療と生活の場の両方の機能をもつ施設でしたよね。公衆衛生の講義で聞いた気がします。
ドクタードクター
そう、医師・看護職員が配置され、喀痰吸引や経管栄養など一定の医療を要する要介護者を受け入れる。ほかの介護保険施設として、原則要介護3以上の生活の場である特別養護老人ホームと、リハビリで在宅復帰を目指す中間施設の介護老人保健施設もセットで覚えておきたい。
医学生医学生
施設名だけ暗記していると混乱しますが、「どのくらい医療が要るか」と「生活の場か、在宅復帰を目指す場か」で並べると整理しやすいです。
ドクタードクター
いい整理の仕方だね。臨床では、退院支援の段階で医療ソーシャルワーカーや多職種と連携し、患者さんの医療依存度や家族の希望、地域の資源を踏まえて療養先を決めていく。人工呼吸器を使いながら在宅療養を選ぶ人もいて、その場合は訪問診療や訪問看護の体制づくりが欠かせない。施設の特徴を知っておくことは、患者さんに合った行き先を一緒に考えるための基礎になるよ。

まとめ

長期療養の場は、「常時の医療が必要か」と「急性期か慢性期か」の2軸で選びます。人工呼吸器を装着し深い意識障害(JCSⅢ-100)が続く患者は、24時間の医学的管理が必要なため医療機関での療養が前提となり、病状が安定した慢性期であれば長期療養を担う療養病床が最も適切です。高度救命救急センターは生命の危機にある急性期重症患者のための施設であり、有料老人ホーム、グループホーム、ケアハウスは医療機関ではない生活の場なので適しません。介護療養病床が2024年3月末で廃止され介護医療院に移行したことや、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設の役割もあわせて整理しておくと、退院支援や多職種連携で患者に合った療養先を考える力につながります。

解答・解説

正解はaです

患者の状態の整理

・脳梗塞の急性期を過ぎ、病状は安定している(慢性期)。 ・意識レベルはJCS(Japan Coma Scale)Ⅲ-100で、痛み刺激に対して払いのけるような動作をするが開眼しない深い意識障害が続いている。 ・人工呼吸器を装着しており、呼吸管理(回路・設定の管理、気管吸引、トラブル時の対応など)が継続的に必要である。

考え方

長期療養の場を選ぶ問題では、まず「その人に継続的な医療が必要か、主に生活支援・介護で足りるか」を判断し、次に「急性期か慢性期か」を考える。 本例は人工呼吸器の管理という高度な医療行為が常時必要であるため、医師・看護師が常駐し24時間医療を提供できる医療機関でなければならない。一方で病状は安定しており、救命救急や集中治療のような急性期医療はもはや必要ない。したがって、慢性期の患者に長期の入院医療を提供する病床である療養病床が最も適切である。 選択肢を「医療機関か否か」で分けると、療養病床と高度救命救急センターの2つに絞られ、そのうえで「急性期か慢性期か」で療養病床が選ばれる。

選択肢考察

  1. ○a.  療養病床

    療養病床は、病院(または診療所)の病床のうち、主に長期にわたり療養を必要とする慢性期の患者を入院させるためのものである。医療機関であるため医師・看護職員による医学的管理が常時可能であり、病状が安定した人工呼吸器装着患者や遷延性意識障害の患者の長期療養の場として適している。急性期病床に比べて病室面積や機能訓練室などの療養環境が重視されている点も、長期入院に適する理由である。

  2. ×b.  有料老人ホーム

    有料老人ホームは老人福祉法に基づく高齢者の住まいであり、食事や介護、家事援助、健康管理などのサービスを提供する民間の生活施設である。医療機関ではなく医師の常駐義務もないため、人工呼吸器の管理のような常時の医療を必要とする患者の長期療養には適さない。

  3. ×c.  グループホーム

    グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症の高齢者が少人数(1ユニット5〜9人)で家庭的な環境のもと共同生活を送り、介護職員の支援を受けながら自立した生活を目指す介護保険サービスの場である。入居者にはある程度の生活能力が求められ、医療機関でもないため、深い意識障害があり人工呼吸器を装着した患者の療養の場にはならない。

  4. ×d.  高度救命救急センター

    高度救命救急センターは、救命救急センターのうち広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒などの特殊疾患にも対応できる、三次救急医療機関の中核である。人工呼吸管理自体は可能だが、生命の危機にある急性期の重症患者を受け入れるための施設であり、病状が安定した慢性期の患者を長期入院させる場所ではない。状態が安定すれば、限られた救急医療資源を確保するためにも速やかに慢性期の医療機関へ移すべきである。

  5. ×e.  介護利用型軽費老人ホーム〈ケアハウス〉

    ケアハウスは老人福祉法に基づく軽費老人ホームの一種で、身体機能の低下などにより自宅での独立した生活が不安な高齢者(原則60歳以上)が、低額な料金で食事や生活支援を受けながら生活する施設である。基本的に自立した生活が可能な人を対象とする生活施設であり、医療機関ではないため、人工呼吸器を装着した患者の療養には適さない。

療養の場の大まかな整理

1. 医療機関(常時の医療が提供できる) ・一般病床:急性期の治療を主とする。救命救急センター・集中治療室もここに含まれる。 ・療養病床:慢性期で長期療養を要する患者のための病床。医療保険で入院する医療療養病床が中心である。なお、介護保険で運用されていた介護療養病床(介護療養型医療施設)は2024年3月末で廃止され、長期療養と生活の場の機能をあわせもつ介護医療院へ移行した。介護医療院も医師・看護職員が配置され、喀痰吸引や経管栄養など一定の医療を要する要介護者を受け入れる。 2. 介護保険施設 ・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):常時介護を要し在宅生活が困難な要介護者(原則要介護3以上)の生活の場。 ・介護老人保健施設:病院と在宅の中間施設で、リハビリテーションを行い在宅復帰を目指す。 ・介護医療院:上記のとおり。 3. 高齢者の住まい・生活施設(医療機関ではない) ・有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、軽費老人ホーム(ケアハウスなど)、養護老人ホーム、認知症高齢者グループホームなど。

JCS(Japan Coma Scale)

Ⅰ(1桁):刺激しなくても覚醒している。Ⅱ(2桁):刺激すると覚醒する。Ⅲ(3桁):刺激しても覚醒しない。Ⅲ-100は「痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする」、Ⅲ-200は「痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめたりする」、Ⅲ-300は「痛み刺激に反応しない」である。

POINT

・療養の場は「医療が常時必要か」「急性期か慢性期か」の2軸で選ぶ。 ・人工呼吸器装着など常時医療を要する安定した慢性期患者の長期療養の場は療養病床である。 ・有料老人ホーム、グループホーム、ケアハウスは生活の場であり医療機関ではない。 ・高度救命救急センターは急性期の重症患者のための施設で、長期療養の場ではない。 ・介護療養病床は2024年3月末に廃止され、介護医療院へ移行した。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。