StudyMed医師国家試験

身長・体重では決まらない―A-DROPとCURB-65で読む肺炎の「入院ライン」

第107回医師国家試験 B問題 第39問

国試問題にチャレンジ

第107回 B問題 第39問

成人市中肺炎患者の入院適応の決定に有用な指標はどれか。3つ選べ。

  1. a.年齢
  2. b.体重
  3. c.身長
  4. d.脱水
  5. e.呼吸数

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、成人の市中肺炎で入院させるかどうかを何で判断するかという問題だ。肺炎を診断したら、まず外来で治療できるか、入院が必要か、ICUが必要かという「治療の場」を決める。そのために使う重症度スコアの中身を知っているかが問われているよ。
医学生医学生
呼吸器内科の講義でA-DROPを習いました。頭文字の項目を覚えればいいんですよね。
ドクタードクター
その通り。日本呼吸器学会のガイドラインで使うA-DROP、英国胸部学会のCURB-65、米国で開発されたPSIが代表的だ。どれも死亡リスクと関連する項目を組み合わせたもので、高齢、脱水、呼吸不全、意識障害、血圧低下といった全身状態の悪さや臓器障害を反映している。
医学生医学生
Aは年齢ですね。高齢者は予備能が低いから重症化しやすい、ということでしょうか。
ドクタードクター
そう。A-DROPでは男性70歳以上、女性75歳以上で1点。CURB-65の「65」は65歳以上を意味するし、PSIでは年齢の数値そのものが点数の土台になる。年齢は3つのスコアすべてに入っている重要な指標だ。
医学生医学生
Dの脱水は、血液検査ならBUNで見るんでしたっけ。
ドクタードクター
よく覚えているね。A-DROPのDはBUN 21 mg/dL以上または脱水ありで1点。肺炎では発熱や頻呼吸で不感蒸泄が増え、食事も水分もとれなくなるから脱水になりやすい。脱水は循環を悪くし、腎前性腎障害を起こして予後を悪化させる。CURB-65のUも血中尿素の上昇を見ていて、同じ意味の項目だ。
医学生医学生
Rは呼吸ですよね。だから呼吸数も入るということで……。
ドクタードクター
ここは少し注意が必要だ。A-DROPのRは呼吸数ではなく酸素化で評価していて、SpO2 90%以下、PaO2なら60 Torr以下で1点。一方、CURB-65のRはRespiratory rate、つまり呼吸数30回/分以上で1点。PSIにも呼吸数30回/分以上が加点項目として入っている。
医学生医学生
A-DROPとCURB-65で同じRでも中身が違うんですね。混同しそうです。
ドクタードクター
国試でも狙われやすいポイントだね。とはいえ、どちらも呼吸不全の程度を見ているという点は共通だ。呼吸数は低酸素や呼吸仕事量の増大を早く反映する鋭敏なバイタルサインだから、入院適応の判断に有用な指標であることは変わらない。
医学生医学生
臨床実習の救急外来で、指導医の先生が「呼吸数を数えない研修医が多い」とおっしゃっていたのを思い出しました。
ドクタードクター
本当にそうなんだ。SpO2はモニターに自動で出るけれど、呼吸数は自分で30秒なり1分なり数えないとわからない。でも敗血症を拾い上げるqSOFAにも呼吸数22回/分以上が入っているように、重症患者を見逃さないためのかなめなんだよ。
医学生医学生
体重や身長は、どのスコアにも入っていないということですね。でも、やせている高齢者は誤嚥性肺炎になりやすいイメージがあります。
ドクタードクター
いい疑問だね。低栄養や極端なやせは誤嚥のリスクや全身状態を把握するうえで参考にはなる。でも体重の値そのもので入院を決める基準はないし、身長は重症度とまったく関係しない。体重は抗菌薬の投与量や腎機能の推算に使うことはあるけれど、それは治療の段階の話だ。
医学生医学生
整理すると、年齢、脱水、呼吸数がスコアの構成項目で、体格を表す身長と体重は入らない、ということですね。
ドクタードクター
その通り。A-DROPの残りはO(Orientation)が意識障害、P(Pressure)が収縮期血圧90 mmHg以下。各1点で、0点は外来、1〜2点は外来または入院、3点は入院、4〜5点はICUを検討する。ショックがあれば点数によらず超重症として扱う。
医学生医学生
スコアが0点なら必ず外来でいいんでしょうか。
ドクタードクター
そこが臨床の大事なところ。スコアはあくまで目安で、薬が飲めない、食事がとれない、独居で服薬管理が難しい、基礎疾患が悪化している、といった事情があれば入院を考える。数字だけで機械的に決めずに、患者さんの生活背景まで含めて判断しよう。

まとめ

成人市中肺炎では、診断後にまず外来・入院・ICUのどこで治療するかを決め、その判断に日本のA-DROP、英国のCURB-65、米国のPSIといった重症度スコアを用います。A-DROPは年齢(男性70歳・女性75歳以上)、脱水(BUN 21 mg/dL以上)、酸素化(SpO2 90%以下)、意識障害、血圧低下(収縮期90 mmHg以下)からなり、CURB-65では呼吸数30回/分以上が評価項目となるため、年齢・脱水・呼吸数はいずれも入院適応の判断に有用です。一方、身長や体重はどのスコアにも含まれません。A-DROPのRは酸素化、CURB-65のRは呼吸数という違いは頻出なので区別して覚えましょう。スコアは目安であり、経口摂取や服薬管理の可否など臨床的・社会的要因も加味して判断する姿勢が、実際の診療で重症肺炎を見逃さないことにつながります。

解答・解説

正解はa, d, eです

市中肺炎(病院外で日常生活を送っている人に発症した肺炎)の初期診療では、「外来で治療できるか、入院が必要か、集中治療室(ICU)管理が必要か」という治療の場を最初に決める。その判断のために、死亡リスクと相関する項目を組み合わせた重症度スコアが用いられる。 代表的なものは次の3つである。 ・A-DROP:日本呼吸器学会の成人肺炎診療ガイドラインで用いられる日本の指標 ・CURB-65:英国胸部学会(BTS)が採用する指標 ・PSI(Pneumonia Severity Index):米国で開発された、20項目の点数を合計する詳細な指標 これらの項目は、「高齢であること」「脱水・腎前性の腎機能低下(BUN上昇)」「呼吸不全(呼吸数増加や酸素化低下)」「意識障害」「血圧低下」といった、全身状態の悪さや臓器障害を反映するものからなる。したがって、本問では各選択肢がこれらのスコアの構成項目に含まれるか、すなわち予後や重症度と関連する生体指標かどうかを考えればよい。体格そのものを表す身長や体重は、いずれのスコアにも含まれない。

選択肢考察

  1. ○a.  年齢

    高齢者は予備能が低く、肺炎による死亡率が高いため、年齢は主要な重症度スコアすべてに含まれる。A-DROPの「A(Age)」は男性70歳以上・女性75歳以上、CURB-65の「65」は65歳以上を1点とする。PSIでも年齢の数値そのものが点数の基礎となる。入院適応の判断に有用な指標である。

  2. ×b.  体重

    体重はA-DROP、CURB-65、PSIのいずれの項目にも含まれず、入院適応を決める重症度判定には用いない。低栄養や極端なやせは誤嚥性肺炎のリスクや全身状態の把握には参考になるが、体重の値自体で入院の要否を判定する基準はない。なお、抗菌薬の投与量設計(腎機能の推算など)には体重を用いることがある。

  3. ×c.  身長

    身長は肺炎の重症度や予後とは関連せず、A-DROP、CURB-65、PSIのいずれにも含まれない。入院適応の決定には用いない。

  4. ○d.  脱水

    肺炎では発熱・頻呼吸による不感蒸泄の増加や経口摂取不良で脱水をきたしやすく、脱水は循環動態の悪化や腎前性腎障害を通じて予後を悪くする。A-DROPの「D(Dehydration)」は、BUN(血中尿素窒素)21 mg/dL以上または脱水ありを1点とする。CURB-65の「U(Urea)」も血中尿素の上昇(7 mmol/L超、BUNでおよそ20 mg/dL程度に相当)を評価しており、同じく脱水・腎機能低下を反映する項目である。入院適応の判断に有用である。

  5. ○e.  呼吸数

    呼吸数の増加は低酸素血症や呼吸仕事量の増大を反映する鋭敏なバイタルサインであり、呼吸不全の程度を示す。CURB-65の「R(Respiratory rate)」は呼吸数30回/分以上を1点とし、PSIでも呼吸数30回/分以上が加点項目である。なお、A-DROPの「R(Respiration)」は呼吸数ではなく酸素化で評価し、SpO2 90%以下(PaO2 60 Torr以下)を1点とする。いずれにせよ呼吸状態の評価は入院適応の判断に欠かせず、呼吸数は有用な指標である。

A-DROP(日本呼吸器学会)

・A(Age):男性70歳以上、女性75歳以上 ・D(Dehydration):BUN 21 mg/dL以上または脱水あり ・R(Respiration):SpO2 90%以下(PaO2 60 Torr以下) ・O(Orientation):意識障害あり ・P(Pressure):収縮期血圧90 mmHg以下 各1点で、重症度と治療の場の目安は以下のとおりである。 ・0点:軽症 → 外来治療 ・1〜2点:中等症 → 外来または入院 ・3点:重症 → 入院治療 ・4〜5点:超重症 → ICU入院を検討(ショックがあれば点数によらず超重症として扱う)

CURB-65(英国胸部学会)

・C(Confusion):意識障害(見当識障害) ・U(Urea):血中尿素 7 mmol/L超 ・R(Respiratory rate):呼吸数30回/分以上 ・B(Blood pressure):収縮期血圧90 mmHg未満または拡張期血圧60 mmHg以下 ・65:年齢65歳以上 0〜1点は外来、2点は入院を考慮(短期入院や厳重な外来管理も可)、3点以上は重症として入院し、4〜5点ではICU管理を検討する。

PSI(Pneumonia Severity Index)

年齢・性別・介護施設入所の有無、併存疾患(悪性腫瘍、肝疾患、心不全、脳血管疾患、腎疾患)、身体所見(意識障害、呼吸数30回/分以上、収縮期血圧90 mmHg未満、体温異常、脈拍125回/分以上)、検査所見(動脈血pH、BUN、Na、血糖、ヘマトクリット、PaO2、胸水)を点数化し、I〜V群に分類する。精度は高いが項目が多く、救急外来で簡便に使うにはA-DROPやCURB-65のほうが扱いやすい。

重症度評価に関連する事項

・スコアはあくまで目安であり、経口摂取ができない、独居で服薬管理が難しい、基礎疾患の増悪がある、といった社会的・臨床的要因も加味して入院を決める。 ・敗血症の拾い上げには qSOFA(呼吸数22回/分以上、意識変容、収縮期血圧100 mmHg以下)が用いられ、ここでも呼吸数が重要な項目となっている。 ・体重・身長・BMIはいずれの肺炎重症度スコアにも含まれない。

POINT

・市中肺炎の入院適応(重症度)判定には A-DROP、CURB-65、PSI を用いる。 ・A-DROP:Age(男70・女75歳以上)、Dehydration(BUN 21 mg/dL以上または脱水)、Respiration(SpO2 90%以下)、Orientation(意識障害)、Pressure(収縮期血圧90 mmHg以下)。 ・CURB-65:Confusion、Urea(7 mmol/L超)、Respiratory rate(30回/分以上)、Blood pressure(収縮期90未満 or 拡張期60以下)、65歳以上。 ・A-DROPのRは酸素化(SpO2)、CURB-65のRは呼吸数である点の違いに注意。 ・身長・体重は重症度判定に用いない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。