緑の半円が重なるとき―Goldmann眼圧計が見抜く緑内障
第106回医師国家試験 E問題 第14問
国試問題にチャレンジ
検査の様子(A)とその検査所見(B)とを別に示す。 この検査で異常高値を示す眼疾患はどれか。

- a.緑内障
- b.角膜潰瘍
- c.網膜剝離
- d.加齢白内障
- e.視神経管骨折
対話形式の解説
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ドクターまとめ
細隙灯顕微鏡に装着したチップを角膜に当て、フルオレセイン染色下で2つの緑色の半円の内縁が接する点を読む検査はGoldmann圧平眼圧計による眼圧測定で、眼圧測定の標準法です。眼圧の正常値は10〜21mmHgで、これを超える異常高値をきたす代表的疾患は房水流出障害による緑内障です。一方、裂孔原性網膜剝離ではむしろ眼圧が低下することがあり、加齢白内障・角膜潰瘍・視神経管骨折は通常眼圧に影響しません。日本人に最も多い正常眼圧緑内障では眼圧が正常範囲にとどまるため、眼圧値だけでなく視神経乳頭所見や視野検査を併せて評価することが重要です。また角膜厚や屈折矯正手術歴が測定値に影響することも含め、検査の原理を理解しておくことが正確な臨床判断につながります。
解答・解説
正解はaです
検査の同定
写真Aは、細隙灯顕微鏡(スリットランプ)に取り付けた測定用チップ(プリズム)を角膜に直接当てている様子であり、Goldmann圧平眼圧計による眼圧測定である。点眼麻酔をしたうえでフルオレセイン(蛍光色素)で涙液を染め、コバルトブルー光で観察する。写真Bは検者から見える像で、プリズムで上下に分けられた2つの緑色の半円(ミラー)がみえる。ダイヤルを回して押しつける力を調節し、2つの半円の内縁がちょうど接した時点の目盛り(×10でmmHg)が眼圧値となる。
測定原理
Imbert-Fickの法則(眼球内圧=角膜を一定面積だけ平らにするのに要する力÷その面積)に基づき、直径3.06mmの円形の範囲を圧平するのに必要な力から眼圧を求める。現在でも眼圧測定の標準(ゴールドスタンダード)とされる方法である。
設問の考え方
眼圧の正常値は10〜21mmHg(平均約15mmHg)で、これを超える眼圧上昇をきたす代表的疾患は緑内障である。緑内障は、視神経乳頭の陥凹拡大と対応する視野障害を特徴とする進行性の視神経症であり、眼圧上昇が最大の危険因子である。したがって、眼圧検査で異常高値を示す疾患として緑内障を選ぶ。他の選択肢は、眼圧が上がらないか、むしろ低下することがある疾患であり、診断には別の検査が用いられる。
選択肢考察
- ○a. 緑内障
正しい。房水の流出が障害されると眼圧が上昇し、視神経が障害される。原発開放隅角緑内障では線維柱帯からの房水流出抵抗の増大により、原発閉塞隅角緑内障では隅角の閉塞により眼圧が上昇する。急性緑内障発作では40〜60mmHg以上に達することもある。ただし、日本人に最も多い正常眼圧緑内障では眼圧は正常範囲(21mmHg以下)にとどまるため、眼圧が正常でも緑内障を否定できない点に注意する。
- ×b. 角膜潰瘍
誤り。角膜潰瘍は細菌・真菌・ヘルペスウイルス・アカントアメーバなどの感染などにより角膜上皮とその下の実質が欠損した状態で、通常は眼圧上昇をきたさない。診断はフルオレセイン染色で欠損部を染め出し、細隙灯顕微鏡で観察して行う。むしろ角膜に器具を直接当てる圧平眼圧測定は、潰瘍部の悪化や感染拡大の恐れがあるため避けるべきである。
- ×c. 網膜剝離
誤り。裂孔原性網膜剝離では、網膜裂孔を通じて網膜下や脈絡膜側から房水が吸収されやすくなることなどにより、眼圧はむしろ低下することがある。診断は散瞳下の眼底検査で行い、中間透光体の混濁で眼底が見えない場合は超音波Bモード検査が有用である。
- ×d. 加齢白内障
誤り。加齢白内障は水晶体の混濁であり、通常は眼圧に影響しない。診断は散瞳下の細隙灯顕微鏡検査で水晶体の混濁を確認して行う。なお、白内障が進行して水晶体が膨化すると隅角が狭くなり閉塞隅角緑内障を誘発したり、過熟白内障では水晶体蛋白の漏出による緑内障(水晶体融解緑内障)を生じたりすることがあるが、これらは緑内障を合併した特殊な状態である。
- ×e. 視神経管骨折
誤り。視神経管骨折は眉毛部外側などへの打撲で視神経管に外力が及び、視神経が損傷されて急激な視力・視野障害をきたす外傷性視神経症である。眼圧には影響しない。所見としては患側の相対的瞳孔求心路障害(RAPD、Marcus Gunn瞳孔)が重要で、画像診断にはCT(視神経管の薄いスライス像)が用いられる。受傷直後の眼底は正常で、数週後に視神経萎縮が現れる。
眼圧測定法の種類
・Goldmann圧平眼圧計:細隙灯顕微鏡に装着して用いる接触式。点眼麻酔とフルオレセイン染色が必要。最も精度が高く標準とされる。 ・非接触眼圧計(ノンコンタクトトノメーター):空気を角膜に吹き付けて圧平し眼圧を求める。麻酔不要で角膜に触れないため、健診やスクリーニングで広く用いられる。 ・手持ち式の眼圧計(反跳式眼圧計など):小児や臥位の患者にも使える。 ・Schiøtz眼圧計:仰臥位の角膜に器具を載せ、角膜のへこみ具合から眼圧を求める古い方法。
眼圧値に影響する因子
角膜が厚いと眼圧は高く、薄いと低く測定される。LASIKなどの屈折矯正手術後は角膜が薄くなるため、眼圧が実際より低く測定されやすい。
眼圧の異常をきたす主な病態
・高眼圧:原発緑内障(開放隅角・閉塞隅角)、続発緑内障(ぶどう膜炎、ステロイド使用、血管新生緑内障、外傷など)、高眼圧症(眼圧は高いが視神経障害がない状態) ・低眼圧:裂孔原性網膜剝離、眼球穿孔創、毛様体機能低下、緑内障手術後の過剰濾過など
緑内障の概要
・日本での40歳以上の有病率は約5%で、中途失明原因の第1位である。 ・病型としては正常眼圧緑内障が最も多い。 ・治療の基本は眼圧下降であり、点眼薬(プロスタグランジン関連薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬など)、レーザー治療、手術が行われる。正常眼圧緑内障でも眼圧を下げることで進行を抑えられる。
POINT
・写真はGoldmann圧平眼圧計による眼圧測定。2つの半円の内縁が接したときの値を読む ・眼圧の正常値は10〜21mmHg ・眼圧上昇をきたす代表的疾患は緑内障(ただし正常眼圧緑内障では眼圧は正常範囲) ・裂孔原性網膜剝離では眼圧はむしろ低下しうる ・角膜潰瘍などの角膜疾患がある眼では、接触式の眼圧測定を避ける
