StudyMed医師国家試験

「筒をのぞくような視界」はどこから来る?―視野の欠け方で病変を読み解く

第119回医師国家試験 F問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第119回 F問題 第23問

求心性視野狭窄をきたす疾患はどれか。

  1. a.うっ血乳頭
  2. b.頭蓋咽頭腫
  3. c.加齢黄斑変性
  4. d.球後視神経炎
  5. e.開放隅角緑内障

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は眼科の問題で、視野障害の「形」から疾患を当てる問題だ。視野の欠け方は、視覚路のどこが傷んでいるかをそのまま映し出す。まずは求心性視野狭窄という言葉の意味から確認しよう。どんな見え方だと思う?
医学生医学生
周りから見えなくなって、真ん中だけが残る視野ですよね。患者さんが「筒をのぞいているみたい」と言う、と講義で聞きました。
ドクタードクター
その通り。周辺から欠けはじめて、時間をかけて中心へ狭まっていく。中心が最後まで残るから、かなり進むまで視力は保たれるのが特徴だ。では逆に、中心が欠ける視野障害は何と呼ぶかな。
医学生医学生
中心暗点です。黄斑が障害されるとそうなる、と習いました。
ドクタードクター
いいね。視野のパターンと病変部位の対応を整理しておこう。黄斑や乳頭黄斑線維束の障害なら中心暗点、視神経乳頭が腫れればMariotte盲点の拡大、視交叉の障害なら両耳側半盲、視交叉より後ろなら同名半盲。そして周辺から欠けていくのが求心性視野狭窄だ。この地図があれば、選択肢に典型的な視野を当てはめるだけで解ける。
医学生医学生
では、うっ血乳頭はどうでしょう。乳頭が腫れて視神経が圧迫されるなら、周りから狭くなりそうな気もします。
ドクタードクター
そう考えたくなるよね。うっ血乳頭は頭蓋内圧亢進で軸索輸送が滞り、乳頭が両眼性に腫れる状態だ。乳頭は生理的な盲点に対応するから、腫れればまずその盲点が大きくなる。つまり典型はMariotte盲点の拡大だ。急性期は視力も保たれやすい。ただ長く続いて視神経萎縮に移行すると周辺からの狭窄が残ることもあるので、あくまで「典型像」として覚えておこう。
医学生医学生
頭蓋咽頭腫は、CBTの勉強で下垂体腺腫とセットで覚えました。視交叉を圧迫するので両耳側半盲ですね。
ドクタードクター
正解。視交叉では鼻側網膜由来の線維が交叉していて、そこが圧迫されると両眼の耳側が欠ける。下垂体腺腫は下から押し上げるので上耳側から、頭蓋咽頭腫は上から圧迫するので下耳側から欠けはじめることがある、という違いも知っておくといい。いずれにしても求心性視野狭窄ではない。
医学生医学生
加齢黄斑変性は、名前の通り黄斑の病気なので中心暗点ですね。臨床実習の眼科外来でAmslerチャートを使っているのを見ました。
ドクタードクター
よく見ていたね。加齢黄斑変性は黄斑の網膜色素上皮や脈絡膜が加齢で障害され、滲出型では脈絡膜新生血管から出血や滲出が起こる。症状は中心暗点、変視症、視力低下で、周辺視野は保たれる。求心性視野狭窄とはちょうど逆のパターンだ。
医学生医学生
球後視神経炎は視神経の病気なので、周りから欠けるのかと一瞬思いましたが……。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすい。球後視神経炎では、視力にとって重要な乳頭黄斑線維束が侵されやすいので、典型は中心暗点なんだ。急激な視力低下、眼球運動時痛、RAPDを伴い、眼球の後ろの炎症なので眼底は正常に見えることが多い。多発性硬化症や視神経脊髄炎スペクトラム障害の初発症状のこともあるから、神経内科との連携も大事だ。
医学生医学生
そうすると、残る開放隅角緑内障が正解ですね。緑内障は視神経の病気ですが、中心ではなく周辺から欠けるんですか。
ドクタードクター
そう、正解は開放隅角緑内障だ。隅角は開いているのに、視神経乳頭陥凹が拡大し網膜神経線維が少しずつ脱落していく。初期には固視点から10〜20度付近にBjerrum暗点や、鼻側の上下で感度がずれる鼻側階段が出る。進むと暗点がMariotte盲点とつながって弓状暗点になり、さらに周辺が失われて中心だけが残る求心性視野狭窄の形になる。
医学生医学生
中心が残るから、患者さんは気づかないまま進んでしまうんですね。
ドクタードクター
まさにそこが怖いところだ。自覚症状に乏しく、健診の眼底写真で乳頭陥凹拡大を指摘されて見つかることも多い。末期には中心も失われて高度の視力低下や失明に至る。しかも日本人では眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障が多いから、「眼圧が正常だから大丈夫」とは言えない。
医学生医学生
治療で視野は戻るんでしょうか。
ドクタードクター
残念ながら、失われた視野は回復しない。エビデンスのある治療は眼圧を下げることだけで、点眼、レーザー、手術で進行を遅らせる。だから早期発見がすべてなんだ。ついでに、求心性視野狭窄の代表としては網膜色素変性も必ず押さえよう。杆体が先に障害されて夜盲で始まり、輪状暗点を経て求心性視野狭窄へ進む。ほかに汎網膜光凝固術後や、心因性視覚障害で見られる管状視野・らせん状視野も周辺が狭くなる例だ。
医学生医学生
求心性視野狭窄なら網膜色素変性と進行した緑内障、中心暗点なら黄斑疾患と視神経炎、と整理しておきます。
ドクタードクター
完璧だ。視野の形から病変部位を逆算する考え方は、眼科だけでなく脳神経外科や神経内科の診察でもそのまま役に立つよ。

まとめ

求心性視野狭窄は視野の周辺から欠損が進み、中心が最後まで残る視野障害で、代表的な疾患は網膜色素変性と進行した緑内障です。開放隅角緑内障ではBjerrum暗点や鼻側階段から始まり、弓状暗点を経て求心性視野狭窄へ進行し、中心視野が保たれるため自覚に乏しく発見が遅れがちです。うっ血乳頭はMariotte盲点の拡大、頭蓋咽頭腫など視交叉病変は両耳側半盲、加齢黄斑変性や球後視神経炎は中心暗点が典型です。緑内障の視野は回復しないため、正常眼圧緑内障を含めた早期発見と眼圧下降治療が重要です。視野の形から視覚路の障害部位を推定する力は、眼科と神経疾患の診療に共通する基本技能です。

解答・解説

正解はeです

求心性視野狭窄とは

視野の周辺部から欠損が始まり、時間とともに中心へ向かって狭まっていく視野障害を求心性視野狭窄という。中心部の視野は最後まで残るため、かなり進行するまで視力は保たれるのが特徴である。患者は「筒をのぞいているように見える」と表現することがある。

視野障害のパターンから病変部位を考える

視野障害の形は、視覚路のどこが障害されたかを反映する。 ・黄斑(網膜の中心)や乳頭黄斑線維束の障害 → 中心暗点 ・視神経乳頭の腫脹 → Mariotte盲点(マリオット盲点:視神経乳頭に対応する生理的な暗点)の拡大 ・視交叉の障害 → 両耳側半盲 ・視交叉より後ろ(視索・外側膝状体・視放線・後頭葉)の障害 → 同名半盲 ・網膜周辺部から始まる障害や緑内障の進行例 → 求心性視野狭窄 この対応関係を押さえておけば、選択肢の疾患ごとに典型的な視野異常を当てはめるだけで解ける。選択肢のうち、周辺から欠損が進み中心が最後まで残る経過をたどるのは開放隅角緑内障である。

選択肢考察

  1. ×a.  うっ血乳頭

    誤り。うっ血乳頭は頭蓋内圧亢進によって視神経の軸索流(軸索輸送)が滞り、視神経乳頭が腫れる状態で、原則として両眼性である。乳頭が腫大するため、視野ではまずMariotte盲点の拡大がみられる。急性期には視力は比較的保たれ、原因(脳腫瘍など)を治療すれば視野の予後は良好なことが多い。ただし長期間持続すると視神経萎縮に移行し、不規則な視野障害や周辺からの視野狭窄が残ることがある。典型的な視野所見としては求心性視野狭窄ではなくMariotte盲点の拡大を答える。

  2. ×b.  頭蓋咽頭腫

    誤り。頭蓋咽頭腫は胎生期のRathke嚢(ラトケ嚢)の遺残から発生するトルコ鞍上部の腫瘍で、小児と中高年に好発する。視交叉を圧迫すると、交叉する鼻側網膜由来の線維が障害されて両耳側半盲をきたす。下垂体腺腫が視交叉を下方から押し上げて上方から欠損が始まりやすいのに対し、頭蓋咽頭腫は上方から圧迫するため下方の耳側から欠損が始まることがある。いずれにしても視交叉病変の典型は両耳側半盲であり、求心性視野狭窄ではない。

  3. ×c.  加齢黄斑変性

    誤り。加齢黄斑変性は黄斑部の網膜色素上皮や脈絡膜が加齢に伴って障害される疾患で、滲出型では脈絡膜新生血管が生じ、出血や滲出を起こす。障害されるのは視野の中心に対応する黄斑であるため、中心暗点・変視症(ものがゆがんで見える)・視力低下が主症状となる。周辺視野は保たれるので、求心性視野狭窄とは逆のパターンである。

  4. ×d.  球後視神経炎

    誤り。球後視神経炎は眼球より後方の視神経に炎症が起こる病態で、乳頭の腫脹がないため眼底は正常にみえることが多い(「患者には見えず、医師にも何も見えない」と形容される)。視力に重要な乳頭黄斑線維束が侵されやすく、典型的な視野所見は中心暗点である。急激な視力低下、眼球運動時の眼痛、相対的瞳孔求心路障害(RAPD)を伴う。多発性硬化症や視神経脊髄炎スペクトラム障害の初発症状となることもある。

  5. ○e.  開放隅角緑内障

    正しい。開放隅角緑内障は、隅角が開放しているにもかかわらず視神経乳頭陥凹の拡大と網膜神経線維の脱落が慢性に進行する疾患である。初期には固視点から10〜20度付近の領域にBjerrum暗点(ブエルム暗点)や、水平経線を境に鼻側の上下で感度が異なる鼻側階段がみられる。進行すると暗点がMariotte盲点とつながって弓状暗点となり、さらに周辺から視野が失われて中心部だけが残る求心性視野狭窄の形をとる。中心視野は比較的最後まで保たれるため自覚症状に乏しく発見が遅れやすいが、末期には中心視野も障害されて高度の視力低下・失明に至る。

求心性視野狭窄をきたす主な疾患

・網膜色素変性:杆体(暗所で働く視細胞)が先に障害され、夜盲で発症し、輪状暗点を経て求心性視野狭窄へ進行する。求心性視野狭窄の代表的疾患である。 ・緑内障(特に進行例):本問の正解。 ・汎網膜光凝固術後:網膜周辺部を広くレーザーで凝固するため周辺視野が狭くなる。 ・心因性視覚障害(機能性視覚障害):求心性視野狭窄や、検査距離を変えても視野の大きさが変わらない管状視野、らせん状視野がみられることがある。 ・両側の後頭葉障害(黄斑回避を伴う場合):両側同名半盲が合わさって中心だけが残る。

緑内障の視野変化の進行

乳頭陥凹拡大・網膜神経線維層欠損(視野異常なし:前視野緑内障)→ 鼻側階段・傍中心暗点・Bjerrum暗点 → 弓状暗点 → 周辺からの視野狭窄で中心と耳側の一部が残る → 末期に中心視野も消失。 日本人の緑内障では、眼圧が正常範囲(21mmHg以下)にある正常眼圧緑内障が多いことも特徴である。治療は眼圧下降(点眼薬、レーザー、手術)が唯一エビデンスのある方法で、失われた視野は回復しない。

中心暗点をきたす主な疾患

加齢黄斑変性、黄斑円孔、中心性漿液性脈絡網膜症、視神経炎、Leber遺伝性視神経症、エタンブトールなどによる中毒性視神経症。

POINT

・求心性視野狭窄:周辺から欠けて中心が最後まで残る。代表は網膜色素変性と緑内障(進行期)。 ・緑内障の初期視野変化はBjerrum暗点・鼻側階段、進行すると弓状暗点を経て求心性視野狭窄となる。 ・うっ血乳頭 → Mariotte盲点拡大。 ・視交叉病変(下垂体腺腫・頭蓋咽頭腫)→ 両耳側半盲。 ・黄斑疾患(加齢黄斑変性)・視神経炎(球後視神経炎)→ 中心暗点。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。