ゼーゼーは「吐く息」に出る―乳児の急性細気管支炎を病態から読み解く
第106回医師国家試験 D問題 第20問
国試問題にチャレンジ
小児の急性細気管支炎について正しいのはどれか。3つ選べ。
- a.RSウイルスが病因となる。
- b.3~4歳児に好発する。
- c.吸気性呼吸困難がみられる。
- d.胸部エックス線写真で両側肺野の透過性が亢進する。
- e.加湿酸素の吸入が有効である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
急性細気管支炎は、主にRSウイルスによって2歳未満、特に生後6か月未満の乳児に起こる末梢気道の炎症です。上皮の脱落・浮腫・分泌物で細い細気管支が閉塞し、呼気時に狭窄が強まるため、呼気延長と呼気性喘鳴を伴う呼気性呼吸困難を呈し、エアトラッピングによる過膨張が胸部エックス線で両側肺野の透過性亢進や横隔膜平低化として現れます。吸気性呼吸困難はクループや急性喉頭蓋炎、気道異物など上気道狭窄の所見であり、両者の区別は小児の呼吸器疾患を考える基本です。治療は加湿酸素、輸液、鼻汁吸引などの支持療法が中心で、気管支拡張薬やステロイドはルーチンには推奨されません。早産児や先天性心疾患児などの高リスク児では重症化や無呼吸に注意し、モノクローナル抗体などによる予防も重要です。
解答・解説
正解はa, d, eです
疾患の要点
急性細気管支炎は、ウイルス感染によって直径2mm未満程度の細い気道である細気管支に炎症が起こる疾患で、主に2歳未満、とくに生後6か月未満の乳児に多い。原因の大半はRSウイルス(respiratory syncytial virus)で、流行期は従来冬季とされてきたが、近年は夏から秋にかけて流行が始まる年もみられる。
病態から症状・検査所見を導く
ウイルスが細気管支の上皮に感染すると、上皮の壊死・脱落、粘膜の浮腫、粘液分泌の増加が起こり、もともと細い乳児の細気管支が狭くなったり詰まったりする。息を吐くときは胸腔内圧が上がって気道がさらに細くなるため、空気が出にくくなる。その結果、 ・呼気の延長と呼気性喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を伴う呼気性呼吸困難 ・吐ききれない空気が肺に残るエアトラッピング(空気とらえこみ)による肺の過膨張 が生じる。過膨張は胸部エックス線写真で両側肺野の透過性亢進(黒っぽく見える)や横隔膜の平低化として現れる。
治療の考え方
特効的な抗ウイルス療法はなく、治療は対症療法が中心である。低酸素血症に対する酸素投与、分泌物を軟らかくするための加湿、哺乳不良や脱水に対する輸液、鼻汁の吸引などを行う。 この「細い気道の閉塞 → 呼気が障害される → 過膨張」という流れを押さえれば、c(吸気性)が誤りで d が正しいことが理解できる。
選択肢考察
- ○a. RSウイルスが病因となる。
急性細気管支炎の原因ウイルスとして最も多いのがRSウイルスで、全体の過半数を占める。RSウイルスは2歳までにほぼすべての小児が一度は感染するとされ、初感染の乳児で細気管支炎や肺炎を起こしやすい。ほかにヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなども原因となる。
- ×b. 3~4歳児に好発する。
好発年齢は2歳未満であり、とくに生後6か月未満の乳児で頻度が高く重症化しやすい。乳児は細気管支の内径が小さく、わずかな浮腫や分泌物でも気道抵抗が大きく上がるためである。3~4歳になると気道が太くなり、RSウイルスに再感染しても上気道炎(かぜ症状)程度で済むことが多い。
- ×c. 吸気性呼吸困難がみられる。
細気管支という末梢の細い気道が狭窄・閉塞する疾患であり、呼気時に気道がより狭くなるため、呼気延長と呼気性喘鳴を伴う呼気性呼吸困難が特徴である。多呼吸、鼻翼呼吸、陥没呼吸を伴うことも多い。吸気性喘鳴(stridor)や吸気性呼吸困難は、クループ症候群(急性声門下喉頭炎)、急性喉頭蓋炎、気道異物など、胸郭外の上気道の狭窄でみられる所見である。
- ○d. 胸部エックス線写真で両側肺野の透過性が亢進する。
末梢気道の閉塞によって呼気が十分に吐き出せず、肺内に空気がたまるエアトラッピングが起こる。その結果、肺が過膨張となり、胸部エックス線写真では両側肺野の透過性亢進、横隔膜の平低化、肋間の開大などの肺気腫様の所見がみられる。無気肺や斑状の浸潤影を伴うこともある。
- ○e. 加湿酸素の吸入が有効である。
治療の中心は支持療法であり、低酸素血症に対しては加湿した酸素を投与する。加湿によって気道分泌物の粘稠化を防ぎ、排出しやすくする。重症例では高流量鼻カニュラ酸素療法、持続陽圧呼吸(CPAP)、さらに人工呼吸管理が必要になることもある。あわせて哺乳困難・脱水に対する輸液、鼻腔吸引、安静・保温を行う。
急性細気管支炎の整理
・原因:RSウイルスが最多。ほかにヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルスなど ・好発:2歳未満、特に生後6か月未満の乳児 ・経過:鼻汁・咳などの上気道炎症状が数日続いた後、多呼吸、呼気性喘鳴、陥没呼吸などの下気道症状が出現する ・身体所見:呼気延長、wheezes(笛様音)やcrackles(断続性ラ音)の聴取 ・診断:臨床診断が基本。RSウイルス迅速抗原検査(鼻咽頭ぬぐい液)で病原を確認できる ・胸部エックス線:過膨張(透過性亢進、横隔膜平低化)、無気肺、斑状影 ・治療:酸素投与(加湿)、輸液、鼻汁吸引などの対症療法。気管支拡張薬や副腎皮質ステロイドはルーチンには推奨されない。抗菌薬は細菌の二次感染がなければ不要
重症化のリスク
早産児、生後3か月未満、慢性肺疾患(気管支肺異形成など)、血行動態に異常のある先天性心疾患、免疫不全、Down症候群など。乳児早期には無呼吸発作を起こすことがある。
予防
高リスク児にはRSウイルスに対するモノクローナル抗体(パリビズマブ、近年は長時間作用型のニルセビマブ)を流行期に投与して重症化を予防する。妊婦へのRSウイルスワクチン接種により、母体から移行する抗体で出生児を守る方法も実用化されている。
鑑別:吸気性と呼気性の呼吸困難
・吸気性(上気道狭窄):クループ症候群(犬吠様咳嗽)、急性喉頭蓋炎、気道異物(喉頭・気管) ・呼気性(下気道狭窄):急性細気管支炎、気管支喘息
POINT
・急性細気管支炎=RSウイルスが最多、2歳未満(特に6か月未満)の乳児に好発。 ・末梢気道の閉塞 → 呼気性喘鳴・呼気性呼吸困難、エアトラッピングによる肺の過膨張(X線で透過性亢進、横隔膜平低化)。 ・治療は加湿酸素投与、輸液などの対症療法が中心。 ・吸気性呼吸困難・吸気性喘鳴は上気道狭窄(クループ、喉頭蓋炎、異物)を考える。
