StudyMed医師国家試験

出口が塞がれば何があふれ、何が消えるか―閉塞性黄疸の検査値を「胆汁の流れ」で読み解く

第106回医師国家試験 B問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第106回 B問題 第23問

閉塞性黄疸で検査値が上昇する項目はどれか。

  1. a.血中胆汁酸
  2. b.末梢血白血球
  3. c.血中アルブミン
  4. d.尿中ウロビリノゲン
  5. e.血中トランスサイレチン〈TTR〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は閉塞性黄疸で上昇する検査項目を選ぶ問題だ。丸暗記で臨むと混乱しやすいけれど、「胆汁の出口が塞がったら何が起こるか」という流れで考えればすっきり解ける。まず、胆汁には何が含まれているか言えるかな。
医学生医学生
抱合型ビリルビンと胆汁酸、それにコレステロールやリン脂質だったと思います。生化学の講義で胆汁酸の腸肝循環を習いました。
ドクタードクター
その通り。胆管が閉塞すると、これらの成分は十二指腸へ出ていけず、肝細胞や胆管から血液中へ逆流する。だから「胆汁に含まれていて出ていけなくなるもの」は血中で上がるんだ。
医学生医学生
それなら血中胆汁酸は上がりますね。閉塞性黄疸の患者さんがかゆがるのも、それと関係していますか。
ドクタードクター
いい結びつけだね。皮膚に沈着した胆汁酸などが、閉塞性黄疸に特徴的な強い掻痒感の一因と考えられている。血中胆汁酸は胆汁うっ滞の鋭敏な指標で、これが今回の正解だ。ほかに直接ビリルビン、ALP、γ-GT、LAPといった胆道系酵素、総コレステロールも上昇する。
医学生医学生
尿中ウロビリノゲンも上がると思っていました。黄疸ならビリルビンが多いので、その代謝産物も増えるのかなと。
ドクタードクター
そこが一番の落とし穴だ。ウロビリノゲンは、胆汁と一緒に腸へ出た抱合型ビリルビンが腸内細菌で還元されてできる。つまり「腸に胆汁が届いて初めてできるもの」なんだ。閉塞性黄疸では腸に届かないから作られず、尿中ウロビリノゲンは低下し、完全閉塞なら陰性になる。
医学生医学生
なるほど、便の色のもとになるステルコビリンも作られないから灰白色便になるんですね。逆にウロビリノゲンが増えるのはどんなときですか。
ドクタードクター
溶血性黄疸や、急性肝炎のような肝細胞性黄疸だ。溶血では間接ビリルビンが優位に上がって尿ビリルビンは陰性、尿中ウロビリノゲンは増加する。閉塞性黄疸では直接ビリルビンが優位で尿ビリルビン陽性、つまり褐色尿になる。この対比は国試でもCBTでも頻出だよ。
医学生医学生
末梢血白血球はどうでしょう。消化器内科の実習で、胆管が詰まった患者さんが高熱で緊急入院していました。
ドクタードクター
それはおそらく急性胆管炎を合併した例だね。胆管が閉塞しただけでは白血球は通常増えない。うっ滞した胆汁に細菌感染が加わり、発熱・黄疸・右上腹部痛のCharcot 3徴をそろえるような胆管炎になると、白血球増多やCRP上昇がみられる。白血球は閉塞そのものではなく、合併する炎症を反映しているんだ。
医学生医学生
アルブミンとトランスサイレチンは、どちらも肝臓で作られる蛋白ですよね。
ドクタードクター
そう。この2つは肝の合成能や栄養状態を反映する指標で、閉塞性黄疸で上昇することはない。むしろ閉塞が長引いて二次性の肝障害が起きたり、膵癌などの原疾患で栄養状態が悪くなったりすると低下しうる。トランスサイレチンはプレアルブミンとも呼ばれ、半減期が約2日と短いので、短期間の栄養状態をみるrapid turnover proteinとして使われるよ。
医学生医学生
出ていけないものは上がる、腸で作られるものは下がる、合成能の指標は上がらない、の3つで整理すればいいんですね。
ドクタードクター
完璧な整理だ。臨床的な注意点も押さえておこう。胆汁が腸に届かないと脂肪と脂溶性ビタミンの吸収が落ち、ビタミンK欠乏でプロトロンビン時間が延長する。ビタミンKの静注で改善すれば、肝実質の合成障害との鑑別の手がかりになる。
医学生医学生
ERCPのような処置の前に、凝固を確認しておく必要がありそうですね。
ドクタードクター
その通り。診断ではまず腹部超音波で閉塞部より上流の胆管拡張を確認し、CTやMRCPで原因を探す。治療は内視鏡的胆道ドレナージや経皮経肝胆道ドレナージで減黄を図る。胆管炎を合併して重症化すると敗血症性ショックに至るので、その場合は緊急ドレナージが必要になるよ。

まとめ

閉塞性黄疸では胆汁が十二指腸へ流れず、胆汁成分が血中へ逆流するため、血中胆汁酸、直接ビリルビン、ALP・γ-GT・LAP、総コレステロールが上昇し、胆汁酸は強い掻痒感の一因となります。一方、ウロビリノゲンは腸内で作られるため尿中で低下〜陰性となり、灰白色便を呈します。白血球増多は急性胆管炎など合併症を、アルブミンやトランスサイレチンは肝合成能・栄養状態を反映し、単純な胆道閉塞で上昇する項目ではありません。さらに脂溶性ビタミンの吸収障害によるビタミンK欠乏でプロトロンビン時間が延長する点も重要です。「出ていけないものは上がり、腸で作られるものは下がる」という胆汁の流れに沿った考え方は、黄疸の鑑別全般に応用できる基本です。

解答・解説

正解はaです

閉塞性黄疸とは、胆石、膵頭部癌、胆管癌、乳頭部癌などによって肝外(あるいは肝内)の胆管が閉塞し、胆汁が十二指腸へ流れ出なくなるために起こる黄疸である。胆汁の流れが障害される状態を胆汁うっ滞と呼び、閉塞性黄疸はその代表である。

胆汁うっ滞で起こること

胆汁には抱合型(直接)ビリルビン、胆汁酸、コレステロール、リン脂質などが含まれる。出口が塞がると、これらの成分が肝細胞や胆管から血液中へ逆流する。その結果、 ・血中の直接ビリルビンが上昇し、尿中にビリルビンが出る(褐色尿) ・血中胆汁酸が上昇し、皮膚にたまって掻痒感を起こす ・胆道系酵素(ALP、γ-GT〈γ-グルタミルトランスペプチダーゼ〉、LAP〈ロイシンアミノペプチダーゼ〉)が上昇する ・血清総コレステロールが上昇する 一方で、胆汁が腸に届かなくなるため、 ・腸内でのウロビリノゲン生成が減り、尿中ウロビリノゲンは低下〜陰性、便は灰白色になる ・脂肪と脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収が障害され、ビタミンK欠乏からプロトロンビン時間が延長する(ビタミンK静注で改善する点が肝実質障害との鑑別になる)

解き方

「胆汁に含まれていて出ていけなくなるもの」は血中で上昇し、「腸に胆汁が届いて初めてできるもの」は低下する、と考えると整理しやすい。肝臓の合成能を反映する項目(アルブミン、トランスサイレチン、コリンエステラーゼ、凝固因子)は、単純な胆道閉塞では原則として上昇しない。

選択肢考察

  1. ○a.  血中胆汁酸

    正解。胆汁酸はコレステロールから肝細胞で合成され、胆汁中へ分泌されて脂肪の消化吸収を助けたのち、大部分が回腸末端で再吸収されて門脈経由で肝へ戻る(腸肝循環)。胆管が閉塞すると胆汁酸は胆汁中へ排泄できず、血中へ逆流して血中濃度が上昇する。皮膚に沈着した胆汁酸などが閉塞性黄疸に特徴的な強い掻痒感の一因と考えられている。血中胆汁酸は胆汁うっ滞や肝機能障害の鋭敏な指標である。

  2. ×b.  末梢血白血球

    誤り。胆管が閉塞しただけでは、末梢血白血球数は通常増加しない。うっ滞した胆汁に細菌感染が加わり急性胆管炎(発熱、黄疸、右上腹部痛のCharcot 3徴)を合併すると、白血球増多やCRP上昇がみられる。つまり白血球増多は閉塞そのものではなく、合併する炎症・感染を反映する所見である。

  3. ×c.  血中アルブミン

    誤り。アルブミンは肝細胞で合成される血清蛋白で、肝の蛋白合成能を反映する。閉塞性黄疸で上昇することはない。閉塞が長く続いて肝細胞障害(二次性胆汁性肝硬変など)を起こしたり、原疾患(膵癌など)による栄養障害が加わったりすると、むしろ低下する。なお半減期が約2〜3週と長いため、短期間の変化は反映しにくい。

  4. ×d.  尿中ウロビリノゲン

    誤り。ウロビリノゲンは、胆汁とともに腸管へ排泄された抱合型ビリルビンが腸内細菌によって還元されて生じる。その一部が腸から再吸収され、腎から尿中へ排泄される。閉塞性黄疸ではビリルビンが腸に届かないためウロビリノゲンが作られず、尿中ウロビリノゲンは低下(完全閉塞では陰性)する。便の色のもとになるステルコビリンも作られないため、灰白色便となる。逆に尿中ウロビリノゲンが増加するのは、溶血性黄疸や肝細胞障害(肝炎など)の場合である。

  5. ×e.  血中トランスサイレチン〈TTR〉

    誤り。トランスサイレチン(TTR)はプレアルブミンとも呼ばれ、肝で合成される蛋白で、甲状腺ホルモン(サイロキシン)やレチノール結合蛋白を運ぶ。半減期が約2日と短いため、短期間の栄養状態や肝の合成能を鋭敏に反映する指標(rapid turnover protein)として使われる。アルブミンと同じく閉塞性黄疸で上昇する項目ではなく、低栄養や肝実質障害では低下する。

ビリルビンの代謝

1. 老化した赤血球のヘモグロビンが脾臓などで分解され、ヘムから非抱合型(間接)ビリルビンが生じる。水に溶けにくいため血中ではアルブミンと結合して運ばれる。 2. 肝細胞に取り込まれ、グルクロン酸抱合を受けて水溶性の抱合型(直接)ビリルビンとなる。 3. 抱合型ビリルビンは胆汁中に排泄され、十二指腸へ出る。 4. 腸内細菌によりウロビリノゲンに変えられ、大部分はステルコビリンとなって便の色をつける。 5. 一部のウロビリノゲンは再吸収されて肝へ戻り(腸肝循環)、その一部が尿中へ排泄される。

黄疸の種類と検査所見

・溶血性黄疸:間接ビリルビン優位に上昇。尿ビリルビン陰性(間接ビリルビンはアルブミン結合で尿に出ない)、尿中ウロビリノゲン増加。 ・肝細胞性黄疸(急性肝炎など):直接・間接とも上昇。AST・ALTが著増。尿ビリルビン陽性、尿中ウロビリノゲンは増加することが多い。 ・閉塞性黄疸:直接ビリルビン優位に上昇。ALP、γ-GT、LAP、総コレステロール、胆汁酸が上昇。尿ビリルビン陽性(褐色尿)、尿中ウロビリノゲン低下〜陰性、灰白色便。

閉塞性黄疸の臨床

皮膚掻痒感、褐色尿、灰白色便、脂溶性ビタミン欠乏によるプロトロンビン時間延長がみられる。画像検査(腹部超音波、CT、MRCP)で閉塞部位より上流の胆管拡張を確認し、原因を検索する。治療として内視鏡的胆道ドレナージ(ERBD、ENBD)や経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)で減黄を図る。胆管炎の合併は重症化すると敗血症性ショックに至るため、緊急ドレナージの適応となる。

POINT

・閉塞性黄疸で上昇:直接ビリルビン、胆汁酸、ALP、γ-GT、LAP、総コレステロール、尿ビリルビン。 ・閉塞性黄疸で低下:尿中ウロビリノゲン(完全閉塞で陰性)、便の色(灰白色便)。 ・脂溶性ビタミン吸収障害からビタミンK欠乏となり、プロトロンビン時間が延長する。 ・白血球増多は胆管炎などの合併を示す。 ・アルブミン、トランスサイレチンは肝合成能・栄養の指標で、上昇はしない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。