StudyMed医師国家試験

「形」を見る検査で「動き」は見えない―泌尿器科の検査選択と膀胱尿管逆流の落とし穴

第106回医師国家試験 B問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第106回 B問題 第24問

疾患と検査法の組合せで有用性が低いのはどれか。

  1. a.腎腫瘍 ―― 腹部造影CT
  2. b.尿管腫瘍 ―― 静脈性尿路造影
  3. c.膀胱尿管逆流 ―― 尿管鏡検査
  4. d.間質性膀胱炎 ―― 膀胱鏡検査
  5. e.前立腺腫瘍 ―― 経直腸超音波ガイド下生検

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は泌尿器科の代表的な疾患と検査法の組合せから、有用性が低いものを1つ選ぶ問題だ。ポイントは、その疾患で「何を見れば診断できるのか」を考えること。腫瘍なら形や血流、粘膜の病変なら内腔の直接観察、そして機能的な異常なら、その現象が起きている瞬間をとらえる検査が必要になる。
医学生医学生
組合せ問題は、どれももっともらしく見えて迷います。まず腎腫瘍に造影CTは、定番ですよね。
ドクタードクター
そうだね。腎腫瘍の診断の中心は、造影剤注入後に時相を分けて撮るダイナミックCTだ。成人腎腫瘍の大部分を占める腎細胞癌、特に淡明細胞型は血流が豊富なので、早期相で強く染まり、その後造影剤が抜けて周囲の腎実質より低吸収になるパターンを示すことが多い。
医学生医学生
放射線科の講義で、腎静脈や下大静脈への腫瘍塞栓もCTで確認すると習いました。
ドクタードクター
その通り。造影CTは大きさや局在だけでなく、腫瘍塞栓、リンパ節転移、遠隔転移まで評価できるので病期診断にも欠かせない。ちなみに腎血管筋脂肪腫は、腫瘍内の脂肪を反映したマイナスのCT値が手がかりになるよ。
医学生医学生
尿管腫瘍に静脈性尿路造影は、少し古い検査という印象があります。
ドクタードクター
確かに今は排泄相を含む造影CT、いわゆるCTウログラフィーが広く使われている。ただ目的は同じで、腎から排泄された造影剤で尿路を描き出し、尿管内の陰影欠損や上流の水腎症をとらえる。尿路上皮癌を疑う所見として有用な組合せだ。確定には尿細胞診や尿管鏡での生検を行う。
医学生医学生
X線透過性の尿酸結石や血塊も陰影欠損になるので、鑑別が必要なんですよね。
ドクタードクター
よく押さえているね。では間質性膀胱炎と膀胱鏡はどうかな。
医学生医学生
泌尿器科の実習で、頻尿と膀胱痛に悩む中年女性の患者さんを担当しました。膀胱鏡で粘膜を見ていた気がします。
ドクタードクター
まさにそれ。間質性膀胱炎は原因不明の慢性炎症で、膀胱に尿がたまると痛みや不快感が強まる。膀胱鏡で正常な毛細血管構造を欠く発赤粘膜、つまりHunner病変を確認することが診断と病型分類に重要で、膀胱上皮内癌など似た症状の疾患の除外にも役立つ。麻酔下の水圧拡張で点状出血がみられることもあるよ。
医学生医学生
前立腺腫瘍に経直腸超音波ガイド下生検も、確定診断の基本ですね。
ドクタードクター
そうだ。PSA高値や直腸診で前立腺癌を疑ったら、超音波で前立腺を描出しながら複数か所を針生検し、病理でGleasonスコアを評価する。最近は生検前にMRIを撮って、怪しい部位を狙う標的生検も普及している。
医学生医学生
そうすると残るのは膀胱尿管逆流と尿管鏡です。尿管の中を直接見られるなら、逆流の原因も分かりそうに思えたのですが。
ドクタードクター
そこが引っかけだ。膀胱尿管逆流は、排尿時に膀胱内の尿が尿管や腎盂へ逆流するという「機能的な現象」だよね。尿管鏡は尿管内腔の腫瘍や結石を観察・処置する形態検査で、しかも灌流液を流しながら行うから、排尿時の逆流そのものはとらえられない。だからこの組合せが有用性の低いもの、つまり正解になる。
医学生医学生
逆流を見るなら、膀胱に造影剤を入れて排尿してもらう排尿時膀胱尿道造影ですね。小児科の実習で、熱性尿路感染症の子に予定されていました。
ドクタードクター
その通り。排尿時膀胱尿道造影で逆流の有無と程度を国際分類のgrade IからVで評価する。あわせて腎超音波で水腎症や腎の大きさを、DMSA腎シンチグラフィーで腎瘢痕を評価する。小児の有熱性尿路感染症を契機に見つかることが多いのは、臨床でも大事なポイントだ。
医学生医学生
腎瘢痕が問題になるのは、逆流性腎症につながるからでしょうか。
ドクタードクター
そう。腎盂腎炎を繰り返して瘢痕ができると、逆流性腎症として高血圧や腎機能低下の原因になる。軽症は自然消失が期待できるので予防的抗菌薬で経過をみることが多いけれど、高度例や感染を繰り返す例では膀胱尿管新吻合術や内視鏡的注入療法を検討する。検査を選ぶときは、形態を見たいのか機能を見たいのかをまず意識してほしい。

まとめ

泌尿器科の検査選択では、その疾患で何を確認すれば診断できるかを考えることが基本です。腎腫瘍はダイナミックCTで血流パターンと病期を、尿管腫瘍は静脈性尿路造影やCTウログラフィーで陰影欠損を、間質性膀胱炎は膀胱鏡でHunner病変を、前立腺癌は経直腸超音波ガイド下生検で組織を確認します。一方、膀胱尿管逆流は排尿時に生じる機能的な現象であり、形態検査である尿管鏡では評価できず、排尿時膀胱尿道造影で診断・重症度分類を行い、DMSA腎シンチグラフィーで腎瘢痕を評価します。小児の有熱性尿路感染症を契機に見つかることが多く、腎瘢痕は逆流性腎症として高血圧や腎機能低下につながりうるため、適切な検査選択が長期予後を守ることにつながります。

解答・解説

正解はcです

本問は泌尿器科の代表的な疾患について、診断に用いる検査法の組合せを問う問題である。「有用性が低い」組合せを1つ選ぶ点に注意する。

考え方

検査法を選ぶときは、その疾患で「何を見れば診断できるのか」を考える。 ・腫瘍であれば、形態・血流(造影CT)、管腔内の陰影欠損(尿路造影)、組織(生検)を確認する。 ・膀胱の粘膜病変であれば、膀胱の内腔を直接観察する(膀胱鏡)。 ・膀胱尿管逆流(VUR)は、排尿時に膀胱内の尿が尿管・腎盂へ逆流するという「機能的な現象」である。これを証明するには、膀胱に造影剤を満たし、排尿させながら逆流の有無と程度を撮影する排尿時膀胱尿道造影(VCUG)が必要である。尿管鏡は尿管の内腔を直接観察する形態検査であり、しかも検査中は灌流液を流しながら行うため、排尿時の逆流という現象を評価することはできない。 したがって、膀胱尿管逆流と尿管鏡検査の組合せが最も有用性が低い。

選択肢考察

  1. ×a.  腎腫瘍 ―― 腹部造影CT

    有用な組合せである。腎腫瘍の診断では造影CT、特に造影剤注入後に時相を分けて撮影するダイナミックCTが中心的な検査である。成人の腎腫瘍の大部分を占める腎細胞癌(特に淡明細胞型)は血流が豊富なため、早期相で強く造影され、その後の相で造影剤が抜けて(washout)周囲の腎実質より低吸収となるパターンを示すことが多い。造影CTは腫瘍の大きさ・局在のほか、腎静脈・下大静脈内への腫瘍塞栓、リンパ節転移、遠隔転移の評価による病期診断にも用いられる。一方、腎血管筋脂肪腫は腫瘍内の脂肪成分(CTで負のCT値)の検出が診断の手がかりとなる。

  2. ×b.  尿管腫瘍 ―― 静脈性尿路造影

    有用な組合せである。静脈性尿路造影(IVU、排泄性尿路造影)は静脈に注射した造影剤が腎から排泄される様子を撮影する検査で、尿管腫瘍(多くは尿路上皮癌)では尿管内の陰影欠損や、その上流の水腎症・水尿管として描出される。尿管結石(X線透過性の尿酸結石など)や血塊との鑑別が必要で、確定診断には尿細胞診、逆行性腎盂尿管造影、尿管鏡検査と生検が用いられる。なお現在では、同じ目的で排泄相を含む造影CT(CTウログラフィー)が広く行われている。

  3. ○c.  膀胱尿管逆流 ―― 尿管鏡検査

    有用性が低い組合せであり、これが正解である。膀胱尿管逆流(VUR)は、膀胱と尿管の接合部の逆流防止機構が不十分なため、膀胱内の尿が尿管・腎盂へ逆流する状態である。診断には、尿道カテーテルから膀胱内に造影剤を注入し、排尿させながら撮影する排尿時膀胱尿道造影(VCUG)を行い、逆流の有無と程度(国際分類でgrade I〜V)を評価する。尿管鏡検査は尿管内腔の腫瘍や結石を直接観察・処置するための検査であり、逆流という排尿時の現象は評価できない。VURでは逆流による腎瘢痕の評価に99mTc-DMSA腎シンチグラフィーが、腎の形態評価に腎超音波検査が用いられる。

  4. ×d.  間質性膀胱炎 ―― 膀胱鏡検査

    有用な組合せである。間質性膀胱炎は、頻尿、尿意亢進、膀胱に尿がたまると強まる膀胱痛・不快感を主症状とする、原因不明の慢性の膀胱の炎症性疾患で、中高年女性に多い。膀胱鏡検査で膀胱内を観察し、特徴的なHunner病変(正常な毛細血管構造を欠く発赤粘膜)の有無を確認することが診断と病型分類(ハンナ型と非ハンナ型)に重要である。また麻酔下に膀胱を水圧拡張すると、点状出血(glomerulation)がみられることがある。膀胱鏡は膀胱癌(上皮内癌など)など症状の似た疾患の除外にも役立つ。

  5. ×e.  前立腺腫瘍 ―― 経直腸超音波ガイド下生検

    有用な組合せである。前立腺癌はPSA(前立腺特異抗原)高値や直腸診で疑い、確定診断には前立腺の組織を採取する生検が必要である。経直腸超音波で前立腺を描出しながら、系統的に複数か所から針生検を行い、病理組織でGleasonスコア(グレードグループ)を評価する。穿刺経路には経直腸的と経会陰的がある。近年は生検前にMRI(マルチパラメトリックMRI)を撮影し、癌を疑う部位を狙って採取する標的生検も普及している。

膀胱尿管逆流(VUR)

・原発性VURは膀胱尿管移行部の先天的な未熟性(膀胱壁内尿管が短いなど)による。続発性VURは神経因性膀胱や後部尿道弁など下部尿路の通過障害・高圧排尿によって生じる。 ・小児の有熱性尿路感染症(急性腎盂腎炎)を契機に見つかることが多い。反復する腎盂腎炎により腎瘢痕が形成されると、逆流性腎症として高血圧や腎機能低下の原因となる。 ・検査:排尿時膀胱尿道造影(VCUG、診断と重症度分類)、腎超音波(水腎症や腎の大きさ)、DMSA腎シンチグラフィー(腎瘢痕の評価)。 ・国際分類:grade Iは尿管までの逆流、grade IIは腎盂まで達するが拡張なし、grade III以降は腎盂・尿管の拡張を伴い、grade Vで高度の拡張と屈曲を示す。 ・治療:軽度では自然消失が期待でき、予防的抗菌薬投与で経過観察する。高度例や感染を繰り返す例では、逆流防止術(膀胱尿管新吻合術)や内視鏡的注入療法を検討する。

主な泌尿器科の検査と目的

・造影CT(ダイナミックCT):腎腫瘍の質的診断と病期診断。 ・静脈性尿路造影、CTウログラフィー:尿路全体の形態、上部尿路の陰影欠損・通過障害。 ・逆行性腎盂尿管造影:造影剤を尿管カテーテルから逆行性に注入し、上部尿路を描出する。 ・尿管鏡:尿管・腎盂内の腫瘍の観察・生検、結石の砕石。 ・膀胱鏡:膀胱腫瘍、間質性膀胱炎、膀胱内の異物・結石の観察。 ・排尿時膀胱尿道造影:膀胱尿管逆流、後部尿道弁など尿道の形態。 ・尿流動態検査(ウロダイナミクス):神経因性膀胱などの排尿機能評価。 ・経直腸超音波ガイド下生検:前立腺癌の確定診断。

検査選択の基本

まず患者の負担が少ないスクリーニング検査で疾患を絞り込み、続いて確定診断のための検査を行う。診断確定後は、病期や転移の評価、あるいは腎機能の評価など、治療方針を決めるための検査を追加する。必要最小限の侵襲・費用で診断に到達する検査の組立てが求められる。

POINT

・膀胱尿管逆流の診断は排尿時膀胱尿道造影(VCUG)で行い、腎瘢痕はDMSA腎シンチグラフィーで評価する。 ・尿管鏡は尿管の内腔を観察する形態検査で、逆流という機能的現象は評価できない。 ・腎腫瘍はダイナミックCT、尿管腫瘍は尿路造影(CTウログラフィー)と尿管鏡、間質性膀胱炎は膀胱鏡(Hunner病変)、前立腺癌は超音波ガイド下生検で診断する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。