いちばん多い病床はどれ?―数字より「病床の役割」で解く療養病床の規模感
第106回医師国家試験 B問題 第25問
国試問題にチャレンジ
2008年時点において病床数が最も多いのはどれか。
- a.結核病床
- b.療養病床
- c.ICUの病床
- d.感染症病床
- e.診療所の病床
対話形式の解説
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ドクターまとめ
医療法上、病院の病床は一般・療養・精神・感染症・結核の5区分であり、ICUや回復期リハビリテーション病棟は診療報酬上の区分で医療法上は一般病床などに含まれます。2008年時点では一般病床が最も多く、精神病床と療養病床が30万床台で続き、療養病床は病院・診療所あわせて約36万床と、診療所の病床(約15万床)や結核・感染症・ICUの病床(いずれも1万床未満)を大きく上回っていました。結核病床は患者減少に伴い減り続け、感染症病床は指定医療機関に限られるためごく少数です。療養病床は社会的入院の解消を目指した再編により、介護療養病床の介護医療院などへの転換が進み減少傾向にあります。数値の暗記よりも、各病床の役割・おおよその規模・増減の傾向を理解することが、医療提供体制を捉える土台になります。
解答・解説
正解はbです
本問は、わが国の医療提供体制のうち、病床の種類とその規模を問う問題である。
病床の区分
医療法では、病院の病床を一般病床、療養病床、精神病床、感染症病床、結核病床の5種類に区分している。診療所には19床以下の病床(有床診療所)を置くことができ、その一部は療養病床として届け出ることができる。ICU(集中治療室)の病床は医療法上の独立した区分ではなく、診療報酬(特定集中治療室管理料など)上の区分であり、医療法上は一般病床に含まれる。
規模の感覚
2008年時点での病院の総病床数は約160万床、診療所の病床数は約15万床であった。病院の病床の中では一般病床が最も多く(約90万床)、次いで精神病床と療養病床がそれぞれ30万床台であった。選択肢の中で比べると、療養病床は病院・診療所をあわせて約36万床で、診療所の病床(約15万床)よりも多く、結核病床・感染症病床・ICU病床(いずれも1万床未満)とは桁が異なる。 具体的な数値を暗記していなくても、高齢化に伴い長期療養を要する患者が多いこと、感染症病床や結核病床は患者数の減少や専門性から限られた施設にしか置かれていないこと、ICUは重症患者に特化した少数の病床であることを考えれば、療養病床が最も多いと推測できる。 なお、本問は特定年の統計数値を問う設問であり、現在の国家試験対策として数値そのものを覚える意義は乏しい。病床区分の定義と、各病床のおおよその規模・増減の傾向を理解しておけば十分である。
選択肢考察
- ×a. 結核病床
誤り。結核病床は結核患者を入院させるための病床で、2008年時点で約9,500床であった。結核患者数の減少に伴い、結核病床は長期的に大きく減少し続けており、病床の稼働率の低さや地域偏在が課題となっている。療養病床と比べると桁違いに少ない。
- ○b. 療養病床
正解。療養病床は、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床である。2008年時点で病院に約34万床、診療所に約1.8万床、合計約36万床あり、選択肢の中で最も多い。高齢化に伴う慢性期医療の需要を背景に整備されてきた。ただしその後は、医療の必要度の低い長期入院(いわゆる社会的入院)の解消を目指した再編が進められ、介護療養病床は2018年に創設された介護医療院などへの転換が図られてきた(2024年3月末で廃止)。そのため療養病床は減少傾向にある。
- ×c. ICUの病床
誤り。ICU(Intensive Care Unit:集中治療室)は、生命の危機にある重症患者に対して、高度な監視と集中的な治療を24時間体制で行う病床である。医療法上は一般病床に含まれ、診療報酬上の区分として把握される。2008年時点で約6,100床と、療養病床に比べてはるかに少ない。
- ×d. 感染症病床
誤り。感染症病床は、感染症法に基づき一類感染症、二類感染症(結核を除く)、新型インフルエンザ等感染症などの患者を入院させるための病床で、特定感染症指定医療機関、第一種・第二種感染症指定医療機関に置かれる。2008年時点で約1,800床と、選択肢の中で最も少ない。
- ×e. 診療所の病床
誤り。診療所は入院施設をもたないか、19床以下の病床をもつ医療機関である(20床以上は病院)。2008年時点で診療所の病床は約15万床あり、ICUや感染症・結核病床よりは多いが、療養病床(約36万床)には及ばない。有床診療所数そのものも年々減少しており、病床数は減少傾向にある。
医療法上の病床区分
・一般病床:下記以外の病床。急性期医療を中心に最も数が多い。 ・療養病床:主として長期にわたり療養を必要とする患者のための病床。病院・診療所のいずれにも置くことができる。 ・精神病床:精神疾患を有する者を入院させるための病床。わが国は人口当たりの精神病床数が諸外国に比べて多く、地域移行が課題とされている。 ・感染症病床:感染症法に規定する一類・二類感染症(結核を除く)、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症の患者のための病床。 ・結核病床:結核患者を入院させるための病床。
病院と診療所
・病院:20人以上の患者を入院させる施設を有するもの。 ・診療所:入院施設を有しないもの、または19人以下の患者を入院させる施設を有するもの。
病床数の動向
病床数は、平均在院日数の短縮、介護保険施設や高齢者向け住まいの整備などにより全体として減少傾向にある。地域医療構想では、病床の機能を高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つに区分し、将来の医療需要に合わせた機能分化と連携が進められている。 なお、回復期リハビリテーション病棟は診療報酬上の区分であり、医療法上は一般病床・療養病床のいずれでも届け出ることができる。ICUも同様に診療報酬上の区分である。医療法上の病床区分と、診療報酬上の病棟区分を混同しないようにする。
POINT
・医療法上の病院の病床は一般・療養・精神・感染症・結核の5区分である。 ・病床数は一般病床が最も多く、精神病床・療養病床がそれに続く。感染症・結核病床は少ない。 ・診療所の病床は19床以下。20床以上なら病院である。 ・ICUや回復期リハビリテーション病棟は診療報酬上の区分であり、医療法上の病床区分ではない。 ・介護療養病床は介護医療院などへ転換され、療養病床は減少傾向にある。
