IgEのスイッチを入れるのは誰か―IL-4とTh2が導くアレルギーの始まり
第106回医師国家試験 B問題 第22問
国試問題にチャレンジ
IgE産生に関連が深いのはどれか。
- a.インターロイキン1〈IL-1〉
- b.インターロイキン2〈IL-2〉
- c.インターロイキン3〈IL-3〉
- d.インターロイキン4〈IL-4〉
- e.インターロイキン5〈IL-5〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
B細胞がIgEをつくるには、Th2細胞が産生するIL-4(補助的にIL-13)がB細胞に作用し、CD40-CD40リガンドの信号とあわせてIgEへのクラススイッチが誘導される必要があります。同じTh2系でもIL-5は好酸球の分化・増殖・活性化を担い、IgE産生とは区別して覚えます。IL-1は発熱やCRP上昇を起こす炎症性サイトカイン、IL-2はT細胞増殖とNK細胞活性化、IL-3は多系統の造血を促します。Th1のIFN-γはIgE産生を抑え、Th2とは互いに抑制し合う関係にあります。こうしたサイトカインの役割の整理は、I型アレルギーの病態理解や、デュピルマブ、抗IL-5抗体などの生物学的製剤の使い分けの基礎になります。
解答・解説
正解はdです
本問はインターロイキン(IL)ごとの主な産生細胞と作用を問う知識問題である。
IgEがつくられるしくみ
B細胞ははじめ細胞表面にIgMとIgDを発現しており、抗原刺激とヘルパーT細胞からの助けを受けると、抗体の定常部(H鎖の種類)を組み換えて別のクラスの抗体をつくるようになる。これをクラススイッチ(免疫グロブリンのクラス変換)という。どのクラスに切り替わるかは、周囲のサイトカイン環境で決まる。 IgEへの切り替えには、2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)が出すIL-4(およびIL-13)がB細胞に作用することと、T細胞表面のCD40リガンドがB細胞のCD40に結合することの2つの信号が必要である。したがって「IgE産生に関連が深いサイトカイン」としてはIL-4を選ぶ。
考え方
IL-1〜IL-6程度までは、「どの細胞が出して、何に効くか」を1対1で覚えておくと、この種の問題は即答できる。特にTh2系サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)はそれぞれ役割が異なり、IL-4はIgE、IL-5は好酸球、IL-13は気道の粘液産生や過敏性、と区別しておくことが大切である。
選択肢考察
- ×a. インターロイキン1〈IL-1〉
誤り。IL-1は主に単球・マクロファージが産生する代表的な炎症性サイトカインである。視床下部に作用してプロスタグランジンE2を介し発熱を起こすほか、IL-6の産生を誘導して肝臓でのCRP(C反応性蛋白)などの急性期蛋白の合成を促し、血管内皮の接着分子発現を高めるなど、急性炎症反応の中心を担う。IgEへのクラススイッチを直接誘導する作用はない。
- ×b. インターロイキン2〈IL-2〉
誤り。IL-2は主に抗原刺激で活性化したT細胞(特にCD4陽性T細胞)が産生し、T細胞自身の増殖を促す(T細胞増殖因子)。さらにNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性化や、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の誘導、細胞傷害性T細胞の活性化、B細胞の増殖促進など、免疫応答全般を強める。制御性T細胞の維持にも不可欠である。この性質から腫瘍に対する免疫療法(腎細胞癌など)に用いられてきた。免疫抑制薬のシクロスポリンやタクロリムスはカルシニューリンを阻害してIL-2の産生を抑える。IgE産生を特異的に促すサイトカインではない。
- ×c. インターロイキン3〈IL-3〉
誤り。IL-3は主に活性化T細胞が産生し、骨髄の造血幹細胞・前駆細胞に作用して、顆粒球、単球、巨核球、赤芽球など複数系統の血球の分化・増殖を促す。作用が多系統に及ぶため、多能性コロニー刺激因子(multi-CSF)とも呼ばれる。好塩基球や肥満細胞の増殖を支える作用もあるが、B細胞のIgEクラススイッチを誘導するサイトカインではない。
- ○d. インターロイキン4〈IL-4〉
正解。IL-4はTh2細胞のほか、肥満細胞や好塩基球からも産生される。B細胞のIL-4受容体に結合し、転写因子STAT6を活性化してIgE(ε鎖)遺伝子領域の転写を開始させ、CD40-CD40リガンドの信号とあわせてIgEへのクラススイッチを誘導する。こうしてつくられたIgEは肥満細胞や好塩基球の高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合し、再び抗原が来て受容体上のIgEを架橋すると、ヒスタミンやロイコトリエンなどが放出されてI型(即時型)アレルギー反応が起こる。またIL-4は未分化なCD4陽性T細胞をTh2細胞へ分化させるため、Th2応答を自ら増幅する。IL-4受容体α鎖に対する抗体(デュピルマブ)は、アトピー性皮膚炎や気管支喘息の治療薬として用いられている。
- ×e. インターロイキン5〈IL-5〉
誤り。IL-5はTh2細胞、肥満細胞、2型自然リンパ球などが産生し、好酸球の分化・増殖・活性化・生存延長に中心的に働く。そのため気管支喘息(特に好酸球性)や好酸球増多症候群などで血中濃度が上昇する。B細胞に作用してIgA産生を促す作用も知られている(主にマウスで示されてきた)。IgE産生には直接関与しない。抗IL-5抗体(メポリズマブ)や抗IL-5受容体α抗体(ベンラリズマブ)は重症好酸球性喘息の治療に用いられる。
主なインターロイキンの整理
・IL-1:単球・マクロファージが産生。発熱、急性期反応(CRP上昇)を起こす炎症性サイトカイン。 ・IL-2:活性化T細胞が産生。T細胞の増殖、NK細胞の活性化、LAK細胞の誘導。 ・IL-3:活性化T細胞が産生。造血幹細胞・前駆細胞の多系統の分化・増殖(multi-CSF)。 ・IL-4:Th2細胞、肥満細胞、好塩基球が産生。B細胞のIgEへのクラススイッチ、Th2分化の促進。 ・IL-5:Th2細胞などが産生。好酸球の分化・増殖・活性化。B細胞のIgA産生促進。 ・IL-6:マクロファージ、T細胞、線維芽細胞など多様な細胞が産生。発熱・CRP上昇などの急性期反応、B細胞の形質細胞への分化。骨髄腫細胞の増殖因子でもある。抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)は関節リウマチなどに用いる。 ・IL-7:骨髄や胸腺の間質細胞が産生。リンパ系前駆細胞に働き、T細胞・B細胞などリンパ球の分化・増殖を支える。 ・IL-8(CXCL8):好中球の遊走を促すケモカイン。 ・IL-10:制御性T細胞などが産生する抑制性サイトカイン。 ・IL-12:マクロファージや樹状細胞が産生し、Th1分化とNK細胞の活性化を促す。 ・IL-13:Th2細胞などが産生。IL-4と受容体の一部を共有し、IgEクラススイッチを補助するほか、気道の杯細胞化生・粘液産生・気道過敏性に関わる。 ・IL-17:Th17細胞が産生し、好中球性炎症を起こす。乾癬の治療標的。
Th1とTh2のバランス
Th1細胞はIFN-γ(インターフェロンγ)やIL-2を産生し、マクロファージを活性化して細胞内寄生菌などに対する細胞性免疫を担う。IFN-γはIgEへのクラススイッチを抑える。一方、Th2細胞はIL-4、IL-5、IL-13を産生し、IgE産生・好酸球増加・肥満細胞の活性化を通じて寄生虫に対する防御やアレルギー反応を担う。Th1とTh2は互いに抑制し合う関係にある。
I型アレルギーの流れ
抗原(アレルゲン)→ Th2細胞の活性化 → IL-4によるB細胞のIgE産生 → IgEが肥満細胞・好塩基球のFcεRIに結合(感作)→ 再曝露で抗原がIgEを架橋 → ヒスタミン、ロイコトリエンなどの放出 → 血管透過性亢進、平滑筋収縮、粘液分泌。その後の遅発相ではIL-5で動員された好酸球が炎症を持続させる。
POINT
・IgEへのクラススイッチを誘導するのはTh2細胞が産生するIL-4(補助的にIL-13)である。 ・IL-5は好酸球の分化・増殖を促す。IgE産生と混同しない。 ・IL-1、IL-6は発熱・CRP上昇を起こす炎症性サイトカイン。 ・IL-2はT細胞増殖とNK細胞活性化、IL-3は多系統の造血を促す。 ・Th1(IFN-γ)はIgE産生を抑え、Th2(IL-4、IL-5、IL-13)はアレルギーを促す。
