StudyMed医師国家試験

分母を制する者が2×2表を制す―感度と陽性適中度の取り違えに要注意

第105回医師国家試験 E問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第105回 E問題 第22問

ある疾患に関する検査結果を表に示す。 (単位:人) 疾患 有 無 検査 陽性 80 20 陰性 10 90 正しいのはどれか。

  1. a.感度は0.80である。
  2. b.特異度は0.82である。
  3. c.偽陽性率は0.90である。
  4. d.陽性適中度は0.89である。
  5. e.陰性適中度は0.10である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、2×2分割表から検査の性能指標を計算する問題だ。計算そのものは割り算だけだけれど、カギは「分母に何をとるか」の一点に尽きる。まず、表の4つのマスにそれぞれ名前を付けるところから始めよう。
医学生医学生
疾患ありで検査陽性が真陽性、疾患なしで陰性が真陰性ですよね。残りの2つが偽陽性と偽陰性です。
ドクタードクター
その通り。疾患なしなのに陽性と出たのが偽陽性、疾患ありなのに陰性と出たのが偽陰性。ここを固めたら、次は列の合計と行の合計を出しておく。疾患ありは90人、疾患なしは110人、検査陽性・陰性はどちらも100人だね。
医学生医学生
感度は、陽性と出た人のうち本当に病気の人の割合……でしたっけ。
ドクタードクター
そこがまさに出題者の仕掛けた落とし穴だよ。今言ったのは陽性適中度の定義なんだ。感度は「疾患がある人のうち、検査で陽性と拾えた人の割合」。分母は疾患ありの合計だから、80÷90でおよそ0.89になる。
医学生医学生
あ、0.80は陽性者100人を分母にしたときの値ですね。それが陽性適中度、ということは選択肢の感度0.80も陽性適中度0.89も、値が入れ替わっているわけですか。
ドクタードクター
よく気づいたね。分母を取り違えると、どちらも「合っている」ように見えてしまう構成なんだ。では特異度はどうなる?
医学生医学生
疾患のない人のうち陰性と正しく判定された割合なので、90÷110で約0.818、四捨五入して0.82です。これが正解ですね。
ドクタードクター
正解。偽陽性率も確認しておこう。疾患がない人のうち誤って陽性と出た割合で、20÷110で約0.18。つまり1から特異度を引いた値だね。選択肢の0.90は別の指標の値だ。
医学生医学生
0.90というと、陰性者100人のうち本当に病気でない90人の割合、つまり陰性適中度の値ですね。
ドクタードクター
その通り。陰性適中度は90÷100で0.90だから、選択肢の0.10は1から陰性適中度を引いた値、言い換えれば陰性と出た人の中に紛れている患者の割合にあたる。まとめると、感度・特異度・偽陽性率・偽陰性率は「真の状態」つまり列で割り、適中度は「検査結果」つまり行で割る、という2系統になるんだ。
医学生医学生
CBTの勉強のときは定義を丸暗記していましたが、「何が分かっている集団の中での割合か」と考えると整理しやすいですね。
ドクタードクター
そう、検査を評価する立場なら真の状態が分かっている集団で考え、目の前の患者さんの結果を解釈する立場なら検査結果で考える、と意識するといい。ここで発展知識だ。感度・特異度は検査そのものの性質で、有病率が変わっても原則として変わらない。では適中度はどうかな。
医学生医学生
適中度は有病率に左右されるんでしたよね。一般住民の検診みたいに有病率が低いと、陽性と出ても本当の患者は少なくなる……?
ドクタードクター
その理解で合っている。有病率が低い集団では、同じ検査でも陽性適中度が下がり、陰性適中度は上がる。この表の有病率は90÷200で0.45とかなり高いから、検診の場面にそのまま当てはめるとずれてしまうんだ。
医学生医学生
臨床実習の健診外来で、「陽性でも精密検査で異常なしの人が多い」と指導医の先生がおっしゃっていたのは、そういう理由だったんですね。
ドクタードクター
まさにそう。だからスクリーニングでは見逃しを減らすため感度の高い検査を、確定診断では偽陽性を減らすため特異度の高い検査を重視する。さらに、有病率に影響されにくい指標として尤度比もある。陽性尤度比は感度÷(1−特異度)で、この表だと約4.9。検査前確率をどれだけ動かすかを示す指標で、臨床推論でも役に立つから合わせて覚えておこう。
医学生医学生
表を見たらまず4マスに名前を付けて、列と行の合計を出してから、分母を確認して割る。この手順を守ります。

まとめ

2×2分割表の指標は、分母の取り方で2系統に分かれます。感度・特異度・偽陽性率・偽陰性率は「疾患の有無」(列の合計)を分母とし、本表では感度0.89、特異度0.82、偽陽性率0.18となります。陽性適中度・陰性適中度は「検査結果」(行の合計)を分母とし、本表ではそれぞれ0.80、0.90で、選択肢では感度と陽性適中度の値が入れ替えて示されている点が落とし穴です。感度・特異度は有病率の影響を受けない一方、適中度は有病率に左右され、有病率の低い検診では陽性適中度が低下します。分母を意識して指標を読み分ける力は、スクリーニング検査の選択や検査結果の解釈といった日常診療の判断に直結します。

解答・解説

正解はbです

検査の性能を評価する指標を、2×2分割表から計算する問題である。まず表の4つのマスが何を意味するかを整理する。 ・真陽性(疾患あり・検査陽性)=80人 ・偽陽性(疾患なし・検査陽性)=20人 ・偽陰性(疾患あり・検査陰性)=10人 ・真陰性(疾患なし・検査陰性)=90人 縦方向(列)の合計は、疾患ありが80+10=90人、疾患なしが20+90=110人である。横方向(行)の合計は、検査陽性が80+20=100人、検査陰性が10+90=100人である。総数は200人となる。 各指標は「分母に何をとるか」で二つの系統に分かれる。 ・感度・特異度・偽陽性率・偽陰性率:分母は「疾患の有無」(列の合計)。真の状態が分かっている集団の中で、検査がどれだけ正しく判定したかをみる。 ・陽性適中度・陰性適中度:分母は「検査結果」(行の合計)。検査結果が出た人のうち、実際にその結果どおりである割合をみる。 これに沿って計算すると、 感度=80÷90≒0.89 特異度=90÷110≒0.82 偽陽性率=20÷110≒0.18(=1-特異度) 偽陰性率=10÷90≒0.11(=1-感度) 陽性適中度=80÷100=0.80 陰性適中度=90÷100=0.90 となり、選択肢の中で値が一致するのは特異度0.82のみである。なお、感度(0.89)と陽性適中度(0.80)の値が選択肢a・dで入れ替わって提示されている点に注意したい。分母を取り違えると誤答に誘導される構成になっている。

選択肢考察

  1. ×a.  感度は0.80である。

    感度は、疾患を持つ人のうち検査で陽性と判定される人の割合(真陽性÷疾患ありの総数)である。本表では80÷(80+10)=80÷90≒0.89となり、0.80ではない。0.80は分母を検査陽性者数(100人)にしてしまった場合の値で、これは陽性適中度にあたる。

  2. ○b.  特異度は0.82である。

    特異度は、疾患を持たない人のうち検査で陰性と正しく判定される人の割合(真陰性÷疾患なしの総数)である。本表では90÷(20+90)=90÷110≒0.818となり、四捨五入して0.82となるので正しい。

  3. ×c.  偽陽性率は0.90である。

    偽陽性率は、疾患を持たない人のうち誤って陽性と判定される人の割合(偽陽性÷疾患なしの総数)で、1-特異度に等しい。本表では20÷110≒0.18であり、0.90ではない。0.90は陰性適中度の値である。

  4. ×d.  陽性適中度は0.89である。

    陽性適中度(陽性的中率、陽性予測値)は、検査陽性となった人のうち実際に疾患を持つ人の割合(真陽性÷検査陽性者の総数)である。本表では80÷(80+20)=80÷100=0.80であり、0.89ではない。0.89は感度の値である。

  5. ×e.  陰性適中度は0.10である。

    陰性適中度(陰性的中率、陰性予測値)は、検査陰性となった人のうち実際に疾患を持たない人の割合(真陰性÷検査陰性者の総数)である。本表では90÷(10+90)=90÷100=0.90であり、0.10ではない。0.10は検査陰性者の中に疾患ありの人が含まれる割合(10÷100)で、陰性適中度を1から引いた値にあたる。

2×2分割表と各指標

一般に、疾患あり・検査陽性をa(真陽性)、疾患なし・検査陽性をb(偽陽性)、疾患あり・検査陰性をc(偽陰性)、疾患なし・検査陰性をd(真陰性)とおくと、以下のように定義される。 ・感度=a/(a+c):疾患のある人を陽性として拾い上げる能力。 ・特異度=d/(b+d):疾患のない人を陰性と判定する能力。 ・偽陰性率=c/(a+c)=1-感度 ・偽陽性率=b/(b+d)=1-特異度 ・陽性適中度(陽性予測値)=a/(a+b) ・陰性適中度(陰性予測値)=d/(c+d) ・有病率=(a+c)/(a+b+c+d) ・陽性尤度比=感度/(1-特異度) ・陰性尤度比=(1-感度)/特異度 本表に当てはめると、有病率=90÷200=0.45、陽性尤度比≒0.889÷0.182≒4.9、陰性尤度比≒0.111÷0.818≒0.14となる。

有病率との関係

感度・特異度は検査そのものの性質であり、対象集団の有病率が変わっても原則として変化しない。一方、適中度は有病率に左右され、有病率が低い集団(例:一般住民の検診)では、同じ検査でも陽性適中度が低下し陰性適中度が上昇する。スクリーニング検査では見逃しを減らすために感度の高い検査が、確定診断では偽陽性を減らすために特異度の高い検査が重視される。

POINT

・感度・特異度(および偽陽性率・偽陰性率)は「疾患の有無」の列合計を分母にとる。 ・陽性適中度・陰性適中度は「検査結果」の行合計を分母にとる。 ・偽陽性率=1-特異度、偽陰性率=1-感度。 ・適中度は有病率の影響を受けるが、感度・特異度は受けない。 ・本表:感度0.89、特異度0.82、偽陽性率0.18、陽性適中度0.80、陰性適中度0.90。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。