StudyMed医師国家試験

傷を越えて広がり続ける―ケロイドと肥厚性瘢痕を分ける「経過」の視点

第105回医師国家試験 E問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第105回 E問題 第21問

肥厚性瘢痕と比べたときのケロイドの特徴はどれか。

  1. a.潮紅
  2. b.瘙痒
  3. c.疼痛
  4. d.隆起
  5. e.拡大傾向

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はケロイドと肥厚性瘢痕の違いを問う問題だ。どちらも見た目がよく似た「盛り上がった傷あと」なので、両者に共通する所見と、ケロイドにしかない性質を切り分けられるかがポイントになるよ。
医学生医学生
皮膚科の講義では、ケロイドの方が赤くて盛り上がりが強い、と覚えていました。
ドクタードクター
程度の差としてはそういう傾向があるね。でもまず、どちらもどうやってできるのかを押さえよう。創傷治癒の過程で真皮の線維芽細胞が過剰に働き、膠原線維が過剰に沈着してできる病的瘢痕、という点は共通なんだ。
医学生医学生
成り立ちが同じなら、見た目や症状も似てくるわけですね。
ドクタードクター
そう。どちらも赤色〜紅褐色の硬い隆起性病変で、かゆみや痛みを伴うことが多い。だから潮紅、瘙痒、疼痛、隆起は、いずれも両者に共通する所見で、鑑別の決め手にはならないんだ。
医学生医学生
赤みは何を反映しているんでしょうか。
ドクタードクター
瘢痕の中で毛細血管が増えて、炎症が続いていることの表れだ。肥厚性瘢痕では時間とともに赤みが引いて白っぽく成熟していくけれど、赤みがあること自体は両者どちらにもみられる。かゆみも、瘢痕内の炎症や肥満細胞由来のヒスタミンなどの関与が考えられていて、共通の症状だよ。
医学生医学生
痛みはケロイドの方が強いイメージがあります。形成外科を回ったとき、ケロイドの患者さんが「服がこすれるだけで痛い」と話していました。
ドクタードクター
ケロイドの方が症状が強いことは多いね。ただ、肥厚性瘢痕でも痛みは出るから、疼痛の有無だけでは区別できない。隆起も同じで、ケロイドの方が目立つ傾向はあっても、どちらにも共通する基本所見なんだ。
医学生医学生
そうなると、残るのは拡大傾向ですね。
ドクタードクター
正解。両者を分ける最も大事な点は経過と広がり方だ。肥厚性瘢痕はもとの傷の範囲内にとどまり、数か月から数年かけて徐々に平坦化・退色して自然に軽快していく。一方ケロイドは、もとの傷の範囲を越えて周囲の正常皮膚へ、かにの足のような突起を出しながら広がり、自然に退縮することはまれで長く拡大し続けるんだ。
医学生医学生
「傷の中にとどまって落ち着く」のが肥厚性瘢痕で、「傷を越えて広がり続ける」のがケロイド、ということですね。
ドクタードクター
そのとおり。もう一つ、できるきっかけも違う。肥厚性瘢痕は熱傷や手術創など比較的大きな創や、関節部のように張力がかかる部位の創にできやすい。ケロイドはピアス穴やにきび、予防接種、虫刺されのようなごく小さな傷や、はっきりした外傷がなくても生じることがあるんだ。
医学生医学生
病理実習で、ケロイドは太い膠原線維が特徴的だと習った気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。ケロイドでは太く硝子化した膠原線維束が不規則に走行するのが特徴的だ。体質の関与も強く、家族内発生がみられたり有色人種に多かったりする。好発部位は前胸部、肩や上腕、耳垂、下顎部、恥骨上部など、皮膚に張力がかかりやすいところだよ。
医学生医学生
胸の正中切開の術後は特に注意が必要そうですね。治療は切除すればよいのでしょうか。
ドクタードクター
そこが臨床での大きな注意点だ。ケロイドは単純切除だけでは再発しやすく、かえって大きくなることもある。まずはステロイドのテープ剤や局所注射、トラニラスト内服、圧迫療法、シリコーンゲルシートなどの保存的治療を行い、切除する場合は術後の放射線照射などを併用するのが一般的だ。
医学生医学生
ケロイド体質の人にピアスや美容目的の処置をするときも、事前に説明しておくべきですね。
ドクタードクター
その姿勢が大切だね。既往や家族歴を聞いておくことが、予防の第一歩になるよ。

まとめ

ケロイドと肥厚性瘢痕は、いずれも真皮の線維芽細胞の過剰な働きで膠原線維が過剰に沈着する病的瘢痕であり、潮紅・瘙痒・疼痛・隆起は両者に共通してみられます。鑑別の要点は経過と広がり方で、肥厚性瘢痕は創の範囲内にとどまり数か月〜数年で平坦化して自然軽快するのに対し、ケロイドは創の範囲を越えて周囲の健常皮膚へ蟹足状に拡大し、自然消退しにくいのが特徴です。ケロイドは小さな傷からも生じ、体質の関与が強く、前胸部・肩・耳垂など張力のかかる部位に好発し、組織では太く硝子化した膠原線維束がみられます。単純切除では再発しやすいため、ステロイド局所療法や圧迫療法などを行い、切除時は術後放射線照射などを併用します。共通所見と特有の所見を切り分けて考える姿勢は、似た病変の鑑別全般に役立ちます。

解答・解説

正解はeです

ケロイドと肥厚性瘢痕は、いずれも創傷治癒の過程で真皮の線維芽細胞が過剰に働き、膠原線維(コラーゲン)が過剰に沈着して生じる病的瘢痕である。見た目はよく似ており、どちらも皮膚面より盛り上がった赤色〜紅褐色の硬い病変で、かゆみや痛みを伴うことが多い。 したがって、潮紅・瘙痒・疼痛・隆起といった「症状や外観」は両者に共通する所見であり、鑑別の決め手にはならない。両者を分ける最も重要な点は「経過と広がり方」である。肥厚性瘢痕はもとの傷の範囲内にとどまり、数か月〜数年の経過で徐々に平坦化・退色して自然に軽快していく。一方ケロイドは、もとの傷の範囲を越えて周囲の正常皮膚へ蟹足状(かにの足のような突起状)に広がり、自然に退縮することはまれで、長期にわたり拡大し続ける。 本問は「肥厚性瘢痕と比べたときのケロイドの特徴」を問うているので、両者に共通する所見を除き、ケロイドに特有の性質である拡大傾向を選べばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  潮紅

    潮紅(赤み)は、病的瘢痕内で毛細血管が増生し炎症が持続していることを反映する所見で、ケロイドにも肥厚性瘢痕にもみられる。肥厚性瘢痕では時間とともに赤みが引いて白っぽく成熟していくが、赤みがあること自体は両者の区別に使えない。

  2. ×b.  瘙痒

    かゆみはケロイド・肥厚性瘢痕のいずれでもよくみられる自覚症状である。瘢痕内での炎症や肥満細胞由来のヒスタミンなどの関与が考えられており、両者に共通するため鑑別点にならない。

  3. ×c.  疼痛

    痛み(圧痛や自発痛)も、ケロイド・肥厚性瘢痕の双方で生じうる。ケロイドの方が症状が強いことが多いが、疼痛の有無だけでは両者を区別できない。

  4. ×d.  隆起

    膠原線維が過剰に沈着するため、どちらも皮膚面から盛り上がった病変となる。隆起の程度は一般にケロイドの方が目立つが、隆起は両者に共通する基本的な所見であり、ケロイドの特徴とはいえない。

  5. ○e.  拡大傾向

    ケロイドは受傷した範囲を越えて周囲の健常皮膚へ浸潤するように広がり、自然消退はほとんどなく、長期にわたり増大を続ける。これに対し肥厚性瘢痕は、ある期間増殖したのち傷の範囲内にとどまって次第に平坦化・成熟し、自然に軽快する。この「もとの傷を越えて広がり続けるか否か」が両者を区別する最大のポイントであり、ケロイドの特徴として正しい。

ケロイドと肥厚性瘢痕の比較

・範囲:ケロイドは創の範囲を越えて周囲の健常皮膚へ拡大する(蟹足状の突起を伴うことがある)。肥厚性瘢痕は創の範囲内にとどまる。 ・経過:ケロイドは自然退縮がまれで、長期に増大・持続する。肥厚性瘢痕は数か月〜数年で平坦化・退色し自然軽快する傾向がある。 ・契機:ケロイドはごく小さな傷(ピアス穴、ざ瘡、予防接種、虫刺されなど)や明らかな外傷なしでも生じうる。肥厚性瘢痕は熱傷や手術創など比較的大きな創、関節部など張力のかかる部位の創に生じやすい。 ・体質・好発部位:ケロイドは家族内発生がみられるなど体質の関与が強く、有色人種に多い。前胸部(胸骨部)、肩・上腕、耳垂、下顎部、恥骨上部など、皮膚に張力がかかりやすい部位に好発する。 ・組織:ケロイドでは太く硝子化した膠原線維束(ケロイド性膠原線維)が不規則に走行するのが特徴的である。 ・共通点:赤色〜紅褐色の硬い隆起性病変で、瘙痒や疼痛を伴う。

治療

ステロイド外用・貼付(テープ剤)、ステロイド局所注射、トラニラスト内服、圧迫療法、シリコーンゲルシートなどが行われる。ケロイドは単純切除のみでは再発しやすいため、切除する場合は術後放射線照射などを併用する。

POINT

・ケロイドと肥厚性瘢痕は、潮紅・瘙痒・疼痛・隆起がいずれも共通してみられる。 ・鑑別の要点は経過:ケロイドは創の範囲を越えて拡大し続け、自然消退しにくい。肥厚性瘢痕は創の範囲内にとどまり、自然に軽快する。 ・ケロイドは前胸部・肩・耳垂など張力のかかる部位に好発し、体質の関与が大きく、単純切除では再発しやすい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。