StudyMed医師国家試験

「介護が必要か」がすべての基準―認知症も対象になる介護保険のしくみ

第105回医師国家試験 E問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第105回 E問題 第20問

介護保険について正しいのはどれか。

  1. a.被保険者は65歳以上である。
  2. b.主治医意見書には要介護度を記入する。
  3. c.認知機能の障害は介護保険の対象となる。
  4. d.ADLが自立していても独居であれば利用できる。
  5. e.地域包括支援センターは二次医療圏ごとに設置される。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は介護保険制度の基本を問う問題だ。誰が加入していて、どういう状態なら給付を受けられ、認定にどんな書類や機関がかかわるのか。この3つの軸で整理すると、どの選択肢も迷わず判断できるようになるよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習ったはずなんですが、「65歳から」というイメージが強くて、そこから自信がありません。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。介護保険の保険者は市町村と特別区で、被保険者は40歳以上なんだ。65歳以上が第1号被保険者、40歳から64歳までの医療保険加入者が第2号被保険者。だから「被保険者は65歳以上」という記述は誤りになる。
医学生医学生
40歳から保険料を払っているということですね。ただ、40代でも誰でも介護サービスを使えるわけではなかったような……。
ドクタードクター
その通り。第1号被保険者は介護が必要になった原因を問わないけれど、第2号被保険者は加齢に伴って生じる16の特定疾病が原因の場合に限られる。脳血管疾患、回復の見込みがないと判断されたがん、ALS、Parkinson病関連疾患、そして初老期における認知症などだね。
医学生医学生
若年性認知症も特定疾病に入っているなら、認知機能の障害は介護保険の対象になるんですね。
ドクタードクター
そう、それが正解だ。要介護認定では、手足が動くかどうかといった身体機能だけでなく、記憶や理解といった認知機能、徘徊などの行動・心理症状による介護の手間も評価される。認知機能の障害で日常生活に支障があれば、給付の対象になるんだ。
医学生医学生
地域医療の実習で訪問診療に同行したとき、歩けるけれど認知症で一人では生活できない方がデイサービスを使っていました。まさにそういうケースですね。
ドクタードクター
いい経験をしているね。では、認定の流れも確認しよう。申請を受けた市町村が認定調査を行い、主治医意見書と合わせてコンピュータで一次判定、介護認定審査会で二次判定、最後に市町村が認定する。主治医意見書に要介護度を書く、という記述はどうかな。
医学生医学生
医師が要介護度を決めるのかと思っていました。違うんですか。
ドクタードクター
違うんだ。主治医意見書は、傷病名や症状の安定性、認知症高齢者や障害高齢者の日常生活自立度、特別な医療の有無などを医学的立場から書く判定の資料で、要介護度を記入する欄はない。要介護度を決めるのはあくまで審査会の判定に基づく市町村だよ。
医学生医学生
では、ADLが自立していても独居なら利用できる、というのは……一人暮らしは心配なので、使えてもよさそうに感じます。
ドクタードクター
気持ちはわかるけれど、給付の要件は要介護・要支援状態であることで、家族構成は条件にならない。ADLが自立していて介護の必要がなければ、独居でも非該当と判定される。生活機能が低下した人向けの総合事業もあるけれど、それも生活機能の低下が前提なんだ。
医学生医学生
最後の地域包括支援センターは、医療計画の話で出てきた二次医療圏と関係があるのかと思いました。
ドクタードクター
そこはひっかけだね。地域包括支援センターは市町村が設置主体で、おおむね中学校区程度の日常生活圏域を単位として想定されている。都道府県が医療計画で設定する二次医療圏とは関係ない。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が配置され、総合相談や高齢者虐待への対応などの権利擁護、介護予防ケアマネジメントを担っているよ。
医学生医学生
被保険者は40歳以上、基準は介護の必要性、医師は資料を出す立場、センターは市町村。整理できました。
ドクタードクター
完璧だ。臨床に出ると、主治医意見書を書く機会は意外に多い。特に認知症の方は、診察室では受け答えがしっかりしていても家では困りごとが多い、ということがよくある。家族やケアマネジャーから生活の様子を聞き取って、日常生活自立度や介護の手間を具体的に書くことが、適切な認定につながるんだ。
医学生医学生
意見書の書き方ひとつで、患者さんが受けられるサービスが変わり得るということですね。
ドクタードクター
その通り。それから、自己負担は原則1割で所得に応じて2割や3割になること、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの中核が地域包括支援センターであることも、あわせて押さえておこう。

まとめ

介護保険の保険者は市町村で、被保険者は40歳以上です。65歳以上の第1号被保険者は原因を問わず、40〜64歳の第2号被保険者は初老期における認知症などの16の特定疾病が原因の場合に給付を受けられます。要介護認定では身体機能だけでなく認知機能の障害や行動・心理症状による介護の手間も評価されるため、認知機能の障害は給付の対象となります。主治医意見書は判定の資料で要介護度は書かず、要介護度は介護認定審査会の判定に基づき市町村が認定します。また給付の要件は介護の必要性であって独居などの家族構成ではなく、地域包括支援センターは市町村が中学校区程度の圏域を目安に設置するもので、二次医療圏とは無関係です。制度の骨格を理解しておくことは、将来主治医意見書を書き、患者を地域の介護につなぐ医師としての実務に直結します。

解答・解説

正解はcです

介護保険制度の骨格

介護保険は、高齢化に伴う介護需要の増大に対応するため、2000年4月に施行された社会保険制度である(根拠法は介護保険法)。要点は次のとおりである。 ・保険者: 市町村および特別区(東京23区)。 ・被保険者: 40歳以上の者。65歳以上が第1号被保険者、40歳以上65歳未満の医療保険加入者が第2号被保険者である。 ・財源: 利用者負担を除いた給付費の半分を公費(国・都道府県・市町村)、残り半分を第1号・第2号被保険者の保険料でまかなう。 ・利用の流れ: 本人・家族などが市町村に申請 → 市町村職員などによる認定調査と主治医意見書 → コンピュータによる一次判定 → 介護認定審査会による二次判定 → 市町村が要支援1・2、要介護1〜5、非該当(自立)のいずれかを認定する。

給付の対象となる条件

給付を受けられるのは、要介護状態または要支援状態と認定された者である。第1号被保険者は原因を問わず、第2号被保険者は加齢に伴って生じる16の特定疾病が原因の場合に限って対象となる。ここでいう介護の必要性は、身体機能だけでなく認知機能の低下による日常生活上の支障も含めて評価される。

考え方

選択肢を上記の枠組みに当てはめると、被保険者の年齢(40歳以上)、主治医意見書の役割(判定の資料であり判定結果そのものではない)、給付の条件(介護の必要性であって家族構成ではない)、地域包括支援センターの設置主体(市町村)を正しく理解しているかが問われている。

選択肢考察

  1. ×a.  被保険者は65歳以上である。

    誤り。被保険者は40歳以上の者である。65歳以上は第1号被保険者で、要介護・要支援状態となった原因を問わず給付を受けられる。40歳以上65歳未満の医療保険加入者は第2号被保険者で、特定疾病(初老期における認知症、脳血管疾患、末期がんなど16疾病)が原因の場合に限り給付対象となる。

  2. ×b.  主治医意見書には要介護度を記入する。

    誤り。主治医意見書は、申請者の傷病名、症状の安定性、心身の状態(認知症高齢者・障害高齢者の日常生活自立度など)、特別な医療の有無、生活機能や介護に関する意見などを医学的立場から記載する書類であり、要介護度の記入欄はない。要介護度は、認定調査の結果と主治医意見書の一部項目から一次判定を行い、介護認定審査会が主治医意見書などを参考に二次判定を行ったうえで、市町村が認定する。

  3. ○c.  認知機能の障害は介護保険の対象となる。

    正しい。要介護認定では、身体機能だけでなく、記憶・理解などの認知機能や、徘徊などの行動・心理症状(BPSD)による介護の手間も評価される。したがって認知機能の障害によって介護が必要であれば給付の対象となる。第1号被保険者は原因疾患を問わず、第2号被保険者でも初老期における認知症(若年性認知症)は特定疾病に含まれるため対象となる。

  4. ×d.  ADLが自立していても独居であれば利用できる。

    誤り。介護保険の給付は、要介護状態・要支援状態であることが条件であり、独居かどうかといった家族構成や生活環境は給付の要件ではない。日常生活動作(ADL、activities of daily living: 食事・排泄・入浴・移動など)が自立して介護や支援の必要がなければ、独居であっても非該当(自立)と判定され、介護給付・予防給付は受けられない。

  5. ×e.  地域包括支援センターは二次医療圏ごとに設置される。

    誤り。地域包括支援センターは、2005年の介護保険法改正(2006年施行)で創設された機関で、市町村が設置主体である(社会福祉法人などへの委託も可能)。おおむね中学校区程度の日常生活圏域を単位として設置されることが想定されており、二次医療圏(一般の入院医療を完結させる単位として都道府県が医療計画で設定する圏域)とは関係がない。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が配置され、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待への対応など)、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントを担う。

第1号被保険者と第2号被保険者

・第1号: 65歳以上。保険料は原則として年金から天引き(特別徴収)される。給付は原因を問わない。 ・第2号: 40歳以上65歳未満の医療保険加入者。保険料は医療保険料と一括して徴収される。給付は特定疾病が原因の場合に限る。

特定疾病(16疾病)

1. がん(回復の見込みがない状態に至ったと医師が判断したもの。かつては「がん末期」と表記された) 2. 関節リウマチ 3. 筋萎縮性側索硬化症 4. 後縦靱帯骨化症 5. 骨折を伴う骨粗鬆症 6. 初老期における認知症 7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびParkinson病(Parkinson病関連疾患) 8. 脊髄小脳変性症 9. 脊柱管狭窄症 10. 早老症 11. 多系統萎縮症 12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症 13. 脳血管疾患 14. 閉塞性動脈硬化症 15. 慢性閉塞性肺疾患 16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

利用者負担

サービス利用時の自己負担は原則1割であるが、一定以上の所得がある第1号被保険者は2割または3割となる。

地域包括ケアシステム

高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する体制を、日常生活圏域(おおむね30分以内に必要なサービスが提供される範囲、中学校区が目安)ごとに構築することが目指されている。地域包括支援センターはその中核機関である。

補足: 総合事業

要支援者や、基本チェックリストで生活機能の低下がみられた者(事業対象者)は、市町村が行う介護予防・日常生活支援総合事業のサービスを利用できる。ただしこれも生活機能の低下が条件であり、独居であることだけで利用できるわけではない。

POINT

・介護保険の保険者は市町村、被保険者は40歳以上(65歳以上が第1号、40〜64歳の医療保険加入者が第2号)。 ・第2号被保険者は16の特定疾病(初老期における認知症を含む)が原因の場合のみ給付対象。 ・主治医意見書は判定の資料であり、要介護度は介護認定審査会の判定に基づき市町村が認定する。 ・給付の要件は要介護・要支援状態であることで、独居などの家族構成は要件ではない。 ・地域包括支援センターは市町村が設置し、二次医療圏とは無関係。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。